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新撰組異聞外伝 〜 初秋の頃 薄荷の香りが繋ぐ者 〜
〜 改訂版 〜
今、は初秋。
ここは、多摩。
初秋になるが、暑い日が続いている。
試衛館。
沖田惣次郎をはじめとした門下生達は、日々の稽古に励んでいる。
今は稽古が終わり、身なりを整える者、くつろぐ者、武術を含めた話をする者など、様々に過ごしている。
近藤勇の部屋。
近藤勇は机に普通の表情で向かっている。
土方歳三は部屋を微笑んで訪れた。
近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さん。俺に話しがあると聞いた。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「歳。私の頼み事のために、歳の休憩時間を邪魔した。悪いな。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「俺と近藤さんの仲だ。気にするな。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「薄荷を少しだが分けてもらえる話があった。喜んで頂く返事をした。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「暑い日が続く。薄荷湯に浸かる日が楽しみだな。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「俺は薄荷湯のために何を手伝えば良いのかな?」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「薄荷を江戸の町に受け取りに行く。おみつさんに薄荷を分けたいと思っている。試衛館に戻る前に、おみつさんに薄荷を届けて欲しい。以上の役目を、歳と惣次郎に、頼みたいと思っている。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さん。念のために確認する。俺は惣次郎の守役も兼ねているのか?」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「私は立場的に一人で江戸の町に行けないから、供が必要になる。私の供を務める者は、稽古を受けられない。惣次郎は私の供に申し分ないが、試衛館の稽古の面から考えると、惣次郎に供は頼めない。立場や剣術の技術も含めて、惣次郎が私の代理を務めるのが適任だと思った。惣次郎も一人で江戸の町に行かせられないから、供が必要になる。歳は、冷静な判断が出来るから、惣次郎の供として適任だと考えた。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さんに褒めてもらえて嬉しいよ。」
近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「惣次郎と一緒に、江戸の町とおみつさんの家に行く。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「歳。ありがとう。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「どういたしまして。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「おみつさんには、私が文を書いて知らせる。おみつさんに薄荷を届けた後に、急いで帰らなくて良い。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「なるほど。さすが近藤さん。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「どういたしまして。」
土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「私から惣次郎に話す。行く日が決まったら、歳と惣次郎に直ぐに教える。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。
近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さん。薄荷を分けてもらう人物は、山口君に繋がる人物なのか?」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「以前に繋がりのあった人物だ。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「惣次郎には秘密の内容だな。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さんが俺に惣次郎の供を頼んだ他の理由も分かった。」
近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「山口君の近況を知るか尋ねる。良い内容の返事ならば、惣次郎に直ぐに伝えて、近藤さんにも伝える。悪い内容の返事ならば、惣次郎には伝えずに、近藤さんのみに伝える。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。
土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。
数日後の事。
ここは、江戸の町。
初秋になるが、暑い日が続く。
町中。
土方歳三は包みを持ち、微笑んで歩いている。
沖田惣次郎は微笑んで歩いている。
沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。
「姉さんの家に薄荷を届けたら、薄荷湯に浸かれる可能性がありますね。」
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「おみつさんに、惣次郎の稽古関連の感想も意見も、一言も話さずに、惣次郎は何時も明るく笑顔で過ごしていると話す。おみつさんは江戸の町から戻った俺と惣次郎に、何かしら勧めると思う。薄荷湯を勧める可能性は充分にある。」
沖田惣次郎は土方歳三に微笑んで話し出す。
「土方さん。何故、私の稽古関連の感想も意見も、一言も話さないのですか?」
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「無用な争いを避けるのは、武術の心得の一つだろ。」
沖田惣次郎は土方歳三を苦笑して見た。
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎を微笑んで見た。
同じ頃。
ここは、江戸の町。
町中。
山口一の兄の山口廣明は、時折だが考え込ながら、歩いている。
山口一は普通に歩いている。
山口廣明は山口一に僅かに悩んで話し出す。
「突然だが、父さんの任務は引き継ぎたくないな。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に考えながら話し出す。
「我がままかな?」
山口一は山口廣明に普通の表情で首を横に振った。
山口廣明は山口一に考えながら話し出す。
「家でも、外でも、気軽に話せない内容だな。」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「気軽に話せない内容だが、寺の本堂などの室内で、人が近くに居ない状況を確認しながら話しは出来る。」
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一の説明する状況で話す時は、父さんから正式な話を聞いた時にしよう。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一を微笑んで見た。
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「兄さん。何故、町中で突然に今の内容を話し始めたんだ?」
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「父から子へ任務や家を引き継ぐ。当然の行為だ。父の任務を継ぎたくないと思う人物は、俺や一の他にもいる。家や道場では話し難い内容だから、外出の最中に話したんだ。」
山口一は山口廣明を普通の表情で見た。
山口廣明は山口一を微笑んで見た。
山口一は辺りを普通の表情で見た。
山口廣明は山口一に不思議な様子で話し出す。
「何か遭ったのか?」
山口一は山口廣明を見ると、山口廣明に普通の表情で首を横に振った。
山口廣明は辺りを見ると、山口一に不思議な様子で話し出す。
「微かな声だけど、惣次郎、という名前が聞こえた気がする。」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「気のせいではなく、惣次郎、という名前が聞こえた。」
山口廣明は山口一を見ると、山口一に不思議な様子で話し出す。
「惣次郎君が江戸の町に来ているのかな?」
山口一は山口廣明に普通に話し出す。
「当人に該当する姿は見付からなかった。」
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「江戸の町中は、人が多いから、姿が見付からないのは仕方が無いな。僅かな時間でも近くに居たのなら、縁の有る証拠だ。別な機会に逢う可能性は充分にある。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「一が普段と変わらない。良かった。気分を変えて、明るい話題を話す。今日は薄荷湯に浸かる日だ。楽しみだな。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は山口一に微笑んで話し出す。
「楽しみな薄荷湯のために、家に早く帰ろう。」
山口一は山口廣明に普通の表情で頷いた。
山口廣明は微笑んで居なくなった。
山口一は普通の表情で居なくなった。
同じ頃。
ここは、江戸の町。
町中。
土方歳三は包みを持ち、不思議な様子で居る。
沖田惣次郎は焦って居る。
沖田惣次郎は土方歳三に焦って話し出す。
「土方さん! 私は、一、という名前を聞きました! 嘘ではありません! 本当です!」
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎。落ち着け。惣次郎が嘘を付いたと思わない。」
沖田惣次郎は土方歳三に焦って話し出す。
「土方さん! 山口君を早く探しましょう!」
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎。山口君の名前は覚えているが、顔も姿も、覚えてないのだろ。」
沖田惣次郎は土方歳三に焦って話し出す。
「土方さんは、山口君の名前も顔も姿も、覚えていますよね! 山口君は近くに居るはずです! 早く探しましょう!」
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎。江戸の町は、人が多い。焦って探しても見付からない。落ち着け。」
沖田惣次郎は土方歳三に焦って話し出す。
「落ち着けません! 大きな声を出しても良いですか?!」
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「惣次郎。大きな声を出しら、物凄い注目を浴びる。山口君が、俺と惣次郎に気付いたとしても、俺と惣次郎の前に現れない可能性が高い。惣次郎は近藤さんの名代で薄荷を受け取りに来た。近藤さんと薄荷を分けてくれた人物に、迷惑が掛かるかも知れない。」
沖田惣次郎は土方歳三を納得のいかない表情で見た。
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで話し出す。
「人の多い江戸の町で、山口君本人か山口君の知り合いに、僅かな時間だが近付いた。惣次郎と山口君は、縁がある。焦るな。今日は多摩に戻ろう。」
沖田惣次郎は土方歳三を寂しく見た。
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎を微笑んで見た。
沖田惣次郎は土方歳三に寂しい表情で小さく頷いた。
土方歳三は包みを持ち、沖田惣次郎に微笑んで頷いた。
沖田惣次郎は寂しく歩き出した。
土方歳三は包みを持ち、微笑んで歩き出した。
暫く後の事。
ここは、多摩。
沖田惣次郎の姉の沖田みつの住む家。
風呂場。
薄荷湯が用意されている。
沖田惣次郎は薄荷湯に気持ち良く浸かっている。
沖田惣次郎は薄荷湯に浸かり、微笑んで呟いた。
「薄荷湯は、普通は乾燥させた葉を使うけれど、生葉を使うのも気持ち良いな。薄荷湯の湯気は温かいけれど涼しいな。気持ち良いな。」
温かさと涼しさの両方を感じる薄荷湯の湯気が、沖田惣次郎を包んだ。
沖田惣次郎は薄荷湯の湯気を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、多摩。
沖田みつの住む家。
一室。
沖田みつは微笑んで居る。
沖田惣次郎は気持ち良く横になって寝ている。
土方歳三は微笑んで来た。
沖田みつは土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は沖田みつに微笑んで話し出す。
「気持ちの良い薄荷湯でした。俺と惣次郎が、早く薄荷湯に浸かれるように準備を進めてくれてありがとうございます。」
沖田みつは土方歳三に微笑んで話し出す。
「惣次郎がお世話になり、薄荷も分けて頂いて、たくさん感謝しています。今回は江戸の町まで薄荷を受け取りに行ったお礼も兼ねています。私達はいつでも薄荷湯に浸かれます。気にしないでください。」
土方歳三は沖田みつを微笑んで見た。
沖田みつも土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は沖田惣次郎を微笑んで見た。
沖田惣次郎は気持ち良く横になって寝ている。
沖田みつは沖田惣次郎を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。
「惣次郎が気持ち良く横になって寝ながら、寝言で、山口君、と言いました。惣次郎は山口君という人物に夢の中で逢っているようです。」
土方歳三は沖田惣次郎を見ながら、沖田みつに微笑んで話し出す。
「惣次郎と山口君は、短い時間だけ逢いました。惣次郎と山口君が逢った時は、会話は無かったそうです。惣次郎は、山口君の名前はしっかりと覚えていますが、顔も姿も、忘れています。山口君に夢の中で逢っていても、山口君の姿を見て会話をしているのか疑問です。」
沖田みつは沖田惣次郎を見ながら、土方歳三に微笑んで話し出す。
「惣次郎は楽しい様子です。山口君と何かしらの形で逢って話していると思います。」
土方歳三は沖田惣次郎を見ながら、沖田みつに微笑んで頷いた。
沖田みつは土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。
「試衛館に戻る時間は決まっていますか?」
土方歳三は沖田みつを見ると、沖田みつに微笑んで話し出す。
「近藤さんから、試衛館に遅く戻って良いとの許しをもらいました。試衛館に戻る時間は出来るだけ遅くします。」
沖田みつは土方歳三に微笑んで話し出す。
「分かりました。今日はゆっくりと過ごしてください。」
土方歳三は沖田みつに微笑んで頷いた。
沖田みつは土方歳三を微笑んで見た。
薄荷の香りが、沖田惣次郎と山口一を僅かに繋いだ。
沖田惣次郎と山口一の不思議で強い縁は、途切れずに続いている。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
「風呂(ふろ)」についてです。
江戸時代は銭湯をたくさんの人達が利用していました。
現在とは違い「蒸し風呂」のようになっていたそうです。
「戸棚風呂」と呼ぶ形だったそうです。
熱くなっている小石の上に水を掛けて蒸気を出していたそうです。
浴槽には膝の高さほどのお湯しかありませんでした。
下半身はお湯に浸して、上半身は小石から出る蒸気で温めていたそうです。
蒸気が逃げないようにするために、「石榴口(ざくろぐち)」が考えられたそうです。
簡単な説明ですが、天井から低く板を下げて、蒸気を逃げないようにしていました。
風呂に入る人達はこの板をくぐって、風呂場の中へと入っていったそうです。
現在の風呂に近い、深く浸かる風呂は、江戸時代の慶長年間の末頃に出来ました。
「据え風呂」と呼ぶ、井戸水などから沸かす風呂だったそうです。
一般の庶民の家に広まったそうです。
普及していたのは「鉄砲風呂」や「五右衛門風呂」だったそうです。
「鉄砲風呂」は、簡単に説明すると、鉄の筒に燃えている薪を入れてお湯を温める風呂です。
鉄の筒でやけどをしないように、筒を遮るように柵で防護していたそうです。
この形は、江戸で主流になっていたそうです。
「五右衛門風呂」は、簡単に説明すると、下の鉄釜を熱して温める風呂です。
やけどをしないように、「釜板、兼、底板」を下に敷いて風呂に入ったそうです。
この形は、関西で主流になっていたそうです。
「薄荷(はっか)」・「薄荷湯(はっかゆ)」関連についてです。
薬用のお風呂を専門に提供する銭湯もあったそうです。
「菖蒲湯(しょうぶゆ)」や「柚子湯(ゆずゆ)」はあったそうです。
薄荷湯がいつ頃から有るのか分かりませんでした。
薄荷は、ハーブの一種類です。
薄荷自体は、江戸時代よりも更に前にあります。
日本に薄荷が渡来したのは、江戸時代よりかなり前の事になるそうです。
当時の薄荷の値段は分かりませんでした。
薬用の銭湯専門店で薄荷湯があった場合に利用する値段も分かりませんでした。
薄荷や薄荷湯は、高価だった可能性がありますが、この物語は、現在のように気軽に浸かる薬用風呂の設定にしました。
「薄荷湯」の入り方を簡単に説明します。
日陰干しした薄荷の葉を布袋に入れます。
桶などに袋を入れて、熱湯を掛け15〜20ほど蒸らします。
袋と煮出したお湯ごと浴槽に入れます。
詳細は各自でお調べください。
「山口祐助さん」についてです。
山口廣明さんと山口一さんの父親です。
元は幕臣だったらしいですが、足軽になったり、御家人株を買ったりしています。
長い間の秘密だったそうですが、ある藩で諜報活動の任務に就いていたそうです。
特殊な役目は、代々受け継いでいたそうです。
山口一さんは謎が多い方ですが、山口祐助さんも謎の多い方のように思います。
「初秋」についてです。
「しょしゅう」、「はつあき」、と読みます。
「陰暦七月の異称。秋の初め。」をいいます。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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