新撰組異聞外伝　〜　虹始見　〜


〜　改訂版　〜


ここは、東京。


辺りに咲く一重の桜は、少しずつ散り始めている。

緑色の葉が見えるようになってきた。

一重の桜と入れ替わるようにして、八重桜が少しずつ咲き始めている。


藤田五郎と沖田総司の息子の敬一が逢ってから、二度目の桜の季節を迎えている。


ここは、東京。


敬一は元気良く歩いている。


桜の木が見えた。


敬一は桜の木の下に微笑んで来た。


敬一は桜を微笑んで見た。


桜の花の間に緑の葉が見える。


敬一は桜の花を微笑んで見た。


少し遠くから数人の話し声が聞こえてきた。


話し声は直ぐに聞こえなくなった。


敬一は桜を寂しい表情で見た。


桜の花びら少しずつ舞い落ちてきた。


敬一は桜の花びらが舞い落ちる様子を寂しい表情で見た。


桜の花びらが舞い落ちるのが止まった。


敬一は寂しく歩き出した。


少し後の事。


ここは、敬一と母親の美鈴の住む家。


玄関。


敬一は微笑んで帰ってきた。


美鈴が微笑んで現れた。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お帰りなさい。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「ただいま。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。


敬一は家の中に微笑んで入って行った。

美鈴も家の中に微笑んで入って行った。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


縁。


美鈴は洗濯物を微笑んでたたんでいる。

敬一は美鈴を微笑んで見ている。


敬一は美鈴を見ながら、僅かに考え込む仕草をした。

美鈴は洗濯物をたたむのを止めると、敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。何か遭ったの？」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お父さんについて教えて欲しい内容があるけれど、今回は止める。仕事を止めてしまって、ごめんね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「気にしないで。知りたくなったら、遠慮せずに話してね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は洗濯物を微笑んでたたんだ。

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。明日、斉藤さんの家に出掛けても良いかな？」

美鈴は洗濯物をたたみながら、敬一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんやご家族の方に迷惑を掛けないようにね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は洗濯物を微笑んでたたんだ。

敬一は美鈴を微笑んで見た。


翌日の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は元気良く帰ってきた。


美鈴が現れる様子がない。


敬一は家の中に不思議な様子で入って行った。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は残念な様子で居る。


敬一は、書置きを食卓に置いて、重石として湯飲みを置くと、残念な様子で呟いた。

「お母さんは出掛けたんだ。斉藤さんの家に出掛けると伝えられない。」


敬一は残念な様子で居なくなった。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


玄関。


敬一は微笑んで訪ねて来た。


時尾は微笑んで現れた。


敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは居ますか？」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「今は出掛けているけど、直ぐに戻るわ。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの帰りを待っても良いですか？」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの部屋の前で、庭を見ながら待っても良いですか？」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。


敬一は家の中に微笑んで入って行った。

時尾は家の中に微笑んで入って行った。


少し後の事。


ここは、藤田五郎の家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


庭に桜の木が植わっている。

桜の花は少なくなり、緑色の葉が目立ち始めている。


敬一は桜を微笑んで見ている。


時尾がお茶を持ち、微笑んで来た。


敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

時尾はお茶を置くと、敬一を微笑んで見た。


時尾は微笑んで居なくなった。


敬一はお茶を美味しく飲んで、桜を微笑んで見た。


少し後の事。


ここは、藤田五郎の家。


玄関。


藤田五郎は普通に帰ってきた。


時尾は微笑んで来た。


時尾が藤田五郎に微笑んで話し出す。

「五郎さん。お帰りなさい。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君が五郎さんに逢いにきました。敬一君は五郎さんの部屋の前に在る縁で、桜を見ています。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


藤田五郎は家の中に普通に入って行った。

時尾は家の中に微笑んで入って行った。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


敬一はお茶を美味しく飲んで、桜を微笑んで見ている。


藤田五郎は普通に来た。


敬一はお茶を飲むのを止めると、藤田五郎を見て、微笑んで話し出す。

「斉藤さん。こんにちは。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと話したくて訪ねてきました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「部屋で話そう。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」


藤田五郎は部屋の中に普通に入った。

敬一はお茶を持つと、部屋の中に微笑んで入った。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎の部屋。


藤田五郎の部屋。


障子が半分ほど開いている。


藤田五郎は普通に居る。

敬一は沖田総司の刀の仕舞われた所を普通の表情で見ている。


藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を見ると、藤田五郎に苦笑して話し出す。

「部屋に来て直ぐに余所見をしてしまいました。すいません。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。俺に話しがあるから訪ねたのだろ。早く話せ。」

敬一は藤田五郎に言い難い様子で話し出す。

「昨日、出掛けている最中に、偶然ですが、お父さんは笑って人を斬る、と話す人達が居ました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に寂しく話し出す。

「京都や京都の道場でも、お父さんについて悪く話す人やお父さんの仕事を悪く話す人は多かったです。僕はお父さんが関係する内容を悪く話せません。僕がお父さんの子供だと気付かれたら困るので、出来るだけ話しを聞いていない振りをしました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に寂しく話し出す。

「東京では、お父さんについての話を聞く機会は少なくなりました。でも、昨日はお父さんについて話を偶然に聞きました。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に寂しく話し出す。

「お母さんにお父さんについての話の内容を確認したいと思いました。お母さんはお父さんについての悪い内容の話を聞くと、いつも悲しい表情になります。お母さんはお父さんの家族だと知られないように、悲しくても直ぐに笑顔に戻ります。お母さんは僕が悲しい思いをしていないか心配してくれます。お母さんの笑顔を見たら、お母さんに悲しい思いをさせたくない、お母さの笑顔が見られなくなるのは嫌だ、などと考えました。お母さんにお父さんについての話の内容を確認できませんでした。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に寂しく話し出す。

「斉藤さん。お父さんは笑って人を斬りませんよね。お父さんは強くて優しくて立派な人ですよね。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に寂しく話し出す。

「斉藤さん。なぜ、お父さんを悪く話す人が多いのですか？」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を悲しく見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。今から出掛けよう。」

敬一は藤田五郎に悲しく頷いた。


藤田五郎は部屋を普通に出て行った。

敬一は部屋を悲しく出て行った。


少し後の事。


ここは、桜の花が咲く場所。


辺りには、遅めに咲いた桜の花がたくさん見える。


藤田五郎は普通に来た。

敬一も普通に来た。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「先程の話の続きだ。敬一は、笑って人を斬れるか？」

敬一は藤田五郎を見ながら、小さく首を横に振った。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「斬りあいの時は、皆が命がけだった。相打ちを覚悟して斬りかかる人物がいた。騙して相手を斬る時があった。総司は相手を油断させるために、斬る直前まで笑顔だった時があるかも知れない。総司は剣術に関しては、天才だ。笑って人を斬るほどの余裕のある人物は、天才の総司を含めても誰も居なかったはずだ。笑って人を斬る余裕を見せる人物は、逆に斬り殺される。皆が真剣だった。」

敬一は藤田五郎に静かに話し出す。

「斉藤さんも真剣だったの？」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎を考え込んで見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「総司は様々な事情から、美鈴さんと敬一の傍に居られない状況になってしまった。総司は亡くなる直前まで、美鈴さんと敬一を心配して、敬一と美鈴さんの傍に居られない状況を後悔していた。総司は美鈴さんが選んだ大切な人だ。美鈴さんは総司を今も大切に想っている。美鈴さんは敬一が総司の息子と世間に話せるようになった時に、皆に自信を持って話せるように、しっかりと育てている。敬一は、総司と美鈴さんにとって、大切な子だ。」

敬一は藤田五郎を真剣な表情で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「幕府は負けた側だ。幕府側の人物と幕府の政治を悪く話す人物は多い。総司は目立つ立場だったから、悪く話す人物が多いと思う。敬一。総司の悪い内容の話を聞いても、総司を信じろ。悩むな。美鈴さんが総司の悪い内容の話を聞いて、悲しい想いをしたら、励ませ。総司の代わりに、美鈴さんを支えろ。」

敬一は藤田五郎に真剣な表情で頷いた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。


優しい風が吹いた。


桜の花びらが空に向かって舞い上がった。


藤田五郎は桜の舞う様子を普通の表情で見た。

敬一は桜の舞う様子を微笑んで見た。


桜の花びらが、藤田五郎と敬一の元に、たくさん舞い落ちてきた。


敬一は桜の花びらの舞う中に微笑んで居る。

藤田五郎は桜の花びらの舞う中で、敬一と桜の舞う様子を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎と桜の舞う様子を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一と桜の花びらの舞う様子を見ながら、敬一に普通の表情で頷いた。


桜の花びらが地面に全て舞い落ちた。


敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。辺りが桜色です。綺麗です。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございました。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「家に帰ります。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「家まで送る。」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「よろしくお願いします。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。


藤田五郎は普通に歩き出した。

敬一は微笑んで歩き出した。


暫く後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は笑顔で来た。

藤田五郎は普通に来た。


美鈴は微笑んで来た。


敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「お母さん。ただいま。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お帰りなさい。」

藤田五郎は敬一と美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一を幾度も送って頂いて、ありがとうございます。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「俺が勝手にしているだけだ。礼は要らない。」

美鈴は藤田五郎を微笑んで見た。

敬一は藤田五郎と美鈴を微笑んで見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お酒と肴を用意します。少しお待ちください。」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。食べる物を用意するわ。少し待っていてね。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。


敬一は家の中に微笑んで入って行った。

藤田五郎は家の中に普通に入って行った。

美鈴は家の中に微笑んで入って行った。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の在る部屋。


敬一は微笑んで居る。

藤田五郎は普通に居る。


敬一は庭を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一と庭を普通の表情で見た。


庭の外に、桜の花がたくさん咲く桜が見える。


敬一は藤田五郎を見ると、藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。庭から見える桜の木が、たくさんの桜の花を長く咲かせています。不思議です。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。


美鈴は酒や肴などの載せたお盆を持ち、微笑んで来た。


敬一は美鈴を微笑んで見た。

藤田五郎は美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎の前に酒と肴として用意した漬物を微笑んで置いた。

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は敬一の前に焙じ茶とお煎餅を微笑んで置いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん！　ありがとう！」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

美鈴は自分の前に焙じ茶を微笑んで置いた。

敬一は、藤田五郎、美鈴、桜、を笑顔で見た。

美鈴は、藤田五郎、敬一、桜、を微笑んで見た。

藤田五郎は、敬一、美鈴、桜、を普通の表情で見た。




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ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語の中で、沖田総司さんが笑って人を斬った話が出てきます。

史実では、それらしい内容は見掛けませんが、ドラマや小説やマンガなどでは、沖田総司さんが笑って人を斬る場面を見る事があります。

沖田総司さんの剣の腕は天才的だと伝わるため、余裕を表現するための演出として使われたかも知れません。

沖田総司さんは明るい性格だと伝わるため、性格などを分かりやすく表現するために斬る場面にも使われたかも知れません。

私は沖田総司さんが笑って人を斬ったと思えません。

新撰組は敗者の側になるため、悪い方向に表現する人や悪い雰囲気を抱く人がいると思います。

敬一君や美鈴さんの立場の人がいたら、悲しい思いをするだろうと思いました。

藤田五郎さんのご家族の方も同じ気持ちになると思います。

史実の藤田五郎さんが、美鈴さんや敬一君の立場の人と逢っていたら、藤田五郎さん本人の奥さんや子供を見ているような気持ちになると思います。

題名に「虹」が登場しますが、雨の降る場面も虹を見る場面も登場しません。

敬一君の心の中の変化と心境を表しています。

「虹始見（にじはじめてあらわる）」は、七十二節の一つです。

二十四節気の「清明」の末候の言葉です。

「雨の後に虹が出始める」という意味です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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