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鎌倉夢語り ~ 大姫 編 ~


~ 夢見月 花冷えの頃 桜人の想い ~


はじめに。

この物語の主な登場人物の年齢です。

大姫は、十六歳。

海野小太郎幸氏は、二十一歳。

以上を想定して書きました。




物語の世界へどうぞ・・・




今は晩春。



ここは、鎌倉。



桜花が咲いている。



寒さを感じる時間は少なくなっている。

温かさを感じる時間が増えている。



今日は花冷えになっている。



ここは、小御所。



庭。



桜花が咲いている。



大姫の部屋。



大姫は微笑んで居る。

海野小太郎幸氏も微笑んで居る。



大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。庭に咲く桜の花を近くで見ましょう。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「今日は花冷えのように思います。部屋から桜を見ましょう。」

大姫は海野小太郎幸氏に拗ねて話し出す。

「明日も花冷えならば、部屋から桜を見るの? 花冷えが続いたら、部屋から庭の桜を見る日が続くの? 桜の花の見頃は短いのよ。花冷えが続いたら、桜を近くで見る前に、桜の花が散る可能性があるのね。」

海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「良く考えてみました。庭の桜を見るならば、寒さを感じた時は、部屋に直ぐに戻れます。庭に咲く桜の花を近くで見られます。」

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「私は、義高様を想いながら、小御所の庭の桜を見たかったの。私は、小太郎の傍で、義高様を想いながら、桜を見たかったの。小太郎は私の気持ちが分からなかったのね。物凄く残念だわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を申し訳なく見た。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「義高様は小太郎を物凄く信頼していたわ。小太郎は命を掛けて義高様を逃がした人物の一人よね。小太郎の立場ならば、普通は、切腹の沙汰が下るか、斬首の沙汰が下るわ。お父様の真意は分からないけれど、小太郎は忠義者の評価を受けて、お父様の部下として働くようになったわ。小太郎は、お父様に仕え始めてからは、義高様への想いを忘れる時間が増えたのね。」

海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見た。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「小太郎は、お父様の部下であって、私の部下ではないわ。小太郎は私の希望を叶える義務は無いわね。忘れていたわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見ている。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「小太郎。目触りだわ。部屋から出て行って。」

海野小太郎幸氏は大姫に困惑して軽く礼をした。

大姫は海野小太郎幸氏を僅かに不機嫌に見た。



海野小太郎幸氏は部屋から困惑して出て行った。



暫く後の事。



ここは、小御所。



大姫の部屋の前に在る庭。



桜花が咲いている。



大姫は桜を寂しい表情で見ている。



僅かに寒さを感じる風が微かに吹いた。



桜の花びらが僅かに舞い始めた。



大姫は桜の花びらの舞う様子を微笑んで見た。



寒さを感じる風が吹いた。



桜の花びらが僅かに舞い始めた。



大姫は目を閉じて僅かに震えた。



大姫の横から、海野小太郎幸氏の心配な声が聞こえた。

「大姫様。大丈夫ですか?」



大姫は目を開けると、横を不思議な様子で見た。



海野小太郎幸氏は大姫を心配して見ている。



大姫は海野小太郎幸氏を見ながら寂しく息をはいた。

海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「大姫様。辛いですか?」

大姫は海野小太郎幸氏に寂しく話し出す。

「寂しいわ。辛いわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見た。

大姫は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「お父様に私の様子の確認を頼まれたの? お母様に私の様子の確認を頼まれたの?」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様の部屋に行く途中で、大姫様が庭に居る姿を見ました。今日は花冷えです。大姫様が無理をしていないか心配になりました。私の考えで、大姫様の様子を確認したいと思いました。」

大姫は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「小太郎。私の様子を確認する理由は分かったわ。私の部屋に行く理由を教えて。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様が花冷えの中で意地になって桜を見るように思いました。心配になりました。大姫様の意地になる気持ちを静められるのは、私のみです。以上が、大姫様の部屋を訪ねる理由です。」

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに呆れて話し出す。

「小太郎。物凄い自信を感じる話の内容ね。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「義高様は私を義高様の身内と同等に信頼してくださいました。義高様は私に相談する時が幾度もありました。義高様は私の意見を尊重してくださいました。大姫様も私を大姫様の身内と同等に信頼してくださっていると思っています。」

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに呆れて話し出す。

「小太郎。今の話の内容も物凄い自信を感じるわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は桜を寂しい表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見た。

大姫は桜を見ながら、海野小太郎幸氏に寂しく話し出す。

「小太郎。義高様は鎌倉を出る前に、小太郎に相談したの? 小太郎は義高様に鎌倉を出るように勧めたの? 義高様は小太郎の返事のとおりの言動をしたの?」

海野小太郎幸氏は大姫に申し訳なく礼をした。

大姫は海野小太郎幸氏を寂しい表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に申し訳なく礼をしている。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「今の小太郎の一番大事な人物は、お父様だったわね。小太郎は小御所の敷地内で答えられない内容ね。」

海野小太郎幸氏は大姫を普通の表情で見た。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。今の話は忘れて。」

海野小太郎幸氏は大姫を普通の表情で見ている。

大姫は海野小太郎幸氏を不思議な様子で見た。

海野小太郎幸氏は大姫の手を普通の表情で握った。

大姫は海野小太郎幸氏を不思議な様子で見ている。

海野小太郎幸氏は大姫の手を放すと、大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。今日は花冷えです。無理をせずに、部屋に戻りましょう。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。



大姫は微笑んで居なくなった。

海野小太郎幸氏も微笑んで居なくなった。



僅かに後の事。



ここは、小御所。



大姫の部屋。



大姫は部屋の中に微笑んで入ってきた。

海野小太郎幸氏は部屋の中に微笑んで入ってきた。



海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。体を温める意味を兼ねて、侍女に床の用意を頼みます。」

大姫は海野小太郎幸氏に苦笑して話し出す。

「床の用意を早い時間に頼むと、お母様が驚いて部屋に来るわ。お母様が騒ぐと、落ち着かないわ。本当に体調が悪くなりそう。遠慮するわ。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。明日は、花冷えになったとしても、小御所の庭の桜を見ましょう。明日の楽しみのために、今日は再び外で桜を見ないでくださいね。明日の楽しみのために、今夜の夜桜を見て寝る時間が遅くならないでくださいね。お願いします。」

大姫は海野小太郎幸氏に苦笑して話し出す。

「分かったわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫も海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は大姫を不思議様子で見た。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。今夜、早く寝るために、頼みたい内容があるの。良いかしら?」

海野小太郎幸氏は大姫に不思議な様子で話し出す。

「はい。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。私が寝るまで傍に居て。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。幼い頃と違います。政子様が了承しないと思います。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「お母様は、義高様が鎌倉から居なくなってから、私に甘いわ。知っているわよね。」

海野小太郎幸氏は大姫を苦笑して見た。

大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。



暫く後の事。



夜になっている。



ここは、鎌倉。



夜空に星が輝いている。



花冷えは続いている。



ここは、小御所。



大姫の部屋。



大姫は床の中で静かに寝ている。

海野小太郎幸氏は微笑んで居る。



海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで小さい声で話し出す。

「大姫様。小御所内でも答えられる場所と時間を見付けました。一部の内容ですが、答えます。」

大姫は床の中で静かに寝ている。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで小さい声で話し出す。

「大姫様。義高様も、私も、義高様が鎌倉を出る決断をするまで、物凄く悩みました。私は義高様と幾つかの約束を交わしました。私は義高様と交わした約束を守るために、生き続けています。」

大姫は床の中で静かに寝ている。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。



すると、どこかから囁くような声が聞こえてきた。

「義高様・・・」

「桜の花の咲く頃は、温かさを感じる時が増えますが、寒さを感じる時もあります・・・」

「小太郎に質問する時があります・・・」

「小太郎は質問に答えない時があります・・・」

「小太郎が桜の花の咲く中で私の質問に答えなかった理由は何でしょうか・・・?」

「義高様が質問したならば、小太郎は答えたのでしょうか・・・?」

「義高様と話したい想いが募ります・・・」

「義高様に逢いたい想いが募ります・・・」

「義高様・・・」

「私と小太郎は、花冷えに包まれる鎌倉で、義高様に逢える日を待っています・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「花冷え(はなびえ)」についてです。

「桜が咲く頃の、一時的な冷え込み。(春の季語)」です。

「桜花」についてです。

「さくらばな」と「おうか」の読み方があります。

「さくらばな」の読み方と「おうか」の読み方では、意味が少し違います。

「さくらばな」と読むと、「桜の花」と「(枕詞)桜の花のように美しく栄える意味から、“栄え少女(をとめ)”にかかる」になります。

「おうか」と読むと、「桜の花」(春の季語)になります。

「桜人(さくらびと)」についてです。

「桜を愛でる人」です。

春の季語です。

「夢見月(ゆめみづき)」についてです。

「陰暦三月の異称」です。

春の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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