このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
外に出ると寒い。初冬とはいえ冬は冬である。高校時代、新聞配達をしていた頃の寒さが頭をよぎる。そして、通学バスに乗る金がなく、だぶだぶの制服(同情して誰かが息子のお下がりをくれた)を着て、下駄 途中、昔の母子寮があった近くを通る。母はそこの寮母をしていたので私達は家族ぐるみ住み込んでいた。母のことを隣近所の人は「乞食の親方」と呼んでいたが、母子寮はその名の通り、母子だけの貧しい人達が住む福祉施設であった。母は寮の人たちの面倒をよくみていたが、そこに住む人達の生活は厳しかった。それで寮の人達は余裕がないから、大人でもちょっとしたことでよく喧嘩をした。 ある時、子供の一人が、 「お兄ちゃん、来て!」と、駆け込んできたので行ってみると、母親二人が冷たいコンクリートの廊下で転がって、取っ組み合いの喧嘩をしていた。あわてて仲裁したが、 正直言ってどうなることか見当がつかなかった。だが、二人はすぐ言うことを聞いてくれた。今思うと、大の大人が高校生の言うことなどよく聞いてくれたものだと、不思議な気がする。子供たちの学習など、面倒を見てやっていたことは あるにしても、それだけではないような気がして切なくなる。 海岸に着く。早朝というのに風が強い。昔の思い出など吹っ飛んでしまう。漁船が三隻、海の上を走っていく。寒いだろうな、としみじみ思う。やっぱりまだ、「昔」からぬけきっていないらしい。 そのうち、日が昇りはじる。美しい。寒さを忘れ、思わずシャッターを切る。
早朝の海
浜名湖と中田島の間にある小沢渡の海
朝、急に思い立って小沢渡の海岸へ行くことにする。小沢渡は、よく出かけるサイクリングコースの中間にあり、そこから浜名湖へ行ったり、中田島へ行ったりする。だが、こんなに早いことはない。
履き(靴が買えなかった)で、1時間以上歩いた寒い冬の日々のことが浮かんでくる。そう言えばこんな冬、こんな早い時間に外に出るのは何十年ぶりだろう。
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