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〜 鎌倉夢語り 大姫と源義高 編 〜


〜 八重一重 逢うために 〜


〜 第三版 〜


今は春。


ここは、鎌倉。


青空の下で吹く風が心地良くなってきた。


ここは、春の花が咲く静かな場所。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏が居る。


大姫は前を指しながら、源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 姫が何度も話した桜です!」

源義高は大姫の指した方向を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫の指した方向を微笑んで見た。


一本の桜の木が在る。


源義高は大姫を見ると、普通に話し出す。

「珍しい桜なのに、誰も見に来ていないな。」

大姫は源義高を見ると、笑顔で話し出す。

「桜は満開になっていないから、訪れる人が少ないと思います! でも、桜が満開になっても、訪れる人は少ないです! 不思議な場所です!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。


大姫は桜へと笑顔で歩き出した。


源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。


源義高は桜へと普通に歩き出した。

海野小太郎幸氏は桜へと微笑んで歩き出した。


大姫は桜の傍に笑顔で来た。

源義高は桜の傍に普通に来た。

海野小太郎幸氏は桜の傍に微笑んで来た。


桜は、八重と一重が一本の木に咲いている。


海野小太郎幸氏は桜を不思議そうに見た。

源義高は桜を見ると、不思議そうに呟いた。

「八重と一重が一本の木に咲いている。不思議な桜だな。」

大姫は源義高を見ると、源義高に笑顔で話し出す。

「はい! 不思議な桜ですよね!」

海野小太郎幸氏は大姫を見ると、微笑んで話し出す。

「大姫様。桜の名前を教えて頂けますか?」

大姫は海野小太郎幸氏を見ると、笑顔で話し出す。

「“八重一重”です!」


八重と一重が一本の木に咲く桜の名前は、“八重一重”という。


源義高は八重一重を見ながら、普通の表情で呟いた。

「名前の通り、八重と一重が咲くんだ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

海野小太郎幸氏は八重一重を微笑んで見た。

大姫は八重一重を笑顔で見た。

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は八重一重を笑顔で見ている。

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫。もしもの話だが、俺と長く逢えなくなったらどうする?」

大姫は源義高を見ると、微笑んで話し出す。

「義高様。長く出掛けるのですか?」

源義高は大姫に微笑んで小さく首を横に振った。

大姫は源義高に不思議そうに話し出す。

「木曾へ戻るのですか?」

源義高は大姫に寂しく話し出す。

「木曾へ戻りたい。だが、木曾へ戻れない。」

大姫は源義高に不思議そうに話し出す。

「義高様は義仲様のご嫡男ですよね。義高様は義仲様の跡を継ぎますよね。」

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「俺は大姫の婿になるために、鎌倉に居る。俺は父上の跡を継ぐか分からない。木曾に戻る日が訪れるかも知れないが、跡を継ぐ以外の理由で木曾に戻るかも知れない。」

大姫は源義高を微笑んで見た。

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「俺が木曾に戻る時は、大姫と小太郎も一緒だ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様と小太郎殿と、木曾に行けるのですね! 楽しみです!」

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「姫は義高様が長く出掛ける用事があれば、鎌倉で待ちます!」

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫は鎌倉で待つんだ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい! 姫は伊豆の生まれですが、鎌倉は大好きです! 姫はずっと鎌倉に居たいです!」

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「僅か前に、大姫は、俺と小太郎と木曾へ行くのが楽しみと言っただろ。言った内容が矛盾しているぞ。」

大姫は源義高に不思議そうに話し出す。

「姫の話は矛盾していますか?」

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「俺と小太郎と木曾へ行くと、鎌倉には戻れないかも知れないぞ。大姫は分かって言ったのか?」

大姫は源義高を見ながら、真剣な表情で考え込んだ。

源義高は大姫を苦笑して見た。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様は長く出掛けても、姫を迎えに来てくれますよね! 姫は鎌倉と伊豆以外の場所をほとんど知りません! 義高様は、木曾と鎌倉以外の場所だと分からないかも知れませんよね! だから、姫は義高様を鎌倉で待ちます! 義高様が姫を迎えに来た時は、姫は義高様とどのような場所にも行きます!」

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫は海野小太郎幸氏を見ると、笑顔で話し出す。

「小太郎殿も一緒ですよ! 忘れないでくださいね!」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「承知しました。」

大姫は海野小太郎幸氏を笑顔で見た。

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。

源義高は大姫と海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を笑顔で見た。

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫は俺が迎えに来た時に逢いたい場所はあるのか?」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「桜の木の下で逢いたいです!」

源義高は大姫に不思議そうに話し出す。

「桜の咲く頃は限られている。逢う期間が限られるぞ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様と最初に逢ったのは、桜の木の下です! だから、義高様と次に逢う時も、桜の木の下で逢いたいです!」

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「桜の木はたくさん在るから、それでも良いか。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫は源義高を笑顔で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。

源義高は八重一重を真剣な表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。

源義高は大姫を微笑んで見ようとした。


大姫の姿が見えない。


源義高は辺りを不思議そうに見た。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏から少し離れた場所で、しゃがんで花を見ている。


源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。

源義高は大姫を見ながら、海野小太郎幸氏に静かに話し出す。

「小太郎。俺が本当に鎌倉から居なくなったら、大姫はどうするのかな?」

海野小太郎幸氏は大姫を見ながら、源義高に静かに話し出す。

「義高様のお命に危険が及ばなければ、鎌倉でずっとお待ちになると思います。」

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、静かに話し出す。

「もし俺の命に危険が及ぶ場合は、大姫はどうするのかな?」

海野小太郎幸氏は源義高を見ると、静かに話し出す。

「それでも大姫様は義高様をお待ちになると思います。」

源義高は海野小太郎幸氏に不思議そうに話し出す。

「大姫はそれでも俺を待つと思うのか?」

海野小太郎幸氏は源義高に静かに話し出す。

「義高様とのお約束です。大姫様に何が起きたとしても、大姫様のお気持ちが別な方に向いたとしても、義高様が迎えに来られる時をお待ちになると思います。そして、義高様が迎えに来られた時は、大姫様はどのような状況だとしても、大姫様は誰と過ごしていたとしても、義高様と共に一緒に行かれると思います。」

源義高は大姫を見ると、申し訳なく話し出す。

「大姫に申し訳ない内容を話したな。」

海野小太郎幸氏は源義高を心配して見た。

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、真剣な表情で話し出す。

「俺の身に何か起きた時に、小太郎が大姫の傍に居られる状況ならば、後を頼む。」

海野小太郎幸氏は源義高に真剣な表情で静かに話し出す。

「承知しました。」

源義高は海野小太郎幸氏に真剣な表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は源義高を真剣な表情で見た。

源義高は大姫を真剣な表情で見た。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏から少し離れた場所で、花をしゃがんで見ている。


源義高は大姫に笑顔で声を掛けた。

「大姫! 戻ってこい!」


大姫は立ち上がると、源義高と海野小太郎幸氏の元に笑顔で走り出した。


源義高は大姫を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏も大姫を微笑んで見た。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏の傍に笑顔で走ってきた。


源義高は大姫を微笑んで見ている。

海野小太郎幸氏も大姫を微笑んで見ている。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様! 八重一重には別名があります!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「別名を教えてくれ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「え〜と、別な呼び方は、あれっ?! 忘れてしまいました!」

源義高は大姫を不思議そうに見た。

大姫は源義高を見ながら、真剣な表情で考え込んだ。

源義高は大姫に呆れて話し出す。

「大姫。忘れる内容を話すな。」

大姫は源義高に申し訳なく話し出す。

「ごめんなさい。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「八重一重はもう直ぐ満開になるのだろ。八重一重が満開になった時に教えてくれ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「小御所に戻ろう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に手を差し出すと、源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 手を繋いで帰りたいです!」

源義高は大姫の手を普通の表情で握った。

海野小太郎幸氏は大姫の手を微笑んで握った。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を笑顔で見た。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏の手を握りながら、笑顔で歩き出した。

源義高は大姫の手を握りながら、普通に歩き出した。

海野小太郎幸氏は大姫の手を握りながら、微笑んで歩き出した。


すると切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「満開の八重一重は、とても綺麗です・・・」

「八重と一重が一緒に咲く姿は、とても不思議です・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「八重一重の別名を思い出しました・・・」

「義高様に早く伝えたいです・・・」

「義高様と八重一重を早く一緒に見たいです・・・」

「桜が咲いていなくて構いません・・・」

「葉桜でも構いません・・・」

「桜の葉が全て落ちていても構いません・・・」

「桜の木が朽ちていても構いません・・・」

「義高様に早く逢いたいです・・・」

「私はいつも鎌倉に居ます・・・」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は、既に掲載している物語の再改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

今回の物語に登場する「八重一重」は、実際に有る桜の木です。

桜の名前は、「八重一重」よりも、別な呼び名が知られているようです。

私が最初に知った時の名前は「八重一重」でした。

「八重一重」の別名は、「新撰組異聞外伝」の物語の題名に使用しました。

その関係で、今回は別名を伏せさせて頂きます。

「八重一重」は「大島桜」から生まれたと思われる桜です。

鎌倉時代には無い可能性の高そうな桜ですが、昔からある桜です。

江戸時代には見る事の出来た桜のようです。

今回は「大姫と源義高 番外編」ではなく「大姫戸源義高 編」で使用しました。

今回の物語の時間設定から、一ヶ月から一ヵ月半程後の日に、源義高は鎌倉を脱出すると思ってください。

源義高は父親の源義仲が討たれてから、自分の立場が日々複雑になっていきます。

源義高は、複雑な状況の中を鎌倉で過ごしますが、とうとう源義高を討つ命令がでてしまいました。

当時の大姫は、年齢の関係かも知れませんが、源義高の状況がしっかりと理解できていないように思いました。

その事が後の大姫に様々な面で影響をしていったようです。

実は、最初は満開の八重一重の下で話す場面を書こうと思いましたが止めました。

理由の中の一つに、いろいろな意味で、大姫と源義高と海野小太郎幸氏が満開の桜の木の下で話したい希望を持ち続けて欲しいと考えた事があります。

史実の中の大姫や源義高が、最後の頃に話した内容については不明だそうです。

様々な作家の方達が、いろいろな場面や内容を書いています。

当サイトは、時間設定が順番に進んでいません。

今回の物語の以降も続きます。

以上の点、ご了承ください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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