このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
鎌倉夢語り 〜 大姫 編 〜
〜 桜月 桜花と花の雲 〜
はじめに。
この物語の主な登場人物の年齢です。
大姫は、十歳。
海野小太郎幸氏は、十五歳。
熊谷次郎直実は、四十七歳。
以上を想定して書きました。
物語の世界へどうぞ・・・
今は春。
ここは、鎌倉。
桜の花が咲いている。
今日は青空が広がっている。
ここは、小御所。
大姫の部屋。
障子が開いている。
庭で咲く桜が見える。
桜の花の咲く小枝を挿した器が、縁の傍に置いてある。
大姫は桜を微笑んで見ている。
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ている。
大姫は海野小太郎幸氏を見ると、海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「小太郎。花の雲を見たくなったわ。良い場所を知っている?」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「小太郎。一緒に行きましょう。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、たくさんの桜の花の咲く場所。
大姫は微笑んで来た。
海野小太郎幸氏は微笑んで来た。
大姫は辺りを微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。
大姫は前を不機嫌に見た。
海野小太郎幸氏は前を不思議な様子で見た。
熊谷次郎直実が桜を普通の表情で見ている。
熊谷次郎直実は大姫と海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。
熊谷次郎直実は大姫と海野小太郎幸氏に普通の表情で軽く礼をした。
海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実に普通の表情で軽く礼をした。
大姫は海野小太郎幸氏と熊谷次郎直実を不機嫌に見た。
大姫は熊谷次郎直実に向かって不機嫌に歩き出した。
海野小太郎幸氏は僅かに慌てて歩き出した。
大姫は熊谷次郎直実の前に不機嫌に来た。
海野小太郎幸氏は僅かに慌てて来た。
熊谷次郎直実は大姫と海野小太郎幸氏に普通の表情で軽く礼をした。
大姫は熊谷次郎直実に不機嫌に話し出す。
「桜を観に来たの?」
熊谷次郎直実は大姫に普通の表情で軽く礼をした。
大姫は熊谷次郎直実に不機嫌に話し出す。
「流鏑馬の的立て役を拒否したのに、所領の一部のみの没収。お父様の家来で良かったわね。」
熊谷次郎直実は大姫に普通の表情で軽く礼をした。
大姫は熊谷次郎直実に不機嫌に話し出す。
「今の行動は、同意と考えて良いのね。」
熊谷次郎直実は大姫に普通の表情で軽く礼をした。
大姫は熊谷次郎直実に不機嫌に話し出す。
「目障りだわ。」
熊谷次郎直実は大姫に普通に話し出す。
「申し訳ありません。」
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「小太郎。小御所に戻るわ。」
熊谷次郎直実は大姫に普通に話し出す。
「私が直ぐに去ります。大姫様は桜を観てください。」
大姫は熊谷次郎直実を不機嫌に見た。
熊谷次郎直実は大姫と海野小太郎幸氏に普通の表情で軽く礼をした。
熊谷次郎直実は普通に居なくなった。
大姫は海野小太郎幸氏を不機嫌に見た。
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見た。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「偶然と考えて良いのかしら?」
海野小太郎幸氏は大姫に困惑して話し出す。
「はい。」
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「小太郎もお父様の家来になるのかしら。」
海野小太郎幸氏は大姫に困惑して話し出す。
「はい。」
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「小太郎は、義高様を逃がすために、義高様が小御所に居る工作をしたわ。お父様は小太郎の命を助けたわ。」
海野小太郎幸氏は大姫に困惑して話し出す。
「はい。」
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「お父様は、源氏の一族や源氏の一族に繋がる人物には、冷たい言動を取るけれど、家来や家来になる可能性のある人物には、篤い言動を取るわ。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見た。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「小太郎。私の今の話に同意しないの?」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「義高様。真澄。真澄の一族。義経様。お父様の命令に幾度も従ったのに、排除する方向になっているわ。小太郎と熊谷。お父様の命令に背いたのに、命を助けられたわ。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「お父様は優しさを与えられて命の助かった時があるわ。お父様は優しさを与えられた一族を追い落としたわ。お父様は優しさには恐ろしい面があると考えているわ。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「お父様に利益を与える人物には、優しさを与えて助けているわ。お父様に従う人物だとしても、お父様に危険を与える可能性のある人物は、追い落としているわ。家来はお父様に利益を与える人物だと考えているけれど、一族はお父様に利益を与える人物だと考えていないわ。結果、家臣には優しさを与えるけれど、一族には優しさを与えないか僅かな優しさしか与えないわ。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「小太郎はお父様の家来だから、命の危険がある内容に答えられないわよね。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「小太郎。義高様と一緒に花の雲が観たいわ。私の望みを叶えて。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。
大姫は海野小太郎幸氏に不機嫌に話し出す。
「小太郎。目障りだわ。帰る時まで離れていて。」
海野小太郎幸氏は大姫に困惑して軽く礼をした。
大姫は桜を不機嫌に見た。
海野小太郎幸氏は困惑して離れた。
大姫に陽が差した。
大姫は眩しい表情になった。
桜の花の咲く枝の間から、青空が見える。
大姫は桜と青空を悲しく見た。
大姫の瞳から涙がこぼれた。
大姫は桜と青空を見ながら、静かに泣いた。
翌日の事。
ここは、小御所。
縁。
海野小太郎幸氏は普通に歩いている。
熊谷次郎直実は普通に歩いている。
海野小太郎幸氏は普通に止まった。
熊谷次郎直実は普通に止まった。
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「お時間のある時に、話したいです。」
海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実に普通に話し出す。
「今ならば、話しが出来ます。昨日に会った場所で良いですか?」
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「はい。」
海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実を普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏は普通に居なくなった。
熊谷次郎直実も普通に居なくなった。
少し後の事。
ここは、たくさんの桜の花の咲く場所。
海野小太郎幸氏は普通に来た。
熊谷次郎直実も普通に来た。
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。
「大姫様は体調を悪くしていませんか?」
海野小太郎幸氏は熊谷次郎直に普通に話し出す。
「普段と同じです。」
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏も熊谷次郎直実を普通の表情で見た。
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「大姫様の話された昨日の内容。当たっていると思います。」
海野小太郎幸氏も熊谷次郎直実を普通の表情で見ている。
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「私は息子と同年齢の人物を逃がせないと諦めて討ちました。海野殿は同年齢の主人を守るために諦めない言動をとりました。言動の結果、相手は共に亡くなりましたが、主人の感じる印象は違います。」
海野小太郎幸氏も熊谷次郎直実を普通の表情で見ている。
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「海野殿は、大姫様のため、一族のため、返事はしないでください。」
海野小太郎幸氏も熊谷次郎直実を普通の表情で見ている。
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実に普通に話し出す。
「熊谷殿。お互いに仕える人物が居ます。お互いに一族が居ます。お互いに想う人物が居ます。」
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「はい。」
海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実に普通に話し出す。
「私は返事をしなくて良いのですか?」
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「私は、大姫様の話は当たっている、と話しました。今の海野殿の話に答えは要らないと思います。」
海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実を普通の表情で見た。
熊谷次郎直実は辺りを普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏も辺りを普通の表情で見た。
桜の花がたくさん咲いている。
熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏も熊谷次郎直実を普通の表情で見た。
数日後の事。
ここは、鎌倉。
散る桜の花が増えてきた。
ここは、小御所。
大姫の部屋。
桜の花の咲く小枝を挿した器が、縁の傍に置いてある。
大姫は桜を微笑んで見ている。
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ている。
大姫は桜を見ながら、海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「小太郎。桜の花。綺麗ね。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
大姫は桜を見ながら、海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「義高様と一緒に花の雲を見たかったわ。今年も叶わなかったわ。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見た。
大姫は桜を見ながら、海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「私は源氏の嫡流の姫だわ。お父様にとって私の利用価値は高いと思うの。私は義高様に逢えない日が続いているわ。私はお父様の与える僅かな優しさに感謝しないわ。お父様が私の望む優しさを与えた時に感謝するわ。」
海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。
大姫は海野小太郎幸氏を見ると、海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「小太郎。末永く付き合ってね。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫様が飽きるまでお供いたします。」
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「私は末永く飽きないわ。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「末永くお供いたします。」
大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏も大姫を微笑んで見た。
大姫は桜を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は大姫と桜を微笑んで見た。
すると、どこかから囁くような声が聞こえてきた。
「義高様・・・」
「鎌倉の桜の季節が少しずつ過ぎています・・・」
「小太郎は私と共に桜を見てくれます・・・」
「小太郎は私の傍にたくさん居てくれます・・・」
「義高様・・・」
「義高様と小太郎と私で、花の雲を見たいです・・・」
「義高様と小太郎と私で、花の雲を見ながら話したいです・・・」
「義高様・・・」
「私と小太郎は、花の雲の見られない季節が訪れても、鎌倉で待っています・・・」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
「一ノ谷の戦い(いちのたにのたたかい)」についてです。
「一の谷の戦い」とも書きます。
「治承・寿永の乱」(源平合戦)と呼ばれる戦いの中の一つです。
「寿永三年二月七日(1184年3月20日)」に起きた戦いです。
寿永三年二月七日に、源氏の軍は一ノ谷で戦う事を決めたようです。
「寿永三年二月四日〜二月六日(1184年3月17日〜19日)」に、源氏の軍は移動や前哨戦のような状況を続けます。
平家はこの戦いで大敗の結果となります。
一ノ谷の戦いは、源義経が「鵯越(ひよどりごえ)」を行った戦いとして知られています。
一ノ谷の戦いは、熊谷次郎直実と平敦盛の一騎打ちの話でも知られています。
一ノ谷の戦いの中で、熊谷次郎直実は平敦盛と一騎打ちをします。
熊谷次郎直実は平敦盛を勝ち討ち取ろうとしますが、少年という年齢(十六歳)(熊谷次郎直実の息子の熊谷直家と同じ年齢)、優しい性格をしている、などの理由から逃がそうとします。
しかし、逃がす事が出来ずに、熊谷次郎直実は平敦盛を泣く泣く討ち取ります。
この物語は「熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)」が登場します。
簡単ですが、説明します。
「熊谷直実(くまがいなおざね)」の名前でも知られています。
法名は「法力房 蓮生(ほうりきぼう れんせい)」です。
生没年は、元治元年二月十五日(1141年3月24日)〜承元二年十月二十五日(1207年12月4日)です。
熊谷直貞の次男として生まれました。
幼い時に父親の熊谷直貞が亡くなったので、母方の叔父の久下直光(くげなおみつ)の元で育ったそうです。
保元の乱では、源義朝の指揮下にいました。
平治の乱では、源義平の指揮下にいましたが、平治の乱の後は、平知盛に仕えたそうです。
源頼朝の挙兵の前は、平家側に属していました。
治承四年(1180年)の石橋山の戦いまでは、平家側に属していましたが、石橋山の戦い以降は、源頼朝に仕えるようになりました。
治承八年(1184年)の一ノ谷の戦いでは、源義経に従っていたそうです。
一ノ谷の戦いの中で、平敦盛と一騎打ちをします。
熊谷次郎直実は平敦盛を勝ち討ち取ろうとしますが、少年という年齢や優しい性格をしているなどの理由から逃がそうとします。
しかし、逃がす事が出来ずに、熊谷次郎直実は平敦盛を泣く泣く討ち取ります。
文治三年(1187年)八月四日に、鶴岡八幡宮の放生会で、流鏑馬の的立て役を命じられましたが、拒否したため、所領の一部を没収されたそうです。
建久三年(1192年)十一月に、久下直光と境界線問題で、源頼朝の前で口頭弁論をする事になったそうです。
質問責めにあった熊谷次郎直実は激怒したと伝えられています。
熊谷次郎直実は出家をしています。
出家をした理由は、平敦盛を討ち取ったため、境界線問題での口頭弁論での出来事のため、手柄を立てる事や人を騙す事に耐えられなくなった、などといわれています。
出家をした時期は幾つか説があるようです。
境界線問題の口頭弁論後で、息子の熊谷直家(くまがいなおいえ)に家督を譲った後に、出家をした可能性が高いようです。
建久六年(1195年)八月十日に、京から故郷に戻る途中に鎌倉に立ち寄ったそうです。
鎌倉では源頼朝と対面したそうです。
熊谷次郎直実は、勇ましい性格、口下手な性格などと伝わっているそうです。
この物語の時間設定についてです。
文治三年(1187年)八月の鶴岡八幡宮の放生会で流鏑馬の的立て役を拒否して所領の一部を没収された翌年の春を想定しています。
「鎌倉夢語り 大姫 編 桜月 桜人と桜花」の物語と重なる部分があります。
「桜花」についてです。
「さくらばな」と「おうか」の読み方があります。
「さくらばな」と「おうか」では、意味が少し違います。
「さくらばな」と読むと「桜の花」と「(枕詞)桜の花のように美しく栄える意味から、“栄え少女(をとめ)”にかかる」になります。
「おうか」と読むと「桜の花」(春の季語)になります。
「花の雲(はなのくも)」についてです。
「桜の花が一面に満開になるさまを、雲に見立てていう語。」です。
春の季語です。
「桜月(さくらづき)」についてです。
「陰暦三月の異称」です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
←前
目次
次→
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |