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新撰組異聞 〜 真夏の夜の夢 仏桑花と夢芝居 〜


今は夏の季節。



ここは、京の町。



暑い日が続いている。



日中も夜も暑く感じる。

夜になると、日差しが無くなるので、日中よりは僅かに過ごしやすくなる。



そんなある夏の夜の事。



ここは、京の町。



夜空には月や星が綺麗に輝いている。



ここは、新撰組の屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は蚊帳の中で気持ち良さそうに寝ている。



時折感じる不思議な気配が部屋の中を包んだ。



沖田総司は床に横になったまま、ゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司の顔を笑顔で覆うようにして覗いている姿があった。



沖田総司は、雰囲気から少女とは別人だと違う事が直ぐに分かった。



沖田総司は床に横になったまま、少女に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。こんばんは。」

夢と呼ばれた少女は、沖田総司の顔からゆっくりと離れた。



沖田総司は床でゆっくりと体を起こした。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は床に体を起したまま、夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司に微笑んで抱きついた。

沖田総司は顔を赤くして動きが止まってしまった。



夜空には月とたくさんの星が輝いている。

辺り一面に草原が広がっている。

心地良い空気を感じる。



沖田総司と夢は、抱き合ったまま草原に居る。



夢は微笑みながら、沖田総司からゆっくりと離れた。

沖田総司は顔を赤くしながら夢を見た。

夢は沖田総司に台本を差し出すと、微笑んで話し出す。

「総司さん。台本です。受け取ってください。」

沖田総司は夢と台本を不思議そうに交互に見た。

夢は沖田総司に台本を差し出しながら、微笑んで話し出す。

「夜の国でお芝居をします。総司さんに客演をして頂きたいと思い、夜の国にご招待しまた。」

沖田総司は夢に恥ずかしそうに話し出す。

「私には芝居は出来ない。」

夢は沖田総司に台本を差し出しながら、微笑んで話し出す。

「台詞の少ない役をお願いしたいと思っています。客演ですが、安心してください。」

沖田総司は夢に恥ずかしそうに話し出す。

「申し訳ないが、私には芝居は無理だと思う。遠慮させてくれ。」

夢は沖田総司に台本を差し出しながら、微笑んで話し出す。

「美鈴さんは総司さんが出演するなら、一緒に出演したいと、楽しそうに話しをしているそうです。」

沖田総司は夢に不思議そうに話し出す。

「鈴ちゃんも出演する予定なの?」

夢は沖田総司に台本を差し出しながら、微笑んで話し出す。

「はい。美鈴さんは、お姫様役です。総司さんは、王子様役です。」

沖田総司は夢に不思議そうに話し出す。

「王子様とは、一国の主の息子という事で良いのかな?」

夢は沖田総司に台本を差し出しながら、微笑んで頷いた。

沖田総司は考え込みながら、夢と台本を交互に見た。

夢は沖田総司に台本を差し出しながら、微笑んで話し出す。

「美鈴さんは今回のお芝居を、とても楽しみにしているそうです。」

沖田総司は考え込みながら、台本を見た。

夢は沖田総司の胸元に台本を勢い良く差し出した。

沖田総司は夢から台本を受け取る形になってしまった。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「では、お芝居を楽しみにしています。」

沖田総司は胸元に台本を抱えながら、夢に慌てた様子で話し出す。

「夢ちゃん! 私は・・・」

夢は沖田総司の話の途中で、微笑みながら静かに居なくなった。



沖田総司は台本を抱えながら、困惑した様子で呟いた。

「芝居と言われても困るな。でも、鈴ちゃんが楽しみにしているんだよね。私が断ったら鈴ちゃんが残念がるよね。困ったな。どうしたら良いのかな。」

辺りには人が居ないため、沖田総司の質問に返事をする者は誰も居ない。

沖田総司は台本を抱えながら、困惑した様子で呟いた。

「斉藤さんは芝居に出演するのかな?」

辺りを見回したが、斉藤一と夢が近くに居る気配は感じない。

沖田総司は台本を抱えながら、困惑した様子で呟いた。

「どうしよう。困ったな。」



辺りに心地良い風が吹いた。



沖田総司の目の前に、斉藤一と少女が現れた。



少女は微笑みながら、胸に台本を抱えている。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。



沖田総司は台本を抱えながら、斉藤一と少女を驚いた表情で見た。

少女は台本を抱えながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は台本を抱えながら、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。こんばんは。」

少女は台本を抱えながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんが王子様役でお芝居に出演されると聞きました。」

沖田総司は台本を抱えながら、少女を僅かに困惑した表情で見た。

少女は台本を抱えながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「私はお姫様の役の出演のお話しがありました。お芝居は難しいので、一度はお断りしました。総司さんが王子様役で出演されると教えて頂きました。いろいろと考えましたが、お受けする事にしました。」

沖田総司は台本を抱えながら、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんのお姫様役を見てみたいな。」

少女は台本を抱えながら、沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「自信は有りませんが、総司さんと一緒にお芝居をしても恥ずかしくないように、一所懸命に努力したいと思います。」

沖田総司は台本を抱えながら、少女に微笑んで話し出す。

「芝居の練習や打ち合わせなの必要があるから、別な場所で話をしようか。」

少女は台本を抱えながら、沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は台本を抱えながら、斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司、斉藤一、少女は、その場から静かに居なくなった。



ここは、夢の家。



夢も含めた家の人は、誰も居ない。



ここは、夢の家の庭。



沖田総司、斉藤一、少女の三人は、庭に静かに現れた。



沖田総司は台本を抱えながら、斉藤一に不思議そうに話し出す。

「斉藤さんは台本を持っていませんね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は芝居をしない。」

沖田総司は台本を抱えながら、斉藤一に不思議そうに話し出す。

「私は芝居に出演するのに、斉藤さんは出演しないのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「一々俺に聞くな。」

沖田総司は台本を抱えながら、斉藤一を不思議そうに見た。



少女は縁に座ると、台本を微笑んで読み始めた。

沖田総司は少女の横に座ると、台本を不思議そうに読み始めた。

斉藤一は沖田総司の横に座ると、沖田総司と少女を普通の表情で見た。



沖田総司は台本を読んでいる途中で、顔が真っ赤になった。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は顔を赤くして台本を持ちながら、斉藤一に動揺した様子で話し出す。

「斉藤さん。私にはこのような台詞は言えません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺に台詞の話をしても、台本の内容は変わらないぞ。」

沖田総司は顔を赤くして台本を持ちながら、斉藤一に動揺した様子で話し出す。

「誰に話しをすれば良いのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「脚本家か演出家だろ。」

沖田総司は顔を赤くして台本を持ちながら、斉藤一に動揺した様子で話し出す。

「脚本家と演出家は、誰なのですか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ながら、黙って横を指した。

沖田総司は顔を赤くして台本を抱えたまま、斉藤一の指した先を不思議そうに見た。



沖田総司と斉藤一から少し離れた場所に、少女と見知らぬ女性が一緒に座っている。



少女は見知らぬ女性に微笑んで台本を見せている。

見知らぬ女性は少女に台本を指しながら、微笑んで何かを話し出そうとした。

少女は台本を持ちながら、沖田総司を微笑んで見た。

見知らぬ女性は話しを止めると、沖田総司を微笑んで見た。



沖田総司は少女と見知らぬ女性を不思議そうに見た。



少女は台本を縁に置くと、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。お芝居の関係者の方で、桜さんと言うそうです。」

桜と呼ばれた女性は、沖田総司に微笑んで話し出す。

「こんばんは。はじめまして。桜と言います。」

沖田総司は顔を赤くして台本を抱えたまま、桜と呼ばれた女性に不思議そうに軽く礼をした。



沖田総司は台本を持ちながら、桜に顔を赤くして話し出す。

「桜さん。私はこのような台詞を言うのは無理です。」

桜は沖田総司に微笑んで話し出す。

「この台本には顔を赤くするような台詞は無いと思います。」

沖田総司は台本を持ちながら、桜に顔を赤くして話し出す。

「しっかりと有ります。」

桜は沖田総司に呆れた様子で話し出す。

「夢さんから聞いた通り、物凄い恥ずかしがり屋さんなのですね。」

沖田総司は台本を抱きながら、顔を赤くして桜を見た。

桜は少女を微笑んで見た。

少女は台本を抱えたまま、沖田総司を不安そうに見た。

沖田総司は台本を抱きながら、顔を赤くして少女を見た。

桜は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。沖田さんは王子様役を辞退するそうです。申し訳ありませんが、沖田さんの代わりに、王子様役をお願いしても良いですか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は顔を赤くしながら、斉藤一と桜に確認するように話し出す。

「斉藤さんが王子様役をするという事は、台本の台詞を斉藤さんが鈴ちゃんに言う事になりますよね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は台本を抱きながら、斉藤一と桜に少し大きな声で話し出す。

「駄目です! 絶対に駄目です! 私が王子様役を演じます!」

桜は沖田総司に微笑んで話し出す。

「ではよろしくお願いします。」

沖田総司は台本を抱きながら、桜に顔を赤くして頷いた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は顔を赤くして台本を抱きながら、少女に少し大きな声で話し出す。

「鈴ちゃん! 私も一所懸命に演じるからね!」

少女は台本を抱えながら、沖田総司を笑んで見た。

桜は沖田総司と少女に微笑んで話し出す。

「舞台衣装を決めましょう。丈などの調整が必要になると思います。一緒に来てください。」

沖田総司は台本を抱きながら、桜に顔を赤くして頷いた。

少女は台本を抱きながら、桜に微笑んで頷いた。

桜は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さんも一緒に来てください。」

斉藤一は桜に普通の表情で頷いた。



沖田総司、斉藤一、少女、桜は、夢の家の庭から静かに居なくなった。



ここは、衣裳部屋の一室。



沖田総司、斉藤一、少女、桜は、部屋の中に静かに現れた。



桜はたくさんの衣装を指すと、沖田総司に微笑んで話し出す。

「王子様の衣装はこちらです。好きな衣装を選んでください。」

沖田総司は桜が指した衣装を不思議そうに見た。

桜は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は顔を赤くすると、桜に恥ずかしそうに話し出す。

「着替えないと駄目なのかな?」

桜は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。沖田さんの着ている着物は、王子様の着る物とは違います。」

沖田総司は顔を赤くしながら、桜に小さい声で話し出す。

「着物の王子様の衣装は有るかな?」

桜は沖田総司の見慣れた着物を指しながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「こちらに有る衣装の中から探してください。」

沖田総司は桜を見ると、顔を赤くしながら頷いた。

桜は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さん。沖田さんの衣装選びを手伝って頂けますか?」

斉藤一は桜に普通の表情で頷いた。

桜は少女を見ると、微笑んで話し出す。

「美鈴さん。お姫様の衣装は、隣の部屋に有ります。一緒に来てください。」

少女は桜に微笑んで話し出す。

「はい。」

桜は沖田総司と斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「私と美鈴さんは、隣の部屋に行きます。」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「行ってきます。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。



少女と桜は、部屋から静かに居なくなった。



沖田総司は顔を赤くしながら、王子様の衣装を選んでいる。

斉藤一は一着の着物を手に取ると、沖田総司に普通の表情で差し出した。

沖田総司は斉藤一から、不思議そうに衣装を受け取った。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は衣装の確を始めた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は衣装を抱えながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。普通の衣装を選んでいますね。この衣装にします。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今の言葉はどういう意味だ?」

沖田総司は衣装を抱えながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「凄い仕掛けの有る衣装を選んだのかと思ってしまいました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は俺の事をどういう奴だと思っているんだ?」

沖田総司は衣装を抱えながら、斉藤一を困惑した様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



沖田総司と斉藤一の間に、不思議な雰囲気の沈黙が流れ始めた。



少女の穏やかな声が、部屋の外から聞こえてきた。

「総司さん。入っても良いですか?」



沖田総司は衣装を抱えながら、斉藤一に慌てた様子で話し出す。

「鈴ちゃんが来ました! 良かったですね!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「何が良かったんだ? ぜひ教えてくれ。」

沖田総司は衣装を抱えながら、斉藤一を苦笑した表情で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



少女の不思議そうな声が、部屋の外から聞こえてきた。

「総司さん。斉藤さん。大丈夫ですか? 少し時間をおいてから来た方が良いですか?」



沖田総司は衣装を抱えながら、部屋の外に居る少女に向かって、慌てた様子で話し出す。

「鈴ちゃん! 部屋に入っても大丈夫だよ!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「だから、何が良かったのか早く教えてくれ。」

沖田総司は衣装を抱えながら、斉藤一を動揺した様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



部屋の扉がゆっくりと開いた。



沖田総司は衣装を抱えながら、部屋の扉を微笑んで見た。



少女は戸に隠れながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんと斉藤さんに見て頂こうと思って、お衣装に着替えました。」



沖田総司は衣装を抱えながら、少女に微笑んで話し出す。

「楽しみだな。鈴ちゃん。早く見せて。」



少女は恥ずかしそうに部屋の中へと入ってきた。



少女の着ている衣装と髪型は、沖田総司には身見慣れない物だった。



沖田総司は少女を見た途端に顔が赤くなった。



少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「異国のお姫様の着るお衣装で、“どれす”と呼ぶそうです。“どれす”に似合うように、髪を結い直してもらいました。」

沖田総司は衣装を抱えながら、顔を真っ赤にして下を向いた。

少女は沖田総司に不安そうに話し出す。

「似合いませんか?」

沖田総司は衣装を抱えながら、顔を真っ赤にして下を向いている。

少女は沖田総司に寂しそうに話し出す。

「着替えてきます。」

沖田総司は衣装を抱えながら、顔を赤くしたまま、驚いた様子で顔を上げた。

少女は沖田総司に寂しそうに話し出す。

「私にはお姫様の役は相応しくないですよね。総司さんにご迷惑をお掛けする事のないように、更に努力します。」

沖田総司は顔を赤くして衣装を抱えながら、少女に慌てた様子で話し掛けようとした。

少女は寂しそうに部屋から出て行こうとした。

沖田総司は顔を赤くして衣装を抱えながら、少女に慌てた様子で話し出す。

「鈴ちゃん! 待って!」

少女は立ち止まると、沖田総司を不思議そうに見た。

沖田総司は顔を赤くして衣装を抱きながら、少女に慌てた様子で話し出す。

「鈴ちゃんの衣装は、とても良く似合っているよ! お姫様に見えるよ! 可愛くて似合っているから驚いたんだ! 私が鈴ちゃんと一緒に芝居をする時に、王子様に見えるように努力しないといけないと思ったんだ!」

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は衣装を抱きながら、顔を真っ赤にして少女を見た。

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「総司さんは王子様に見えます。」

沖田総司は衣装を抱えながら、少女に顔を真っ赤にして話し出す。

「ありがとう。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。



桜は扉越しに、沖田総司と少女と斉藤一を微笑んで見た。



それから少し後の事。



夜空には月の光が輝いている。



沖田総司、斉藤一、少女は、一緒に居る。

傍には、赤色や黄色や桃色など、色とりどりの花が綺麗に咲いている。



少女は先程とは違う“どれす”を着ている。

沖田総司は普段の着ている着物を着ている。



少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「綺麗なお花がたくさん咲いています。初めて見ます。お花の名前は何と言うのですか?」

沖田総司は色とりどりの花を一瞥すると、少女を見て、微笑んで話し出す。

「私の国では、“仏桑花”と書いて“ぶっそうげ”と呼んでいるんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「仏桑花は綺麗なお花ですね。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は仏桑花を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私の国では、“仏桑花”と呼んでいるけれど、“はいびすかす”とか“ひびすかす”と呼ぶ国があるそうだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「物知りですね。」

沖田総司は少女を照れた様子で見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「どの仏桑花が好き?」

少女は紅色の仏桑花を指すと、微笑んで話し出す。

「この紅色の仏桑花が好きです。」

沖田総司は紅色の仏桑花を手折ると、少女の髪に微笑んで挿した。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。

「とても良く似合っているよ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は顔を赤くして下を向くと、少女に小さい声で話し出す。

「あ、あなたの、ために、さ、咲いた、仏桑花のようだ。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は顔を赤くして下を向いたまま、少女に小さい声で話し出す。

「あ、あなたの、ま、前では、仏桑花も、か、か、霞んで、見える。」

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は顔を赤くして顔を上げると、直ぐに斉藤一を見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は顔を赤くして斉藤一を見ている。

少女は沖田総司を不思議そうに見た。



沖田総司、斉藤一、少女の間に、沈黙が流れ始めた。



桜の呆れた声が、沖田総司、斉藤一、少女の後ろから聞こえてきた。

「沖田さん。斉藤さんは、台詞を忘れた時に教える役の人です。頼ってはいけません。」



沖田総司は桜を見ると、恥ずかしそうに話し出す。

「斉藤さんを頼っている訳ではない。台詞が恥ずかしくて言えないだけだ。」

桜は沖田総司を呆れた様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「土方さんなら、この台詞は情感を込めて言う事が出来るな。」

沖田総司は顔を赤くしたまま、斉藤一に少し大きな声で話し出す。

「土方さんが代役をするのは、絶対に駄目です!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は顔を赤くして斉藤一を見た。

桜は沖田総司に呆れた様子で話し出す。

「分かりました。台詞を少し変更します。」

沖田総司は顔を赤くして桜を見ると、小さい声で話し出す。

「ありがとうございます。」

桜は沖田総司に苦笑しながら話し出す。

「どういたしまして。」

沖田総司は顔を赤くして桜を見た。

桜は、沖田総司、斉藤一、少女に、微笑んで話し出す。

「私は台詞の変更をしてきます。」

沖田総司は顔を赤くしたまま、桜に軽く礼をした。



桜は軽くため息を付くと、その場から静かに居なくなった。



ここは、夢の家の庭。



庭からは、月が綺麗に輝く姿が見える。



夢はいつも一緒に居る男性と一緒に、縁に座っている。



桜は、夢と男性の前に静かに現れた。



夢と男性は、桜を不思議そうに見た。



桜は夢と男性に苦笑しながら話し出す。

「沖田さんは台詞が恥ずかしくて言えないそうです。台本を少し書き直す事にしました。」

男性は桜に微笑んで話し出す。

「沖田さんは、夢の話しの通り、本当に照れ屋だね。」

夢は男性を微笑んで見た。

男性は夢を見ると、微笑んで話し出す。

「芝居を見に行く前に、どこかに出掛けようか。」

夢は男性に微笑んで頷いた。

男性は桜に微笑んで話し出す。

「出掛けてくるね。」

夢は桜を微笑んで見た。

桜は夢と男性に微笑んで見た。



夢と男性は、縁から静かに居なくなった。



桜は夜空を見ながら、軽くため息をついた。



夜空には、月とたくさんの星が綺麗に輝いている。



桜は夜空を見ながら、困惑した様子で呟いた。

「台詞を早く書き換えよう。」



涼しい風が吹いてきた。



桜は縁に座ると、台本を広げて考え込み始めた。



それから少し後の事。



夜空には月とたくさんの星が輝いている。



沖田総司、斉藤一、少女は、一緒に居る。

傍には、赤色や黄色や桃色など、色とりどりの仏桑花が綺麗に咲いている。



少女は先程とは違う“どれす”を着ている。

沖田総司は普段とは違う着物を着ている。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。どの仏桑花が好き?」

少女は桃色の仏桑花を指すと、微笑んで話し出す。

「この桃色の仏桑花が好きです。」

沖田総司は桃色の仏桑花を手折ると、少女の髪に挿した。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「とても良く似合うよ。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは紅色より桃色の仏桑花の方が似合うね。」

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。“どれす”もとても良く似合っているよ。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「そろそろ時間だね。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「桃色の仏桑花は、花瓶に挿しておこう。後でもう一度、髪に挿してあげる。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女の髪から桃色の仏桑花を丁寧に取った。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は斉藤一に桃色の仏桑花を差し出すと、微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お願いします。」

斉藤一は沖田総司から桃色の仏桑花を普通の表情で受取った。

沖田総司は少女に微笑んで手を差し出した。

少女は沖田総司の手を微笑んで手に取った。

沖田総司と少女は、手を繋ぎながら歩き出した。

斉藤一は桃色の仏桑花を持ちながら、沖田総司と少女の後ろを黙って付いていった。



色とりどりの仏桑花の咲く夏の夜。

沖田総司、斉藤一、少女の夜の国での時間は、まだまだ続きます。




〜 完 〜





はじめに       後書き

目次


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