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鎌倉夢語り ~ 大姫と源義高 番外編 ~


~ 夢現 梅雨明け頃に咲く花を楽しむ ~


物語を始める前に。

簡単になりますが、この物語に登場する神社やお店などを説明します。

「岩船地蔵堂」

この地蔵堂には30cm前後のお地蔵様が祀られているそうです。

このお地蔵様は大姫の守り本尊といわれています。

一説には、大姫の妹の三幡姫の守り本尊ともいわれているそうです。

いつから在るのかは確認が取れませんでした。

いろいろな点から考えると、源義高の死後に造られたと考える方が良いと思いました。

2005年頃から数年ほど前に、外装が建て替えられました。

「長谷寺」

鎌倉時代前から在るお寺だとされています。

天平八年(736年)の創建と伝わるそうです。

長谷寺というと観音様が有名です。

観音様の背景など、鎌倉時代やそれ以降に奉納された物もあります。

江ノ電の最寄り駅は「長谷」です。

「光則寺」

開基は、北条時頼の家臣の「宿屋光則(やどやみつのり)」です。

宿屋光則は邸を寺に改築します。

文永十一年(1274年)の創建といわれています。

現在の本堂は、慶安三年(1650年)に建てられたそうです。

江ノ電の最寄り駅は「長谷」です。

「補足」

2009年7月初旬の時点の状況で物語を書いたので、掲載時には状況が変わっている可能性があります。


本文へどうぞ。




*      *      *      *      *      *




今は平成と呼ぶ時代。


季節は夏。


ここは、鎌倉。


梅雨が終わりに近付く頃。


雨の降る時間や曇空の時間が多い。

蒸し暑さを感じるようになっている。


鎌倉はたくさんの観光客で賑わっている。


今日は、雨が降っては止んでと繰り返している。


岩船地蔵堂。


大姫は笑顔で居る。

源義高は普通に居る。

海野小太郎幸氏は微笑んで居る。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔に話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 花を見に行きましょう!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「花菖蒲の見頃と紫陽花の見頃は、終わっただろ。大姫の見たい花は何だ?」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「蓮の花が咲く姿を見ました! 槿の花が咲く姿を見ました! 桔梗の花が咲く姿を見ました! 義高様と小太郎殿と一緒に、たくさんの花を見たいです!」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「今日は雨が降って止んでと繰り返しています。訪れる方は少ないです。落ち着いて見られると思います。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「小太郎。俺達の姿が万が一に見えた時のための確認だ。今日の雨の降る具合ならば、雨が降った時に傘を差さなくても目立ち難いと思う。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫。小太郎。今から行こう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。


大姫は笑顔で、静かに居なくなった。

源義高は普通の表情で、静かに居なくなった。

海野小太郎幸氏は微笑んで、静かに居なくなった。


僅かに後の事。


ここは、長谷。


光則寺。


境内。


季節の花が咲いている。

木々の緑色の葉や緑色の草が見える。


大姫は笑顔で、静かに現れた。

源義高は普通の表情で、静かに現れた。

海野小太郎幸氏は微笑んで、静かに現れた。


大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様! 蓮の花が少しだけ咲いています! 既に散った蓮の花があります! 散りそうな蓮の花があります!」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は源義高を笑顔で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。


大姫は笑顔で歩き出した。

源義高は普通に歩き出した。

海野小太郎幸氏は微笑んで歩き出した。


僅かに後の事。


ここは、長谷。


光則寺。


境内。


大姫は笑顔で止まった。

源義高は普通に止まった。

海野小太郎幸氏は微笑んで止まった。


兎の姿に似た小さい花が咲いている。


説明に“兎苔”と書いてある。


大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様! とても小さい花が咲いています! 小さい兎のようです! 可愛いです!」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は兎苔の花を笑顔で見た。

源義高は海野小太郎幸氏に普通の表情で囁いた。

「大姫は、到着前に、蓮の花、槿の花、桔梗の花、について話した。今日の大姫は、兎苔の花に興味を持ったのか。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで囁いた。

「はい。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通の表情で囁いた。

「兎苔の花は梅雨の前後に咲くのか?」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで囁いた。

「育て方によるそうですが、幾つかの季節で花を楽しめるそうです。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通の表情で囁いた。

「鎌倉近辺では、紫陽花の見頃は多くの場所で終わり、蓮の花の見頃には早い。兎苔の花は、大姫の話すとおり可愛い。大姫は楽しんでいる。由とするか。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで囁いた。

「はい。」

大姫は源義高を笑顔で見た。

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 楽しいですね!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 長谷寺にも蓮の花が咲いています! 長谷寺に蓮の花を見に行きましょう!」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。


大姫は笑顔で、静かに居なくなった。

源義高は普通の表情で、静かに居なくなった。

海野小太郎幸氏は微笑んで、静かに居なくなった。


数日後の事。


早めの時間。


ここは、長谷。


落ち着いた雰囲気になっている。


曇り空が広がっている。


光則寺。


境内。


季節の花がたくさん咲いている。

木々の緑色の葉や緑色の草が見える。


二人の少年が居る。

一人の少女が居る。


二人の少年の名前は、義孝と幸氏。

少女の名前は分からないが、義孝と幸氏と一緒に良く居る。


少女は義孝と幸氏を見ると、義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「蓮の花の見頃には少し早いわね。槿の花は綺麗に咲いているわね。」

義孝は少女を見ると、少女に普通の表情で頷いた。

幸氏は少女を見ると、少女に微笑んで頷いた。

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「蓮の花は長谷寺にも咲いているわよね。見に行きましょう。」

義孝は少女に普通の表情で頷いた。

幸氏は少女に微笑んで頷いた。

義孝は空を普通の表情で見た。


曇空が広がっている。


義孝は横を普通の表情で見た。


幸氏の姿と少女の姿が、見えない。


義孝は境内を不思議な様子で見た。


幸氏の姿、少女の姿、境内に居た人物の姿が、見えない。


義孝は境内を不思議な様子で見ている。


義孝の横から、大姫の元気な声が聞こえた。

「義孝お兄ちゃん! おはようございます!」


義孝は横を微笑んで見た。


大姫は義孝を笑顔で見ている。


義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。おはよう。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「光則寺には、兎の姿に似た小さな花の咲く“兎苔”が見られます。」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「兎の姿に似た花が咲く“兎苔”。今の話を知ったら喜ぶと思う。」

大姫は義孝を微笑んで見た。

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。良い情報を教えてくれてありがとう。兎苔を見てから長谷寺に行くよ。」

大姫は義孝を微笑んで見た。

義孝は大姫を微笑んで見た。

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「義孝お兄ちゃん! さようなら!」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。さようなら。」


大姫は笑顔で、静かに居なくなった。


義孝は辺りを不思議な様子で見た。


義孝の横から、幸氏の不思議な様子の声が聞こえた。

「義孝。何か遭ったのか?」


義孝は横を不思議な様子で見た。


幸氏は義孝を不思議な様子で見ている。

少女も義孝を不思議そうに見ている。


義孝は幸氏と少女に不思議な様子で話し出す。

「近くに居たんだ。」

幸氏は義孝に不思議な様子で話し出す。

「俺は義孝の横に居たよ。」

少女は義孝に不思議な様子で話し出す。

「私は、義孝さんの横ではないけれど、義孝さんの直ぐ傍に居たわよ。」

義孝は幸氏と少女を不思議な様子で見た。

幸氏は義孝を不思議な様子で見た。

義孝は幸氏と少女に普通に話し出す。

「少し前に、姫ちゃんに逢ったんだ。姫ちゃんが光則寺で兎の姿に似た小さな花が咲く兎苔が見られると話していたんだ。」

少女は義孝に微笑んで話し出す。

「兎苔の花は、以前に写真で見たわ。兎苔は、花が兎の姿に似て可愛いけれど、食虫植物なのよね。」

義孝は少女に不思議な様子で話し出す。

「兎苔は食虫植物なんだ。」

少女は義孝に微笑んで頷いた。

幸氏は義孝と少女に微笑んで話し出す。

「蓮の花を見る時間は、早い時間が良いよね。兎苔を見た後に、長谷寺に行く予定が良いのかな?」

少女は幸氏を見ると、幸氏に微笑んで頷いた。

義孝は幸氏と少女を普通の表情で見た。

幸氏は義孝と少女を微笑んで見た。


僅かに後の事。


ここは、鎌倉。


岩船地蔵堂。


源義高は辺りを不思議な様子で見ている。

海野小太郎幸氏も辺りを不思議な様子で見ている。


大姫が笑顔で、静かに現れた。


海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

源義高は大姫を見ると、大姫に普通に話し出す。

「大姫。行くと言った直ぐ後に、居なくなった。何故だ?」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「蓮の花の咲き具合、槿の花の咲き具合、桔梗の花の咲く具合、兎苔の花の咲き具合を、確認していました!」

源義高は大姫に僅かに呆れて話し出す。

「行く直前に、花の咲き具合を確認しなくて良いだろ。」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を恥ずかしく見た。

源義高は大姫に普通に話し出す。

「見頃の花。綺麗に咲く花。見付かったのか?」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫。小太郎。今から行く。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通の表情で頷いた。


大姫は笑顔で、静かに居なくなった。

源義高は普通の表情で、静かに居なくなった。

海野小太郎幸氏は微笑んで、静かに居なくなった。


すると切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「梅雨明けが近付く頃も、鎌倉はたくさん花が咲いています・・・」

「義高様と小太郎と一緒に花を見る時は楽しいです・・・」

「義高様と小太郎と一緒に、鎌倉でずっと花を見られたら良いなと思っています・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「夢のような不思議な出来事を経験したように感じます・・・」

「現だけど不思議な出来事を経験したように感じます・・・」

「現の出来事ならば良いなと思っています・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「義高様も小太郎も、私と同じ想いだと良いなと思っています・・・」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「梅雨(つゆ)」についてです。

「ばいう」と読む事もあります。

「現在の暦で6月頃の長雨の時節、また、その時期に降る長雨」を差す事が多いです。

近年では、現在の暦で6月~7月と長雨が続く場所が増えています。

暦の上では雑節の「入梅(にゅうばい)(現在の暦で、6月10~11日)」が決まっていますが、実際には必ずしも一致していません。

「梅雨」も「入梅」も、夏の季語です。

「梅雨明け(つゆあけ)」についてです。

「梅雨が終わる事、また、その日」を言います。

気象学的には、現在の暦で7月中旬頃、陰暦では「夏至(げし)」の後の「庚(かのえ)の日」です。

「蓮(はす)」についてです。

スイレン科の水生の多年草です。

主に夏に咲きます。

季語は、花は夏、実は秋、です。

「槿(むくげ)」についてです。

アオイ科の落葉低木です。

花期は、現在の暦で、6~10月です。

秋の季語です。

「桔梗(ききょう)」についてです。

キキョウ科の多年草です。

花期は、現在の暦で、6月上旬~9月です。

「秋の七草」の一つです。

秋の季語です。

「兎苔(うさぎごけ)」についてです。

タヌキモ科の多年草です。

食虫植物です。

花がウサギのように見えるのが特徴です。

「夢現(ゆめうつつ)」についてです。

「夢と現実。夢とも現ともつかない状態。」という意味です。

「夢現」を分けると、「夢(ゆめ)」と「現(うつつ)」になります。

「現」は「現実」の意味があります。

「現」は「夢」に対して良く使われる言葉です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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