このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 番外編 〜
〜 夢現 蜜柑の香り 大姫の薔薇の香り 〜
物語を始める前に。
簡単になりますが、今回の物語に登場する神社やお店などを説明します。
「岩船地蔵堂」
この地蔵堂には30cm前後のお地蔵様が祀られているそうです。
大姫の守り本尊として知られています。
一説には、大姫の妹の三幡姫の守り本尊ともいわれているそうです。
いつから在るのか確認は取れませんでしたが、源義高の死後に造られたと思われます。
2005年頃から数年ほど前に、新しい外装に建て替えられました。
「鎌倉文学館」
江ノ電の「由比ヶ浜駅」から歩いて8分〜10分ほどで着きます。
前田侯爵の鎌倉別邸を文学館として開館したそうです。
鎌倉の縁の作家、鎌倉縁の地の物語などの作品を展示しています。
大姫や源義高や海野小太郎幸氏の時代には無い施設です。
「江ノ電」
鎌倉駅と藤沢駅の間を走る路線の事を言います。
単線の場所や電車内や駅から海が見えるなど、いろいろな風景が楽しめます。
「補足」
2008年10月下旬〜11月上旬の状況で物語を書いているため、掲載時や物語を読まれている時には状況が変わっている可能性があります。
物語の世界へどうぞ・・・
* * * * * *
時は平成。
季節は秋。
ここは、鎌倉。
日中は過ごしやすいが、陽が落ちると寒さを感じるようになった。
一年を通じてたくさんの人達で賑わっている。
岩船地蔵堂。
源義高は不思議な様子で居る。
海野小太郎幸氏は微笑んで居る。
源義高は海野小太郎幸氏に不思議な様子で話し出す。
「小太郎。大姫は何処に居る?」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「鎌倉文学館に、大姫様の名前の薔薇を観に行きました。」
源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「大姫の供をしなかったのか?」
海野小太郎幸氏は源義高に申し訳なく話し出す。
「大姫様にお供をすると話しました。大姫様は一人で出掛けると話しました。大姫様はお一人で出掛けました。」
源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「大姫が一人で出掛けると話したのだろ。小太郎が申し訳なく思う理由は無い。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。
源義高は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
大姫は微笑みんで、静かに現れた。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「義高様! 小太郎殿! ただいまです!」
源義高は大姫を見ると、大姫に普通の表情で頷いた。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
源義高は大姫に普通に話し出す。
「大姫。同じ名前の薔薇の花は咲いていないだろ。」
大姫は源義高に微笑んで話し出す。
「つぼみでした。」
源義高は大姫に普通に話し出す。
「大姫。秋も間も、大姫の同じ名前の薔薇の花を、毎日のように確認も兼ねて観に行く予定なのか?」
大姫は源義高に微笑んで話し出す。
「薔薇の花は観る度に違う姿です。毎日は無理かも知れませんが、出来るだけ観に行きたいです。」
源義高は大姫を普通の表情で見た。
大姫は源義高を微笑んで見た。
源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫様。私も義高様も、秋に咲く大姫様と同じ名前の薔薇の花の咲く姿を観たいです。義高様と私も、一緒に出掛けて良いですか?」
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「分かりました。薔薇の花が咲き始めたら報告します。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
源義高は大姫に普通の表情で頷いた。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏を笑顔で見た。
翌日の事。
ここは、鎌倉。
江ノ電の由比ヶ浜駅。
藤沢駅行きの江ノ電が到着した。
幾人かの乗客が江ノ電から降りた。
乗客達の中に、二人の少年と一人の少女が居る。
二人の少年の名前は、義孝と幸氏。
少女の名前は分からないが、義孝と幸氏と良く一緒に居る。
幾人かの乗客が江ノ電に乗った。
江ノ電は藤沢駅へと向かって出発した。
少し後の事。
ここは、鎌倉。
鎌倉文学館。
庭園。
薔薇園。
幾人かの姿が見える。
義孝の姿、幸氏の姿、少女の姿も見える。
薔薇の“大姫”が咲く場所。
少女は微笑んで来た。
義孝は普通に来た。
幸氏は微笑んで来た。
薔薇の“大姫”は、つぼみが僅かに膨らんでいる。
少女は薔薇の“大姫”を残念な様子で観た。
義孝は薔薇の“大姫”を普通の表情で観た。
幸氏は薔薇の“大姫”を観ながら、義孝と少女に普通に話し出す。
「今回も薔薇の咲く姿が観られなかった。」
少女は幸氏を見ると、幸氏に残念な様子で頷いた。
幸氏は少女に微笑んで話し出す。
「“大姫”の名前の薔薇は、二番花が観られるかも知れない薔薇だよね。」
少女は幸氏に残念な様子で頷いた。
義孝は幸氏と少女を見ると、幸氏と少女に普通に話し出す。
「枝は剪定して直ぐの様子だ。二番花が観られるのは、少し先になるかな?」
少女は義孝に残念な様子で頷いた。
幸氏は少女に微笑んで話し出す。
「薔薇の咲き具合の確認も兼ねて、鎌倉文学館に再び来よう。」
少女は幸氏に微笑んで頷いた。
義孝は幸氏と少女に普通に話し出す。
「薔薇を観た後は、特別展示を観よう。」
少女は義孝に微笑んで頷いた。
幸氏も義孝に微笑んで頷いた。
義孝は幸氏と少女を普通の表情で見た。
少女は薔薇を微笑んで観た。
義孝は薔薇を普通の表情で観た。
幸氏は薔薇を微笑んで観た。
翌日の事。
ここは、鎌倉。
岩船地蔵堂。
義孝は普通に居る。
幸氏は微笑んで居る。
少女も微笑んで居る。
少女はナップザックから蜜柑を微笑んで出した。
義孝はナップザックから蜜柑を普通に出した。
幸氏はナップザックから蜜柑を微笑んで出した。
少女は蜜柑を岩船地蔵堂に置くと、微笑んでお参りを始めた。
義孝は蜜柑を岩船地蔵堂に置くと、普通の表情でお参りを始めた。
幸氏は蜜柑を岩船地蔵堂に置くと、微笑んでお参りを始めた。
僅かに後の事。
ここは、鎌倉。
岩船地蔵堂。
少女は微笑んでお参りを終えた。
義孝は普通の表情でお参りを終えた。
幸氏は微笑んでお参りを終えた。
少女は蜜柑をナップザックに微笑んで仕舞った。
義孝は蜜柑をナップザックに普通に仕舞った。
幸氏は蜜柑をナップザックに微笑んで仕舞った。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「義孝さん。幸氏さん。蜜柑を一緒に用意してくれてありがとう。」
義孝は少女に普通の表情で頷いた。
幸氏は少女に微笑んで話し出す。
「蜜柑の美味しい季節が始まったよね。蜜柑をたくさん食べて欲しいと思う気持ちは分かる。」
義孝は幸氏に普通の表情で頷いた。
少女は義孝と幸氏を微笑んで見た。
義孝は空を普通の表情で見た。
青空の中を白い雲がゆっくりと動く姿が見える。
義孝は幸氏と少女を普通の表情で見ようとした。
幸氏の姿が見えない。
少女の姿も見えない。
義孝は辺りを不思議な様子で見た。
義孝の横から、大姫の元気の良い声が聞こえた。
「義孝お兄ちゃん! こんにちは!」
義孝は横を微笑んで見た。
大姫がたくさんの蜜柑を笑顔で抱えている。
義孝は大姫に微笑んで話し出す。
「姫ちゃん。こんにちは。蜜柑をたくさん抱えているね。」
大姫はたくさんの笑顔の蜜柑を抱えて、義孝に笑顔で話し出す。
「義孝お兄ちゃん、幸氏お兄ちゃん、お姉ちゃんから、もらった蜜柑です! 早くお礼を伝えたくて来ました。」
義孝は大姫を不思議な様子で見た。
大姫はたくさんの蜜柑を抱えて、義孝に笑顔で話し出す。
「姫の姿を見掛けたら、声を掛けてください! 再びたくさん話してください!」
義孝は大姫に微笑んで頷いた。
大姫はたくさんの蜜柑を笑顔で抱えて、静かに居なくなった。
義孝は辺りを不思議な様子で見た。
義孝の横から、幸氏の不思議な様子の声が聞こえた。
「義孝。何か遭ったのか?」
義孝は横を不思議な様子で見た。
幸氏は義孝を不思議な様子で見ている。
少女も義孝を不思議な様子で見ている。
義孝は幸氏と少女に不思議な様子で話し出す。
「蜜柑をたくさん抱えた姫ちゃんに逢った。姫ちゃんは俺達に蜜柑のお礼を言った。」
幸氏は義孝に微笑んで話し出す。
「姫ちゃんも偶然に蜜柑をたくさんもらって、俺達が関係していると思ったのかな?」
少女は幸氏に不思議な様子で頷いた。
義孝は幸氏と少女を不思議な様子で見ながら考えた。
幸氏は義孝に不思議な様子で話し出す。
「義孝。俺は姫ちゃんの姿を見なかった。姫ちゃんは何処に居たのかな?」
少女も義孝に不思議な様子で話し出す。
「私は、義孝さんの姿と幸氏さんの姿の他は、見なかったわ。」
義孝は幸氏と少女に不思議な様子で話し出す。
「姫ちゃんは、蜜柑のお礼、再び逢ったら声を掛けてほしい、たくさん話したい、などと話すと、突然に姿が見えなくなった。」
幸氏は義孝を不思議な様子で見た。
少女は義孝に微笑んで話し出す。
「姫ちゃんは、笑顔で話して、過ぎに姿が見えなくなる。義孝さんの話を聞くと、姫ちゃんは何時も元気に感じるわ。」
幸氏は少女に微笑んで頷いた。
義孝は少女を微笑んで見た。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「義孝さん。幸氏さん。行きましょう。」
義孝は少女に微笑んで頷いた。
幸氏も少女に微笑んで頷いた。
少女は微笑んで歩き出した。
幸氏も微笑んで歩き出した。
義孝は普通に歩き出した。
僅かに後の事。
ここは、鎌倉。
岩船地蔵堂。
大姫は笑顔で居る。
源義高は普通に居る。
海野小太郎幸氏は微笑んで居る。
大姫の前、源義高の前、海野小太郎幸氏の前には、たくさんの蜜柑が置いてある。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏の前に蜜柑を置くと、源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「三人共に同じ数の蜜柑が分けられました!」
源義高は大姫に普通の表情で頷いた。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「いただきます!」
源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「いただきます。」
海野小太郎幸氏は大姫と源義高に微笑んで話し出す。
「いただきます。」
大姫は蜜柑を取ると、笑顔で美味しく食べ始めた。
源義高は蜜柑を取ると、普通の表情で食べ始めた。
海野小太郎幸氏は蜜柑を取ると、微笑んで食べ始めた。
大姫は蜜柑を食べながら、源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「美味しいです!」
海野小太郎幸氏は蜜柑を食べながら、大姫に微笑んで軽く礼をした。
源義高は蜜柑を食べながら、大姫に普通の表情で頷いた。
海野小太郎幸氏は蜜柑を食べるのを止めると、大姫と源義高に微笑んで話し出す。
「近い内に蜜柑湯を用意する話があるそうです。楽しみですね。」
源義高は蜜柑を食べながら、海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。
大姫は蜜柑を食べながら、海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「はい!」
源義高は蜜柑を食べながら、大姫と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「蜜柑の数は少ないが、蜜柑の皮を乾かして、蜜柑湯を楽しもう。」
大姫は蜜柑を食べながら、源義高に笑顔で話し出す。
「はい!」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。
源義高は蜜柑を食べながら、大姫と海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
すると、切ない声が聞こえてきた。
「ねぇ、義高様・・・」
「私と同じ名前の花が咲く季節になりましたね・・・」
「橘の美味しい季節になりましたね・・・」
「橘を使ったお風呂の楽しみな季節になりましたね・・・」
「義高様も私と同じ気持ちですよね・・・」
「現の中の出来事に感じるけれど、夢の中の出来事ですよね・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
大姫、源義高、海野小太郎幸氏は登場しますが、物語の舞台は平成時代です。
「蜜柑(みかん)」についてです。
万葉集に「橘(たちばな)」が登場します。
橘はミカン科常緑小高木です。
「日本たちばな、または、ミカン科の総称」と考えられています。
「日本たちばな」は、日本産です。
六月頃に小さい白い花が咲き、秋から冬頃に小さい実が成るそうです。
実は熟しても酸味や苦味が強いために食用にはしていないそうです。
古事記では、橘は「非時香果(ときじくのみ)」とされているそうです。
「非時香果」とは、いつまでも香り高い果実という意味だそうです。
「橘」の実には、尊い生命力が宿ると信じられていたようです。
大姫達の生きていた頃には、現在のような蜜柑ではありませんが、橘は有った事になります。
江戸時代の末期には、既に蜜柑を食べていました。
現在は、蜜柑と言うと「温州みかん(うんしゅうみかん)」を想像する方が多いと思います。
江戸時代は「紀州みかん(きしゅうみかん)」の方が良く食べられていたようです。
最初は蜜柑というと「紀州みかん」を想像したり差したりしていたそうです。
「温州みかん」は後から作られた蜜柑になります。
当初の「温州みかん」は余り広まらなかったようです。
「蜜柑湯(みかんゆ)」についてです。
日陰干しした蜜柑の皮を布袋に入れて、浴槽に浸してお風呂に入ります。
現在の一般的な浴槽では、20個前後の皮があると良いそうです。
血行が良くなり、保湿効果があるそうです。
蜜柑の皮の成分によって美肌効果もあるといわれているそうです。
「薔薇(ばら)」について簡単に説明します。
「浜茄子(はまなす)」、「浜茄子(はまなす)」、「野茨[“野薔薇”とも書く](のいばら)」など、日本には古くから咲くバラは有ります。
「野茨(のいばら)」を詠んだ歌を万葉集に掲載しています。
現在の私達が良く見る姿のバラは、大姫達の時代よりかなり後に造られています。
大姫達もごく一部の種類のバラは見られた事になります。
「大姫(おおひめ)」の名前のバラがあります。
「大姫」をイメージして作出して名付けられたバラだそうです。
2008年に登録された新しいバラです。
明るい赤色で微香のあるバラだそうです。
「大姫」は二番花を見る事が出来るかも知れない薔薇だそうです。
「夢現(ゆめうつつ)」についてです。
「夢と現実。夢とも現ともつかない状態。」という意味です。
「夢現」を分けると、「夢(ゆめ)」と「現(うつつ)」になります。
「現」は「現実」という意味があります。
「現」は「夢」に対して良く使われる言葉です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
←前
目次
次→
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |