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新撰組異聞外伝 〜 蛍の幻想 風の幻影 〜


梅雨の季節が終わりに近づいてきた。

雨の降る日は多いが、暑い日が増えてきた。

夏の気配がはっきりとわかるようになってきた。



今日は朝から久々の青空が広がっている。

沖田総司の息子の敬一は、母親の美鈴の見送りを受けて、元気良く出掛けて行った。



敬一の姿は見えなくなった。

美鈴は家の中へと入っていった。



辺りでは、久々の青空という貴重な一日を使って、掃除や洗濯などをしている家が多い。

美鈴も掃除をしたり洗濯物を干したりと、忙しそうに動いている。



洗濯や掃除など、大体は落ち着いた。

敬一が元気良く家に帰ってきた。

美鈴は敬一を微笑んで出迎えた。

敬一と美鈴は、家の中へと入っていった。



美鈴と敬一は、縁に座って麦茶を飲んでいる。

敬一は美鈴に微笑んで話し掛ける。

「お母さん。お父さんとお母さんのがらすの風鈴は、いつ飾るの?」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「まだ梅雨の季節けれど、もう夏なのよね。今日から飾りましょうか。」

敬一は美鈴に微笑んで話し掛ける。

「手伝うよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一。ありがとう。一緒に風鈴を飾りましょう。」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。



美鈴は、大事に仕舞ってあったがらすの風鈴を、押入れから取り出した。

敬一はがらすの風鈴の入った箱を微笑んで見ている。

美鈴は大事そうにがらすの風鈴の入った箱を開けた。

敬一はがらすの風鈴を微笑んで見た。



美鈴はと敬一は、がらすの風鈴を飾った。

微かに風が吹いた。

がらすの風鈴が涼しげな音を鳴らし始めた。

美鈴と敬一は、がらす風鈴の音を微笑んで聞いている。

がらすの風鈴が陽の光を受けて輝いた。

敬一と美鈴は、眩しそうにがらすの風鈴を見た。

がらすの風鈴は涼しげな音を鳴らしながら、輝き続けている。

美鈴と敬一は、お互いの顔を微笑んで見た。



そんなある日の事。

梅雨が明けて、暑い日が続いている。

今日もがらすの風鈴は、涼しげな音を鳴らしている。

敬一はがらすの風鈴を微笑んで見ている。

美鈴が敬一の横に来た。

敬一は美鈴を見ると、微笑んで話し出す。

「お母さん。斉藤さんの家に出掛けるね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんに迷惑を掛けないようにね。」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「梅雨は明けたけど、天気の落ち着かない日が多いから、気を付けて出掛けてね。」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。



敬一は美鈴の見守るなか、元気良く出掛けて行った。



敬一は藤田五郎の家の前に到着すると、元気良く声を出す。

「こんにちは! 敬一です!」

藤田五郎の妻の時尾が敬一を微笑んで出迎えた。

敬一は時尾に笑顔で礼をした。

時尾と敬一は、家の中へと入っていった。



時尾は敬一に微笑んで話し掛ける。

「外は暑かったですよね。麦茶を用意しました。」

敬一は時尾に笑顔で話し掛ける。

「お願いします!」

時尾は台所へと居なくなった。



時尾は麦茶の入った湯飲みを持って、敬一の前に戻ってきた。

敬一は時尾から麦茶の入った湯飲みを受け取ると、美味しそうに飲み始めた。

時尾は敬一の様子を微笑んで見ている。



敬一は時尾に笑顔で湯飲みを返した。

時尾は敬一から微笑んで湯飲みを受取った。

藤田五郎と時尾の息子の勉が、敬一の前に嬉しそうに来た。

敬一は勉を見ると、笑顔で話し掛ける。

「勉君。こんにちは。」

勉は敬一に嬉しそうに話し出す。

「こんにちは。」

敬一は勉に笑顔で話し掛ける。

「勉君。楽しそうだね。」

勉は敬一に嬉しそうに話し出す。

「おにいちゃんいっしょ。おかあさんいっしょ。おとうさんいっしょ。」

敬一は勉に笑顔で話し掛ける。

「今日はみんな一緒に家に居るね。」

勉は敬一を見ながら笑顔で頷いた。

敬一は一瞬だけ寂しそうな表情で勉を見た。

勉は敬一を笑顔で見ている。

時尾は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一君。お菓子を食べますか?」

敬一は時尾を見ると、微笑んで話し掛ける。

「今はお腹が一杯なので、お菓子は遠慮させてください。」

時尾は敬一を微笑んで見ている。

敬一は時尾に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんの部屋に行っても良いですか?」

時尾は敬一を見ながら微笑んで頷いた。

敬一は藤田五郎の部屋に向かおうとした。

藤田五郎が時尾と敬一の前に現れた。

敬一は藤田五郎を見ると、微笑んで話し掛ける。

「斉藤さん。こんにちは。」

藤田五郎は敬一を見ながら黙って頷いた。

勉が藤田五郎の前に笑顔でやってきた。

藤田五郎は勉を普通の表情で黙って見た。

勉は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「おとうさんいっしょ。おかあさんいっしょ。おにいちゃんいっしょ。」

藤田五郎は勉を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

勉は藤田五郎を嬉しそうに見ている。

敬一は藤田五郎と勉の様子を少し寂しそうに見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「敬一。部屋に来ないか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一の返事を確認すると、部屋へと歩き出した。

敬一は藤田五郎の後を慌てた様子で付いていった。



藤田五郎と敬一は、部屋の中に居る。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「敬一。何があった?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「何もありません。」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「何度も言うが、俺に嘘をついても無駄だ。さっさと言え。」

敬一は藤田五郎に言い難そうに話し出す。

「斉藤さんに、お父さんについて尋ねたい事があって来ました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に言い難そうに話し掛ける。

「最初はお母さんに尋ねようと思いました。でも、尋ねる事が出来ませんでした。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

敬一は藤田五郎に言い難そうに話し出す。

「やっぱりいいです。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「勉君と遊んでも良いですか?」

藤田五郎は敬一を見ながら黙って頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで軽く礼をすると、部屋からで出ていった。



それから少し後の事。

敬一が家に帰ってきた。

美鈴は敬一を微笑んで出迎えた。

敬一は美鈴に微笑んで話し掛ける。

「お母さん。お腹が空いた。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「ご飯を少し早く食べる?」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「夕飯の準備をしてくるわね。」

敬一は美鈴を見ながら微笑んで頷いた。

美鈴は台所とへ居なくなった。



敬一は一人で食卓の前に座っている。

微かに風が吹いた。

がらすの風鈴が涼しげな音を鳴らした。

敬一はがらすの風鈴を微笑んで見た。

がらすの風鈴は涼しげな音は、少しずつ小さくなっていく。

敬一はがらすの風鈴の動きを微笑んで見ている。

美鈴が食事を持って敬一の前に来ると、食卓の上にご飯やおかずをのせていく。

敬一は美鈴の様子を笑顔で見ている。



美鈴が席に着いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

敬一と美鈴の食事が始まった。



そんなある日の事。

美鈴宛に手紙が届いた。

美鈴は差出人を確認した。

差出人は、藤田五郎だった。

美鈴は直ぐに手紙を読み始めた。



そんな出来事があってから数日後の事。

陽がゆっくりと沈み始めている。

敬一と美鈴は、一緒に家に居る。



敬一はがらすの風鈴を微笑んで見ている。

美鈴は敬一の様子を微笑んで見ている。

敬一は美鈴を見ると、微笑んで話し掛ける。

「お母さん。がらすの風鈴が綺麗な音で鳴っているね。」

美鈴は敬一を見ながら微笑んで頷いた。

敬一は風鈴を微笑んで見た。



玄関から誰かが訪ねてきた音がした。

敬一は美鈴を不思議そうに見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「お客様が見えたみたい。」

敬一は美鈴を微笑んで見ている。

美鈴は玄関へと向かった。

敬一はがらすの風鈴を微笑んで見た。

微かに風が吹いた。

がらすの風鈴は涼しげな音を鳴らし始めた。



敬一はがらすの風鈴を微笑んで見ている。

後ろから藤田五郎の声が聞こえてきた。

「敬一。話しがあるのに、なぜ途中で止めた。仕方が無いから、話をしにきた。」

敬一は驚いた表情で後ろを振り向いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「早く言え。」

敬一は藤田五郎を困った表情で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

敬一は美鈴を心配そうに見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「お母さんは家で待っているわ。斉藤さんと二人で出掛けていらっしゃい。」

敬一は美鈴を不安そうに見ている。

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんと敬一で、男同士の話をするんでしょ。お母さんが近くに居ると、斉藤さんが敬一に話が出来なくて困ってしまうわよ。」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「俺は美鈴さんが近くに居ても構わない。出掛けるのが気になるのなら、庭で話をしよう。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「出掛けたいです。お願いします。」

藤田五郎は敬一を見ながら黙って頷いた。

美鈴は藤田五郎と敬一に微笑んで話し掛ける。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し掛ける。

「行ってきます。」

藤田五郎は美鈴を見ながら黙って頷いた。



陽はゆっくりと落ち始めている。

藤田五郎と敬一は、美鈴の見守るなか、どこかへと出掛けて行った。



美鈴は一人で家に居る。

微かに風が吹いてきた。

がらすの風鈴が涼しげな音を鳴らした。

美鈴はがらすの風鈴を微笑んで見た。



完全に陽が落ちてしまった。

藤田五郎と敬一は、家から離れた場所に到着した。

辺りは暗いが、親子連れなどが、楽しそうに話をしながら歩いている。

敬一は辺りの様子を不思議そうに見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「この場所は、たくさんではないが、蛍が見られるんだ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「知りませんでした。」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「美鈴さんは例え知っていたとしても、暗い中を敬一と二人だけで遠くに出掛ける事はしないと思う。だから、敬一が知らなかったのも無理は無いと思う。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「家に帰ったら、お母さんに一緒に蛍を見ようと話をしてみます。」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「この近くの蛍の飛ぶ時期は、そろそろ終わる。美鈴さんと一緒に蛍の飛ぶ姿を見るのなら、来年にしたらどうだ?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「わかりました。お母さんに話をしてみて、もし出掛けないと返事をしたら、斉藤さんも一緒に出掛けてもらえませんか? お母さんも斉藤さんが一緒なら、安心して出掛けられると思います。」

藤田五郎は敬一を見ながら黙って頷いた。

敬一は辺りを微笑んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「敬一。話は何だ?」

敬一は藤田五郎を見ると、言い難そうに話し出す。

「斉藤さん。お父さんは本当に亡くなったのかな?」

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

敬一は藤田五郎に言い難そうに話し出す。

「亡くなったと言われていた原田さんが、生きていたんだよ。お父さんが生きていても不思議ではないよね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「総司は病気で亡くなっている。原田さんは戦で亡くなった事になっている。総司と原田さんとでは、状況が全く違う。」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見ている。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「総司は以前から病気だった。京都に居る時も、最後の方は、任務に就いている時間より、療養している時間の方が長かった。京都から離れてからも、戦いに参加できずに療養をしていた。亡くなった理由も病気のはずだ。」

敬一は藤田五郎に寂しそうに話し掛ける。

「お父さんが亡くなった時に看取った人は、療養先の人だったと聞いたよ。家族の人もお父さんの亡くなった姿を確認したと思うけれど、みんなで確認した訳ではないんだよね。だとしたら、原田さんが亡くなった姿を、はっきりと確認した人がいないのと一緒だよね。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

敬一は藤田五郎に寂しそうに話し掛ける。

「斉藤さんもお父さんの亡くなった姿を、確認した訳ではないよね。だとしたら、お父さんが生きている可能性だってあるよね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「確かに、俺は総司の亡くなった姿を確認していない。だが、総司の病気は、不治の病だった。病気が治る薬が作られたという話も、聞いた事が無い。総司は亡くなったと考えて間違いないと思う。」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見ている。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「原田さんに会ってから、総司の生きている可能性について、ずっと考えていたのか?」

敬一は藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「原田さんに会った時は、お父さんが生きている可能性について考えた事はなかったんだ。でも、気が付いたら、原田さんが生きているなら、お父さんが生きている可能性があるかもしれないと、考えるようになったんだ。」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「仮に、総司が生きていたとしよう。そうすると、いくつかの疑問が出てくる。」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「総司が敬一や美鈴さんの前に、姿を見せない理由は何だと思う?」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見ている。

藤田五郎は敬一を黙って見ている。

敬一は藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「お母さんはお父さんの事が物凄く好きなんだ。僕は、お母さんが喜ぶ姿が見たいんだ。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「あの頃に比べると、幕府側の人間という事で狙われる危険は少なくなった。だが、安全とは言い切れない。俺の知っている総司なら、そんな状況の中で生きている敬一や美鈴さんを心配しているはずだ。何としてでも逢おうとするはずだ。」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見ている。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「安全と言い切れないなら、美鈴さんや敬一のために、逢うのを止めるかもしれない。仮に逢うのを止めたとすると、俺の知っている総司なら、生きている事だけは伝えようと、何としてでも、美鈴さんや敬一に連絡を取ろうとするはずだ。」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見ている。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「俺の知っている総司や最期に書いた手紙から考えると、何年も美鈴さんや敬一を放っておくとは考えられない。」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見ている。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「総司が、今になって姿を現したり、連絡を寄越したりしても、俺は許さない。美鈴さんや敬一が総司を許しても、俺は絶対に許さない。」

敬一は藤田五郎を寂しそうに見ている。

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

敬一は藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「そうだよね。お父さんは亡くなっているんだよね。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

蛍が淡い光を放ちながら、藤田五郎と敬一の周りをゆっくりと飛び始めた。

敬一は蛍の飛んでいる様子を不思議そうに見た。

藤田五郎は蛍の飛んでいる様子を普通の表情で黙って見ている。

敬一は蛍の飛んでいる様子を見ながら、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お父さんが励ましに来てくれたみたい。」

藤田五郎は敬一を黙って見ている。

蛍は淡い光を放ちながら、敬一の周りをゆっくりと飛び始めた。

敬一は蛍の飛んでいる様子を見ながら、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「なぜお父さんが生きていると思ったのかな?」

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「亡くなったはずの原田さんや、名前を変えて生きてきた俺に、会ったからだと思う。」

敬一は藤田五郎を不思議そうに見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し掛ける。

「こういう時代だ。亡くなったはずの人が、実際は生きていても不思議な事ではないと思う。総司の事も、状況さえ整えば、ありえない事ではない。敬一が悩んでしまうのも仕方が無いと思う。」

敬一は藤田五郎に不思議そうに話し掛ける。

「お母さんは、お父さんが生きているかもしれないと、考えたりする事はあるのかな?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんは、総司が生きているとは考えていないはずだ。亡くなっていると思って、敬一と二人で生きていると思う。」

敬一は蛍の飛んでいる様子を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で黙って見ている。

敬一は淡い光を放ちながら飛んでいる蛍に、微笑んで話し掛ける。

「僕はもう良いよ。お母さんの所に行ってあげて。」

蛍は淡い光を放ちながら、敬一からゆっくりと離れていった。

敬一は蛍が飛んでいく様子を不思議そうに見た。

藤田五郎は蛍の飛んでいる様子を普通の表情で黙って見ている。



敬一の傍を飛んでいた蛍の光が見えなくなった。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 僕の話が蛍に伝わったよ!」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お母さんの所に行ったのなら、早く帰らない方がいいかな?!」

藤田五郎は敬一を見ながら普通の表情で黙って頷いた。



美鈴は家に一人で居る。

微かな風が吹いてきた。

がらすの風鈴が涼しげな音を鳴らした。

美鈴はがらすの風鈴の前に来た。

がらすの風鈴の涼しげな音が少しずつ小さくなっていく。

美鈴は庭を見た。

淡い光がゆっくりと飛んでいる様子が見えた。

美鈴は淡い光を見ながら微笑んで呟いた。

「蛍が庭に来たのね。」

蛍は美鈴の前にゆっくりと飛んできた。

美鈴は蛍にゆっくりと手を差し出した。

蛍は美鈴の掌にゆっくりと止まった。

美鈴は掌の蛍を見ながら微笑んで呟いた。

「蛍が掌に乗るなんて、普通はありえないわよね。」

蛍は美鈴の掌の中で淡い光を放っている。

美鈴は掌の蛍を見ながら微笑んで呟いた。

「総司さんみたい。」

蛍は美鈴の掌の中で淡い光を放っている。

美鈴は掌の蛍を見ながら微笑んで呟いた。

「敬一が帰ってくるまで傍に居てくれますか?」

蛍は美鈴の掌の中で少し明るい光を放った。

美鈴は掌の蛍を微笑んで見た。



敬一は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さん。家に帰っても大丈夫かな?」

藤田五郎は敬一を見ながら黙って頷いた。



蛍は淡い光を放ちながら美鈴の掌に居る。

美鈴は蛍を微笑んで見ている。

微かな風が吹いてきた。

がらすの風鈴が涼しげな音を鳴らした。

美鈴はがらすの風鈴を微笑んで見た。

蛍が美鈴の掌からゆっくりと飛んでいった。

美鈴は蛍の飛んでいく様子を微笑んで見た。

再び微かな風が吹いてきた。

がらすの風鈴が涼しげな音を鳴らした。

美鈴は玄関へと向かった。



敬一が元気良く家に帰ってきた。

美鈴が笑顔で藤田五郎と敬一を出迎えた。

敬一は美鈴に驚いた様子で話し掛ける。

「戸を開けたら、目の前にお母さんが居たから驚いたよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「敬一と斉藤さんが帰ってくるのを、蛍と風鈴が教えてくれたの。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「ありがとうございます。」

藤田五郎は美鈴を見ながら黙って頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「お酒の用意をしています。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し掛ける。

「時間も遅くなってきた。今夜は帰ろうと思う。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「では、またの機会を楽しみに待っています。」

藤田五郎は美鈴を見ながら黙って頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し掛ける。

「気を付けてお帰りください。」

藤田五郎は美鈴を見ながら黙って頷くと、自分の家へと帰って行った。



敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! お腹が空いた!」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「用意は出来ているから、直ぐに食べられるわよ。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

敬一と美鈴は、家の中へと入っていった。



美鈴と敬一は、楽しそうに食事をしている。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! この近くに、蛍が飛んでいる様子を見られる場所があるんだよ!」

美鈴は敬一の話を微笑んで聞いている。

敬一は美鈴に笑顔で話し掛ける。

「来年は一緒に見に行こうね!」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「蛍を見られる場所はこの近くではないのよね。暗いし危なくないの?」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「僕がいるから大丈夫だよ! 僕が一人だけで不安なら、斉藤さんにも一緒に出掛けてもらえるように話をするよ!」

美鈴は敬一に微笑んで話し掛ける。

「食事が終わったら、ゆっくりと話をしましょう。」

敬一は美鈴を見ながら笑顔で頷くと、食事の続きを始めた。

美鈴は敬一を微笑んで見ながら食事の続きを始めた。



食事が終わった。

美鈴は後片付けをしている。

敬一は食卓に座ったまま、がらすの風鈴を見ている。

美鈴が片付けを終えて、敬一のもとにきた。

敬一は疲れているのか、畳の上で横になって寝ている。

美鈴は心配そうに敬一の様子を確認した。

微かに風が吹いきた。

がらすの風鈴が涼しげな音を鳴らした。

美鈴は敬一に変わった様子が無い事を確認すると、安心した表情になった。



美鈴は上掛けを持って敬一の所に戻ってきた。

敬一は畳の上だが、気持ち良さそうに寝ている。

美鈴は敬一に優しく上掛けを掛けた。

微かな風が何度も吹いている。

がらす風鈴は涼しげな音を鳴らし続けている。

美鈴はがらすの風鈴を微笑んで見た。

庭に蛍の淡い光が見えた。

美鈴は庭に出た。

美鈴の傍を蛍の淡い光がゆっくりと飛んでいる。

美鈴は微笑んで蛍に話し掛ける。

「蛍さん。総司さんと呼んでもいいのかしら?」

蛍淡い光を放ちながら、美鈴の傍をゆっくりと飛び続けている。

美鈴は蛍に微笑んで話し掛ける。

「敬一の傍に居てあげてください。」

蛍は淡い光を放ちながら、敬一のもとへゆっくりと飛んでいった。

美鈴は蛍の飛んでいる様子を微笑んで見た。



敬一は気持ち良さそうに寝ている。

蛍は淡い光を放ちながら、敬一を見守るようにゆっくりと飛んでいる。

美鈴は敬一と蛍の飛んでいる様子を、微笑んで見ている。



蛍は敬一から離れると、美鈴の傍をゆっくりと飛び始めた。

美鈴は蛍の飛んでいる様子を微笑んで見た。

蛍は淡い光を放ちながら、庭の外へと飛んでいった。



庭には蛍の飛んでいる姿は見えない。

美鈴は家の中へと入っていく。

敬一は気持ち良さそうに、畳の上で横になって寝ている。



優しくて微かな風が吹き始めた。

がらすの風鈴は涼しげで透明な音を鳴らし始めた。




〜 完 〜





はじめに       後書き

目次


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