このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください




割り符


                        
ただいま有志の方から本堂に金七角九分の寄付を受けました。
すでに記入して点検し、
奉天市政公署に送って、
担当部署に記録して控えを作成してもらい、
本堂に保存する他に、
証明のために割り符を発行して下さい。
以上
○○殿    取扱者
(大同)三年八月五日
 康徳 

先の縦長の紙は横幅10センチ、縦25センチのものです。
当HP管理人は中国語は読めませんが、奉天の文字があり、満州物と考え、編集協力者のご協力を得て解読いたしました。

まず回據(回拠)とあります。
これは、切れ目のところに文字を書いて、
それを半分に切って、後で合わせて証明できるようにする一種の割り符の内、
相手に戻す方の半分のことをさします。

回:まわすではなく、もどす、もどる、帰る
拠:証明書のこと。

下に書いてある文章を手書きの部分もそのまま一緒に文字に起こしてみます。

『今收到
有志 先生施助本堂 金七角九分 除已填明
掣〓送請
奉天市政公署備案並照填存根留堂存査外相應
填發回據以資証明此至
先生台照 經手人
大同三年八月五日
(康徳)』

さて3行目の送請で行が変えてあるけれど、
これは大臣や役所など、尊敬する相手を行の上に持ってくるためにそこで行を変えたもので、ここでは奉天市政公署を次の行の上に持ってきてあります。
また最後の「先生台照」の上には本来相手の名前を書き込みますが、ここでは空欄のままです。
台照は手紙を受け取る相手に対する尊称。
馬へんの右に念の漢字は、〓で書き起こしています(環境によって表示しない文字)。
これは驗(験)の俗字体です。

備案は、主管部門に報告して記録すること
存根は、控えのこと
存査は、保存して後日の調べに備えること
2行目下から四文字目の「除」は、4行目の下から三文字目の「外」と呼応し、「除〜外」で「〜以外に」「〜の他に」の意。
相應は、まさに〜すべし、〜して下さい、の意。

で、これは適当な位置で改行してあるので、
意味に従って改行しなおすと、

『今收到有志先生施助本堂金七角九分
除已填明掣驗
送請奉天市政公署
備案並照填存根
留堂存査外
相應填發回據
以資証明
此至
先生台照
經手人
大同三年八月五日
康徳』

です(馬+念の字は驗に置き直し)。

最後の年号は大同とかかれていますが、赤いスタンプで康徳と訂正してあります。
参考まで、康徳三年は1936年です。

さて内容に関し、管理人の想像ですが、
寄付=施助を受けた本堂とありますことから、何らかの福祉団体であることが考えられます。
さらに場所が奉天であることを考えますと、これは奉天同善堂に対して行われた寄付に関するものかもしれません。

もう一点、この割符で興味深いことですが、寄付に対し、作成がなされていたことについてです。無論、寄付を受け取った側が着服しないといったためでもあるのでしょうが、さらに個々の寄付金に対してこうしたきちんとした対応をとる、ということはしっかりとした公平な税制等のシステムがあったから、ということではないでしょうか。


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