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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 番外編 〜


〜 夢現 岩煙草と岩絡の咲く頃 〜


物語を始める前に。

簡単になりますが、今回の物語に登場する神社やお店などの説明をします。

「鶴岡八幡宮」

鎌倉に在ります。

「若宮大路」・「段葛」を歩くと鶴岡八幡宮の鳥居の前に来ます。

現在の境内には、池や美術館や有名な大銀杏などが在ります。

一部の施設は、大姫や源義高や海野小太郎幸氏の時代に在った八幡様です。

「大銀杏」、「源氏池」、「平家池」は、大姫達の時代には在りました。

「岩船地蔵堂」

この地蔵堂には30cm前後のお地蔵様が祀られているそうです。

このお地蔵様は大姫の守り本尊といわれています。

一説には、大姫の妹の三幡姫の守り本尊ともいわれているそうです。

いつから在るのか確認は取れませんでしたが、いろいろな点から考えると、源義高の死後に造られたと思われます。

2005年頃から数年ほど前に、外装の立替がありました。

「東慶寺」

北鎌倉に在ります。

「縁切り寺」・「駆け込み寺」として有名です。

江戸時代に、妻が「東慶寺」に駆け込み、三年ほど在住すると離縁が出来たそうです。

江戸中期以降は、「東慶寺」と上州に在る寺に限られたそうです。

明治時代になってからは、女性からも離縁が出来るようになったので、「縁切り寺」の制度は廃止されたそうです。

1285年(弘安八年)の創建と言われています。

元は尼寺でしたが、現在(平成)は違います。

JRでの最寄り駅は、「北鎌倉駅」です。

「物語に登場するお店や施設」

2008年6月の状況で書いています。

「補足」

2008年6月時点の状況で物語を書いたので、掲載時には状況が変わっている可能性があります。


では、本文へどうぞ。




*      *      *      *      *      *




今は平成と呼ばれる時代。


季節は夏。


ここは、鎌倉。


雨の降る時間や曇空の時間が多くなっている。

蒸し暑さを感じるようになってきた。


たくさんの観光客で賑わっている。


ここは、岩船地蔵堂。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏が居る。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「義高様。小太郎殿。三人で岩煙草と岩絡を見に行きたいです。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「岩煙草と岩絡といえば、北鎌倉の東慶寺ですね。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「はい。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「岩煙草と岩絡は同時期に見頃を迎えますね。両方の咲き具合の確認が必要ですね。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「東慶寺では、岩煙草は見頃で、岩絡は見頃に近いです。東慶寺では、岩絡は日付と時間を限定して見られるそうです。」

海野小太郎幸氏は大姫と源義高に微笑んで話し出す。

「私達の姿は普通の方には見えませんが、出掛ける曜日や時間に気を付けないといけませんね。」

源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「岩絡は額紫陽花に似ているよな。岩絡を綺麗に見るならば、雨の降る中や雨上がりだな。」

大姫は源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。

源義高は海野小太郎幸氏に普通の表情で囁いた。

「天気を気にしたために、岩煙草と岩絡が見られなくなると、大姫が落ち込む可能性が高いな。」

海野小太郎幸氏は源義高を苦笑した表情で見た。

源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「俺達の姿は普通の人達には見えない。休日になると込むはずだ。今日は平日だ。出掛けるのは今日が良いな。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様! ありがとうございます!」

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。

源義高は大姫と海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。


大姫は笑顔のまま、静かに居なくなった。

源義高は普通の表情のまま、静かに居なくなった。

海野小太郎幸氏は微笑んだまま、静かに居なくなった。


それから僅かに後の事。


ここは、北鎌倉。


東慶寺。


今日は平日なので、休日と比べると参拝客は少ない。


ここは、境内。


紫陽花や花菖蒲などの季節の花がたくさん咲いている。


大姫は笑顔のまま、静かに現れた。

源義高は普通の表情のまま、静かに現れた。

海野小太郎幸氏は普通の表情のまま、静かに現れた。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 岩煙草を見ましょう!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫。岩絡は時間限定と話していただろ。岩絡を先に見よう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。


大姫は源義高の手を握ると、笑顔で歩き出した。

源義高は普通に歩き出した。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を見ながら、微笑んで歩き出した。


それから僅かに後の事。


ここは、東慶寺。


境内。


岩絡の咲く場所。


岩絡が斜面を壁のように覆っている。


大姫は源義高の手を握りながら、笑顔で来た。

源義高は普通に来た。

海野小太郎幸氏は微笑んで来た。


大姫は源義高の手を握りながら、岩絡を笑顔で見た。

源義高は岩絡を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は岩絡を微笑んで見た。

大姫は源義高の手を握りながら、源義高と海野小太郎幸氏を見ると、笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 岩絡の花がたくさん咲いて、白色の壁のように見えます! 岩絡から甘い香りがします!」

源義高は岩絡を見ながら、普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫を見ると、微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高の手を握りながら、源義高と海野小太郎幸氏を笑顔で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高に微笑んで話し出す。

「東慶寺の白い壁のように見える岩絡は、一本で繋がっているそうです。」

大姫は源義高の手を握りながら、海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「一本で繋がっているのですね! 凄いですね!」

源義高は岩絡を見ながら、普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高の手を握りながら、岩絡を笑顔で見た。

源義高は岩絡を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は、大姫、源義高、岩絡みを、微笑んで見た。


辺りに風が吹いた。


岩絡が微かに揺れた。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏の元に、甘い香りが僅かに強まって届いた。


大姫は源義高の手を握りながら、源義高と海野小太郎幸氏を見ると、笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 岩絡が風に揺れて綺麗です! 甘い香りが少し強くなりました!」

源義高は岩絡を見ながら、普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高の手を握りながら、源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 次は岩煙草を見ましょう!」

源義高は大姫を見ると、普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。


大姫は源義高の手を握りながら、笑顔で歩き出した。

源義高は普通に歩き出した。

海野小太郎幸氏は微笑んで歩き出した。


それから僅かに後の事。


ここは、東慶寺。


境内。


岩煙草が咲く場所。


紫色の花と緑色の葉が壁のように覆っている。


大姫は源義高の手を握りながら、笑顔で来た。

源義高は普通に来た。

海野小太郎幸氏は微笑んで来た。


大姫は源義高の手を繋ぎながら、岩煙草を笑顔で見た。

源義高は岩煙草を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は岩煙草を微笑んで見た。

大姫は源義高の手を握りながら、源義高と海野小太郎幸氏を見ると、笑顔で話し出す。

「岩煙草の咲く中に小さなお地蔵様が在ります! お祈りします!」

源義高は大姫を見ると、普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫を見ると、微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高の手を放すと、小さなお地蔵様に微笑んで手を合わせた。

源義高は小さなお地蔵様に普通の表情で手を合わせた。

海野小太郎幸氏は小さなお地蔵様に微笑んで手を合わせた。


それから数日後の事。


ここは、鎌倉。


鶴岡八幡宮。


境内。


たくさんの参拝客で賑わっている。


二人の少年と一人の少女が、たくさんの参拝客の中に居る。


二人の少年の名前は、義孝と幸氏。

少女の名前は分からないが、義孝と幸氏と一緒に良く居る。


少女は境内を微笑んで見ている。

幸氏も境内を微笑んで見ている。

義孝は境内を普通の表情で見ている。


白鳩が空へと向かって一斉に飛んだ。


義孝は白鳩の飛ぶ様子を普通の表情で見た。

少女は白鳩の飛ぶ様子を微笑んで見た。

幸氏も白鳩の飛ぶ様子を微笑んで見た。


大姫の元気な声が、義孝の横から聞こえてきた。

「義孝お兄ちゃん! こんにちは!」


義孝は横を不思議そうに見た。


大姫は義孝を笑顔で見ている。


義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

大姫は義孝を微笑んで見た。

義孝は辺りを微笑んで見た。


幸氏と少女の姿だけでなく、参拝客の姿も関係者の姿も見えない。


大姫と義孝だけになっている。


義孝は辺りを不思議そうに見た。

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「北鎌倉に在る東慶寺で岩煙草と岩絡が綺麗に咲いています。岩絡は日付指定で更に時間指定です。早い内に出掛けた方が良いと思います。今から直ぐに出掛ければ、岩絡を見る時間に合います。」

義孝は大姫を見ると、微笑んで話し出す。

「良い情報を教えてくれてありがとう。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「いつもお世話になっているお礼です。」

義孝は大姫を微笑んで見た。

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「失礼します。」

義孝は大姫に微笑んで頷いた。


大姫は微笑んだまま、静かに居なくなった。


義孝は辺りを不思議そうに見た。


幸氏、少女、参拝客、関係者が、大姫が現れる直前と同じ状態で居る。


義孝は幸氏と少女を不思議そうに見た。

幸氏は義孝を見ると、不思議そうに話し出す。

「何か遭ったのか?」

義孝は幸氏に不思議そうに話し出す。

「姫ちゃんと会って、北鎌倉の東慶寺で、岩煙草と岩絡が綺麗に咲いていると聞いたんだ。岩絡は日付指定で更に時間限定だから、早く出掛けた方が良いと話していたんだ。」

少女は義孝と幸氏を見ると、微笑んで話し出す。

「東慶寺に岩煙草と岩絡を見に行きたい。」

幸氏は義孝と少女に微笑んで話し出す。

「姫ちゃんが教えてくれた良い情報だ。俺も東慶寺に行きたいな。」

義孝は幸氏と少女に不思議そうに話し出す。

「岩絡はどのような花なんだ?」

少女は義孝に微笑んで話し出す。

「額紫陽花に似ているわよ。」

義孝は少女を感心した様子で見た。

幸氏は義孝と少女に微笑んで話し出す。

「岩絡が見られる時間は、何時なのかな?」

義孝は少女に普通に話し出す。

「姫ちゃんは日付や時間についての説明はしなかったけれど、今から直ぐに出掛ければ間に合うと話していた。」

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「早く行きましょう!」

義孝は少女に微笑んで頷いた。

幸氏も少女に微笑んで頷いた。


少女は微笑みながら、僅かに早く歩きだした。

義孝は微笑みながら歩き出した。

幸氏も微笑みながら歩き出した。


すると切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「岩煙草と岩絡の咲く様子は綺麗でしたね・・・」

「義高様と小太郎と一緒に見られて嬉しかったです・・・」

「義高様と小太郎と一緒に見られて楽しかったです・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「あの日の不思議な出来事は、夢の中の出来事ですよね・・・」

「義高様も私と同じく夢の中の出来事だと思いますか・・・?」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「岩煙草(いわたばこ)」についてです。

イワタバコ科の多年草です。

山地の湿った岩壁に生えます。

岩煙草の葉が、煙草の葉に似ているところから付いた名前だそうです。

地域で開花時期に差がありますが、夏(五月〜八月頃)に掛けて紫色・赤紫色・白色の花が咲きます。

万葉集に岩煙草とされる説の花を詠んだ歌があります。

岩煙草はかなり古くから日本に咲く花だと思われます。

幾つかの県では、減少などにより絶滅の危険があると指定されています。

「岩絡(いわがらみ)」、または、「岩絡み(いわがらみ)」についてです。

今回の物語では「岩絡」で書きました。

ユキノシタ科の蔓性の落葉低木です。

山地に生えます。

気根を出して岩や他の木をよじ登って生育するそうです。

地域で開花時期に差がありますが、夏(五月〜八月頃)に白い小花が集まって咲きます。

見た目は額紫陽花に似ています。

額紫陽花はユキノシタ科アジサイ属で、岩絡はユキノシタ科イワガラミ属です。

同じユキノシタ科なので見た目が似ていても不思議ではないように思いました。

私が岩絡を見た時は甘い香りがしました。

「夢現(ゆめうつつ)」は、「夢と現実。夢とも現ともつかない状態。」という意味です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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