① 事務所内において事業主が女性労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該女性労働者を解雇すること。
② 出張中の車中において上司が女性労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該女性労働者について不利益な配置転換をすること。
③ 営業所内において事業主が日頃から女性労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該女性労働者を降格すること。
① 事務所内において事業主が女性労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該女性労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。
② 同僚が取引先において女性労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該女性労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。
③ 女性労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該女性労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。
事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を明確化し、労働者に対してその方針の周知・啓発をすることについて配慮をしなければならない。
(事業主の方針の明確化及びその周知・啓発について配慮をしていると認められる例)
① 社内報、パンフレット等広報又は啓発のための資料等に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を記載し、配布すること。
② 服務上の規律を定めた文書に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を記載し、配布又は掲示すること。
③ 就業規則に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を規定すること。
④ 労働者に対して職場におけるセクシュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を実施すること。
なお、周知・啓発をするに当たっては、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要である。
(2) 相談・苦情への対応
事業主は、相談・苦情への対応のための窓口を明確にすることについて配慮をしなければならない。また、事業主は、相談・苦情に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応することについて配慮をしなければならない。
(相談・苦情への対応のための窓口を明確にすることについて配慮をしていると認められる例)
① 相談・苦情に対応する担当者をあらかじめ定めておくこと。
② 苦情処理制度を設けること。
(相談・苦情に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応することについて配慮をしていると認められる例)
① 相談・苦情を受けた場合、人事部門との連携等により円滑な対応を図ること。
② 相談・苦情を受けた場合、あらかじめ作成したマニュアルに基づき対応すること。
なお、事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、相談・苦情に対応することが必要である。
(3) 職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合において、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認することについて配慮をしなければならない。また、事業主は、その事案に適正に対処することについて配慮をしなければならない。
(事実関係を迅速かつ正確に確認することについて配慮をしていると認められる例)
① 相談・苦情に対応する担当者が事実関係の確認を行うこと。
② 人事部門が直接事実関係の確認を行うこと。
③ 相談・苦情に対応する担当者と連携を図りつつ、専門の委員会が事実関係の確認を行うこと。
(事案に適正に対処することについて配慮をしていると認められる例)
① 事案の内容や状況に応じ、配置転換等の雇用管理上の措置を講ずること。
② 就業規則に基づく措置を講ずること。