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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 番外編 〜


〜 夢現 秋 南瓜と菓子と前夜祭 〜


物語を始める前に、簡単になりますが、今回の物語に登場する神社やお店などの説明をします。

「鶴岡八幡宮」

鎌倉に在ります。

「若宮大路」・「段葛」を歩くと鶴岡八幡宮の鳥居の前に来ます。

大姫や源義高や海野小太郎幸氏の時代には在った八幡様です。

「大銀杏」、「源氏池」、「平家池」などの一部が、大姫達の時代には在りました。

現在の境内には、美術館なども在ります。

「段葛」

鎌倉の若宮大路の中央に在る一段高い参道です。

段葛を歩くと鶴岡八幡宮に来ます。

大姫の弟の万寿(後の源頼家)の安産祈願のために造られたそうです。

大姫が鎌倉に居る時代に造られた参道です。

「一ノ鳥居」は、由比ガ浜の傍に在ります。

「二ノ鳥居」は、鎌倉駅の近くに在ります。

「三ノ鳥居」は、鶴岡八幡宮の前に在ります。

現在は、「二ノ鳥居」から「三ノ鳥居」までの「段葛」が残っています。

「岩船地蔵堂」

この地蔵堂には30cm前後のお地蔵様が祀られているそうです。

このお地蔵様は大姫の守り本尊といわれています。

一説には、大姫の妹の三幡姫の守り本尊ともいわれているそうです。

いつから在るのか確認が取れませんでしたが、いろいろな点から考えると、源義高の死後に造られたと思われます。

2005年から数年ほど前に外装が建て替えられました。

「物語の中に会話だけで登場するお店」

2008年8月の時点で書いています。

状況が変わっている可能性があります。


では、物語の世界へどうぞ・・・




*      *      *      *      *      *




今は平成。


季節は秋。


ここは、鎌倉。


日中は寒さを感じる日が少ない。

過ごしやすい日が続いている。


たくさんの観光客で賑わっている。


ここは、段葛。


何人もの人達が歩いている

二人の少年と一人の少女も歩いている。


二人の少年は、義孝と幸氏。

少女の名前は分からないが、義孝と幸氏と良く一緒に居る。


少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「ハロウィンが近付いてきたわね。」

義孝は少女に普通の表情で頷いた。

幸氏は少女に微笑んで頷いた。

少女は義孝に不思議そうに話し出す。

「楽しくないの?」

義孝は少女に普通に話し出す。

「近所ではハロウィンのお菓子をもらうために家を巡る風習はない。俺はハロウィンのお菓子をもらう年齢ではない。親がハロウィンの日に、南瓜を使った料理と南瓜を使ったお菓子を用意すると話していた。南瓜を使った料理と南瓜を使ったお菓子は楽しみだが、他は普通になる。」

幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「俺の家もハロウィンの当日は、南瓜を使ったお菓子を用意するんだ。俺も義孝と同じく、お菓子と料理は楽しみだけど、他は普通だな。」

少女は義孝と幸氏を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、鶴岡八幡宮。


境内。


大銀杏の傍。


大銀杏は黄色ではなく緑色の葉を繁らせている。


本来ならば参拝客や関係者が居るはずだが、人の姿がない。

たくさんの鳩だけが居る。


大姫は境内を不思議そうに見ている。


大姫は境内を見ながら、不思議そうに呟いた。

「姫は、義高様の部屋に行って、義高様と小太郎殿が居ないから部屋で待っていました。眠くなったので横になりました。姫はなぜ鶴岡八幡宮に居るのでしょうか? 不思議です。鶴岡八幡宮の境内の様子がいつもと違います。不思議です。」


鳩が一斉に空へと飛び立った。


大姫は鳩を不思議そうに見た。


鳩は青空と白い雲の中を飛んでいる。


大姫は空と鳩を見ながら、微笑んで呟いた。

「綺麗です。」


義孝の穏やかな声が、大姫の横から聞こえてきた。

「綺麗だね。」


大姫は横を不思議そうに見た。


義孝は大姫を微笑んで見ている。


大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。こんにちは。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「義孝お兄ちゃん。今日は一人ですか?」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「三人で鶴岡八幡宮に着たんだ。鳩が一斉に飛び立ったんだ。鳩が空を飛ぶ姿を見て、二人に話そうとしたら、二人の姿は見えないし、他の人達の姿も見えなくなっていたんだ。不思議に思いながら境内を見ていたら、姫ちゃんの声が聞こえたんだ。」

大姫は義孝を不思議そうに見た。

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。一人で来たの?」

大姫は義孝に不思議そうに話し出す。

「眠くなったので、部屋で横になりました。気付いたら、鶴岡八幡宮に居ました。」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「夢のような話だね。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「はい。」

義孝は大姫を微笑んで見た。

大姫も義孝を微笑んで見た。

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。ハロウィンが近付いているよね。姫ちゃんと義高君と小太郎君は、お菓子をもらうために近所を巡ったり、家に南瓜などで作った飾り物を飾ったり、南瓜を使ったお菓子を食べたりするのかな?」

大姫は義孝に不思議そうに話し出す。

「“はろうぃん”とは何ですか? “かぼちゃ”とは何ですか?」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「ハロウィンは、10月31日に行なう外国のお祭りだよ。何年前まで遡るか分からないけれど、日本でもハロウィンを行なうようになったんだ。南瓜は、外側は濃い緑色で中身は黄色の野菜の名前だよ。」

大姫は義孝に不思議そうに話し出す。

「姫は、“はろうぃん”のお祭りに参加した経験も、“かぼちゃ”を食べた経験も、ないと思います。」

義孝は何かを思い出した表情になった。

大姫は義孝を不思議そうに見た。

義孝は背負っていたリュックサックを下ろすと、小さな包みを微笑んで取り出した。

大姫は義孝を不思議そうに見ている。

義孝は小さな包みを微笑んで広げた。


包みの中には、南瓜のお饅頭が入っていた。


大姫は小さな包みを見ると、義孝に微笑んで話し出す。

「美味しそうなお菓子ですね。」

義孝は小さな包みを持ちながら、大姫に微笑んで話し出す。

「南瓜のお饅頭だよ。良かったら食べて。」

大姫は義孝に不思議そうに話し出す。

「大切なお菓子を頂いても良いのですか?」

義孝は小さな包みを持ちながら、大姫に微笑んで頷いた。

大姫は義孝に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

義孝は小さな包みを持ちながら、大姫を微笑んで見た。

大姫は南瓜のお饅頭を笑顔で取った。

義孝は大姫を微笑んで見た。

大姫は南瓜のお饅頭を美味しく食べ始めた。

義孝は小さな包みを閉じると、リュックサックに微笑んで仕舞った。

大姫は南瓜のお饅頭を笑顔で食べ終わった。

義孝は大姫を微笑んで見た。

大姫は義孝に笑顔で話し出す。

「ごちそうさまでした! “かぼちゃのおまんじゅう”は美味しかったです!」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「喜んでもらえて嬉しいよ。」

大姫は義孝を笑顔で見た。

義孝は大姫を微笑んで見た。

大姫は境内を不思議そうに見た。

義孝は大姫を不思議そうに見た。

大姫は義孝を見ると、笑顔で話し出す。

「姫について話す声が聞こえました!」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。またね。」

大姫は義孝に笑顔で話し出す。

「はい!」

義孝は大姫を微笑んで見た。


大姫は大銀杏の方向に向かって、笑顔で走り出した。


義孝は大姫を微笑んで見た。


大姫の姿は静かに見えなくなった。


義孝は境内を不思議そうに見た。


たくさん鳩が境内に次々に舞い降りている。

参拝客と関係者の姿は、先程と同じ場所に居る。


少女の穏やかな声が、義孝の横から聞こえてきた。

「義孝さん。鶴岡八幡宮のお参りが終わったから、次は岩船地蔵堂に行きましょう。」

幸氏の不思議そうな声が、義孝の横から聞こえてきた。

「義孝。何か遭ったのか?」


義孝は横を不思議そうに見た。


少女は義孝を不思議そうに見ている。

幸氏も義孝を不思議そうに見ている。


義孝は幸氏と少女に不思議そうに話し出す。

「偶然に姫ちゃんと逢って話したんだ。姫ちゃんにハロウィンと南瓜について話したら、知らないと返事をしたんだ。南瓜のお饅頭を買ったのを思い出して、姫ちゃんにあげたんだ。姫ちゃんは南瓜のお饅頭を美味しいと笑顔で言ったんだ。姫ちゃんは話が終わると、元気良く走りながら去って行ったんだ。」

少女は義孝に不思議そうに話し出す。

「姫ちゃんに、岩船地蔵堂でお参りをするために買った南瓜のお饅頭をあげたの?」

義孝は少女に普通に話し出す。

「普通はお参り用のお菓子を人にあげる気持ちにならないよね。姫ちゃんを見ていたら、理由は分からないけれど、南瓜のお饅頭を食べて欲しいと思ったんだ。」

幸氏は義孝に微笑んで話し出す。

「俺も姫ちゃんを見ていて、義孝と同じ気持ちを何度も抱いた。不思議だな。」

少女は義孝と幸氏に不思議そうに話し出す。

「私は姫ちゃんに一度も逢っていないけれど、義孝さんと幸氏さんの気持ちは分かるわ。」

義孝は少女を微笑んで見た。

幸氏も少女を微笑んで見た。

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「南瓜のお饅頭を買いに行ってから岩船地蔵堂に行きましょう。」

義孝は少女に微笑んで頷いた。

幸氏も少女に微笑んで頷いた。


時は戻る。


今は、平成の人達が鎌倉時代と呼ぶ頃。


ここは、小御所。


源義高の部屋。


大姫は横になり気持ち良く寝ている。

源義高は大姫を普通の表情で見ている。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ている。


海野小太郎幸氏は大姫を見ながら、源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様は気持ち良く寝ていますね。」

源義高は大姫を見ながら、普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。

源義高は大姫を見ながら、海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫の寝言に何度も登場する“はろうぃん”と“かぼちゃ”とは何かな?」

海野小太郎幸氏は源義高を見ると、源義高に不思議そうに話し出す。

「大姫様は“かぼちゃ”と“かぼちゃのおまんじゅう”の言葉の後に、美味しいと何度も話しています。“かぼちゃ”は食べ物の名前かと思います。」

源義高は大姫を見ながら、海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「“はろうぃん”の言葉の後に美味しいと言わないな。“はろうぃん”は食べ物の名前ではないらしいな。」

海野小太郎幸氏は源義高に不思議そうに話し出す。

「はい。」

源義高は大姫を見ながら、海野小太郎幸氏に不思議そうに話し出す。

「大姫は“はろうぃん”も“かぼちゃ”も完全に理解していないようだな。大姫が起きた後に質問しても、分からないと返事をするだろうな。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「これからは寒さを感じる時が増えていくと思う。大姫が俺達の居ない間に部屋に来て寝てしまったために体調を崩されると困る。暫くの間は、大姫の様子に気を配ろう。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く例をした。

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫が起きた後も元気ならば、鶴岡八幡宮の大銀杏を見ようと誘う。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様は喜ばれると思います。」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「“かぼちゃのおまんじゅう”は美味しかったです・・・」

「義高様と小太郎にも“かぼちゃのおまんじゅう”を食べて欲しかったです・・・」

「義高様と小太郎と“はろうぃん”というお祭りに参加したいです・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「私は夢の中の出来事を話しているのでしょうか・・・?」

「私は現の中の出来事を話しているのでしょうか・・・?」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「ハロウィン(Halloween)」についてです。

キリスト教の聖人の祝日の「万聖節(ばんせいせつ)」の前夜祭を言います。

「万聖節」は「11月1日」なので、「ハロウィン」は「10月31日」になります。

古代ヨーロッパのケルト人の収穫感謝祭がキリスト教に取り入れられ、現在の「ハロウィン」になったとされているそうです。

ケルト人の一年の終わりは、10月31日で、この夜は死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てきたりすると信じられていたそうです。

これらから身を守るために仮面を被り、魔除けの焚き火を焚いたそうです。

これにちなみ、31日の夜に、南瓜をくり貫いて作った「ジャック・オー・ランタン(お化けカボチャ)(jack−o‘−lantern)」に蝋燭を立て、魔女やお化けに仮装した子供達が「Trick or Treat(“お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ”という意味で使用されています)」と唱えて近くの家を一軒ずつ訪ねます。

家庭では、南瓜のお菓子を作り、子供達はもらったお菓子を持ち寄り、ハロウィン・パーティーを開いたりするそうです。

「万聖節」は、「総聖人の日」ともいうそうです。

キリスト教で、全ての聖人の恩恵を預かる日だそうです。

「南瓜(かぼちゃ)」についてです。

ウリ科です。

花は夏の季語で、実は秋の季語です。

日本古来の野菜ではなく、安土・桃山時代、または、室町時代の末期頃に、日本に渡来したといわれています。

「饅頭(まんじゅう)」についてです。

お饅頭そのものは、中国でかなり古くから作られていたそうです。

日本にお饅頭が渡来したのは、鎌倉時代末頃から室町時代と言われています。

今回の物語の舞台は、大姫、源義高、海野小太郎幸氏の生きていた時代の鎌倉と平成時代の鎌倉のため、平成時代の暦と当時の暦の二つが存在しています。

今回の物語は、現在の暦の10月31日が「ハロウィン」当日です。

大姫、源義高、海野小太郎幸氏達は、南瓜やお饅頭の存在を知っている可能性はありますが実物は見ていない可能性が高いです。

「夢現(ゆめうつつ)」は、「夢と現実。夢とも現ともつかない状態。」という意味です。

「夢現」を分けると、「夢(ゆめ)」と「現(うつつ)」になります。

「現」は、「現実」という意味があり、「夢」に対して良く使われる言葉です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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