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 粕毛林道/ Kasuge林道探索の書 〜今日もどこかで林道ざんまい〜 
探索日 2018.08.13 / No.AK-046 
 [ 所在地 ]藤里町 [ 状態 ]ピストンダート [ 接続林道 ]- [ 分岐林道 ]大開林道・内川林道・一取沢林道・越路林道・樺岱林道・大滝林道
 豊富な支線分岐とダートで存分に楽しめる白神山地(秋田県側)を代表する知られざる長距離ピストン!

田県藤里町と青森県西目屋村に跨がる白神山地。その秋田県側となる「素波里湖」上流の深山地帯には山地の奥の奥まで溯る膨大な数のピストン群が存在しています。しかし、一般的にはダートの県28号線(岩崎西目屋弘前線)のみが特に有名で、林道ライダーは必ずといってよいほどそこを目指しますが、逆に言えば同じ白神山地のダートでも藤里町エリアについてはほとんど知られていないのが現状。ネットでも詳細な探索報告は未だないみたいです。その理由は存在する林道群のほとんどがピストンなので、林道ツーリングの対象にならないことにあると思われますが、そのぶんだけ未知なる部分が多くて探索調査のしがいがあるというもの。以前から地図を眺めるたびに気になっていたこともあり、「こうなったら自ら調査探索するしかない!」と一念発起でやって来た白神山地のピストン林道密集地帯の入口となる「素波里ダム」です。もちろん一日がかりで探索しまくる気合いの入れようで!
ムから 素波里湖 右岸に沿って進むと「素波里国民休養地」の入口が現れますが、そこがこの地の基幹的存在となる粕毛林道の起点のある場所。このように分かりやすい矢印付きの林道標が出迎えてくれました。なお、粕毛林道だけならば話は別ですが、枝分かれで無数に分岐する支線ピストン群を一網打尽とするには直前でガス満タンにしてかかる必要があるのは言うまでもありません。最寄りのGSから林道起点まではかなりの距離があるので、タカをくくっていると途中で泣くに泣けないガス欠に見舞われる可能性も高く、また心配しながら探索するのもストレスが溜まりますね。ちなみに結果から言えば、比較的航続距離の短いWRでも直前で満タンとしておけば、全ての支線林道を巡ってもガス欠にならずに戻って来られます。
→ 林道標を眺める!
→ 道標を眺める!
いうわけで前置きが長くなりましたが、いざ粕毛林道へと進撃開始せん! そして気になる路面ですが、林道標の設置された地点は鋪装されていますが、少し先のここからお待ちかねのダートが開始します。起点からダートが開始するまでダラダラと鋪装区間が続いてしまう林道ってありますが、粕毛林道の場合はすぐに未舗装となるので安心して下さい。ここまで鋪装されているので厳密には半ダートですが、ほとんどフルダート状態ですね。
っそく開始したお待ちかねのダートに勇躍して進んでいくと、路肩にさり気なく遭難注意の警告板が! 入線早々にして脅しをかけてくるようですが、さすがというか、なんといってもここは秋田県と青森県に跨がる広大な白神山地です。本来、白神山地はマタギ以外には入れないほどの深山なので、やはり遭難する登山者の一人や二人くらいはいるみたいだな〜。
難注意の立看板を目にしたりしながらダートを進んでいきますが、すぐに林道は森の鬱蒼とした雰囲気に包まれました。路面についても基本的にはフラットで走りやすいですが、部分的にガタガタとした石が目立つ所があったものの、問題はまったくなかったです。
図上では素波里湖右岸に位置して湖岸伝いに粕毛林道は延びていますが、湖面の景色が全く見えないまま森の真っただ中を進んでいくと最初の橋が出現。湖に注ぐ「狼の助沢」に架かる「狼之助橋」です。昔はこの辺りに多くのオオカミが生息していたのでしょう。現在、ニホンオオカミは絶滅していますが、かつてたくさん生息していた証として地名だけが残っているとか? ちなみに「狼の助」は「おいのすけ」と読みます。
→ 狼の助沢を眺める!
線主体で軽快に駆けることができる区間もあります。勾配を感じさせるほどの坂もなくてほとんど水平コースが続きました。しかしそれもそのはず。かつての藤里町は秋田県でも有数の長大な森林鉄道網を有していたそうで、この粕毛林道もその前身は「藤琴森林軌道粕毛線」だったらしいですよ。だからダートもなだらかなのかと思われましたが、それは少し違った模様。林鉄軌道が存在したのは事実ですが、かつての軌道コースは素波里湖の建設で水没しています。したがってここは厳密には軌道跡ではなかったりもします。
ぎ去った遠い昔、かつて粕毛川伝いに存在していたという林鉄に想いを馳せながら進んでいくと、今度は「ひぐりざわばし」を渡ります。欄干に掲げられた碑板によると橋の名は「ひぐりざわ」とされていますが、沢の名はなぜか「ベグリン沢」というらしいです。地理院地図にも記載のない小さな沢で、やはり素波里湖に注いでいます。
→ ベグリン沢を眺める!
の後、ダートは前方に鬱蒼とした白神の山々を仰ぎ見ながらさらに続きます。「あの山々のさらに奥の奥まで分け入るのか!」と思うと、俄然ヤル気も湧いてきますが、ここは再奥の林道末端地点まで実に20キロを有する、白神山地が誇る半端ない長さの長距離ピストン。どれほどの山奥まで分け入るのかがダートの延長距離の長さからもうかがい知れますね。そして現在地点ではまだ半分の距離にも達していません。
蒼たる夏の猛烈な薮に両路肩を囲まれた区間もあれば、清々しいブナ林を進むシーンもある粕毛林道。しかしここは原生林ではなくて、伐採後に再び再生した二次林だな。それが証拠に粕毛川流域のこの辺りの森林は藩政時代から第二次世界大戦までは、付近に存在した鉱山の精銅製錬用木炭の供給地であり、その痕跡の炭窯跡が多く確認されているとのこと。また、戦争後は生活必需品の木炭や、戦災復旧のための木材供給地となってブナが伐られまくったらしいですよ。それがために藤琴森林軌道が開設されたというわけですね。
内板発見! ここは有名な世界遺産で有名な白神山地であるのに、探索時にはオフバイクはおろか、すれ違う四輪の姿もないまま、ひっそりとしたダートを進んでいくと、やがて現在地の記された「白神山地イラストマップ」の案内板がありました。ちなみに世界遺産地域は核心地域と緩衝地域とに区分されているのですが、案内板によれば粕毛林道の通るこの辺りはそのどちらにも含まれていないらしいです。同じ白神山地には違いないですが、世界遺産地域ではないので林道にハイカーや観光客の姿が全くないのも納得でした。
→ 案内板を眺める!
ったー、大開林道発見! 白神山地イラストマップ案内板を過ぎてしばらくすると、斜め右手に分岐ダートの入口がありました。分岐の股の部分に木杭の林道標が立っており、それによって「大開林道」であることが判明! 粕毛林道での最初の支線林道分岐となりましたが、これは未だ序の口でしょう。この先には夥しい数の支線林道分岐が控えているんですよね。ここは帰りがけに探索調査することにして、まずは粕毛林道本線を進みます。
→ 林道標を眺める!
→ 大開林道の様子を眺める!
開林道分岐を過ぎると大きく角張った岩肌の露出した岩壁区間がありました。林道開設のさいに斜面を掘削してできたのでしょう。見上げている今この瞬間にガラガラッと崩れてきそうな危うさでしたが、荒々しい無骨な林道にはよく似合うシーンでもありますね。そしてよく眺めてみると崖上から清水が岩壁を濡らして滴っていましたよ。
→ 岩壁を見上げる!
して現れたのが「上兵次郎沢橋」です。その名の通り「上兵次郎沢」を跨ぐ橋でしたが、よく眺めてみると欄干部分に林鉄軌道の廃レールが使用されているのを発見! 粕毛林道の前身が「藤琴森林軌道粕毛線」なのは先述しましたが、その具体的な証拠を目にすることができた瞬間となりました。さすがかつての林鉄王国、秋田県の林道だけのことはあるな!
→ 上兵次郎沢を眺める!
→ 上兵次郎沢橋の欄干を眺める!
兵次郎沢を越えてどこまでも続く粕毛林道のフラットダート。素波里湖が建設されると林鉄軌道跡も水没しましたが、湖底に沈んだのは軌道だけではないらしいです。かつてこの辺りには「大開」集落があり、ダム建設によって昭和42(1967)年に全住民が離村、廃村となって現在は湖底に沈んでいるとのこと。そういうわけなので、かつてこの付近に「村」があったなんて粕毛林道探索中には全然気がつかなかったな〜。ちなみに林鉄軌道が廃止されたのは、大開集落が廃村される2年前の昭和40(1965)年のことだったそうですよ。
→ さらに粕毛林道を進む!
→ 探索中止!
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