このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 桜の浮かぶ湯気の中で 思ひぞ我が来る 〜


〜 後書き 〜


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ここからは後書きになります。

「お風呂」についてです。

江戸時代には銭湯をたくさんの人達が利用していました。

ただし、現在とは違い「蒸し風呂」のようになっていたそうです。

「戸棚風呂」と呼ばれている形になっていて、熱くなっている小石の上に水を掛けて蒸気を出していたそうです。

浴槽には膝の高さほどのお湯しかありませんでした。

下半身はお湯に浸して、上半身は小石から出る蒸気で温めていたそうです。

蒸気が逃げないようにするために、「石榴口(ざくろぐち)」という物が考えられたそうです。

簡単な説明ですが、天井から低く板を下げて、蒸気を逃げないようにしていました。

お風呂に入る人達はこの板をくぐって、風呂場の中へと入っていったそうです。

現在でいう「お風呂」に近い、深く浸かる「お風呂」は、これも江戸時代に出来ました。

「据え風呂」と言うそうです。

「慶長年間の末頃」に出来たそうです。

井戸水などから沸かすお風呂だったそうです。

一般の庶民の家に広まったそうです。

普及していたのは「鉄砲風呂」や「五右衛門風呂」だったそうです。

「鉄砲風呂」は、簡単に言うと、鉄の筒に燃えている薪を入れてお湯を温めるお風呂です。

鉄の筒でやけどをしないように、筒を遮るように柵で防護していたそうです。

この形のお風呂は、江戸で主流になっていたそうです。

「五右衛門風呂」は、簡単に言うと、下の鉄釜を熱して温めるお風呂です。

こちらはやけどをしないように、「釜板、兼、底板」を下に敷いてお風呂に入ったそうです。

この形のお風呂は、関西で主流になっていたそうです。

「桜湯(さくらゆ)」についてです。

「桜湯」というと、「塩漬けにした八重桜に熱湯を注いだ飲み物。婚礼などの祝賀などにお茶の代わりに用いる飲み物。」を想像する方が多いかと思います。

この物語の中に登場する「桜湯」は、「柚子湯」や「菖蒲湯」に代表される薬用風呂を差しています。

「桜湯」についての説明を簡単にしたいと思います。

桜の樹皮を剥ぎ、刻んで日陰干しにしておきます。

桜の木は、「染井吉野(そめいよしの)」、「大島桜(おおしまさくら)」、「山桜(やまざくら)」、のいずれも大丈夫です。

桜の樹皮を剥ぐのは、桜の花が咲き終わった後の夏以降になります。

現在は、花屋でも桜の花が売っているので、その枝を使う事も出来ます。

後は、漢方を扱っている薬局でも、桜の樹皮が手に入る事があります。

乾燥して樹皮を布袋に入れます。

布袋を鍋に入れて、水から15〜20分ほど煮出します。

煮出した汁と布袋ごと浴槽に入れます。

入る時に、かき回してお風呂に入ります。

桜の花びらを浮かべると、桜湯に入っているという雰囲気が出ると思います

桜の樹皮を煮出した汁には、「消炎効果」があります。

湿疹や打ち身などに効果があります。

この物語に登場する歌は、「万葉集 第六巻 九四二番」です。

短歌ではなく長歌になります。

「あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に 真楫貫き 我が漕ぎ来れば 淡路の 野島も過ぎ 印南嬬 辛荷の島の 島の際ゆ 我家を見れば 青山の そことも見えず 白雲も 千重になり来ぬ 漕ぎ廻むる 浦のことごと 行き隠る 島の埼々 隈も置かず 思ひぞ我が来る 旅の日長み」

ひらがなの読み方は、「あぢさはふ いもがめかれて しきたへの まくらもまかず かにはまき つくれるふねに まかぢぬき わがこぎくれば あはぢの のしまもすぎ いなみつま からにのしまの しまのまゆ わぎへをみれば あおやまの そこともみえず しらくもも ちへになりきぬ こぎたむる うらのことごと ゆきかくる しまのさきざき くまもおかず おもひぞわがくる たびのけながみ」です。

作者は、「山部赤人(やまべのあかひと)」です。

意味は、「嫁さまの目のとどかない遠くにやってきて、手枕(てまくら)もしないで、桜皮(かには)を巻いた船に梶(かじ)を通して漕(こ)いでくると、淡路(あはぢ)の野島(のしま)も印南嬬(いなみつま)も過ぎて、辛荷(からに)の島々の間からわが家のある方を見ると、山のどこかも分からず、たくさん雲が重なってきました。
漕(こ)ぎめぐる浦(うら)ごとに見えなくなるどの島の埼でもいつでもどこでも故郷(ふるさと)のことを思います。旅が長いので。」となるそうです。

原文は、「味澤相、妹目不■見而、敷細乃、枕毛不巻、櫻皮纒、作流舟貫、吾榜来者、淡路乃、野島毛過、伊奈美嬬、辛荷乃嶋之、嶋際従、吾宅乎見者、青山乃、曽許十万方不見、白雲毛、千重尓成来沼、許伎多武流、浦乃盡、往隠、嶋乃埼々、隈毛不置、憶曽吾来、客乃氣長弥」です。

「■」は変換できない文字でした。


「野島(のしま)」は、淡路町の北淡町(ほくたんちょう)の「野島」にあたります。

「印南嬬(いなみつま)」は、「加古川の河口付近」と考えられているそうです。

「辛荷(からに)」は、「兵庫県揖保郡(いぼぐん)御津町(みつちょう)室津(むろつ)」の沖にある三つの小島だそうです。

万葉集には、一首だけ「櫻皮(かには)」が詠まれています。

「櫻皮(かには)」は、「桜の木の樹皮」だと考えられています。

一説には、「櫻皮(かには)」は、「白樺の樹皮」という説もあるそうです。

この物語では、「櫻皮(かには)」は、「桜の樹皮」として書きました。

「桜皮(かには)巻き作れる船」と言う言葉がありますが、桜の皮を巻いて作った船と考えられているそうです。

桜の樹皮、特に「山桜」や「霞桜(かすみざくら)」などの樹皮は、はがれにくい性質を持っているそうなので、弓矢家具などに巻いたり張ったりして、強く丈夫な物にする事が出来るそうです。

ちなみに、この物語の舞台は多摩と江戸なので、歌の中の地名は物語の中には登場しません。

楽しんで頂けると嬉しいです。





はじめに       本編  

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