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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜
〜 運命の出逢い 木曾から鎌倉へと繋がって 〜
〜 改訂版 〜
鎌倉の源頼朝と木曾の源義仲は、源氏の一族だが争いをしていた。
今は、平家を倒し源氏の世とするために、源氏の一族同士で争いをしている時ではなかった。
鎌倉の源頼朝と木曾の源義仲は、争いを止める事となった。
源頼朝と源義仲の間で、いくつかの約束が交わされた。
その中の一つに、源頼朝の嫡女の大姫と源義仲の嫡男の源義高の縁談があった。
源頼朝は大姫の許婚として、源義高を鎌倉に迎えたいと申し出た。
源頼朝と源義仲を源氏での立場や力関係などを比較すると、源頼朝が上に位置してしまう。
婿より嫁の立場が上の縁談の場合、源頼朝が婿入り婚を申し出たら、源義仲は断る訳にはいかない。
源義仲にとって納得できる縁談ではないが、婿入り婚を断る理由がない。
源義仲は源頼朝からの縁談を受け入れるしかなかった。
源義仲にとって、嫡男の源義高を鎌倉に送り出す事は、人質を送った事と実質は同じだった。
源義仲の心中は悔しさで溢れていた。
大姫は六歳、源義高は十一歳という幼い年齢での縁談が整った。
今回の縁談が、表面上の事で終わるのか、事実となるのか、確実な事をわかる者は誰もいない。
源義高と大姫は、今回の縁談について、まだ何も知らない。
そんなある日の事。
ここは木曾に在る源義仲の屋敷。
源義仲は源義高を部屋に呼んだ。
源義高は源義仲の部屋の前に来ると、普通に声を掛ける。
「義高です。」
源義仲の普段と同じ声が部屋の中から聞こえてきた。
「入って良いぞ。」
源義高は部屋の中に向かって普通に声を掛ける。
「失礼します。」
障子を開けると、部屋の中へと入っていった。
源義高は源義仲の前に座った。
源義仲は源義高を見ると、悔しそうに話し出す。
「悔しい。本当に悔しい。」
源義高は源義仲を普通の表情で黙って見た。
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「義高と鎌倉の頼朝の娘との許婚が決まった。鎌倉側は、義高に頼朝の娘の許婚として鎌倉に来いと言っていた。」
源義高は源義仲を僅かに驚いた表情で見た。
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「嫡男である義高を鎌倉に渡すのは本当に悔しい。許婚と言うのは口先だけだ。鎌倉側では義高を人質として見ているはずだ。」
源義高は源義仲を僅かに驚いた表情で見ている。
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「理由はどうあれ、嫡流である頼朝の娘との縁談だ。何かの時には理由できるかも知れない。」
源義高は源義仲を僅かに驚いた表情で見ている。
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「私は何としてでも天下を取りたい。そのためには、義高の力が必要だ。」
源義高は源義仲を普通の表情で見た。
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「義高。今の話の意味がわかるな。」
源義高は源義仲に真剣な表情で話し出す。
「はい。」
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「義高。良く言った。さすが木曾の武士だ。」
源義高は源義仲に真剣な表情で話し出す。
「父上に褒めて頂き、とても嬉しいです。」
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「義高は木曾の武士だ。鎌倉に居ても、木曾の武士としての誇りを絶対に忘れるな。鎌倉の人間に情などを持つな。」
源義高は源義仲を真剣な表情で見た。
源義仲は源義高に悔しそうに話し出す。
「義高。今言った事を絶対に忘れるな。」
源義高は源義仲に真剣な表情で話し出す。
「はい。」
源義仲は源義高を悔しそうに見た。
源義高は源義仲に真剣な表情で軽く礼をすると、部屋を出て行った。
源義高は部屋を出ると、普通の表情で縁を歩き出そうとした。
海野小太郎幸氏が源義仲の部屋から少し離れた縁に、普通の表情で立っている姿が見えた。
源義高は普通の表情のまま、海野小太郎幸氏に向かって歩き出した。
源義高は海野小太郎幸氏の前に来ると、普通に話し出す。
「源頼殿の嫡女の許婚として鎌倉に行くそうだ。俺の将来は源氏の嫡流の婿という事になる。」
海野小太郎幸氏は源義高を僅かに驚いた表情で見た。
源義高は海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。
「小太郎。何て顔をしているんだよ。」
海野小太郎幸氏は源義高に困った様子で話し出す。
「申し訳ありません。」
源義高は海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。
「俺の供として鎌倉に行く事になるかも知れないぞ。俺の事より自分の事を心配した方が良いぞ。」
海野小太郎幸氏は源義高に普通に話し出す。
「その様なお話しがあれば、義高様と供に鎌倉に行きます。」
源義高は海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。
「本当に良いのか?」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「私の事は心配しないでください。義高様はご自分の事を一番にお考えください。」
源義高は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出そうとした。
少し離れた場所から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「小太郎〜」
海野小太郎幸氏と源義高は、声の聞こえた方向を同時に見た。
海野小太郎幸氏は源義高を見ると、微笑んで話し出す。
「父が呼んでいます。話の途中ですが、失礼させて頂いても良いですか?」
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。
海野小太郎幸氏は源義高に普通の表情で軽く礼をすると、父親の元へと向かって歩き出した。
源義高は普通の表情に戻ると、自分の部屋へと向かって縁を歩き出した。
それから何日か後の事。
木曾の夜空には綺麗な月が浮かんでいる。
源義高は庭に出ると、夜空を見上げた。
海野小太郎幸氏は源義高の傍に来ると、普通の表情で夜空を見上げた。
源義高は海野小太郎幸氏を見ると、普通に話し出す。
「綺麗な月だな。」
海野小太郎幸氏は源義高を見ると、微笑んで話し出す。
「はい。」
源義高は月を一瞥すると、海野小太郎幸氏を見て普通に話し出す。
「木曾から見る月は綺麗だな。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「はい。」
源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「鎌倉から見る月も綺麗なのかな?」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「鎌倉から見る月も綺麗だと良いですね。一緒に確認する事が出来て嬉しいです。」
源義高は海野小太郎幸氏を不思議そうに見た。
海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。
源義高は海野小太郎幸氏に真剣な表情で話し出す。
「本当に嬉しいのか? 俺は許婚という名目の人質のはずだ。父上と頼朝殿は、お互いに協力して源氏の再興をする気など最初から考えていないと思う。俺は、頼朝殿の嫡女の許婚として生き残るか、木曾の嫡男として生き残るか、それとも・・・」
海野小太郎幸氏は話を途中で止めた源義高を真剣な表情で見た。
源義高は海野小太郎幸氏に真剣な表情で話し出す。
「俺には何もわからない。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「私も何もわかりません。でも一つだけわかっている事があります。」
源義高は海野小太郎幸氏を不思議そうに見た。
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「私は義高様と供に鎌倉に行きます。義高様はお一人ではありません。」
源義高は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。
源義高と海野小太郎幸氏は、微笑んだ表情で月を見上げた。
源義高は海野小太郎幸氏を見ると、苦笑しながら話し出す。
「小太郎。頼朝殿の嫡女は六歳だって。話し相手にも遊び相手にもならないよな。どんな感じで接すれば良いのかな?」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「普通に接して良いのではないでしょうか?」
源義高は海野小太郎幸氏を苦笑しながら見た。
源義高が木曾から鎌倉に向かう日となった。
源義高と供の者達は、木曾から鎌倉へと向かって進み始めた。
ここは木曾の領内。
源義高は普通の表情で後ろを振り向いた。
海野小太郎幸氏は普通の表情で後ろを振り向いた。
源義高は海野小太郎幸氏を見ると、普通に話し出す。
「もう一度だけ木曾の森や木や花が見たくなった。」
海野小太郎幸氏は源義高を見ると、明るく話し出す。
「義高様! しんみりとしてはいけません! 木曾に戻ってきたら、森も木も花も嫌と言うほど見る事が出来ます! 許婚の姫様にも木曾の森や木や花を見てもらいましょう! 木曾の夜空に輝く月も見てもらいましょう! 鎌倉より綺麗だと言って驚くはずです!」
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「確かに小太郎の言う通りだな。木曾は一番良い場所だよな。鎌倉の姫を木曾に連れて来て、鎌倉より素敵で良い場所だと言わせよう。」
源義高と海野小太郎幸氏は、お互いを微笑んで見た。
源義高一行は、木曾から鎌倉へと向かって進み始めた。
「義高様〜!」
源義高の後ろから、大姫の元気の良い声が聞こえてくる。
源義高は普通の表情で後ろを振り向いた。
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「義高様! 月が綺麗です!」
源義高は大姫に普通に話し出す。
「今夜の月より、もっと綺麗な月を見られる場所があるぞ。」
大姫は源義高に笑顔で話し出そうとした。
源義高は海野小太郎幸氏を見ると、微笑んで話し出す。
「なっ、小太郎。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「はい。」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「綺麗な月が見られる場所はどこですか?!」
源義高は大姫に微笑んで話し出す。
「木曾。」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「木曾のどちらですか?!」
源義高は大姫に微笑んで話し出す。
「秘密。」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「姫と義高様が祝言を挙げたら、木曾に行きますよね! 三人で一緒に木曾の月を見る事が出来ますね! 楽しみですね!」
源義高は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫にも木曾の月を見て欲しいな。本当に綺麗なんだ。」
大姫が源義高に笑顔で話し出す。
「姫も楽しみです!」
源義高は微笑んで夜空を見上げた。
大姫が源義高に笑顔で話し出す。
「義高様! 月夜の下の芍薬も綺麗ですよ!」
源義高は大姫を不思議そうに見た。
大姫は庭に咲いている芍薬を笑顔で指した。
庭に咲いている芍薬は、月の光を受けて淡く輝いている。
源義高は芍薬を見ると、大姫に微笑んで話し出す。
「木曾に咲く芍薬は、もっと綺麗なんだ。月夜の下で咲く木曾の芍薬は、更に綺麗なんだ。」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「本当ですか?! 木曾の芍薬も見たいです! 月夜の下の芍薬も一緒に見ましょう!」
源義高は大姫を微笑んで見た。
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「楽しみです!」
源義高は微笑んで月を見上げた。
すると切ない声が聞こえてきた。
「ねぇ、義高様・・・」
「三人で木曾に咲く芍薬が見たいです・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
「三人で木曾の月が見たいです・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
「木曾から見る春の月は、どれくらい綺麗なのでしょうか・・・?」
「木曾から見る夏の月は、どれくらい綺麗なのでしょうか・・・?」
「木曾から見る秋の月は、どれくらい綺麗なのでしょうか・・・?」
「木曾から見る冬の月は、どれくらい綺麗なのでしょうか・・・?」
「ねぇ、義高様・・・」
「なぜ答えてくれないのですか・・・?」
「ねぇ、義高様・・・」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の改訂版です。
物語の展開や雰囲気を残しながら改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上の点、ご了承願いします。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。
源義高と海野小太郎幸氏の二人が、鎌倉に来る前の出来事が中心の物語となります。
物語の後半というか最後の方は、源義高と海野小太郎幸氏が鎌倉に来てから間もない頃の物語です。
大姫の父親である源頼朝(鎌倉殿)と源義高の父親である源義仲(木曾殿)の都合により、源義高は大姫の許婚として鎌倉に向かう事になります。
大姫と源義高の関係は、「婿」と「許婚」の両方の説があります。
二人の年齢から考えると、「婿」よりは「許婚」という説の方が正しいのかなと思いました。
源義高と海野小太郎幸氏の二人は、どの様な気持ちで鎌倉に着て生活をしていたのかと考えました。
物語の中の源義高と海野小太郎幸氏は、大姫などに僅かずつですが考え方や接し方が変わっていきます。
その違いが上手く表現できていると嬉しいです。
源義高と大姫の仲が良ければ、木曾から見える月や木曾の地に咲く花などを、大姫に見せたいと思っていたのではないでしょうか。
物語の設定時期だと、月の綺麗な時期とは少し違うかもしれません。
月は四季折々に綺麗な姿を見せているので、芍薬の咲く時期の綺麗な月の下で、三人が話しをしていると想像してみてください。
綺麗な芍薬の花と綺麗な月を見ながら、楽しく話しをしている三人の物語です。
史実では、大姫は一度も木曾に行く事なく亡くなります。
史実では、源義高は木曾を出発した後は、木曾に戻る事なく亡くなります。
微笑ましい三人ではありますが、物悲しい話をしている三人の物語となりました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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