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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜
〜 大銀杏の散る頃 もう一つの願うこと 〜
今は秋の終わり。
ここは、鎌倉。
鶴岡八幡宮。
境内。
大銀杏が少しずつ散り始めた。
大姫と河越重頼の娘の真澄は、一緒に居る。
大姫は真澄に心配そうに話し出す。
「もう直ぐ冬になりますね。真澄はいつ河越に帰るのですか?」
真澄は考え込む仕草を見せた。
大姫は真澄を不思議そうに見た。
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「はっきりとした戻る日付は決めていません。でも、秋の終わりから冬の始めの間に、鎌倉を発ちたいと思っています。」
大姫は真澄を寂しそうに見た。
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫様。寂しそうな顔をしないでください。」
大姫は真澄に寂しそうに頷いた。
その翌日の事。
ここは、小御所。
大姫の部屋。
真澄は大姫に呼ばれて部屋を訪れている。
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「これから大銀杏を一緒に見に行きましょう。」
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
大姫は真澄の手を笑顔で握った。
真澄は大姫を微笑んで見た。
大姫と真澄は、大銀杏を見るために出掛けていった。
それから少し後の事。
ここは、鶴岡八幡宮。
境内。
大銀杏の近く。
大姫と真澄は、一緒に居る。
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「真澄が河越に戻らないのは、姫が寂しがるからだと義高様と小太郎殿が言いました。真澄が姫のために河越に戻れないのは困ります。姫は真澄を笑顔で見送ると決めました。」
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「お気遣い頂いてありがとうございます。」
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「真澄とお別れするのは寂しいです。でも、姫には義高様と小太郎殿が居ます。だから、寂しいけれど寂しくないです。」
真澄は大姫を微笑んで見た。
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「寂しいけれど寂しくないというのは、変な言い方ですね。どのように言えば良いのでしょうか?」
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫様のお気持ちがはっきりと伝わります。私は良い表現だと思います。」
大姫は真澄を微笑んで見た。
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫様と義高様が祝言を挙げられるお姿をぜひ見たいです。」
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「真澄はお父様と万寿の乳母を務めている一族の者です。お父様とお母様と義高様にお願いすれば、鎌倉に好きな時に来られると思います。」
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫様のお望みであれば、誰の元に嫁いでいても、どこに暮らしていても、鎌倉に着ます。」
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「分かりました。楽しみに待っていてください。」
真澄は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫様と義高様と小太郎殿が、末永く仲睦まじく暮らせるように、心よりお祈り申し上げております。」
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「ありがとう。」
真澄は大姫を微笑んで見た。
大姫は大銀杏を微笑んで見た。
真澄は大銀杏を微笑んで見た。
大銀杏は黄色く色付いた葉を、少しずつ散らしている。
真澄は大姫を見ると、微笑んで話し出す。
「季節が秋から冬へとゆっくりと動いていますね。」
大姫は真澄を見ると、微笑んで頷いた。
真澄は大姫を微笑んで見た。
大姫は真澄に微笑んで話し出す。
「真澄。小御所に戻りましょう。」
真澄は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は真澄に笑顔で手を差し出した。
真澄は大姫の手を微笑んで取った。
大姫と真澄は、手を繋ぎながら、小御所へと戻っていった。
それから少し後の事。
ここは、小御所。
源義高の部屋。
源義高と海野小太郎幸氏は、一緒に居る。
大姫が元気良く部屋の中に入ってきた。
源義高は大姫を普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「真澄が河越に帰っても姫は大丈夫だと話しました!」
源義高は大姫を普通の表情で見ている。
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「姫には義高様と小太郎殿が居ます! だから、真澄が居なくても、寂しいですが、寂しくありません!」
源義高は大姫を普通の表情で見ている。
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ている。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「姫と義高様が祝言を挙げる時には、真澄にも鎌倉に来て欲しいです! 義高様も小太郎殿も忘れずに覚えていてくださいね!」
源義高は大姫を普通の表情で見ている。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「真澄を姫の部屋の外に待たせているので、一旦は戻ります! でも少し経ったら戻ってきます! お出掛けしないで待っていてくださいね!」
源義高は大姫を普通の表情で見ている。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は元気良く部屋を出て行った。
源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「真澄さんを部屋で待たせるのなら、一緒に部屋に来れば良いのに。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「大姫様は私達が心配していると思ったから、真澄様をお部屋の外に待たせて、結果を教えてくださったのだと思います。」
源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「大姫も真澄さん本人を前にしては言い難かったのかな?」
海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。
源義高は海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。
「大姫は少し経ったら戻ると言って部屋を出たよな。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「はい。」
源義高は海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。
「疲れて寝てしまって、戻ってこない可能性があるよな。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。
「今の時間から寝られる心配はないと思います。」
源義高は海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。
「大姫の行動から判断すると、充分に考えられないか?」
海野小太郎幸氏は源義高を苦笑しながら見た。
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「黙って居なくなると騒がしくなるから、部屋で話しをして大姫が戻るのを待とう。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。
それから数日後の事。
ここは、小御所。
源義高の部屋。
大姫は元気良く部屋の中に入った。
源義高と海野小太郎幸氏が、部屋の中に居ない。
大姫は不思議そうな表情になった。
源義高の普通の声が、大姫の後ろから聞こえてきた。
「何をしているんだ?」
大姫は笑顔で後ろを見た。
源義高は大姫を普通の表情で見ている。
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ている。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「部屋に居ないので心配しました。」
源義高は大姫に普通に話し出す。
「少しだけ出掛けていた。」
大姫は源義高に微笑んで話し出す。
「どちらにお出掛けしたのですか?」
源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。
海野小太郎幸氏は源義高を一瞥すると、大姫を見て、微笑んで話し出す。
「大銀杏を見に行きました。」
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に拗ねた様子で話し出す。
「姫も一緒に大銀杏が見たかったです! なぜ二人だけで出掛けられたのですか?!」
源義高は海野小太郎幸氏を僅かに困惑した表情で見た。
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。
源義高は大姫を見ると、普通に話し出す。
「俺と小太郎が少し休んだ後に、三人で大銀杏を見に行かないか?」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「はい!」
源義高は大姫に普通に話し出す。
「大姫は自分の部屋に戻らずに俺の部屋に居ろ。」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「はい!」
源義高は大姫に普通の表情で頷いた。
海野小太郎幸氏は源義高と大姫に微笑んで軽く礼をした。
すると切ない声が聞こえてきた。
「ねぇ、義高様・・・」
「義高様が鎌倉から居なくなってから、たくさんの出来事が起こりました・・・」
「真澄が義経様の正室として京の都に行きました・・・」
「父上と義経様の仲が悪くなりました・・・」
「義経様は京の都から姿を消しました・・・」
「真澄の行方が分からなくなりました・・・」
「風の噂では、義経様と真澄は、平泉で一緒に暮らしていたと聞きました・・・」
「風の噂では、義経様と真澄の間に、女の子が生まれたと聞きました・・・」
「風の噂では、義経様と真澄と女の子は、平泉で一緒に自害したと聞きました・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
「真澄は、義高様と自分の未来を、どこまで知っていたのでしょうか・・・?」
「義高様は、ご自分と真澄の未来を、どこまで知っていたのですか・・・?」
「私は、義高様と真澄の未来に起こる出来事を、何も知りませんでした・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
「私と義高様が祝言を挙げる時は、真澄を鎌倉に呼ぶと約束しました・・・」
「約束の叶う日は訪れるのでしょうか・・・?」
「ねぇ、義高様・・・」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は、「鎌倉夢語り 大姫と源義高 編 短編 大銀杏の散る頃 願うこと」の中で、河越重頼の娘(「鎌倉夢語り」の中では“真澄”)が、河越の庄へ戻る決断します。
「鎌倉夢語り 大姫と源義高 編 短編 大銀杏の散る頃 願うこと」の改訂版を書いている時に、大姫と真澄は、河越に戻る事をどのように話したのかと考えました。
そこから考えた物語です。
そのため、今回の物語と「鎌倉夢語り 大姫と源義高 編 短編 大銀杏の散る頃 願うこと」の前半の一部分は同じ場面になっています。
他の場面も二つの物語が関係しあっています。
河越重頼の娘(「鎌倉夢語り」の中では“真澄”)について簡単に説明します。
源義経の正室の河越重頼の娘は、名前も生れた年も時期も分かりません。
源義経の正室となった人です。
“静御前”という名前の源義経の愛妾がいます。
静御前は、源義経が登場する作品には、名前だけの登場を含めると、登場回数や作品は、とても多いと思います。
河越重頼の娘は、源義経の正室という立場ですが、登場回数も作品数も少ないです。
そういう事もあって、「真澄」と名付けて「鎌倉夢語り」の物語に登場させました。
大姫と源義高は、親や政の思惑によって婚約をしました。
その流れの中で、源義高は木曾から鎌倉に着ます。
しかし、約一年後には、源義高は大人達と政の思惑によって討たれて亡くなります。
大姫は源義高の死が原因で病弱になったといわれています。
源義高が亡くなった後の事になりますが、河越重頼の娘は、鎌倉側の命によって源義経の正室として京の都に行きます。
その頃の源義経の立場は、源頼朝や鎌倉側とは微妙な関係になっていました。
どちらかというと、源頼朝・鎌倉側と源義経の立場は悪くなり始めていました。
河越の一族の間でも、源義経との縁談に反対や止める方向の話しが出ていたと思われます。
源義経側では、河越重頼の娘が鎌倉側の間者ではないか、この時期に正室を迎えるなんて、などいろいろな話が出たようです。
そのような状況の中で、河越重頼の娘は源義経の正室になった事になります。
平泉で源義経と一緒に自害した女性は、一般的な説では、河越重頼の娘といわれています。
その場合は、源義経と河越重頼の娘の間に、女の子が生まれていた事になります。
もし、河越重頼の娘が婚約前に鎌倉に着ていた場合は、大姫や源義高や海野小太郎幸氏と親しくなっていたと思いました。
「鎌倉夢語り 大姫と源義高 編」と「鎌倉夢語り 大姫と源義高 番外編」は、河越重頼の娘が鎌倉に来ていれば、どのように過ごして、河越の庄に戻っていくのか、と考えながら書きました。
大姫、源義高、海野小太郎幸氏、河越重頼の娘は、鎌倉時代を支えるために犠牲になった人達だと思います。
源義経は静御前の他にも付き合っていた女性がいたそうです。
河越重頼の娘の現在の知名度は、他の女性達と比べると有名ですが、静御前と比べると有名ではないように思います。
源義経の正室の河越重頼の娘にも、このような時があったかも知れないと想像しながら、他の物語も含めて読んで頂けると嬉しいです。
「鎌倉夢語り」は短編集なので、河越重頼の娘が登場する物語は、後に掲載する事があると思います。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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