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新撰組異聞外伝 〜 十薬の湯気が包む前に 〜


〜 改訂版 〜


ここは、東京。


雨の降る日が続いている。


今日も朝から雨が降っている。


ここは、沖田総司の息子の敬一と母親の美鈴の住む家。


縁から雨の降る様子が見える。


縁。


敬一は雨の降る様子を微笑んで見ている。


美鈴は敬一の横に微笑んで来た。


敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「雨が降ると、家の中に居る時間が多くなるわ。剣道の稽古の時間が少なくなるわね。詰まらないわよね。」

敬一は美鈴に微笑んで話し出す。

「雨が降ったら、お母さんの手伝いをする時間が増えるから、体を動かす時間は有るよ。詰まらなくないよ。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に苦笑して話し出す。

「良く考えたら、雨の降る日が多いのに、お母さんの手伝いをほとんどしていないね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一はたくさん手伝っているわ。安心しなさい。」

敬一は美鈴を微笑んで見た。

美鈴も敬一を微笑んで見た。


翌日の事。


ここは、東京。


曇り空の中に、時折だが晴れ間が見える。

雨の降る気配の無い空模様となっている。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


藤田五郎は仕事のために居ない。

時尾と勉は、居る。

敬一が訪ねている。


食卓の有る部屋。


時尾は微笑んで居る。

勉は笑顔で居る。

敬一は微笑んで居る。


勉は敬一に笑顔で話し出す。

「どくだみゆ。はいる。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「どくだみ湯に浸かるんだ。楽しみだね。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「たのしみ。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君の家もどくだみ湯に浸かる予定があるの?」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「今日の時点では、どこだみ湯に浸かる予定は無いです。時尾さんと勉君と話す間に、どくだみ湯に浸かりたくなりました。お母さんにどくだみ湯に浸かってゆっくりと過ごして欲しいと思いました。どくだみを採ってから、家に帰りたいと思います。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一君。今から、どくだみを採りに行きましょう。帰る前に、どくだみを採るより楽だと思うの。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「時尾さんに迷惑が掛かります。どくだみは帰る途中で採ります。」

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「今日は、雨の降る様子が無いわ。どくだみを採りに行く予定の場所は近くなの。気を遣わないで。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「お言葉に甘えさせて頂きます。お願いします。」

時尾は敬一に微笑んで頷いた。

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「どくだみ。とる。いっしょ。でかける。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「一緒に出掛けられるね。楽しみだね。」

勉は敬一に笑顔で頷いた。

時尾は勉と敬一を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は風呂敷の包みを持ち、笑顔で帰ってきた。


美鈴は微笑んで来た。


敬一は美鈴に風呂敷の包みを見せると、美鈴に微笑んで話し出す。

「どくだみを採ったんだ。どくだみ湯に浸かろうよ。」

美鈴は敬一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんの家でどくだみを頂いたの?」

敬一は風呂敷の包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「違うよ。時尾さんと勉君から、斉藤さんの家で、どくだみ湯に浸かる話を聞いたんだ。僕は帰る途中にどくだみを採ると話したんだ。時尾さんが、どくだみを帰る途中で採ると大変だから、どくだみを帰る前に採る提案をしたんだ。時尾さんと勉君と僕で、どくだみを採ったんだ。」

美鈴は敬一を心配して見た。

敬一は風呂敷の包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「最初は、どくだみを帰る途中で採ると話して断ったんだ。時尾さんが、包む物の用意が無いから、帰る途中に天気が変わった時に大変だと気遣ってくれたんだ。時尾さんの提案を了承したんだ。勉君は出掛けられるから喜んでいたんだ。心配しなくて大丈夫だよ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「今夜はどくだみ湯にしましょう。」

敬一は風呂敷の包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「今夜は、お母さんが先にどくだみ湯に浸かってね。僕がお風呂の後片付けをおこなうよ。お母さんはゆっくりと過ごしてね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「気を遣わなくて良いのよ。」

敬一は風呂敷の包みを持ち、美鈴に微笑んで話し出す。

「雨の降る日が多くて稽古の時間が減っているよね。稽古も兼ねて手伝うと話したよね。遠慮しないで。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一の言葉に甘えて、どくだみ湯に先に浸かるわね。お風呂の後片付けをお願いするわね。」

敬一は風呂敷の包みを持ち、美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


玄関。


藤田五郎が普通に帰ってきた。


時尾は微笑んで来た。


藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今夜は、昨日の話のとおり、どくだみ湯を用意しました。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今日は敬一君が来ました。どくだみ湯について話しました。敬一君が帰りにどくだみを採って帰ると話しました。敬一君に帰る途中に雨が降ると困ると話しました。私と勉と敬一君で、どくだみを採りに行きました。勉はとても嬉しい様子でした。敬一君は、最初の頃は遠慮していましたが、途中からは笑顔になりました。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「準備が出来たら声を掛けます。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。


藤田五郎は家の中に普通に入って行った。

時尾は家の中に微笑んで入って行った。


僅かに後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎の部屋。


藤田五郎は部屋の中に普通に入った。


部屋の中が、心地良い雰囲気に包まれた。


藤田五郎は障子を普通に開けた。

藤田五郎は庭を普通の表情で見た。


庭には、季節はずれの桜の花が咲いている。


藤田五郎は障子を普通に閉めた。

藤田五郎は横を普通の表情で見た。


沖田総司は藤田五郎を微笑んで見ている。


藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「何故、来た?」

沖田総司は藤田五郎に苦笑して話し出す。

「斉藤さんに呼ばれて来ました。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「今夜、敬一と美鈴さんも、どくだみ湯に浸かるらしい。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの心遣い。時尾さんの心遣い。感謝しています。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は何もしていない。時尾のみに感謝しろ。」

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「少し後になるが、部屋で酒を飲みたいと思っている。付き合うか?」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はい。」


部屋の外から、時尾の穏やかな声が聞こえた。

「どくだみ湯の準備が来ました。」


沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。後で逢いましょう。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。


藤田五郎は障子を普通に開けた。


時尾が縁で微笑む姿が見える。


藤田五郎は部屋を普通に出た。


直後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎の部屋の前に在る縁。


時尾は微笑んで居る。


藤田五郎は部屋から普通に出た。


藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。


時尾は微笑んで居なくなった。


藤田五郎は庭を普通の表情で見た。


庭の桜は、元の姿に戻っている。


藤田五郎は視線を普通の表情で戻した。


藤田五郎は普通に歩き出した。


東京に雨の降る日は続く。

暑さを感じる時がある。

僅かに寒さを感じる時がある。

気温の変化の有る日が続く。

どくだみ湯は、今の時期に浸かると、心も体も更に穏やかになる。

どくだみ湯は、今の時期にとても良い薬用風呂の一つになると思う。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

「風呂」についてです。

この物語の舞台は明治時代ですが、江戸時代の風呂について、簡単ですが説明します。

江戸時代には銭湯をたくさんの人達が利用していました。

現在とは違い「蒸し風呂」のようになっていたそうです。

「戸棚風呂」と呼ばれる形だったそうです。

熱くなっている小石の上に水を掛けて蒸気を出していたそうです。

浴槽には膝の高さほどのお湯しかありませんでした。

下半身はお湯に浸して、上半身は小石から出る蒸気で温めていたそうです。

蒸気が逃げないようにするために、「石榴口(ざくろぐち)」が考えられたそうです。

簡単な説明ですが、天井から低く板を下げて、蒸気を逃げないようにしていました。

お風呂に入る人達はこの板をくぐって、風呂場の中へと入っていったそうです。

現在の風呂に近い、深く浸かる風呂も江戸時代に出来ました。

「据え風呂」というそうです。

慶長年間の末頃に出来たそうです。

井戸水などから沸かす風呂だったそうです。

一般の庶民の家に広まったそうです。

普及していたのは「鉄砲風呂」や「五右衛門風呂」だったそうです。

「鉄砲風呂」は、簡単に言うと、鉄の筒に燃えている薪を入れてお湯を温める風呂です。

鉄の筒でやけどをしないように、筒を遮るように柵で防護していたそうです。

この形の風呂は、江戸で主流になっていたそうです。

「五右衛門風呂」は、簡単に言うと、下の鉄釜を熱して温める風呂です。

こちらはやけどをしないように、「釜板、兼、底板」を下に敷いて風呂に入ったそうです。

この形の風呂は、関西で主流になっていたそうです。

薬用の風呂を専門に提供する銭湯もあったそうです。

「ドクダミ」についてです。

漢字では、「毒痛み」、「毒矯み」、と書きます。

漢方名は「十薬(じゅうやく)」です。

「ドクダミ」を馬に与えると十種類の効能があるという事から付いた名前だそうです。

「ドクダミ」の花は綺麗ですが、「ドクダミ」を抜いたり切ったりした時の匂いがかなり独特らしいです。

そのために、雑草と同じ様に扱われてしまう事があるそうです。

「ドクダミ」は、お茶や薬用風呂などに使用されています。

江戸時代から「ドクダミ」を薬草として使用していたそうです。

「ドクダミ湯」についてです。

にきび・あせもを鎮める、新陳代謝を活発にする、腰痛、冷え性、などに効果があるそうです。

「ドクダミ湯」について簡単に説明します。

ドクダミの生葉やドクダミの茎を、良く水洗いします。

一回相当分で一握りのドクダミを、布袋やネットなどに入れます。

沸かすタイプの風呂の場合は、水の時から布袋やネットを入れて煮出します。

お湯から入れるタイプの風呂の場合は、お湯の当たるようにして布袋やネットを置きます。

布袋やネットなどを揉みながら入ると効果的だそうです。

ドクダミの効能、及び、ドクダミ湯、を含めた詳細は、各自でお調べください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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