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《ドン行自転車 屋久島行き》2002年8月

  栗生の一日


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     栗生の海

 屋久島の南西部に位置する栗生のキャンプ場で迎える朝。雨が降ったり晴れたりと変化は激しいものの、基本的には天気は悪くなさそうだ。こんなことが屋久島では普通ということなのだろう。

 テントの中でまたチャバネゴキブリを発見。たぶん昨日のやつだ。宮之浦で追い出したつもりだったのに、どこかに隠れていたらしい。今度こそ追い出してやろうと思ったら、また見当たらなくなった。

 朝食後、東シナ海に突き出た「カマゼの鼻」の海岸を散策。サンゴのかけらが散らばる波打ち際をバシャバシャと歩き回ったり、潮だまりを覗き込んで、色々な魚や貝や蟹を観察したりする。きれいなブルーの熱帯魚も見かけた。持参の『屋久島自然観察ガイド』(日下田紀三著,山と渓谷社,2002年)によれば、タテジマキンチャクダイの幼魚らしい。
 沖合を黒潮が流れ、カマゼの鼻の先端部の岩礁は激しく白波が立っているが、岩場の奥まで波が静かに入り込む部分や潮だまりは小魚たちにとって絶好の隠れ家となっているようだ。

  


 浜辺にはハマユウのほか、ヒルガオが咲いていた。ハマヒルガオのような濃いピンクの花で、グンバイヒルガオという。肉厚の葉っぱの形が軍配に似ているところからの命名だろう。
 北海道の植物については少しずつ知識が増えてきたが、南国の植物についてはまたゼロからの出発という感じだ。植物だけでなく鳥も魚も昆虫も何もかも…。

 というわけで、潮だまりをひとつずつ熱心に観察したり、花を眺めたり、波と戯れたりするうちに時間があっという間に過ぎ、いつしか10時になっていた。

     海中展望船「まんぼう」

 今日はここに連泊なので、テントはそのままにして、身軽なスタイルで愛車とともに出発。まずは栗生川の河口左岸を堤防で仕切った漁港へ向かう。そこから海中展望船が出ているのだ。2,000円もするが、サンゴ礁の海の中も見てみたい。

 ほかの観光客とともに1040分出発の展望船「まんぼう」に乗船。港の沖の浅瀬へ向かう。
 ポイントに着いて船の速度が落ちると、そこで甲板から階下へ移動。通路を挟んで前向きの座席が一列ずつ、左右にずらりと並ぶ窓の外は明るいブルーの海中世界だ。きれいな海だが、潮流の関係か透明度はもうひとつ。それでも海底のサンゴが見えたし、テングハギやツノダシなどの熱帯魚が窓の外をよぎり、さらにウミガメも2匹泳いでいた。ただ、かなりうねりがあって、気分が悪くなった人もいたようだった。一応満足して1115分に港に戻る。

 再び愛車にまたがり、栗生の集落の中を走っていて、ツマベニチョウを発見。白い羽の先端部がオレンジ色の美しい南国のチョウだ。初めて目にして、ちょっと感激。

(ツマベニチョウ。この写真は別の機会に撮影)

     屋久島フルーツガーデン

 次に向かうのは屋久島フルーツガーデン。昨日の県道を戻り、南隣の中間集落から川に沿って坂道を上っていったところにある。途中でキャンプ場から歩いてきた臨海学校の小学生の行列を追い抜いた。
 入口に自転車を置いて園内に入り、入園料500円を支払う。フルーツの試食付きというのが嬉しい。タンカン、スターフルーツ、パイン、マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツを1切れずつと、スモモとパパイヤのジャム。
 その後、麦わら帽子のおじいちゃんの案内で園内の熱帯・亜熱帯植物や果樹のジャングルを見て回り、さらに自分ひとりでもう一巡。

 フルーツガーデンをあとに再び坂を下り、そこにあった「カフェレスト・ヒロ」という昨日開店したばかりのお店で昼食。家族経営の店で、カレーライス
200円、アイスコーヒーが100円。オープン記念価格とはいえ、あまりに安くて、なんだか申し訳ないほどだった。商売繁盛を祈ります。

   ガジュマル

 中間ではもうひとつ。中間川の河畔に生えたガジュマルの巨樹。
 ガジュマルはクワ科の亜熱帯植物で、イチジクの仲間だそうだが、これがなんとも奇怪な木なのである。たくさんの気根を空中に垂らし、それが地面に届くとどんどん成長して、それ自体が幹のように太くなる。気根はほかの植物に絡みついて、その木を枯らしてしまうこともあるので、絞め殺し植物とも呼ばれている。
 屋久島では島内各地にガジュマルが茂っていて、昨日、湯泊集落でも見たが、なかでもこの中間のガジュマルは最大級で、あまりにたくさんの気根が発達し、複雑に絡み合い、どれが元々の幹なのかさっぱわり分からない。1本の木なのにまるでジャングルのような姿になっている。樹齢は300年ほどだそうで、縄文杉に比べれば、小僧のようなものだが、負けないぐらいの存在感がある。

 そのガジュマルを見上げていると、おじいさんが通りかかり、そこでしばらく立ち話。どんな話を聞いたかというと…。
 おじいさんは中間で生まれ育ち、大阪で40年暮らして、3年前にこちらに戻ってきたということ。
 栗生の小学校、高等科に8年間通ったそうだが、当時の栗生は屋久島で一番大きな集落で、島内唯一の高等科があったとのこと。
 昔は中間川でウナギやエビがいくらでも獲れたものだが、護岸工事のせいで往時の面影はすっかり消えてしまったということ。
 ガジュマルの木だけは昔と変わらないということ。ただ、川沿いにあったもう1本のガジュマルは根腐れで最近倒れてしまったそうだ。
 最近、人里にもサルが出るようになったこと(そういえば、栗生でも畑にサル避けのネットが張ってあった)。
「台風さえ来なければ、ここはいいところですよ」
 おじいさんはそう言うと、畑仕事のためゆっくりと坂道を登っていった。昼間は暑くて仕事にならないと言っていたけれど。

 おじいさんの後ろ姿を見送って、僕もまた走り出す。昨日の平内海中温泉の気持ちよさが忘れられず、きのう来た道を行く。
 入り頃にはまだ早いので、その前に湯泊の海岸にも寄って、そこにある露天風呂にも入った。こちらは平内よりお湯の温度が低く、旅のライダー1人と地元の子供たちが入っていた。
 その後、平内の温泉で15時過ぎからだんだん潮が満ちてくるなか、1時間ほど温泉を堪能した。

(平内海中温泉)

(海の見える牧場)

 帰りは黒崎の「キャトルステーション」という海の見える牧場で草を食む黒牛の群れを眺め、栗生に戻る。
 集落で夕食の買い物をして、夕暮れの海岸で食べた。
 ところで、愛用のスポーツサンダルがついにダメになってしまった。北海道の三国峠やニセコも越えた思い出の品で、今回もずっと履いていたのだが、緒の部分が切れてしまった。残念ながら、ここでお別れだ。キャンプ場の受付で渡された不燃ゴミの袋へ。
 本日の走行距離はたった29.7キロ。のんびりした一日だった。明日はいよいよ西部林道だ。

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