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新撰組異聞外伝 〜 桜月 花筏に重ねる想い 〜


今は春。




ここは、東京の町。



辺りにはたくさんの桜が綺麗な姿で咲いている。



沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴は、桜の咲く中を一緒に歩いている。



敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。もう少し桜を見てから帰ろうよ。このまま家に帰るのはもったいないよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一は桜を見ていても飽きないの?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「飽きないよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「本当?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「本当だよ。お母さんが笑顔を見ていると、僕も嬉しくなるんだ。」

美鈴は敬一を寂しそうに見た。

敬一は美鈴に心配そうに話し出す。

「お母さん。疲れたの? 大丈夫?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「疲れていないから大丈夫よ。」

敬一は美鈴を安心した表情で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一と一緒に桜が見たいから、少し寄り道をしましょう。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。



美鈴と敬一は、桜の咲いている中を、楽しそうに話をしながら歩き続けた。



桜の咲く日々は続いている。



ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住んでいる家。



敬一は藤田五郎の家を訪ねてきている。



敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの部屋に行っても良いですか?」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「どうぞ。直ぐに飲み物を持っていきます。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「いつもありがとうございます。」

時尾は敬一を微笑んで見ると、台所へと居なくなった。



ここは藤田五郎の部屋。



敬一は藤田五郎の部屋の前に来た。

藤田五郎は障子を開けて敬一を見ると、普通に話し出す。

「部屋に入れ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「失礼します。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑みながら軽く礼をすると、部屋の中へと入っていった。

藤田五郎は敬一が部屋の中に入ると、普通の表情で障子を閉めた。



ここは藤田五郎の部屋の中。



敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今日の稽古もよろしくお願いします。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は沖田総司の刀が仕舞ってある場所を見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に恥ずかしそうに話し出そうとした。

部屋の外から時尾の穏やかな声が聞こえてきた。

「お茶の用意が出来ました。」

敬一は話を止めると、藤田五郎を恥ずかしそうに見た。

藤田五郎は敬一を一瞥してから、障子を普通に開けた。

時尾はお茶を載せたお盆を持って、部屋の中に微笑みながら入ってきた。



時尾は藤田五郎と敬一のお茶を机に置いた。

敬一は時尾に微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎の傍に近づくと、小さい声で話し出す。

「永倉様と名乗る方が見えられています。今は玄関でお待ち頂いています。お会いになりますか?」

藤田五郎は時尾に小さい声で話し出す。

「客間に通すかもしれない。用意をしておいてくれ。」

時尾は藤田五郎に小さい声で話し出す。

「準備をしてきます。」

藤田五郎は時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎と敬一に微笑みながら軽く礼をすると、普段どおりに部屋から出ていった。



藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺に客が来たらしい。稽古は客が帰ってからにしたい。少し遅くなると思うが、待っている事は出来るか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お客さんが来たのなら、僕は帰ります。稽古は別な日で構いません。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一とは稽古の約束をした。気を遣って帰る必要は無い。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕は稽古が遅くなるのは構いません。待つ事にします。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。俺が良いと言うまで、部屋から出るな。」

敬一は藤田五郎に不思議そうな表情で頷いた。

藤田五郎は部屋から普通に出て行った。

敬一は藤田五郎が部屋からで行く様子を不思議そうに見た。



敬一は藤田五郎の部屋の中に一人だけになった。

不思議そうな表情のままで、お茶の入った湯飲み見た。

湯飲みからは温かい湯気が立ち上っている。

敬一は急に不安そうな表情になって、お茶の入った湯飲みを見た。



ここは、藤田五郎の家の玄関。



一人の男性が玄関で腰掛けている。



藤田五郎は玄関に現れると、男性を普通の表情で来た。

男性は立ち上がると、藤田五郎を普通の表情で見た。

藤田五郎は男性を普通の表情で見た。

男性は藤田五郎に普通に話し出す。

「久しぶりだな。」

藤田五郎は男性に普通に話し出す。

「お久しぶりです。永倉さんと呼んでも良いのですか?」

男性は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「俺は永倉で構わない。君は藤田と呼んだ方が良いのかな?」

藤田五郎は男性を普通の表情で見た。


藤田五郎が永倉と呼んだ男性は、永倉新八と言う。

藤田五郎が斉藤一と名乗っていた時に、新撰組で一緒に活動していた。

斉藤一は三番組組長。

永倉新八は二番組組長。

どちらも危険な日々を生き抜いて、明治と呼ばれる時代を生きている。



ここは、藤田五郎の家の客間。



藤田五郎と永倉新八は、客間に居る。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「もっと早く訪ねて来たかったのだが、都合が付かなくて会いに来る事が出来なかった。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見た。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「細かい挨拶は飛ばして、本題にうつるな。」

藤田五郎は永倉新八に普通の表情で頷いた。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「俺は、いつの日か、近藤さんや土方さんを含めた、戦で亡くなった組の者達の慰霊碑を作りたいと思っている。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見た。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「俺達の行っていた事は、間違いではないと思っている。だが戦に負けてしまったために、俺や藤田のように名前を変えた者が何人もいる。隠れるように暮らしている者もいる。みんなも悔しい思いをしていると思う。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見た。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「俺は、今は無理でも、いつの日か、新撰組で活動していたと胸を張って言いたい。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見ている。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「左之助の息子の茂君や、お孝さんやお勇さんにも、会おうと思っている。」

藤田五郎は藤田五郎を普通の表情で見ている。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「藤田も一緒に行動してくれないか?」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見ている。

永倉新八は藤田五郎に普通に話出す。

「藤田は自分の子供に、胸を張って自分の過去を話したいと思わないのか?」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見ている。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「俺が訪ねる少し前に、藤田の家に男の子が入っていったな。藤田の子供ではないよな。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見ている。

永倉新八は考え込みながら、藤田五郎に話し出す。

「あの子は、どこかで会ったような気がする。近くで会ったら、分かるかも知れない。会わせてくれないか?」

藤田五郎は永倉新八に普通に話し出す。

「知り合いの子です。息子がなついているから、一緒に遊んでもらうために、家に来てもらっているだけです。」

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「あの子が組の隊士の身内なら話がしたい。家族の事について胸を張って話したいと思っている人がいるのなら、今は無理でも、いつの日か一緒に活動をしたいと思っているんだ。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見た。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「あの子に会う事は出来ないのか?」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見ている。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「返事が無いという事は、藤田は俺と一緒に活動する気はなくて、あの子は組の隊士とは関係ないと判断しても良いのか?」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見ている。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「今回の俺の話しを本格的に実行するのは、まだ先の事になると思う。気が向いたら連絡をくれ。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見ている。

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「既に客が来ている時に、邪魔をして悪かったな。」

藤田五郎は永倉新八に普通に話し出す。

「永倉さん。あの子に会おうとしていませんか?」

永倉新八は藤田五郎を不思議そうに見た。

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見た。

永倉新八は藤田五郎に感心した様子で話し出す。

「さすが藤田だな。とても気になるよ。」

藤田五郎は永倉新八に普通に話し出す。

「あの子は知り合いの子です。変な話をして悩まさないでください。」

永倉新八は藤田五郎に普通に話し出す。

「分かった。」

藤田五郎は永倉新八を普通の表情で見た。

永倉新八は普通に立ち上がった。

藤田五郎は永倉新八に続いて普通に立ち上がった。

藤田五郎と永倉新八は、客間から出ていった。



永倉新八は藤田五郎が見送る中を、普通に去って行った。



永倉新八の姿は見えなくなった。



藤田五郎は家の中へと戻っていった。



それから僅かに後の事。



ここは藤田五郎の部屋。



藤田五郎は部屋の中に普通に入ってきた。

敬一は藤田五郎を不安そうに見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「遅くなって悪かった。」

敬一は藤田五郎を不安そうに見ている。

藤田五郎は湯飲みを一瞥すると、敬一に普通に話し出す。

「お茶を飲まなかったのか?」

敬一は藤田五郎に不安そうに頷いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「お茶を入れ直すか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。飲みます。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は冷めたお茶を、ゆっくりと飲み始めた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。



敬一はお茶を飲み終わった。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「客が帰るのが予定より遅くなった。今から稽古を始めると、帰りが遅くなるな。」

敬一は藤田五郎を不安そうに見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「客に会わなければ良かったな。敬一。悪かったな。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんが謝る必要は無いと思います。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。何か心配な事があるなら話しをしてみろ。気持ちの落ち着かない状態での稽古や生活は、必ず怪我をするぞ。」

敬一は不安そうな表情で考え込み始めた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に申し訳なさそうに話し出す。

「何を話して良いのか分かりません。すいません。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「迷いがあると怪我をする。今日の稽古は止めて、敬一の都合が良い日に変更しよう。」

敬一は藤田五郎に少し大きな声で話し出す。

「僕は大丈夫です! 斉藤さん! 稽古を就けてください!」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に少し大きな声で話し出す。

「今日は大切な稽古の日です! 斉藤さんに稽古を就けてもらわずに帰るのは嫌です!」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は納得のいかない表情で下を向いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。何を話して良いのか分からなければ、思いつく順番に話してみろ。」

敬一は下を向いたまま、藤田五郎に小さい声で話し出す。

「我がまま言ってごめんなさい。帰ります。別な日に稽古を就けてください。お願いします。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「帰る前に少し話しをしても良いか?」

敬一は顔を上げると、藤田五郎に不思議そうに頷いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今日の客と話した詳しい内容についてだが、今は敬一に話しをする事は出来ない。」

敬一は藤田五郎を不思議そうに見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「突然の来客だったとはいえ、敬一の稽古を始める時間を遅らせた。敬一を不安な中で待たせてしまった。直ぐに戻ると言ったのに、接客の時間が長くなってしまった。敬一に悪い事をしたと思っている。」

敬一は藤田五郎を困惑した様子で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一には落ち着いた気持ちで稽古を行って欲しい。だから、今日の稽古は、別な日に変更しよう。」

敬一は藤田五郎に微笑んで頷いた。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。送っていく。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「一人で帰ります。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「遠慮するな。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「外は暗くないです。一人でも大丈夫です。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「俺が敬一を送りたいと思っている。だから、敬一を送らせてくれ。」

敬一は藤田五郎に不思議そうに話し出す。

「お願いします。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。



ここは、東京の町。



藤田五郎と敬一は、敬一の家へと向かって歩いている。



辺りには桜の花が綺麗に咲いている。



敬一は、花びらが舞い落ちてくる様子を、困惑した表情で見ながら歩いている。

藤田五郎は敬一の様子を普通の表情で見ながら歩いている。



それから少し後の事。



ここは、敬一と美鈴の家。



藤田五郎と敬一は、家へと到着した。

美鈴は藤田五郎と敬一の前に微笑んで現れた。

藤田五郎、敬一、美鈴は、家の中へと入っていった。



ここは、敬一と美鈴の家の中。



藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「今日は俺の都合で敬一の稽古が出来なくなった。別な日に変更しようと思う。美鈴さんにも迷惑を掛ける事になると思う。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「私達の事は気にしないでください。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。庭で桜を見ていても良いかな?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お茶とお菓子を用意するわね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お茶だけで良いよ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は微笑みながら縁に向かった。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

美鈴は立ち上がると、台所へと向かった。



ここは、敬一と美鈴の家の縁。



敬一は縁に座りながら、普通の表情で桜を見ている。

美鈴はお茶を載せたお盆を持って、敬一の傍に来た。

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴はお茶の入った湯飲みを、敬一の横に微笑みながら置いた。

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一を微笑んで見ると、家の中へと戻っていった。



ここは、敬一と美鈴の家の食卓。



美鈴は藤田五郎の前に酒と簡単な肴を置いた。

藤田五郎は美鈴に普通の表情で軽く礼をした。

美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「今日の事だが、敬一と稽古を始める直前に、永倉さんが訪ねてきた。」

美鈴は藤田五郎に不思議そうに話し出す。

「総司さんや斉藤さんと一緒に、お仕事をされていた方ですよね。」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎を不思議そうに見た。

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「突然の訪問だったから、永倉さん本人かの確認を取る必要があった。念のために、敬一に部屋から出ないように話をした。」

美鈴は藤田五郎を不思議そうに見ている。

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「永倉さんとの話しが長くなった事もあって、敬一を不安がらせてしまった。今日の稽古を就ける事が出来なくなってしまった。敬一に申し訳ない事をした。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一も斉藤さんの気持ちは分かっていると思います。今は落ち着かないかも知れませんが、直ぐに元に戻ると思います。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「永倉さんが話しをしていた内容を、美鈴さんに先に話しをしようと思った。敬一にいつ話しをするかについては、美鈴さんに任せる。」

美鈴は藤田五郎に僅かに不安そうに頷いた。



それから少し後の事。



藤田五郎が帰る事になった。



ここは、敬一と美鈴の家の玄関。



藤田五郎、敬一、美鈴は、玄関に居る。



藤田五郎は美鈴と敬一に普通に話し出す。

「見送りは要らない。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「分かりました。気を付けてお帰りください。」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕は稽古の日はいつでも構いません。斉藤さんが稽古の日付を決めてください。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎と敬一を微笑んで見た。



藤田五郎は自分の家へと帰っていった。



美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お腹が空いたわよね。夕飯の支度をするわね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。



それから数日後の事。



ここは、東京の町。



桜が次々に散り始めている。



ここは、敬一と美鈴の家。



美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。桜を見に行きたいの。一緒に出掛けてくれる?」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。



美鈴と敬一は、桜を見るために出掛けて行った。



ここは、東京の町に在る、桜が綺麗に咲いている場所。



辺りには、桜が散り始めたためか、人の姿は少ない。



桜の花びらは、川面へと静かに舞っていく。

川面の上に桜の花びらが静かに載っていく。

桜の花びらは川面を覆いながら、ゆっくりと流れていく。



敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。川が桜色になっているよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「“花筏”という言葉があるの。」

敬一は美鈴を不思議そうに見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「桜が散って水面に流れている様子を、筏に例えた言葉なの。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「綺麗な言葉だね。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は川に流れている花筏を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「この前、斉藤さんが来た時に、お客さんと話しをしていた内容を、少しだけ教えてもらったの。」

敬一は美鈴を不思議そうな表情で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんは、敬一には話しをするのは、少し早いと思っているの。だけど、敬一も知っておく必要がある話だと思うの。」

敬一は美鈴を真剣な表情で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「いつ敬一が話しを知るかについては、少し様子を見ようと思っているの。その時がきたら、斉藤さんに詳しい話を聞いてね。」

敬一は美鈴に真剣な表情で頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に不思議そうに話し出す。

「斉藤さんに話を聞いた時に、納得できない事や分からない事があったらどうするの?」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「話を聞いて納得できない事やわからない事は、斉藤さんに思う事を言えばよいと思うの。斉藤さんは敬一が何を言っても理解してくれる人だから、心配する必要はないと思うわ。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。そろそろ帰りましょうか?」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「もう少し桜と花筏を見ようよ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴の手を取ると、微笑んで話し出す。

「お母さん。もっと綺麗な桜や花筏を見る事が出来る所に行くよ。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一と美鈴は、手を繋ぎながら、散り始めている桜の中をゆっくりと歩き出した。



の木から花びらが次々に舞い落ちていく。

桜の花びらが舞い落ちるたびに、川面を流れている花筏の仲間に加わっていく。

川の流れに乗って、花筏はゆっくりと流れていく。




〜 完 〜





はじめに       後書き

目次


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