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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 初秋風 葦別け小舟 我が思ふ君 ~


登場人物

土方歳三、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、原田左之助、少女[美鈴・鈴]




「港入りの、葦別け小舟、障り多み、我が思ふ君に、逢はぬころかも」

「万葉集 第十一巻 二七四五番」より

作者:詠み人知らず




今は初秋。



ここは、京の町。



日中は夏のような暑さが続いている。

陽が落ちると、僅かだが暑さが和らぐ。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



土方歳三は机に普通に向かっている。



沖田総司は部屋を普通に訪ねた。



土方歳三は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。待っていた。」

沖田総司は土方歳三に普通に話し出す。

「土方さん。用事は何ですか?」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。歌を教える。」

沖田総司は土方歳三に苦笑して話し出す。

「遠慮します。」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「斉藤に総司と共に歌を教えると話した。斉藤も俺の部屋で総司と共に歌を教えると話した。斉藤は了承の返事をした。斉藤は総司と歌を覚える時間を楽しみにしていた。斉藤は少し遅れて俺の部屋に来る。総司は遠慮する考えなのか。斉藤が俺の部屋に来た時には、総司は俺の部屋に居ないのか。斉藤は残念に思うな。」

沖田総司は土方歳三に慌てて話し出す。

「私は斉藤さんと一緒に歌を覚えます!」

土方歳三は沖田総司に微笑んで頷いた。



斉藤一は部屋を普通に訪れた。



土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。待っていた。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司。斉藤。歌を教える。」

沖田総司は土方歳三に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「“港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも”。掲載は、“万葉集 第十一巻 二七四五番”。作者は、“詠み人知らず”。歌の意味は、“港に入る、葦の茂みをかき分けながら進む小舟のように、邪魔するものが多くて、私が思っているあなたに、このごろ逢えないのです”、となるそうだ。」

沖田総司は土方歳三と斉藤一を普通の表情で考えながら見た。

斉藤一は土方歳三と沖田総司を普通の表情で見た。

土方歳三は沖田総司に微笑んで紙を渡した。

沖田総司は土方歳三から紙を普通の表情で考えながら受け取った。

土方歳三は斉藤一に紙を微笑んで渡した。

斉藤一は土方歳三から紙を普通に受け取った。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「歌、歌の意味、作者、掲載場所、原文、などを紙に書いた。俺の説明を聞きながら、覚えてくれ。」

斉藤一は紙を持ち、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は紙を持ち、土方歳三に僅かに慌てて軽く礼をした。

土方歳三は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



沖田総司は紙を持ち、普通の表情で考えながら居る。

斉藤一は普通に居る。



沖田総司は紙を持ち、斉藤一に普通の表情で考えながら話し出す。

「斉藤さん。私は鈴ちゃんとたくさん逢っています。私と鈴ちゃんは、斉藤さんに幾度も助けてもらっています。歌の内容に結び付きません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「土方さんは総司と美鈴さんの関係に当てはめて選んだ歌ではないと思う。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さん! 土方さんは鈴ちゃんを物凄く知っているのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺の話を落ち着いて理解しろ。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に動揺して話し出す。

「落ち着いて理解しています!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。落ち着いていない。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一を動揺して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。動揺が続く。俺が総司を落ち着かせる。総司が自分で直ぐに落ち着く。一つを選べ。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一を驚いて見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に小さい声で話し出す。

「落ち着きました。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



暫く後の事。



ここは、屯所。



縁。



沖田総司は紙を持ち、微笑んで歩いている。



原田左之助が微笑んで来た。



沖田総司は紙を持ち、原田左之助を微笑んで見た。

原田左之助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。土方さんから歌を教えてもらったのか?」

沖田総司は紙を持ち、原田左之助を怪訝な様子で見た。

原田左之助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「おまさちゃんへの贈り物に参考になると思って話したんだ。迷惑ならば遠慮する。」

沖田総司は紙を持ち、原田左之助に怪訝な様子で話し出す。

「原田さんが歌を贈る人物は、おまささん一人ですか?」

原田左之助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「勿論。」

沖田総司は紙を持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「私の部屋で紙を見せます。参考になると思ったら、紙に書き写してください。」

原田左之助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。ありがとう。」

沖田総司は紙を持ち、原田左之助を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



藤堂平助の部屋。



藤堂平助は普通に居る。



原田左之助が部屋を微笑んで訪ねた。



藤堂平助は原田左之助を不思議な様子で見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「総司が土方さんから歌を教えてもらったそうだ。俺が総司に教えて欲しいと気楽に話したら、総司が物凄く警戒した。俺は、総司はあの子に歌を贈る可能性があるから、あの子に歌を知られるのが心配なんだ、と直ぐに気付かなかった。焦った。総司の部屋で歌を教えてもらったけれど、紙に書き写すのは止めた。」

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「原田さん。沖田さんが教えてもらった歌を教えてください。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「“港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも”。」

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「歌の意味は、“港に入る、葦の茂みをかき分けながら進む小舟のように、邪魔するものが多くて、私が思っているあなたに、このごろ逢えないのです”、のような感じですね。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで頷いた。

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「沖田さんがあの子に贈る歌に感じません。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助があの子に贈る歌ならば合うな。」

藤堂平助は原田左之助に僅かに慌てて話し出す。

「原田さん。あの子とは誰ですか?」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「あの子は、あの子。」

藤堂平助は原田左之助に僅かに慌てて話し出す。

「原田さん。変な内容を話すのは止めてください。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「“港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも”。“葦”は、二人の天才剣士。“小舟”は、平助。“君”は、あの子。“障り多み”は、副局長と二人の天才剣士。思い切り重なるな。」

藤堂平助は原田左之助に僅かに慌てて話し出す。

「原田さん。あの子について話すと、沖田さんが突然に現れます。早く話を止めましょう。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助の話すとおりだな。止めるよ。」



沖田総司が部屋の中に慌てて入ってきた。



藤堂平助は沖田総司を僅かに驚いて見た。

原田左之助も沖田総司を僅かに驚いて見た。

沖田総司は藤堂平助と原田左之助に慌てて話し出す。

「原田さん! 平助! 物凄く気になる内容を話していたと思います!」

原田左之助は沖田総司に慌てて話し出す。

「総司の勘違いだ!」

藤堂平助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「原田さんの話すとおり、沖田さんの勘違いです。」

沖田総司は原田左之助と藤堂平助を怪訝な様子で見た。

原田左之助は沖田総司と藤堂平助に慌てて話し出す。

「総司! 平助! 俺は失礼する!」

藤堂平助は原田左之助を驚いて見た。



原田左之助は部屋から慌てて居なくなった。



藤堂平助は沖田総司に困惑して話し出す。

「私も原田さんも、沖田さんの心配する内容は話していません。」

沖田総司は藤堂平助を怪訝な様子で見た。

藤堂平助は沖田総司を困惑して見た。

沖田総司は藤堂平助に怪訝な様子で話し出す。

「仕方が無い。今回は平助の話を信じる。」

藤堂平助は沖田総司に困惑して話し出す。

「信じて頂いてありがとうございます。」



沖田総司は部屋を怪訝な様子で出て行った。



藤堂平助は疲れた様子で軽く息を吐いた。



翌日の事。



ここは、京の町。



落ち着いた雰囲気の寺。



本堂。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。暑さを感じる日も多いけれど、元気だね。安心した。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんも元気です。総司さんの笑顔がたくさん見られます。嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「土方さんから歌を教えてもらったんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「差し支えなければ、総司さんが教えて頂いた歌を教えてください。」

沖田総司は斉藤一を僅かに慌てて見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「“港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも”。土方さんが俺と総司に教えてくれた歌だ。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は鈴ちゃんにたくさん逢える。歌の内容に合わない。鈴ちゃんに贈れない歌だと思ったんだ。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女に慌てて話し出す。

「鈴ちゃん! 気に障る内容を話したんだね! ごんめね!」

少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「総司さんは気に障る内容を話していません。」

沖田総司は少女に安心して話し出す。

「鈴ちゃんは私にとって物凄く大切な友達だから、鈴ちゃんに逢えなくなったら物凄く寂しいんだ。鈴ちゃんの気に障る内容を話していなくて良かった。」

少女は沖田総司を僅かに寂しく見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。総司は、照れ屋だから、物凄く間接的な内容で話す。俺に免じて許してくれ。」

沖田総司は斉藤一に怪訝な表情で囁いた。

「斉藤さん。今の話は納得いきません。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で囁いた。

「俺の話は正しい。総司。俺の今の話を否定するならば、俺を友達だと思うな。」

沖田総司は斉藤一を驚いて見た。

少女は沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司は、照れ屋だから、俺に代わりに話して欲しいそうだ。総司が、総司と俺と美鈴さんで、美味しい物を食べたいそうだ。総司の奢りだ。美鈴さん。希望する食べ物があれば教えてくれ。」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。ありがとうございます。総司さんと斉藤さんにお任せします。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺も総司に任せる。」

沖田総司は斉藤一と少女に苦笑して頷いた。



僅かに後の事。



ここは、屯所。



藤堂平助の部屋。



原田左之助は普通の表情で考えながら居る。

藤堂平助は普通に居る。



原田左之助は藤堂平助に普通の表情で考えながら話し出す。

「“港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも”。おまさちゃんに贈るのは止めた。」

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「私も原田さんの考えに賛成です。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。“港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも”、に該当しない想い人を早く見付けろよ。」

藤堂平助は原田左之助を僅かに動揺して見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助は、多くの女性に、格好が良い、普段は品が良い、剣を持つと強くて怖い、などと、良い評判だ。平助は、“港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも”、に該当しない想い人を見付けられる可能性が高い。平助。剣術以外にも精進しろよ。」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して頷いた。

原田左之助は藤堂平助を微笑んで見た。



「港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも」

想う気持ちが葦の茂みをかき分けながら進む小舟のようになっている。

“葦”に該当する人物は誰か?

“小舟”に該当する人物は誰か?

“障り多み”に該当する人物は誰か?

“我が思う人物”は誰か?

藤堂平助にとっては、身近な人物になる。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十一巻 二七四五番」

「港入りの 葦別け小舟 障り多み 我が思ふ君に 逢はぬころかも」

ひらがなの読み方は「こういりの あしわけをぶね さはりおおみ あがおもふきみに あはぬころかも」

作者は「詠み人知らず」

原文は「湊入之 葦別小舟 障多見 吾念公尓 不相頃者鴨」

歌の意味は「港に入る、葦の茂みをかき分けながら進む小舟のように、邪魔するものが多くて、私が思っているあなたに、このごろ逢えないのです。」となるそうです。

「葦」についてです。

「あし」、または、「よし」と読みます。

イネ科の多年草です。

池や沼などに生えます。

高さは、2~3m近くになります。

茎は硬く、中空で節があります。

茎で「簾(すだれ)」を作る事があります。

秋の季語です。

「葦(あし)」という呼び名は、「悪し(あし)」を思い起こさせるので、後に「良し(よし)」に変えられました。

植物分類学では「ヨシ」を標準和名としているそうです。

「初秋風(はつあきかぜ)」についてです。

「初秋のころに吹く風」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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