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続・善光寺平かけあし一日周遊記

 

昼さがり編  善光寺まで

 

 

■千曲川遡上(飯山→長野)

 往路とは道を変え、千曲川に沿って長野を目指す。古牧橋直前で右に折れ、昔ながらの細道国道 117号を往く。古牧橋から奥手山にかけてが特に狭く、普通車どうしで擦れ違えない箇所が至るところにある。ここは千曲川の中流域でありながら、途中の硲(はざま)という地名に見られるとおり、山塊の隙間を穿ち下る鋭い谷間である。道路を改良しようにも、その余地は少ない。実際のところ国道 117号のバイパスは、現道から大きく離れ、伍位野から山上を迂回しながら豊田飯山IC近くを経て、替佐に至るルート構成となっている。伍位野−豊田飯山IC間は供用されて既に久しく、現に往路でも通ってきたところだが、さて豊田飯山IC−替佐間はいつ供用されるだろうか。工事じたいは順調に進んでいる様子だが。

上今井−替佐間にて(平成15(2003)年撮影) 右側に見える道路は旧国道 117号

 隘路を抜けて替佐を通過する。ここは豊田村の中心部、「豊田」とは旧村名の「豊井」と「永田」をあわせたものだという。旧豊井村の街である替佐駅前にも、なかなか鄙びた趣があるが、さらに山中にわけいる旧永田村の家なみには絵画的な鄙びがあり、なんともゆかしい。そして近い将来、豊田村は中野市及び山ノ内町と合併する予定がある。平成の大合併とやらは、行政の効率化に名を借りて、全国の「豊井」「永田」(※)を盛り立てようとする人たちを消去する試みに見えてしまうのは、気のせいか。その観点において、合併の輪に敢えて加わらない栄村は一つの見識を示したといえるが、人口規模零細な自治体には自治権が賦与されないという話も出ており、進退はかなり窮まっている。

   ※ちなみに、「豊井」は「豊津」「上今井」の、「永田」は「永江」「穴田」の、それぞれ
    合成地名である。過去多くの合併は、そして今後の大合併もおそらくそうなるであろうが、
    由緒ある地名を根こそぎ滅ぼす行いとみなすことも可能である。

 豊野町に入る手前で旧道に折れる。立ヶ花駅の狭いホームは時ならぬ混雑、五連休初日とあってみなみな長野へのお出かけだろうか。その少し先の千曲川の左岸側、北陸新幹線第4千曲川橋梁の橋脚が見える。飯山の第5千曲川橋梁の橋脚は、平成14(2002)年度中に全て完成しているが、こちらはまだ1基が半ばまで出来た段階のようだ。ちなみに両橋とも名称が公募されて、第4千曲川橋梁は「アップル大橋」、第5千曲川橋梁は「菜の花大橋」と命名されたそうだ。

 国道18号をまっすぐ長野に向かってもよいが、どうせならばさらによい景色を楽しもうと赤沼で右折、坂道を上がって吉(よし)で北国街道(若槻大通)に合流した。吉あたりの高台には、林檎畑が連なっており、可憐な白い花が一面に広がっている。満開にはあと1〜2日というところ、真っ盛りの手前ではあるが、それでも充分に美しい。台地には起伏があり、遠く山の端まで見渡せるので、白い花が奥深く広がっているように見える。

長野市内某所の林檎の花(平成15(2003)年撮影)

 長野市内に入ると、新しい道路がいくつか完成していた。まず、サンロードが湯谷から稲田までつながっていた。これにより、SBC通(特に上松交差点)の負荷は軽減されたはずだが、実見できなかったのが残念だ。ただし稲田よりの一箇所で、車線がまっすぐに通っていない交差点があり、事故が頻発する危険が大きいと感じられた。

 またこの新しい大通沿いに、LAOXや西友などに並び「サイゼリヤ」が進出しているのには驚いた。善光寺平のファミリーレストランの主流といえば、地場の「あっぷるぐりむ」のほか、幅広いメニューを提供する「デニーズ」「ロイヤルホスト」が目立っていたが、極めて安価なイタリアンメニューの「サイゼリア」が出てきたかと思うと感慨深いものがある。もっとも「あっぷるぐりむ」はパスタ・ピザ専門店の「ピッツェリア」を出店しているほか、パスタ系では全国チェーンの「珈琲哲学」があり、さらにその模倣店「貴族の家」も追随している。「サイゼリア」が善光寺平でも受け容れられるか、競合の末に他店を駆逐するほどの勢いを得るのか、興味深いところだ。

 新しい道路のもう一本は、サンロードに直交するもので、これにより稲田と吉田が直結された。もう少し広い目で見ると、若槻や浅川から、ボトルネックの上松を経由することなく、長野市南部に出る道筋が出来たことになる。これは福音といえるだろう。ただし、これにつながる国道18号には、母袋から村山まで2車線しかなく、特に休日には容量不足におちいり、あちこちで滞りがちになる。この道路を活かすためにも、そして長野市内の道路交通を円滑にするためにも、国道18号の改善が望まれる。

 それにしてもこの道路、長野電鉄との交差部が「原町隧道」と銘されたのはいいとして、信越線との交差部が「稲田エノキ隧道」と銘されたのは如何なものか。いくらなんでも、「エノキ」では軽すぎるだろう。

 さらにもう一本新しい道路としては、辰巳隧道を上がってきたところの信号なし丁字路が解消され、信号付十字路となった改良が挙げられる。かつては右折し鋸歯をめぐるような遠回りが必要だったのが、交差点を直進すればまっすぐの最短経路となり、地味ながら改善効果が大きい。ただし、その先はあいかわらず畦道に毛がはえた程度の細道であり、受益の範囲はミクロにとどまるであろうことが惜しまれる。

 この新しい道路で長男がお世話になった幼稚園の送迎バスを見かけた。今日は第一土曜日、小学校とは違い登園日のようだ。予定を大きく転換して幼稚園に足を運ぶことにする。突然の訪問で、しかも放課後の掃除時間だったにもかかわらず、先生方はあたたかく迎えてくれた。もと担任の先生は顔をほころばせて、在籍当時のようにぎゅーっと濃厚に長男を抱きしめてくれた。

 このあたたかさ、信州人の美徳のひとつであろう。勿論、こういうつきあいに至るまでには相応の時間を要するにしても、ある一線を超え胸襟を開けるようになると、信州人は素晴らしい人々だと敬愛の念を覚えるし、短い期間とはいえ信州に住まった幸せを感じるのである。

 幼稚園には一時間ほど滞在し、妻は先生方と歓談、長男と長女は園舎園庭を縦横に駆け回り、筆者はそのお守りとあいなった。

 幼稚園を退け、約束どおり「おおぎや」で昼食。いちおう地場の店ではあるし、決して不味いわけではないが、やはり食べたかったなあ、信州の蕎麦。

 

■善光寺まいり

 マイカーをもとの職場に停め、バスで善光寺大門までアクセスする。乗車したのは残念ながら「びんずる号」ではなく、川中島バスの一般路線(徳間北行)、しかも一世代前の古い車両にあたった。川中島バスは、「びんずる号」に代表されるような仕掛が実に巧いが、一般路線に傾注する余力は乏しいということか。もっとも、一般路線での収益はごく薄く、積極的な改善を図る気力など持ちかねる、というのが真相であろう。

長野駅と善光寺を結ぶ「びんずる号」(平成15(2003)年撮影)

 バスを降り、参道をのぼる。時刻は 15:30を回っているが、人出はなお菜の花公園より多く、賑やかだ。とはいえ、陽が傾きつつあり、風が冷たく感じられてきた。

 修繕工事中の三門をくぐり、本堂の前に立つ。まずは二年弱、わが身を護持してくれた数珠を納め、新しい数珠を求める。本堂に上がり、びんずる像を撫でようとするも、前回と同じく長女は泣いた。どうも仏像がこわいらしい。そういえばNHK教育「にほんごであそぼ」を見ていても、閻魔様が画面に現れると逃げ出していた。一方の長男はニコニコ笑って像に登り、頭を撫でている。怖がりから脱却したのはいいとしても、今度は行儀をしつけなければいけなさそうだ。

御開帳で賑わう善光寺(平成15(2003)年撮影)

 御本尊の前で焼香してから、いよいよ「御戒壇めぐり」である。長女は泣くか、どうか。過去二回はまったく泣かず、平然と抱っこされていたが・・・・・・

 今度はごく激しく泣いた。おそらく、今までは赤ん坊だったから、暗さに対する恐怖心が欠けていたのであろう。ひょっとすると、胎内に戻った錯覚さえ持っていたのかもしれない。二歳になって少しはこどもに近づいたようで、暗闇を怖がるようになった。これも成長のあらわれと、かえってうれしさを覚える。

 ちなみに長男もこの段階を経ており、今では「善光寺では『真っ暗』に行こうよ」などと言うようになっている。

 表に出ると、客足がすっかり引いており、活気が薄れていた。売り子の目が血走りつつある仲見世で、土産物を補充する。正直なところ、菜の花公園のような「知る人ぞ知る」売りものはなく、専ら世俗的なものばかりなので、どうにも買う気が湧いてこない。とはいえ、あまりにもベタで声を出して笑ってしまったものがあった。それは「ハローキティ御柱祭」で、御柱にまたがるキティちゃんの雄姿が勇ましく、俗っぽさもここまでくれば一種の芸術になるものだと感心した。

 再び川中島バスに乗る。今度も宇木発の一般路線で、さらに一世代古い老朽車であった。車齢は軽く20年に達しているはずで、いくら地方とはいえ県庁所在地の市街区間でこんな車両に乗るなど、思ってもいなかった。多客期で予備車を総動員しているのかもしれず、単なる偶然なのかもしれないが、遠来からの観光客に与える印象を考えれば、運用の工夫はあったように思われる。

 

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