このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 番外編 〜


〜 夢現 仲秋 江の島 海へ続く階段通り 〜


物語を始める前に。

簡単になりますが、今回の物語に登場する神社やお店などを説明します。

「岩船地蔵堂」

この地蔵堂には30cm前後のお地蔵様が祀られているそうです。

一般的には大姫の守り本尊として知られています。

一説には、大姫の妹の三幡姫の守り本尊があるそうです。

いつから在るか確認が取れませんでしたが、いろいろな点から考えると、源義高の死後に造られたと思われます。

2005年頃から数年ほど前に、外装の立替がありました。

「江の島」

藤沢市に在ります。

周囲が約4kmで標高が約60mメートルの陸繋島です。

神奈川県指定の史跡名勝となっています。

鎌倉時代以前より、江の島の全体が聖域として扱われて信仰の対象となっていたそうです。

源頼朝が弁財天を勧請するなど、鎌倉時代も信仰の対象となっていたそうです。

徳川家康も江の島を参拝した事があるそうです。

江戸時代になると、家内安全などの祈願のために、たくさんの人達が江の島を参拝したそうです。

現在のガイドブックや昔の文献などを含めると、「江ノ島」、「江の島」、「江之島」、「江乃島」、「江之嶋」、「江乃嶋」など、他にもたくさんの記載があるそうです。

今回の物語は「江の島」で書きます。

江ノ電の最寄り駅は、「江ノ島駅」です。

「稚児ヶ淵」

江の島の南西端に在り、江の島岩屋の周辺に在ります。

隆起現象によって生まれた、幅約50mに渡る海食台地です。

鎌倉相承院の稚児の白菊と建長寺広徳院の修行僧の自休の悲恋物語が伝わる場所です。

沈む夕日と共に見る富士山が素晴らしい事から「かながわの景勝50選」に選ばれています。

「江の島岩屋」

江の島の最奥部に在ります。

長い歳月を経て波の侵食で出来た自然の岩屋です。

現在も侵食中の場所があるそうです。

古くから信仰の対象として親しまれてきました。

源頼朝が奥州の藤原秀衡の征伐を祈願したと伝えられています。

江戸時代にもたくさんの人達が参拝に訪れています。

昭和時代に落石の危険などから閉鎖されていましたが、再開の要望を受けて修復などを行い、平成時代になってから再び訪れる事が出来るようになりました。

現地の案内で「岩屋」と記載されている事が多い、江の島で場所を尋ねる時に「岩屋」で通じる事が多いので、今回の物語では「岩屋」で書きました。

「江の島弁天橋」

江の島に橋が初めて架けられたのは、明治24年(1891年)だそうです。

当時は木造の橋だったために、台風などで何度も流失したそうです。

昭和24年(1949年)に、鉄筋を杭とした上部は木造の橋が架けられたそうです。

昭和28年(1953年)に、再び改修工事が行われたそうです。

橋を無料で渡る事が出来るようになったのは、昭和37年(1962年)だそうです。

「江の島弁天橋」は公募で決まった名称だそうです。

「江の島弁天橋」と平行で走る自動車専用道路は「江の島大橋」です。

「江ノ電」

鎌倉駅と藤沢駅を運行している電車です。

2〜4両ほどの車両で運行しています。

江ノ電が運行を開始したのは、明治35年(1902年)になります。

その当時は、藤沢から片瀬の間の運行だったそうです。

「会話のみ、または、舞台として登場する、物語の中のお店や施設」

2008年9月中旬の時点で書いています。

「補足」

2008年9月中旬の状況で物語を書きました。

掲載時、または、皆様がこの物語を読まれる時には、状況が変わっている可能性があります。


では、本文へどうぞ。




*      *      *      *      *      *




時は平成。


今は秋。


ここは、鎌倉。


日中は暑さを感じても、夜になると僅かに暑さが和らぐようになった。


海水浴の時季は終わっているが、観光客はたくさん訪れている。


ここは、岩船地蔵堂。


大姫は笑顔で居る。

源義高は普通に居る。

海野小太郎幸氏は微笑んで居る。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 姫は江の島に在る稚児ヶ淵に行きたいです!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「稚児ヶ淵に行くのなら、日没に合わせて行った方が良くないか?」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「私も稚児ヶ淵から夕日を見たいです。」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「分かりました! 姫は少し経ったら江の島に出掛けます! 義高様と小太郎殿は日没近くに来てください!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「一人で出掛けるのか?」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様と小太郎殿が日没近くに来るので、姫は一人で出掛ける訳ではありません!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「俺は出掛けると返事をしていないぞ。」

大姫は源義高を不思議そうに見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「私が大姫様にお供します。義高様は日没近くに来てください。」

源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「一人で日没まで待つのは暇だ。少し経ったら、三人で江の島に出掛けよう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。

源義高は大姫と海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。


それから少し後の事。


ここは、藤沢。


ここは、江ノ電の江ノ島駅。


藤沢駅に向かう江ノ電が到着した。


何人もの乗客が乗り降りをした。


降りた人達の中に、二人の少年と一人の少女が居る。


二人の少年の名前は、義孝と幸氏。

少女の名前は分からない。


江ノ電は藤沢駅に向かって出発した。


義孝、幸氏、少女を含めた降りた人達は、改札を通って居なくなった。


それから少し後の事。


ここは、江の島弁天橋。


たくさん人達が近歩いている。


義孝は江の島に向かって普通に歩いている。

幸氏も江の島に向かって普通に歩いている。

少女は江の島に向かって微笑んで歩いている。


少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「突然だけど、今回は稚児ヶ淵と岩屋に出掛けたいと思ったの。」

義孝は少女に普通に話し出す。

「本当に突然だな。」

少女は義孝を苦笑して見た。

義孝は少女に普通に話し出す。

「今日は岩屋の近くまで運航する船は休みだぞ。江の島を登って下りた後に、江の島を登って下りなければならないぞ。」

幸氏は義孝と少女に普通に話し出す。

「今日は暑さを感じる時があるから、水分補給と休憩に気を付ける必要があるな。」

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「義孝さん。幸氏さん。江の島で出掛けたい場所はある?」

義孝は少女に普通に話し出す。

「ない。」

幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「俺もないよ。」

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「今回は稚児ヶ淵と岩屋に出掛けましょう。」

幸氏は義孝を微笑んで見た。

義孝は幸氏と少女に普通の表情で頷いた。

少女は義孝と幸氏を微笑んで見た。


それから少し後の事。


ここは、江の島。


岩屋と稚児ヶ淵と頂上付近を繋ぐ参道。


平地部分は少なく、階段が多い。

両脇にはたくさんの店が並んでいる。


たくさんの人達が歩いている。


少女は岩屋と稚児ヶ淵へと微笑んで歩いている。

義孝は岩屋と稚児ヶ淵へと普通に歩いている。

幸氏は岩屋と稚児ヶ淵へと微笑んで歩いている。


少女は微笑んで立ち止まった。

幸氏は少女を見ながら、微笑んで立ち止まった。

義孝は少女を見ながら、普通に立ち止まった。


少女は微笑んで軽く息をはいた。

義孝は少女に普通に話し出す。

「疲れたのか?」

幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「行きに歩いた距離を自力で戻らなければないないだろ。今から戻る選択肢があるよ。」

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「大丈夫。」

義孝は少女に普通に話し出す。

「無理するな。」

少女は義孝に微笑んで頷いた。

義孝は少女を普通の表情で見た。

幸氏は少女を微笑んで見た。


少女は岩屋と稚児ヶ淵へと微笑んで歩き出した。

義孝は岩屋と稚児ヶ淵へと普通に歩き出した。

幸氏は岩屋と稚児ヶ淵へと微笑んで歩き出した。


それから暫く後の事。


ここは、岩屋と稚児ヶ淵と頂上付近を繋ぐ参道。


たくさんの人達が歩いている。


少女は頂上付近へとゆっくりと歩いている。

幸氏も頂上付近へとゆっくりと歩いている。

義孝も頂上付近へとゆっくりと歩いている。


少女は疲れを見せながら、ゆっくりと立ち止まった。

幸氏は少女を見ながら、ゆっくりと立ち止まった。

義孝も少女を見ながら、ゆっくりと立ち止まった。


少女は軽く息をはくと、義孝に疲れた様子で話し出す。

「上り階段が連続していたから、疲れが増した感じがするわ。」

義孝は少女に普通に話し出す。

「帰り道での辛い場所を通り過ぎて直ぐだから、疲れるのは分かるが、戻り始めたばかりだぞ。疲れたのならば、無理せずに休もう。」

少女は義孝に疲れて話し出す。

「戻り始めて直ぐだから、少し経ってから休むわ。」

幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「無理するなよ。」

少女は幸氏に微笑んで頷いた。


辺りに心地良い風が吹いた。


少女は気持ち良い表情になった。


蝉時雨が強まった。


少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出そうとした。


義孝と幸氏の姿が見えない。

参道を歩く人達の姿も見えない。


少女は辺りを不思議そうに見た。


海野小太郎幸氏の穏やかな声が、少女の横から聞こえてきた。

「お姉さん。こんにちは。」


少女は横を微笑んで見た。


海野小太郎幸氏は少女を微笑んで見ている。


少女は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎君。こんにちは。」

海野小太郎幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「岩屋と稚児ヶ淵に出掛けたのですね。」

少女は海野小太郎幸氏に不思議そうに話し出す。

「なぜ分かったの?」

海野小太郎幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「この参道は、岩屋と稚児ヶ淵に続いています。お姉さんの様子から、岩屋と稚児ヶ淵を見て楽しんで、頂上付近に向かう最中と想像しました。」

少女は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「お姉さん疲れた様子に見えます。大丈夫ですか?」

少女は海野小太郎幸氏に苦笑して話し出す。

「大丈夫よ。」

海野小太郎幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「一番の暑さは過ぎましたが、休憩や水分補給には気を付けてくださいね。」

少女は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「気を遣ってくれてありがとう。」

海野小太郎幸氏は少女を微笑んで見た。

少女は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎君はこれから岩屋と稚児ヶ淵に出掛けるの?」

海野小太郎幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「これから稚児ヶ淵に出掛けます。」

少女は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「気を付けてね。」

海野小太郎幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「はい。」

少女は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は少女に微笑んで軽く礼をした。


海野小太郎幸氏は微笑んで、静かに居なくなった。


少女は辺りを不思議そうに見た。


辺りに心地良い風が吹いた。


義孝は少女を不思議そうに見ている。

幸氏も少女を不思議そうに見ている。

参道を歩く人達の姿が見える。


少女は義孝と幸氏を不思議そうに見た。

義孝は少女に普通に話し出す。

「調子が悪くなったのか?」

少女は義孝に微笑んで首を横に振った。

義孝は幸氏と少女に普通に話し出す。

「時間に余裕があるから、戻る途中に在る甘味屋か飲み物を販売する店で休もう。」

少女は義孝に微笑んで頷いた。

幸氏も義孝に微笑んで頷いた。

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「少し前に、小太郎君に会ったの。稚児ヶ淵に出掛けると話していたわ。」

幸氏は義孝と少女に微笑んで話し出す。

「姫ちゃんは幼いから、階段の続く参道を歩くのは大変だね。」

義孝は幸氏に普通に話し出す。

「姫ちゃんは鎌倉や江の島について詳しいから、この参道の特徴も知っていると思う。姫ちゃんが一人で出掛けなければ大丈夫だろ。」

幸氏は義孝に微笑んで頷いた。

義孝は幸氏と少女に普通に話し出す。

「戻ろう。」

幸氏は義孝に微笑んで頷いた。

少女も義孝に微笑んで頷いた。


義孝は頂上付近へと普通に歩き出した。

少女は頂上付近へと微笑んで歩き出した。

幸氏も頂上付近へと微笑んで歩き出した。


それから僅かに後の事。


ここは、岩屋と稚児ヶ淵と頂上付近を繋ぐ参道。


大姫は笑顔で居る。

源義高は普通の表情で居る。


海野小太郎幸氏は微笑んで、静かに現れた。


海野小太郎幸氏は源義高と大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「小太郎! お帰りなさい!」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「稚児ヶ淵まで歩いて行きたいです! 帰りも歩きたいです!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「疲れるぞ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「大丈夫です!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「帰りに疲れたと言っても背負わないぞ。」

大姫は源義高を苦笑して見た。

源義高は大姫に普通に話し出す。

「歩きは、行きだけにしよう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。


大姫は稚児ヶ淵へと笑顔で歩き出した。

源義高は稚児ヶ淵へと普通に歩き出した。

海野小太郎幸氏は稚児ヶ淵へと微笑んで歩き出した。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「稚児ヶ淵から見る景色は綺麗でしたね・・・」

「夕日を見る前に岩船地蔵堂に戻ったので、残念に思いました・・・」

「稚児ヶ淵から夕日を見るために再び出掛けたいです・・・」

「ねえ、義高様・・・」

「今回の出来事は、夢の中の出来事なのでしょうか・・・?」

「それとも、現の中の出来事なのでしょうか・・・?」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

今回の物語の舞台は、平成時代の鎌倉と江ノ島です。

岩屋や稚児ヶ淵などが在る江ノ島の反対側へは、基本的には車で行けないため、船か徒歩になります。

徒歩の場合は、江ノ島到着→上道登る→頂上→岩屋通り下る→岩屋と稚児ヶ淵→岩屋通り登る→頂上→上道下る→元の場所に戻る、このような行程で観光する方が多いです。

今回の物語に登場する参道は「岩屋通り」を参考にしました。

「岩屋通り」は、奥津宮と江の島岩屋を繋ぐ参道です。

「蝉時雨(せみしぐれ)」は「多くの蝉が一斉に鳴きたてる声を時雨の降る音に見立てた言葉」です。

夏の季語です。

「仲秋(ちゅうしゅう)」は「秋の三ヶ月の真ん中という意味から“陰暦八月の異称”」です。

秋の季語です。

「夢現(ゆめうつつ)」は「夢と現実。夢とも現ともつかない状態。」の意味です。

「夢現」を分けると「夢(ゆめ)」と「現(うつつ)」になります。

「現」は「現実」の意味があります。

「現」は「夢」に対して良く使われる言葉です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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