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〜 雪月花 新撰組異聞外伝 編 〜


〜 金木犀の香りに包まれて 月の影のさやけさ 〜


「秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ」

「小倉百人一首 第七十九番」、及び、「新古今集」より

作者:左京大夫顕輔(さきょうのたいふあきすけ)



季節は秋。



ここは、東京の町。



涼しい日が続いている。



沖田総司の息子の敬一は、元気良く外を歩いている。



甘い香りが敬一の元に届いた。



敬一は立ち止まると、辺りを不思議そうに見回した。



敬一から少し離れた場所に、金木犀の花がたくさん咲いている様子が見えた。



敬一は金木犀に向かって微笑んで歩き出した。



それから僅かに後の事。



ここは、敬一の見ていた金木犀のたくさん咲く場所。



敬一は金木犀の咲く場所に微笑んで来た。



金木犀は甘い香りを放ちながら、金色の様な小さな花を咲かせている。



敬一は金木犀の花に微笑んで顔を近づけた。



金木犀の花の香りが、敬一の元に更にはっきりと届いた。



敬一は金木犀の花から顔を離すと、微笑んで呟いた。

「お母さんが金木犀の花を見たら喜ぶよね。採って帰ろうかな。でも、外で咲いている姿を見た方が喜ぶから、一緒に見に来た方が良いかな。」



金木犀の花の甘い香りが、敬一を包んでいる。



敬一は金木犀の花を見ながら微笑んで呟いた。

「家へ帰ったらお母さんに直ぐに話をしよう。」



敬一は急いで家へと帰って行った。



それから少し後の事。



ここは、東京の町。



敬一と母親の美鈴が住む家。



敬一は元気良く帰ってきた。



美鈴が家の中に居る様子がない。



敬一は寂しそうに呟いた。

「お母さん。まだ帰ってきていないんだ。」



敬一は残念そうに軽くため息を付いた。



それから暫く後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



美鈴が帰ってきた。



敬一は美鈴の前に来ると、笑顔で話し出す。

「お母さん! お帰りなさい!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す

「敬一。ただいま。遅くなってしまって、ごめんなさい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! 金木犀の花がたくさん咲いている場所を見つけたんだ! 緑色の葉と金色のような花の色が綺麗だったよ! とても甘い香りがしていたよ!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「金木犀の花がたくさん咲いている様子を見たのね。羨ましいわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「明日になったら一緒に見に行こうよ!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。



その翌日の事。



ここは、東京の町。



朝から雨が降っている。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



家の縁。



敬一と美鈴は、雨の降る様子を一緒に見ている。



敬一は美鈴を見ると、心配そうに話し出す。

「お母さん。金木犀の花は、雨が降ると直ぐに散ってしまうんだよね。」

美鈴は敬一を見ると、微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に心配そうに話し出す。

「今日は出来るだけ早く帰ってくるからね。帰ってきたら直ぐに金木犀を見に行こうね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴を心配そうに見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。何て顔をしているの。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。



敬一は雨の降る中を出掛けて行った。



それから暫く後の事。



ここは、東京の町。



雨は朝より強く降り始めた。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



敬一が慌てた様子で帰ってきた。



美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一。お帰りなさい。」

敬一は美鈴に心配そうに話し出す。

「お母さん。雨が朝より少し強く降っているけれど、金木犀を一緒に見に出掛けようよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「雨が更に強く降ると困るから、金木犀を見に出掛けるのは明日にしましょう。」

敬一は美鈴に心配そうに話し出す。

「明日だと金木犀の花が散ってしまうかも知れないよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。少し濡れているわよ。手拭と着替えを用意するわね。」

敬一は美鈴に心配そうに話し出す。

「たいして濡れていないから大丈夫だよ。僕は直ぐに出掛けても大丈夫だよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「濡れたままだと風邪をひくかも知れないから、敬一が着替えてから話しをしましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「良く考えたら、出掛けている間に雨が強く降ったら、お母さんが濡れてしまうよね。気が付かなくてごめんね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんの事は心配しなくて良いから、自分の事を心配しなさい。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「手拭などの用意をするから、敬一は部屋で着替えの準備をしていなさい。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。



美鈴は手拭などの用意するために、その場から居なくなった。

敬一は自分の部屋に向かうために、その場から居なくなった。



その翌日の事。



ここは、東京の町。



雨は陽が明ける前に止んだ。



朝から青空が広がっている。



ここは、敬一が見掛けた金木犀の花がたくさん咲いている場所。



金木犀の花は、昨日の雨でほとんど散っていた。



周りの地面は、金色の様な小さな花で覆われている。



金木犀の花が散った後の様子は、金色の様な毛氈に見える。



敬一と美鈴は、金木犀の傍に居る。



敬一は金木犀を残念そうに見ている。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。何て顔をしているの。」

敬一は美鈴を見ると、残念そうに話し出す。

「金木犀の花を見付けた時に採ってくれば良かったね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「金木犀の花が一度にたくさん散った後の様子は、金色の毛氈のようね。花が散ったばかりで荒れていないから、更に綺麗な金色の毛氈のように見えるわね。」

敬一は美鈴を心配そうに見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「金木犀の花は、散った後の姿も綺麗よね。敬一と一緒に見る事が出来て嬉しいわ。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一を微笑んで見た。



それから数日後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。斉藤さんの家に出掛けてくるね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんとご家族の方に迷惑を掛けないようにね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。



敬一は藤田五郎の家へと元気良く出掛けていった。



それから少し後の事。



ここは、東京の町。



藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。



藤田五郎は仕事に出掛けているので家に居ない。

時尾と勉の二人だけとなっている。



敬一が到着した。



藤田五郎の家には、時尾、勉、敬一の三人となった。



ここは、家の縁。



時尾と敬一は、客間へ向かって歩き出そうとした。



勉が時尾と敬一の前に笑顔で現れた。



敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。こんにちは。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「あそぼ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「勉君と一緒に遊んでも良いですか?」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「敬一君は着たばかりなの。先に休んでもらいましょう。」

勉は時尾に笑顔で頷いた。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「お茶の用意をしてくるから、勉と一緒に客間で待っていてね。」

敬一は時尾を微笑んで話し出す。

「はい。」

勉は時尾と敬一を笑顔で見た。

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「一緒に客間に行こう。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。



時尾はお茶の用意をするために、その場から居なくなった。



勉は客間へと向かって笑顔で歩き出した。

敬一は勉の様子を確認しながら、微笑んで歩き出した。



それから僅かに後の事。



ここは、客間の傍。



勉と敬一は、客間の傍に来た。



敬一の元に甘い香りが届いた。



敬一は不思議そうに辺りを見回した。



障子の開いている客間から、甘い香りが届いたらしい。



敬一は客間の中を不思議そうに覗き込んだ。



客間の中には、金木犀の花がたくさん咲く小枝が、花瓶に数本ほど挿してある。



敬一は勉を見ると、微笑んで話し出す。

「金木犀の花が咲いているね。甘い香りがするね。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。



敬一は客間の中へ微笑んで入って行った。

勉は敬一の後に続いて、客間の中へ微笑んで入って行った。



ここは、客間。



客間の中は金木犀の花の香りに包まれている。



敬一は勉を笑顔で見た。

勉は敬一を笑顔で見た。



時尾がお茶の用意をお盆に載せて、敬一と勉の傍に来た。



敬一は時尾を微笑んで見た。

勉は時尾を笑顔で見た。

時尾は敬一の前に微笑んでお茶を置いた。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「金木犀の花が花瓶に挿してありますね。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「数日ほど前に、勉と一緒に散歩をしている途中で、金木犀の花がたくさん咲いている場所を通り掛かったの。勉が金木犀の花を気に入ったから、少し分けてもらったの。分けてもらった金木犀の花を、私と勉の部屋に飾ったの。今日は敬一君が来るから、客間に飾る事にしたの。」

敬一は時尾に寂しそうに話し出す。

「僕も何日か前に、金木犀の花がたくさん咲いている場所を見つけました。お母さんに話しをして、翌日に一緒に見る約束をしました。でも、翌日に強い雨が降ったので、予定を更にその翌日に変更しました。お母さんと一緒に出掛けた時には、金木犀の花がほとんど散ってしまいました。お母さんは地面に散った金木犀の花を見ながら、金色の毛氈みたいで綺麗だと笑顔で話していました。僕はお母さんに綺麗に咲いている金木犀の花を見てもらいたかったです。」



勉が花瓶から金木犀の小枝を笑顔で引き抜いた。



敬一は勉を不思議そうに見た。




勉は金木犀の小枝を持ちながら、敬一の前に笑顔で来た。



敬一は勉を微笑んで見た。

勉は金木犀の小枝を差し出すと、敬一に笑顔で話し出す。

「あげる。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。ありがとう。でも、勉君もらってきた金木犀だよね。僕は自分で探すよ。」

勉は敬一に金木犀の小枝を差し出すと、敬一に微笑んで話し出す。

「あげる。」

敬一は時尾を確認するように見た。

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は勉を微笑んで見た。

勉は敬一に金木犀の小枝を笑顔で差し出している。

敬一は金木犀の小枝を受け取ると、勉に微笑んで話し出す。

「勉君。ありがとう。帰る時まで金木犀の小枝を花瓶に挿していても良いかな?」

勉は敬一に笑顔で頷いた。



敬一は金木犀の小枝を花瓶に戻した。



敬一は勉に微笑んで話し出す。

「金木犀の花の咲いている様子を見ながら、一緒に話しをしようか。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「金木犀の花の香りは、甘い香りがして気持ちが落ち着くよね。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

敬一は勉を笑顔で見た。



時尾は微笑んで客間から出て行った。



それから少し後の事。



ここは、客間。



時尾は客間の障子を静かに開けた。



時尾の元に金木犀の花の香りが届いた。



敬一と勉が、畳の上で横になって、気持ち良さそうに眠っている姿がある。



時尾は客間の中に静かに入った。



客間の中は金木犀の花の香りに包まれている。



時尾は勉と敬一の様子を微笑んで確認をした。



敬一は横になったまま、ゆっくりと目を開けた。



時尾は敬一を微笑んで見ている姿がある。



敬一は慌てて起き上がると、時尾と勉を驚いた表情で見た。



勉は気持ち良さそうに横になって寝ている。



敬一は時尾に恥ずかしそうに話し出す。

「勉君と話しをしている最中に、気持ちが良くなって寝てしまいました。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「金木犀の香りの中に居ると、気持ち良くなるわよね。」

敬一は時尾を恥ずかしそうに見た。

時尾は勉を優しく抱きかかえた。

勉は気持ち良さそうに眠り続けている。

時尾は勉を抱きながら、敬一に微笑んで話し出す。

「勉を部屋で寝かせてくるわね。」

敬一は時尾に微笑んで頷いた。



時尾は勉を抱きながら、客間から微笑んで出て行った。



それから少し後の事。



ここは、玄関。



時尾と敬一は、一緒に居る。



時尾は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を、敬一に微笑んで差し出した。

敬一は時尾に心配そうに話し出す。

「たくさん頂かなくても大丈夫です。」

時尾は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を差し出しながら、敬一に微笑んで話し出す。

「美鈴さんと敬一君にも金木犀の花を楽しんで欲しいの。だから遠慮せずに受け取って。」

敬一は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を受け取ると、時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんが喜んでくると良いわね。」

敬一は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を持ちながら、時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「気を付けて帰ってね。」

敬一は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を持ちながら、時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

時尾は敬一を微笑んで見た。



敬一は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を抱きながら、自分の家へと嬉しそうに帰って行った。



それから少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



敬一は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を持ちながら、笑顔で帰ってきた。



美鈴は敬一を不思議そうに見た。

敬一は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を差し出すと、美鈴に微笑んで話し出す。

「時尾さんと勉君から、金木犀の花の咲いている小枝を分けてもらったんだ。」

美鈴は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を受け取ると、敬一に微笑んで話し出す。

「次に会った時に、斉藤さんとご家族の方に、お母さんがお礼を言っていたと伝えてね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「分かった。僕から必ず伝えるね。」

美鈴は金木犀の花の咲いた数本の小枝を包んだ物を抱きながら、敬一に微笑んで話し出す。

「直ぐに部屋に飾りましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。



それから少し後の事。



ここは、沖田総司の位牌の有る部屋。



敬一と美鈴は、一緒に居る。



美鈴は金木犀の花の咲いた小枝を挿した花瓶を、沖田総司の位牌の前に微笑んで置いた。

敬一は沖田総司の位牌に微笑んで話し出す。

「お父さん。斉藤さんと時尾さんと勉君から、金木犀の花の咲いた小枝を分けてもらったんだ。金木犀の花の香りを楽しんでね。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴を微笑んで見た。



美鈴は部屋から微笑んで出て行った。



敬一は美鈴より少し遅れて部屋から出て行った。



それから少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



美鈴は敬一に話し掛けようとしたが姿がない。


美鈴は不思議そうに考え込んだ。



家の中に飾った金木犀の花の香りが美鈴を包んだ。



美鈴は考え込みながら呟いた。

「総司さんの部屋に居るのかしら?」



美鈴は沖田総司の位牌の有る部屋へと向かった。



それから僅かに後の事。



ここは、沖田総司の位牌の有る部屋。



美鈴は部屋の中に微笑んで入った。



部屋の中は金木犀の花の香りに包まれている。



敬一は沖田総司の位牌の前で横になっている。



美鈴は敬一の様子を心配そうに見た。



敬一は気持ち良さそうに眠っている。



美鈴は敬一を安心した表情で見た。

敬一は気持ち良さそうに眠り続けている。



美鈴は部屋の外へと静かに出て行った。



それから僅かに後の事。



ここは、沖田総司の位牌の有る部屋。



美鈴は掛け布団を抱えながら部屋の中に静かに入った。



部屋の中は金木犀の花の香りに包まれている。



敬一は気持ち良さそうに眠り続けている。



美鈴は敬一に優しく掛け布団を掛けた。

敬一は気持ち良さそうに眠り続けている。

美鈴は沖田総司の位牌を見ると、微笑んで呟いた。

「私は敬一がいつでも食事が出来るように、支度を始めようと思います。総司さん。敬一をお願いします。」



部屋の中の金木犀の花の香りが僅かに強まった。



美鈴は部屋から静かに出て行った。



それから暫く後の事。



ここは、藤田五郎の家。



藤田五郎が仕事を終えて戻ってきた。



ここは、玄関。



時尾は藤田五郎の前に微笑んで現れた。



藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お帰りなさい。お部屋でお酒を召し上がられますか?」

藤田五郎は時尾に普通の表情で黙って頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「準備が出来次第、お部屋にお持ちします。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。



時尾は家の中へと微笑んで入って行った。

藤田五郎は家の中へと普通に入って行った。



それから少し後の事。



ここは、藤田五郎の部屋。



時尾が酒と肴をお盆に載せて、部屋の中に微笑んで入ってきた。



藤田五郎は時尾に普通に話し出す。

「縁で月を見ながら酒を飲みたいと思う。飲み終わったら持っていく。」

時尾は酒と肴を載せたお盆を藤田五郎に手渡すと、微笑んで話し出す。

「分かりました。」

藤田五郎は酒と肴を載せたお盆を受け取ると、時尾を普通の表情で見た。



時尾は部屋から微笑んで出て行った。



ここは、藤田五郎の部屋の前に在る縁。



藤田五郎は酒と肴を載せたお盆を持ちながら、普通に縁に出た。



夜空に月が綺麗な姿で浮かんでいる様子が見える。



庭の様子は普段と同じまま変わった様子はない。



藤田五郎は縁に座ると、酒と肴を載せたお盆を静かに置いた。



藤田五郎は自分で酌をして、普通の表情で酒を飲み始めた。



庭に季節はずれの桜が突然に咲き始めた。



藤田五郎は酒を飲みながら、普通の表情で横を見た。



沖田総司が藤田五郎の横に微笑んで座っている。



藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見ながら酒を飲んでいる。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。こんばんは。」

藤田五郎は酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「月が綺麗ですね。」

藤田五郎は酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。



辺りに微かな風が吹いた。



沖田総司と藤田五郎の元に、金木犀の香りが届いた。



沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「金木犀の花の香りがしますね。」

藤田五郎は酒を飲みながら、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの家に有る金木犀の花の香りでしょうか?」

藤田五郎は酒を飲みながら、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は夜空を微笑んで見た。

藤田五郎は酒を飲むのを一旦止めると、夜空を普通の表情で見た。



先程まで無かったはずの雲が、夜空を僅かに覆っている。

月の光は雲の間からいろいろな輝きを見せている。



沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ」

藤田五郎は沖田総司を見ると、普通に話し出す。

「総司が歌を詠むなんて珍しいな。」

沖田総司は藤田五郎に恥ずかしそうに話し出す。

「月が雲の間で輝いている様子を見ていたら、今の歌を思い出しました。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が月を見て歌を思い出すなんて、珍しい事があるんだな。」

沖田総司は藤田五郎を苦笑しながら見た。

藤田五郎は夜空を普通の表情で見た。

沖田総司は夜空を苦笑しながら見た。



先程まで月の輝きの姿をいろいろと変化させていた雲が無くなっている。

はっきりとした月の光が夜空に輝いている。



沖田総司は藤田五郎を見ると、微笑んで話し出す。

「夜空に有った雲が無くなっていますね。」

藤田五郎は沖田総司を見ると、普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「金木犀の花の香りが届いたり、月の輝きを僅かに覆う雲が現れたり消えたり、不思議な事がたくさん起こりましたね。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「不思議な事が起きたついでに、美鈴さんと敬一の元に行って、歌を詠んで来い。」

沖田総司は藤田五郎を不思議そうに見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「敬一と美鈴さんには、総司の姿が見えないし詠んだ歌も分からないが、傍に居てやれ。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで頷いた。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は歌に関しては更なる精進が必要だ。総司が詠んだ歌と状況を後で教えろ。更に良い歌が有るはずだ。時間を掛けてゆっくりと教えてやる。」

沖田総司は藤田五郎に苦笑しながら話し出す。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。早く行け。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで軽く礼をすると、静かに居なくなった。



藤田五郎は普通の表情で庭を見た。



季節はずれの桜は元の姿に戻っている。



藤田五郎は夜空に浮かぶ月を見ながら、普通の表情で酒を再び飲み出した。



それから僅かに後の事。



ここは、敬一と美鈴の住む家。



沖田総司の位牌の有る部屋の前の縁。



敬一と美鈴は、隣り合って座っている。



敬一は美鈴に申し訳なさそうに話し出す。

「お母さん。遅くまで寝ていてごめんね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「食事は普段より少し遅かったけれど、きちんと食べたから、そんなに心配する必要はないわよ。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「部屋に金木犀の花の咲いた小枝を飾って寝たいな。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は夜空を微笑んで見た。



夜空には綺麗な月が浮かんでいる。



敬一は美鈴を見ると、微笑んで話し出す。

「お母さん。月が綺麗だね。」

美鈴は夜空に浮かぶ月を見ながら、敬一に微笑んで話し出す。

「本当ね。とても綺麗ね。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。



辺りに微かに風が吹いた。



敬一と美鈴の元に、金木犀の花の香りが届いた。



敬一は不思議そうに辺りを見回した。



沖田総司の位牌の有る部屋の障子が、半分ほど開いている。



敬一は美鈴を見ると、微笑んで話し出す。

「お父さんの部屋にある金木犀の花の香りかな?」

美鈴は敬一を見ると、微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に恥ずかしそうに話し出す。

「また眠ってしまったどうしよう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「早めに寝る準備をしましょう。準備が終わってから、お父さんの部屋の前で、月を見ながらゆっくりと話しをしましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。



美鈴は立ち上がると、縁を微笑んで歩き出した。



敬一は立ち上がると、夜空を微笑んで見た。



月は綺麗な姿で夜空に浮かんでいる。



敬一は夜空を見ながら、微笑んで呟いた。

「秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ」



金木犀の花の香りが僅かに強まった。



敬一は月を見ながら、微笑んで呟いた。

「歌の内容と少し違うけれど、月が綺麗だから良いよね。」



敬一は沖田総司の位牌の在る部屋を見ると、微笑んで呟いた。

「お父さん。お母さんと僕は元気に過ごしているから、安心してね。」



綺麗な月の光が敬一を照らした。



敬一は視線を変えると、縁を微笑んで歩き出した。



月は更なる綺麗な輝きを見せながら、秋の季節を彩っていく。

金木犀の花の香りも秋の季節を彩っていく。

たくさんの出来事が秋の季節を彩っていく。




〜 完 〜





はじめに       後書き

目次


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