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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜


〜 睦月 星と月に想いを託して 〜


源義高と海野小太郎幸氏が鎌倉に着てから、初めての年越しと新年を迎えた。


そんなある日の事。


ここは京の都。


源義高の父親の源義仲が、征夷大将軍に就任した。


ここは鎌倉の町。


源義高と海野小太郎幸氏の元に、源義仲の征夷大将軍への就任が伝えられた。

源義高は、父親である源義仲の征夷大将軍への就任を、複雑な気持ちで受け止めた。

海野小太郎幸氏も源義高と同じく、源義仲の征夷大将軍への就任を複雑な気持ちで受け止めた。


鎌倉側にも、源義仲の征夷大将軍への就任が伝えられた。

鎌倉側が僅かに慌しい様子を見せ始めた。

源義高と海野小太郎幸氏は、複雑な思いを更に強めていった。


源義高と海野小太郎幸氏は、自分達の部屋か人目の少ない場所に居る時だけが、落ち着く事の出来る時間となった。

自分達の部屋の外や人目の多い場所では、普段通りに見えるように行動した。


そんなある日の事。


ここは鎌倉の小御所。


小御所の雰囲気は普段と変わらない。

源義高と海野小太郎幸氏は、落ち着きたくて源義高の部屋に居る。


ここは源義高の部屋の中。


部屋の外からは、普段と同じ物音や話し声が聞こえてくる。

源義高は普通の表情で黙っている。

海野小太郎幸氏は源義高を普通の表情で見た。

部屋の外から元気の良い足音が聞こえてきた。

源義高は元気の良い足音を聞くと、微笑んだ表情になった。

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。


大姫が源義高の部屋の中に元気良く入ってきた。

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! こんにちは!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「何をしに来たんだ?」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様と小太郎殿とお話しをしに来ました!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様! 御所の人達から義仲様が征夷大将軍に就いたと聞きました!」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「征夷大将軍とはどのような地位なのですか?!」

海野小太郎幸氏は源義高を一瞥すると、大姫を見て、微笑んで話し出す。

「征夷大将軍とは、武士の中で一番偉い方が就く地位の事です。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様は征夷大将軍の嫡男になるのですね! 武士の中で一番偉い人の嫡男なのですね! 凄いですね! おめでとうございます!」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は源義高に不思議そうに話し出す。

「お父上様が一番偉い地位に就いたのに嬉しくないのですか?」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫の父上の頼朝様は、源氏の嫡流だ。源氏の中で一番上の立場と言っても良い。それなのに、俺の父が征夷大将軍に就任した。武士の中で父が一番偉い地位に就任した事になる。大姫はそれで良いのか?」

大姫は源義高を不思議そうに見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様。大姫様には難しいお話しかと思います。」

大姫は海野小太郎幸氏に少し大きな声で話し出す。

「小太郎殿まで姫を子供扱いするのですか! 姫は大人です! 子供ではありません!」

源義高が大姫に普通に話し出す。

「大姫は子供だ。」

大姫は源義高に少し大きな声で話し出す。

「姫は子供ではありません!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「何度でも言う。大姫は子供だ。」

大姫は源義高を納得のいかない表情で見た。

源義高は大姫から普通の表情のまま視線を外した。

大姫は下を向くと、源義高に寂しそうに話し出す。

「姫は鎌倉が大好きです。でも、姫は義高様と一緒に居たいです。だから、義高様と小太郎殿が木曾へ戻る時には、姫も一緒に付いて行きます。義高様と小太郎殿が都へ行くなら、姫も一緒に付いて行きます。姫は大人です。お父様やお母様と逢えなくても大丈夫です。」

源義高は大姫を驚いた表情で見た。

大姫は下を向いたまま、源義高に少し大きな声で話し出す。

「姫は子供ではありません! 大人です!」

源義高が大姫に驚いた表情で話し掛けようとした。

大姫は下を向いたまま、源義高の部屋から勢い良く出て行った。


源義高は海野小太郎を見ると、苦笑しながら話し出す。

「やっぱり大姫は子供だな。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様は、義高様や私の事を、しっかりと考えていらっしゃいます。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「わかっているよ。」

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「でも、大姫は何も分かっていない。やっぱり子供だよ。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様には難しい話もあるので、分からない事が多いと思います。でも、何も知らない訳ではないと思います。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫の部屋に行く。一緒に来てくれ。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「承知しました。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通の表情で頷いた。

源義高と海野小太郎幸氏は、源義高の部屋から出て行った。


ここは大姫の部屋。


大姫の侍女は、源義高と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫様はお部屋にはいらっしゃいません。」

源義高と海野小太郎幸氏は、不思議そうに顔を見合わせた。

大姫の侍女は、源義高と海野小太郎幸氏を普通の表情で見ている。

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、普通に話し出す。

「部屋に戻ろう。」

海野小太郎幸氏は源義高に普通の表情で軽く礼をした。

源義高と海野小太郎幸氏は、源義高の部屋へと戻って行った。


源義高と海野小太郎幸氏が、源義高の部屋に戻る最中の事。


源義高と海野小太郎幸氏は、縁を歩いている。

源義高は小御所の庭を見ると、普通の表情で立ち止まった。

海野小太郎幸氏は源義高に続いて立ち止まった。


小御所の庭に春山茶花が咲いている姿が見える。

春山茶花の前に大姫が立っている姿が見える。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に背中を向けて立っているため、表情は分からない。


源義高は縁に立ったまま、大姫と春山茶花を普通の表情で見ている。

海野小太郎幸氏は縁に立ったまま、大姫と春山茶花を微笑んで見た。


源義高は縁に立ったまま、大姫に普通に声を掛ける。

「大姫。何をやっているんだ?」

大姫は振り向くと、源義高を笑顔で見た。

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏の元に笑顔で走り始めた。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏の前に来ると、笑顔で話し出す。

「義高様! 可愛い名前の春山茶花が咲いています! 春山茶花の名前を当ててみてください!」

源義高は大姫を苦笑しながら見た。

大姫は源義高に不思議そうに話し出す。

「義高様? 何かありましたか?」

源義高は大姫に苦笑しながら話し出す。

「大姫は俺や小太郎と話しをするために部屋に来たのだろ。それなのに、直ぐに一人で部屋を出て行ったよな。仕方が無いから、小太郎と一緒に大姫の部屋に行ったんだ。」

大姫は源義高を不思議そうに見た。

源義高は大姫に苦笑しながら話し出す。

「大姫は部屋に居ないから、俺と小太郎は部屋に戻る事にしたんだ。そうしたら、大姫は元気で庭に居るだろ。なぜだか分からないけれど、可笑しくなってきたんだ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「義高様がお疲れのご様子だったので、お話しをするのを止めました!」

源義高は大姫を不思議そうに見た。

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「姫は義高様の許婚です! 姫は大きくなったら義高様の正室になります! 義高様のご様子に気を配るのも正室になる姫の務めです!」

源義高は大姫を苦笑しながら見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。今のお言葉は誰から聞いたのですか?」

大姫は海野小太郎幸氏を見ると、笑顔で話し出す。

「いろいろな人がお話しをしています!」

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫。少し良いかな。」

大姫は源義高を見ると、笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫に苦笑しながら話し出す。

「突然に大きな声を出して部屋から出て行ったら、残された俺や小太郎が心配すると思わなかったのか? 大姫の事を考えて更に疲れると思わなかったのか?」

大姫は源義高を申し訳なさそうに見た。

源義高は大姫を苦笑しながら見た。

大姫は源義高を申し訳なさそうに見ている。

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫。部屋に戻って話しをしよう。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫、源義高、海野小太郎幸氏は、源義高の部屋へと向かって縁を歩き出した。


その日の夜の事。


ここは大姫の部屋。


大姫は、ふすまを少しだけ開けて、月と星を笑顔で見ている。

月と星は、寒い空気の中で綺麗に輝いている。


大姫は月と星を見ながら笑顔で呟いた。

「義高様は木曾に戻るのでしょうか? 義仲様が居る都に行かれるのでしょうか?」

月と星は、寒い空気の中で綺麗に輝いている。

大姫は月と星を見ながら笑顔で呟いた。

「義仲様ではなくて、お父様と言わないと駄目ですよね。姫は大きくなったら義高様の御台所になります。義高様が征夷大将軍に就いたら、姫も御台所として義高様をたくさん助けます。大変だけど、義高様をしっかりと支えます。」

月と星は、寒い空気の中で綺麗に輝いている。

大姫は月と星を笑顔で見た。


ここは源義高の部屋の前に在る縁。


源義高と海野小太郎幸氏は、月と星を立ったまま見ている。


源義高は海野小太郎幸氏を見ると、苦笑しながら話し出する。

「大姫は子供だよな。」

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。

源義高は夜空を見上げると、微笑んで呟いた。

「大姫はやっぱり子供だよな。」

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見ている。

源義高は夜空を見上げながら、寂しそうに呟いた。

「大姫はどうして子供なのだろう。」

海野小太郎幸氏は源義高を心配そうに見た。

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、微笑んで話し出す。

「月と星に、父への想いを託したら、届けてくれるだろうか?」

海野小太郎幸氏は源義高を心配そうに見た。

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。今の話は忘れてくれ。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「私は、月と星が義高様の想いを義仲様に届けてくれると信じます。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「あの時の私は、義仲様が征夷大将軍に就いた事は、本当に嬉しかったの・・・」

「義高様のお父様が一番偉い地位に就いたと聞いたから、とても嬉しかったの・・・」

「義高様が喜んでいない事が不思議だったの・・・」

「あの時の私は、義高様のお話しの意味がわからなかったの・・・」

「あの時の私は、義高様の言う通り本当に子供でした・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「義高様のお話しの意味が分かっていたら、何かが変わったのでしょうか・・・?」

「ねぇ、義高様・・・・」

「何も分からない子供だったことを許してください・・・」

「義高様のお気持ちを理解する事が出来なかった事を許してください・・・」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は、「鎌倉夢語り 大姫と源義高 編 短編 睦月の初め 星の文」の直後を設定しながら物語を書きました。

源義高の父親である源義仲が、征夷大将軍に就いてから、亡くなるまでの期間の物語です。

時期的にいうと、正月十日から正月二十日頃となります。

「征夷大将軍(せいいたいしょうぐん)」についてです。

元の意味はここでは書きませんが、鎌倉時代以降は「征夷大将軍」が「将軍」と呼ばれて幕府の頂点の地位になります。

鎌倉幕府の「源頼朝をはじめとする源氏(最初は源氏直系ですが、後に少し違う形になります)」、室町幕府の「足利」、江戸幕府の「徳川(徳川が源氏の血筋なのかについては、いろいろと説があり、はっきりとしません)」です。

基本的には、「源氏の血筋」が征夷大将軍の地位に就きます。

「春山茶花(はるさざんか)」についてです。

現在の暦で、十二月から三月に掛けて咲きます。

大姫達のいた時代には、春山茶花を見る事は出来なかったと思います。

薮椿(やぶつばき)と山茶花(さざんか)の雑種だといわれているそうです。

この物語で大姫が話しをしている春山茶花の名前についてですが、今回は一応秘密にします。

大姫と源義高と海野小太郎幸氏、三人の気持ちが複雑に絡み合っている物語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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