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新撰組異聞外伝 〜 藤花の祭 重なる想いとすれ違い 〜
〜 後編 〜
沖田総司は怪訝そうな表情で後ろを振り向いた。
沖田総司の肩を掴んでいたのは土方歳三だった。
沖田総司は土方歳三の顔を見ると、直ぐに半泣きのような表情になり話し出す。
「土方さん!」
土方歳三は沖田総司に呆れた表情で話し掛ける。
「総司。何て顔をしているんだ。源さんが待っている。戻るぞ。」
沖田総司は土方歳三に真剣な表情で話し出す。
「土方さん! 山口君もここに居るはずなんです! 一緒に探してください!」
土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。
「物凄い偶然になるが、あの子もここに居るようだな。」
沖田総司は土方歳三に笑顔で話し出す。
「やっぱり山口君もここに来て居るんですね!」
土方歳三は沖田総司に呆れた様子で話し掛ける。
「とにかく、源さんが心配して待っているはずだから、早く戻って安心させよう。探すのはその後だ。」
沖田総司は土方歳三を寂しそうに見ながら頷いた。
土方歳三と沖田総司は、井上源三郎が待っている場所へと歩き出した。
山口勝と山口一は、天神様の境内を出て、参道を歩いている。
山口勝が食べたがっていた、くず餅を売っているお店に到着した。
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「一! お店の中に入るわよ!」
山口一は山口勝に普通に話し掛ける。
「店の中には入るが、俺は食べない。」
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「一も一緒にくず餅を食べようよ。」
山口一は山口勝に普通に話し出す。
「甘い物に興味はない。いつもの様に姉さん一人で食べてくれ。」
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「このお店のくず餅は、とてもおいしいのよ。一口だけでもいいから食べてみようよ。」
山口一は山口勝に普通に話し掛ける。
「興味はない。」
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「何事も経験。先ずは、一口だけ食べてみようよ。」
山口一は山口勝を見ながら黙って頷いた。
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「一! お店の中に入るわよ!」
山口一は山口勝を見ながら黙って頷いた。
山口勝と山口一は、お店の中へと入っていった。
土方歳三と沖田総司は、井上源三郎のもとに戻ってきた。
井上源三郎は沖田総司と土方歳三を微笑んで見た。
沖田総司は土方歳三に真剣な表情で話し掛ける。
「山口君を探しに行きます。」
土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。
「総司。落ち着け。」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し出す。
「土方さん! 山口君を早く探しに行かせてください! この時間だと帰る頃かもしれないではないですか!」
井上源三郎は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「山口一君らしき子だったら、さっき見かけましたよ。」
沖田総司は井上源三郎に真剣な表情で話し掛ける。
「本当ですか?!」
井上源三郎は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「山口一君らしき子は、以前多摩で見掛けた女の子に似た子と、一緒に居ました。なので、相手の少年が山口君だと思います。二人の面差しは似ていたので、姉弟かもしれませんね。」
沖田総司は井上源三郎に真剣な表情で話し掛ける。
「源さん! 二人は今どの場所に居そうですか?」
井上源三郎は沖田総司に考え込みながら話し出す。
「帰る様子に見えました。」
沖田総司は井上源三郎の話を聞くと、慌てて山門に向かおうとした。
土方歳三が沖田総司の腕を掴んだ。
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「土方さん! 離してください! やっと山口君を見つけたんです! 早く行かせてください! 山口君が帰ってしまうではないですか!」
土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。
「あの子は女の子と一緒に、亀戸の天神様に藤の花を見に来たんだろ。そうしたら、帰りに、立ち寄る可能性の高い場所が、近くに在るだろ。」
沖田総司は土方歳三と井上源三郎に、真剣な表情で話し掛ける。
「土方さん! 源さん! 早く行きましょう!」
土方歳三と井上源三郎は、急いで歩く沖田総司を追い掛けていくように、亀戸の天神様の境内を後にした。
ここはくず餅を売っている店の中。
山口勝は山口一の分も含めて、二人分のくず餅を注文した。
山口一は山口勝に普通に話し掛ける。
「俺は一人分も食べないぞ。」
山口勝は嬉しそうに山口一に話し掛ける。
「一は食べられる分のくず餅を食べてね。残りは私が食べるから安心して。」
山口一は山口勝を見ながら黙って頷いた。
山口勝は山口一に笑顔で話し掛ける。
「ここのお店のくず餅はおいしいのよ! 二人分くらい余裕で食べられるのよ!」
山口一は笑顔の山口勝を黙って見ている。
店の人が来て、山口一と山口勝の前に二人分のくず餅を置いた。
山口勝は嬉しそうにくず餅を見ている。
山口一は普通の表情でくず餅を見ている。
山口勝は笑顔で声を出した。
「いただきます!」
山口一は山口勝とくず餅を交互に見ている。
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「やっぱりおいしいね。」
山口一はくず餅を黙って見ている。
山口勝は山口一に皿を差し出すと、微笑んで話し掛ける。
「おいしいから、食べてみて。」
山口一はくず餅を一切れ取って食べ始めた。
山口勝は山口一に嬉しそうに話し掛ける。
「おいしいでしょ!」
山口一は山口勝を見ながら黙って頷いた。
山口勝は山口一を苦笑しながら見ている。
山口一はくず餅を黙って見ている。
山口勝は自分の分のくず餅を、おいしそうに食べ始めた。
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「一はもう食べないの?」
山口一は山口勝を見ると黙って頷いた。
山口勝は山口一の皿と自分の皿を交換した。
山口勝は嬉しそうにくず餅を食べている。
山口一は山口勝の様子を普通に見ている。
土方歳三と沖田総司と井上源三郎の三人は、くず餅を売っているお店の前に居る。
沖田総司は土方歳三に心配そうに話し掛ける。
「このお店で良いのですよね。」
土方歳三は沖田総司を見ながら普通に話し掛ける。
「亀戸の天神様のお参りをした後に、食べる物といったらくず餅だろ。だから、この店に立ち寄る可能性は高いぞ。」
沖田総司は土方歳三を不安そうに見ている。
土方歳三は微笑んで沖田総司に話し掛ける。
「総司もこの店のくず餅を食べたいから、亀戸の天神様の藤の花を見に来たんだろ。だったら、あの子も女の子と一緒に、この店に立ち寄っている可能性は高いぞ。」
沖田総司は土方歳三を不安そうに見ながら頷いた。
土方歳三、沖田総司、井上源三郎の三人は、お店の中に入っていった。
沖田総司はお店の中に入ると、直ぐに中を見回した。
土方歳三と井上源三郎も、お店の中を見回した。
しかし、山口勝と山口一らしき二人の姿はない。
沖田総司は土方歳三と井上源三郎を不安そうに見た。
土方歳三は店内を一瞥すると、お店の人に何かを話し掛けている。
沖田総司は寂しそうに店内を見ている。
土方歳三は沖田総司を見ると、普通に話し掛ける。
「総司。あの子と姉さんらしき若い子が、店に来ていたらしい。」
沖田総司は土方歳三を不安そうに見ている。
土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。
「だが、ほんの少し前に店を出て行ったそうだ。」
沖田総司は寂しそうに店を出ようとしている。
土方歳三は沖田総司の腕を掴んだ。
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「離してください。山口君を追い掛けます。」
土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。
「総司。もう止めておけ。」
沖田総司は土方歳三を不機嫌そうに見ている。
土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。
「今日は、あの子と逢うには、全てに対して間が悪すぎる。次の機会を待とう。」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「もう追い掛けません。だから、手を離してください。」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司。くず餅を食べよう。」
沖田総司は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「帰ります。」
土方歳三は沖田総司を不思議そうに見た。
沖田総司は寂しそうにお店を出て行った。
土方歳三と井上源三郎は、顔を見合わせると、沖田総司の後に付いて直ぐにお店を出て行った。
山口一と山口勝は、お店の外に出ると、直ぐに参道を歩き出した。
山口勝は嬉しそうに歩いている。
山口一は山口勝に普通に話し掛ける。
「姉さん。くず餅が食べられて良かったな。」
山口勝は山口一を見ながら嬉しそうに頷いた。
山口一は山口勝を黙って見ている。
山口勝は山口一に思い出した様に話し掛ける。
「ねぇ、一。さっき、多摩に在る試衛館の塾生に似ている人を、見掛けたの。一はどう思う?」
山口一は山口勝に普通に話し掛ける。
「姉さんが似ていると言うのなら、たぶん試衛館の人だと思う。」
山口勝は山口一に不思議そうに話し掛ける。
「一はその人の姿を見なかったの?」
山口一は山口勝に普通に話し掛ける。
「試衛館では見掛けていないけど、多摩で見掛けた事はある。」
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「だとすると、惣次郎君も来ている可能性はありそうね。」
山口一は山口勝を見ながら黙って頷いた。
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「惣次郎君は、年齢的に元服している可能性もあるわね。その時は、違う名前を名乗っているわね。どんな名前を名乗っているのかしら。」
山口一は山口勝に普通に話し掛ける。
「居場所は知っているから、会いたくなれば、自分達から会いに行ける。この人込みから探す必要もないだろ。」
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「確かに一の言う通りね。」
山口一は山口勝を黙って見ている。
山口勝は山口一に微笑んで話し掛ける。
「ねぇ、一。家に帰りましょう。」
山口一は山口勝を見ながら黙って頷いた。
山口勝人山口一は、亀戸の天神様の参道を歩いて家へと帰っていった。
土方歳三、沖田総司、井上源三郎の三人は、店を出た。
沖田総司は寂しそうに辺りを見回している。
井上源三郎は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司。今日は諦めましょう。土方さんの言う通り、間が悪すぎます。」
沖田総司は井上源三郎を見ると、寂しそうに話し掛ける。
「でも、源さん。私は山口君に逢いたくても居場所を知りません。山口君が試衛館に来るのを、ただ黙って待っているのは嫌です。」
井上源三郎は沖田総司を微笑んで見ている。
沖田総司は井上源三郎に寂しそうに話し掛ける。
「源さん。なぜ山口君は私に逢いに来てくれないのでしょうか? 私が思っているほど、山口君は私の事を思ってはいないのでしょうか?」
井上源三郎は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司。江戸と多摩は近いけれど遠いです。山口君にも自分の生活があります。気楽に来られないのかもしれません。」
沖田総司は井上源三郎に寂しそうに話し掛ける。
「でも、源さん。山口君は、最初に出逢った頃とは、違う場所に居るみたいです。だとすると、私だって違う所に行ってしまう可能性もあるではないですか。だったら、早く試衛館に来てくれてもよいではないですか。」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司。あの子は、もしかしたら強い奴にしか興味がないのかもしれない。だとすると、総司が試衛館から居なくなっても、強かったら探せると考えているのかもしれない。あの子は自分がもっと強くなってから、総司に会いたいと思っているのかもしれない。お互いに強くなっていれば、名前だってそれなりに知られているはずだろ。だとすると、違う場所に居ても、探す手段はいくらでもあるだろ。」
沖田総司は土方歳三を見ながら寂しそうに頷いた。
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司は藤の花を見た後に、くず餅が食べたいから、亀戸の天神様に来たんだろ。総司が近藤さんに出掛けたいと頼んで、日付を決めただろ。」
沖田総司は土方歳三を見ながら寂しそうに頷いた。
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司が出掛けた同じ日の同じ時刻に、あの子も亀戸の天神様に居たんだ。縁はある。だから、必ず逢えるよ。」
沖田総司は土方歳三を見ながら寂しそうに頷いた。
土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。
「総司。くず餅を食うぞ。落ち込んでいたら、せっかくの美味いくず餅が、もったいないだろ。楽しく食おう。」
沖田総司は土方歳三に微笑んで話し掛ける。
「そうですよね。こんな偶然はめったにないですよね。山口君とは必ず逢う事が出来ますよね。」
土方歳三は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。
沖田総司は土方歳三に微笑んで話し掛ける。
「土方さん。源さん。くず餅が食べたいです。」
土方歳三は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。
井上源三郎は沖田総司を微笑んで見ている。
土方歳三、沖田総司、井上源三郎の三人は、再びお店の中へと入っていった。
山口勝と山口一は、家へと帰るために江戸の町を歩いている。
山口勝は山口一に笑顔で話し掛ける。
「一! 今日はありがとう! 楽しかった!」
山口一は山口勝を見ると黙って頷いた。
山口勝は山口一に笑顔で話し掛ける。
「どこかに出掛ける時は、またお願いね!」
山口一は山口勝を見ながら黙って頷いた。
山口勝と山口一は、亀戸の天神様から少しずつ離れていく。
方歳三、沖田総司、井上源三郎の三人は、お店の中へと入って行った。
お店の中は藤の花を見た帰り客で賑わっている。
土方歳三が三人分のくず餅をお店の人に注文した。
お店の人は笑顔で注文を聞くと、笑顔で居なくなった。
沖田総司は土方歳三と井上源三郎に微笑んで話し掛ける。
「くず餅が早く食べたいです!」
土方歳三と井上源三郎は、沖田総司を微笑んで見ている。
お店の人が笑顔でくず餅を持ってきた。
沖田総司は嬉しそうにくず餅を見ている。
お店の人は机にくず餅を置くと、直ぐに居なくなった。
沖田総司は笑顔で声を出す。
「いただきます!」
土方歳三と井上源三郎は、沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司はおいしそうにくず餅を食べている。
井上源三郎は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司。おいしいですか?」
沖田総司は井上源三郎に笑顔で話し掛ける。
「おいしいです!」
井上源三郎は沖田総司を微笑んで見た。
土方歳三と井上源三郎は、沖田総司を微笑んで見ながら、くず餅を食べている。
沖田総司は土方歳三と井上源三郎を時折見ながら、おいしそうにくず餅を食べている。
すれ違いばかり続く沖田総司と山口一。
沖田総司と山口一が出逢うのは、もう暫く先の事。
今回は、藤の花の甘い香りとくず餅が、沖田総司と山口一の縁を繋げました。
江戸に在る亀戸の天神様で藤の花が咲く頃の、不思議な不思議な物語。
〜 完 〜
はじめに
前編
後書き
目次
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