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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜


〜 夏の夜 蛍の夢 〜



鎌倉は夏を迎えている。

源義高と海野小太郎幸氏は、木曾から鎌倉に着いた当初は、かなり身構えていた。

鎌倉の人達は源義高と海野小太郎幸氏に優しく接している。

源義高と海野小太郎幸氏にとっては、想像とは違う落ち着いた日々を過ごしている。


源義高と海野小太郎幸氏は、部屋の中に居る。

部屋の外から元気の良い足音が聞こえてきた。

源義高と海野小太郎幸氏は、微笑んで顔を見合わせた。


大姫が元気良く部屋の中に入ってきた。

源義高は大姫を普通の表情で見ると、直ぐに海野小太郎幸氏を見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! こんにちは!」

源義高は大姫を見ると普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し掛ける。

「大姫様。こんにちは。」

大姫は源義高に笑顔で話し掛ける。

「義高様! 姫は義高様と一緒に蛍が見たいです!」

源義高は大姫に普通の表情で話し出す。

「興味が無い。」

大姫は源義高に笑顔で話し掛ける。

「姫は蛍が見たいです!」

源義高は大姫を普通の表情で黙って見ている。

大姫は源義高に不思議そうに話し掛ける。

「義高様は蛍が嫌いなのですか?」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「興味が無いだけだ。」

大姫は源義高を不思議そうに見ている。

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「蛍が見たいなら、政子様や侍女にでも話をして出掛ければ良いだろ。」

大姫は源義高に不思議そうに話し掛ける。

「お母様にお話ししたら、義高様は一緒にお出掛けしてくださるのですか?」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「俺は出掛けるなんて一言も言っていないだろ。」

大姫は源義高を寂しそうに見た。

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「大姫は蛍を見た事が無いのか?」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「あります!」

源義高は大姫を普通の表情で見ている。

大姫は源義高に普通に話し掛ける。

「姫は義高様が鎌倉に来られた時に、夏になったら一緒に蛍を見たいと、ずっと思っていました!」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「わかった。蛍を見に出掛けよう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「ありがとうございます!」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「ただし、出掛けるのは、俺と小太郎と姫の三人だけだぞ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい! わかりました! お母様にお話しをしてきます!」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「それと、蛍は静かに見るんだぞ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい! わかりました!」

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫は元気良く立ち上がると、部屋を出て行った。


大姫の気配も足音もあっと言う間になくなった。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し掛ける。

「大姫様。嬉しそうですね。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し掛ける。

「大姫の周りには忙しい大人しか居ないから、暇そうな俺達に声を掛けて、一緒に出掛けたいだけだよ。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。

「本当にそう思っていらっしゃるのですか?」

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し掛ける。

「頼朝殿と政子様の嫡女と気軽に出掛けられる人は、ほとんどいないだろ。俺達は大姫にとっては、ちょうど良い相手なんだよ。いずれ、飽きて声も掛けなくなるよ。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し掛ける。

「義高様。本当にそう思っていらっしゃるのですか?」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見ながら黙っている。


それから少し後の事。

大姫が元気良く源義高の部屋に入ってきた。

源義高と海野小太郎幸氏は、大姫の様子を黙って見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「お母様が義高様と小太郎殿と一緒なら、三人でお出掛けしても良いそうです!」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「なら、暗くなって少ししたら出掛けよう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は源義高に笑顔で話し掛ける。

「姫は途中で眠くならないように、これから寝ます! お腹が空かないようにご飯も食べます! 時間になったら迎えに来てください!」

源義高は大姫を普通の表情で見ながら頷いた。

大姫は元気良く立ち上がると、部屋を出て行った。


大姫の気配も足音もあっという間になくなった。

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し掛ける。

「あんな事を言っているが、大姫は出掛ける直前まで寝ているよな。寝てしまった大姫を連れて帰るのには、体力が必要だから、俺達も事前に睡眠と食事でも取っておくか。」

海野小太郎幸氏は源義高を見ながら微笑んで頷いた。


少しずつ陽が落ちてきた。

辺りを夕闇が包みそうになっている。


源義高と海野小太郎幸氏は、早めの夕食を終えると、大姫の部屋へと向かった。


源義高と海野小太郎幸氏は、大姫の部屋の前に来た。

侍女が源義高に申し訳なさそうに話し出す。

「大姫様はまだお休みになられています。直ぐに起こしますので、少しお待ちください。」

源義高は侍女に普通に話し掛ける。

「私の事は気にしないでください。」

侍女は源義高に申し訳なさそうに話し出す。

「大姫様は義高様と一緒に蛍を見にお出掛けが出来る事を、とても楽しみにしていました。迷惑を掛けると困るからと、早めにお休みをされて、食事も早く用意して欲しいと話をされていました。」

源義高は侍女に微笑んで話し掛ける。

「私が起こしても良いですか?」

侍女は源義高に微笑んで話し出す。

「宜しくお願い致します。」

源義高と海野小太郎幸氏は、大姫の部屋の中へと入っていった。


源義高と海野小太郎幸氏が部屋には居ると、侍女は静かに部屋を出て行った。

源義高と海野小太郎は、大姫の様子を見た。

大姫はぐっすりと床の中で寝ている。

源義高は大姫を苦笑した表情で見ながら、海野小太郎幸氏に話し出す。

「自分から誘っておいて、思い切り寝ているよな。食事だってまだなんだろ。これから出掛けるという事がわかっているのかな?」

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ながら、源義高に話し出す。

「わかっていらっしゃると思います。だから、侍女の方達にお話しをされていたのだと思います。侍女の方達も大姫様のお気持ちがわかるから、気にされていたのだと思います。」

源義高は大姫を見ながら微笑んで頷いた。

海野小太郎幸氏は源義高を見ると、微笑んで話し出す。

「出掛ける時間が少なくなってしまいます。早く起こして差し上げましょう。」

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、苦笑しながら話し出す。

「侍女達は静かに起こしているんじゃないのか? 思い切り起こせばいいと思わないか?」

海野小太郎幸氏は源義高を苦笑した表情で見た。

源義高は大姫を見ると、笑顔で思い切り上掛けを剥がした。

大姫は気持ち良さそうに寝ている。

源義高は大姫を笑顔で揺すった。

大姫は気持ち良さそうに寝ている。

源義高は大姫を笑顔で揺すりながら話し出す

「お〜い! 早く起きろ〜! 出掛ける時間が近づいているぞ〜!」

大姫はゆっくりと目を開けると、横になったまま辺りを見回した。

源義高は大姫を呆れた様子で見た。

大姫は慌てて起き上がると、源義高に驚いた表情で話し出す。

「義高様! お出掛けする時間ですか?!」

源義高は大姫に呆れた様子で話し出す。

「全く、いつまで寝ているんだか。もう直ぐ出掛ける時間だぞ。食事だってまだなんだろ。早く用意をしないと出掛ける時間が無くなるぞ。」

大姫は源義高に慌てた様子で話し出す。

「直ぐにお出掛けします!」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「食事の準備が出来ているぞ。食べなくても大丈夫なのか?」

大姫は源義高に慌てた様子で話し出す。

「ご飯は食べません! お出掛けする時間が無くなります!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「途中でお腹が空いたら困るだろ。食べていけよ。」

大姫は源義高を心配そうに見ている。

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「早く食べろよ。時間が無くなるぞ。」

大姫は源義高を見ながら小さく頷いた。

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「俺たちは部屋に戻る。食べ終わったら、部屋に来い。」

大姫は源義高を見ると黙って頷いた。

源義高と海野小太郎幸氏は、部屋を出て行った。


それから少し後の事。

源義高と海野小太郎幸氏は、部屋に居る。

部屋の外から元気の良い足音が聞こえてきた。

源義高と海野小太郎幸氏は、微笑んで顔を見合せた。


大姫が元気良く源義高の部屋に入ってきた。

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「出掛けるぞ。」

大姫は源義高を見ながら笑顔で頷いた。

「はい!」

大姫、源義高、海野小太郎幸氏は、小御所から出掛けて行った。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏の三人は、蛍の飛んでいる場所にやってきた。

蛍が淡い光を放ちながら、ゆっくりと飛んでいる。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様! 蛍が飛んでいます!」

源義高は大姫に静かに話し掛ける。

「大姫。良かったな。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫に普通に話し掛ける。

「暗いから手を繋いで歩こう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい! お願いします!」

源義高は大姫の手を静かに取った。

大姫は海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「小太郎殿! 蛍が綺麗ですね!」

海野小太郎幸氏は大姫を見ながら微笑んで頷いた。

大姫と源義高は手を繋いで歩き始めた。

海野小太郎幸氏は源義高と大姫の後を歩き始めた。

蛍が淡い光を放ちながら、ゆっくりと飛んでいる。


大姫は笑顔で蛍の飛んでいる姿を見ている。

源義高は大姫の様子を気にしながら蛍を見ている。

大姫は源義高に笑顔で話し掛ける。

「義高様! 来年も蛍を見に来ましょうね!」

源義高は返事をせずに黙って蛍の飛んでいる様子を見ている。

大姫は源義高に笑顔で話し掛ける。

「義高様! 姫とお出掛けすると、ゆっくりと出来ますよね!」

源義高は大姫を不思議そうに見た。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様は小太郎殿が傍に居ますが、お一人で鎌倉に来られましたよね! わからない事も多いですよね! 姫は鎌倉の事をたくさん知っています! 姫と一緒に出掛けるとわからない事が無くなるから、緊張しないですよね!」

源義高は大姫に苦笑しながら話し出す。

「そういう意味ね。」

大姫は源義高を不思議そうに見た。

源義高は微笑んで蛍の飛んでいる様子を見た。

大姫は源義高を不思議そうに見ている。

源義高は大姫に微笑んで話し掛ける。

「確かに姫のいう事は、一理あるな。これからも頼むよ。大姫。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫を微笑んで見た。

蛍は淡い光を放ちながらゆっくりと飛んでいる。

大姫は蛍に笑顔で話し出す。

「蛍さん! 来年も来ますよ! よろしくお願いします!」

蛍は大姫の近くを淡い光を放ちながらゆっくりと飛んでいる。

大姫と源義高は手を繋ぎ直すと、蛍の飛んでいる中を、ゆっくりと歩き始めた。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高の傍を、ゆっくりと歩き始めた。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏は、小御所へと帰っている。

大姫が立ち止まった。

源義高は大姫を不思議そうに見た。

大姫は顔を下に向けると、眠そうに目をこすっている。

源義高は大姫に微笑んで話し掛ける。

「眠いんだろ。」

大姫は源義高を見ると、小さい声で話し出す。

「大丈夫です。」

源義高は大姫の前に来ると、しゃがみ込んだ。

大姫は源義高を不思議そうに見ている。

源義高は大姫の前にしゃがみ込んだまま、普通に話し出す。

「おぶって帰る。」

大姫は源義高に慌てた様子で話し出す。

「大丈夫です。姫は歩いて帰れます。」

源義高は大姫にしゃがみ込みながら話し出す。

「周りは暗いんだ。疲れていたら、途中で転んでしまうかもしれないぞ。」

大姫は源義高の背中に掴まった。

源義高は大姫を背負って立ち上がった。

大姫は源義高の背中で既に目を閉じている。

海野小太郎幸氏は源義高に確認するように話し掛ける。

「義高様。大丈夫ですか?」

源義高は大姫を背負いながら、海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。

「小御所はもう直ぐだし、大丈夫だよ。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し掛ける。

「途中で辛くなったら、私が代わります。無理をしないでください。」

源義高は大姫を背負いながら、海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「わかった。」

源義高と海野小太郎幸氏は、ゆっくりと歩き出した。

大姫は源義高の背中でぐっすりと寝ている。

蛍が淡い光を放ちながらゆっくりと飛んできた。

源義高は大姫を背負いながら、蛍の飛んでいる様子を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は蛍の飛んでいる様子を微笑んで見た。

大姫は源義高の背中で寝ているために、蛍が飛んでいる事に気が付いていない。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「蛍の飛んでいる様子はとても綺麗でしたね・・・」

「帰り道に義高様の背中で寝てしまいましたね・・・」

「無理をしてでも、ずっと起きて居ればよかったな・・・」

「あの時は、来年もその次の年も、ずっとずっと見られると思っていたの・・・」

「もっとたくさんの蛍が飛んでいる姿を、一緒に見ていたかったな・・・」

「でも、義高様の背中は気持ち良かったな・・・」

「安心出来る場所でした・・・」

「あの日の夜は、夢の中の出来事のようでした・・・」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語には、蛍が登場します。

鎌倉のどこの場所で見られるかははっきりとはわかりませんでした。

ただ、いろいろと考えると、当時はたくさんの場所で見られたのかな、などと考えました。

大姫や源義高や海野小太郎幸氏も、蛍を一緒に見る事があっただろうなと考えて書きました。

源義高が鎌倉を脱出した時期から考えると、一緒に見る事が出来たのは、出逢ってから最初に迎える夏だけだったと思います。

寂しいけれど、ほのぼのとしていて、悲しいけれど、微笑ましい、そんな物語になるように考えました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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