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都民の森・夜行性動物&早朝野鳥観察会 2005年5月21日〜22日

 新緑の季節になると山へ出かけて夏鳥たちの声を聞きたくなる。というわけで、今年も東京都檜原村の都民の森「夜行性動物と早朝野鳥観察会」に参加の申し込みをした。当日の天気は晴れ。例によって、寝袋持参で、食料も自前で用意したので、1泊のわりに荷物が多い。


 電車で武蔵五日市駅まで行き、8時18分発の都民の森行き急行バスで約1時間。標高およそ1,000メートルの都民の森に9時25分頃、到着。ここまでは自転車で何度も来ていて、そのたびに苦しい思いをしているが、それでもバスに乗っていると、またこの山道を愛車で走りたいなぁ、と思う。
 バスを降りると、都民の森の入口の売店の屋根でさっそくミソサザイが高らかに歌っていた。こげ茶色の小さな体に似合わず、大きな声で長く複雑にさえずり、日本三鳴鳥のウグイス、コマドリ、オオルリにも負けない素晴らしい歌声の持ち主である。
 急坂を登って森の拠点施設の森林館に着くと、今度はオオルリの声が山から降ってきた。コバルトブルーの惚れ惚れするほど美しい小鳥で、今回もきっと姿を見ることができるだろう。

 さて、森林館の研修室で9時40分から受付開始。参加費は傷害保険料の100円のみ。今回の参加者は子どもから年配の人まで計33名とのこと。
 予定の10時より少し遅れて、観察会が始まった。今回も担当は都民の森スタッフで、鳥の声真似の達人、浦野守雄さん。そして、講師は動物写真家の中川雄三さん。
 午前中は研修室でスライドやビデオを使って動物や野鳥についての中川さんの講義。コジュケイの声が日本人には「チョットコイ、チョットコイ」と聞こえるが、英語圏の人には“People play,people play”と聞こえるというのが面白かった。あと、鳥は嘴を水につけたままゴクゴクと飲むことはできないが、鳩だけはそれができる、という話も目からウロコ。うちのインコたちも水を飲む時、嘴ですくっては、上を向いて喉の奥に流し込んでいるが、そういえば、鳩って嘴をずっと水につけたまま飲んでいる印象があるなぁ。

 ところで、配布された資料によれば、都民の森で確認された哺乳類は28種。ネズミ類が多いが、ツキノワグマ、ニホンジカ、カモシカ、ニホンザル、イノシシ、アナグマ、テン、イタチ、ハクビシン、タヌキ、キツネ、ノウサギ、ムササビ、ホンドモモンガ、ニホンリスなどがいるという。このうち、僕が過去の観察会で目撃したのはテン、ハクビシン、タヌキ、ムササビ、ニホンリス。また、この観察会ではないけれど、ニホンジカ、カモシカ、ニホンザルも東京都内(奥多摩)で見たことがある(そのときの話もいずれ紹介したいと思います)。

 昼食後、13時から野外観察に出かける。森林館から三頭大滝、三頭沢、野鳥観察小屋を経て、森林館に戻ってくるお馴染みのコース。三頭大滝まではウッドチップが敷かれ、歩きやすいが、そこからは本格的な山道である。
 見ることができたのは野鳥ではキクイタダキ、ツミ、ヤマガラ、カケス、ミソサザイ、ヒガラなど。声を聞いたのは、ヤブサメ、キビタキ、オオルリなど。ほかに三頭沢でハコネサンショウウオ。また、体長1.5メートルほどのアオダイショウもいたし(みんなで順番に触った)、樹上にあるニホンリスの巣や(もしかしたら)クマの足跡も見た。花ではヤマシャクヤクやフモトスミレ、ミヤマザクラ、ラショウモンカズラなどが咲いていた。今年は小鳥を食べる猛禽類のツミが巣を作っているらしく、小鳥が少ないという話で、実際にツミがカラスを追い払う姿を何度も見た。

 夕方、森林館に戻り、16時30分には都民の森は閉園となる。奥多摩周遊道路も夜間は閉鎖されるから、あとはこの山中に残っているのは我々だけとなる。日中は騒がしかったバイクの音も聞こえなくなり、山に静寂が訪れた。
 簡単な夕食をとっていると、山からキツツキの一種、アオゲラの声がして、ドラミングも聞こえてきた。カケスも周辺をしきりに飛び回っている。

 すっかり暗くなって、18時半頃からヒナコウモリの観察。都会でもよく見るアブラコウモリより少し大きなコウモリである。森林館に巣箱があり、日没とともに活動を開始するのだ。
 コウモリたちは盛んに声を出している。といっても、彼らの声は超音波なので、人間の耳には聞こえない。そこでコウモリの声の周波数を人の耳にも聞こえるように変換する装置があるのだ。これを使えば、巣箱の中で盛んに鳴き交わす声が聞こえるというわけだ。
 すぐ下で我々が見上げているので警戒しているのか、なかなか出てこなかったが、ついに一匹が巣から出て、闇の中に出撃していくと、あとからあとから飛び出してきた。中川さんがセットしていたビデオカメラの映像をあとで確認すると、20匹ほど出たようだった。

 19時15分からこの観察会のメインイベント、夜行性動物の観察。森林館脇の斜面に現われる動物を屋内から観察。といっても、すぐに出てくるわけではないから、忍耐が必要である。
 19時35分頃、タヌキが1匹登場。5分ほどで姿を消す。
 19時46分、タヌキ2匹登場。すぐ帰る。1匹は最初のタヌキと同一個体らしい。
 20時10分、アカネズミ。
 20時16分からタヌキ3匹が相次いで登場。尻尾の模様から判断して、先ほどのタヌキとは別個体。つまり、ここまでタヌキは全部で5匹出たことになる。

 テンやハクビシンが出てこないかなぁ、と思っていたが、最近はずっと睡眠不足で、強烈な睡魔が襲ってくる。というわけで、僕はここで休憩室に戻り、寝袋で眠ってしまった。
 ちなみにこのあとは…。
 21時30分 アカネズミ。
 21時38分〜45分 ハクビシン。
 23時25分〜35分 ヒメネズミ。
 ということで、今夜はテンは出なかったようだ。まぁ、テンもハクビシンも見たことあるし、まぁ、いいか。

 僕としては、この観察会の最大の楽しみは実は未明から夜明けにかけての時間帯である。最初にこのイベントに参加した時(2000年)、夜明け前から野鳥が次々とさえずり始めて、やがて山全体が鳥の声で満ち溢れていったのが、あまりに感動的で、いまだに忘れられないのだ。
 午前2時に目が覚めたので、テラスに出てみると、口笛のような高く細い声でトラツグミが鳴いている。昔から真夜中に不気味な声で鳴く怪鳥ヌエと恐れられた鳥である。この声を初めて聞いたのは北海道の屈斜路湖畔のキャンプ場だったが、この声を聞くと、真夜中の公園でブランコがひとりでに揺れている、という光景が思い浮かぶ。金属が触れ合い、軋む音にも似た、なんとも不思議な声である。どうやら2羽が鳴いているようだ。ほかにも起きている人がいて、「あの声はなんですか?」と聞かれる。
 続いて、ヨタカも鳴き出す。キョキョキョキョキョキョキョ…。これもちょっと不思議な声で、山の中を移動しながら、2羽が鳴いている。
 3時を過ぎて、カッコウの仲間ジュウイチも「ジュウイチ」と鳴き出す。
 3時40分には同じカッコウの仲間のホトトギス。
 4時05分には巣に戻るヒナコウモリ1匹。
 この後、これもカッコウの仲間のツツドリのほか、キビタキやアカハラ、コルリ、マミジロ、ミソサザイ、ヒガラ、ヤブサメ、アオゲラなどの声が山の至るところから聞こえてきた。
 しかし、早くも森林館近くに巣を作っているツミの声がしたせいか、やはり期待したほど小鳥は多くないようだ。みんな息を潜めているのかもしれない。カラスだけがツミにちょっかいを出している。
 明るくなると、昼行性のニホンリスが3匹、4匹と姿を見せ、カケスもやってきた。

 6時頃から野鳥観察で再び三頭大滝あたりまで出かける。
 巣に餌を運ぶシジュウカラを見ながら行くと、コルリの声が近くで聞こえた。名前の通り、青い鳥で、僕はまだ姿を見たことがない。探してみると、近くのカラマツの枝に止まっていて、みんな各自の双眼鏡で観察したり、高倍率のスコープを交代で覗き込んだりする。

(コルリ)

 ほかに山の稜線の木にツツドリ2羽がいたほか、ゴジュウカラ、センダイムシクイの姿を見たり、キクイタダキ、ヒガラ、ウグイスなどの声を聞く。
 そして、オオルリの姿もばっちり見られた。やっぱり初夏の山はいいなぁ、と思う。
 いつの間にか、奥多摩周遊道路ではまたバイクの音が聞こえ出し、朝からハイキングに訪れた人たちともすれ違うようになった。僕らはこの山の中で一夜を過ごしたんだぞぉ、と自慢したくなる。

 9時前に森林館に戻り、閉会式の後、解散。とても名残惜しい気持ちになり、夕方まで山を歩き回ろうかとも考えたが、睡眠不足でもあり、午前中のバスで山を下ってきた。

  都民の森の公式サイトは こちら 。 イベント情報もこちらで見ることができます。



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