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新撰組異聞外伝 ~ 小正月の訪問者に桜粥 ~


時は明治。


小正月が近付いている。


沖田総司は、新撰組一番組組長を務めていた。

沖田総司は病のために、明治の時代を前にして亡くなった。

沖田総司には、妻の美鈴と息子の敬一が居た。

幕府側の者や家族への世間の対応は厳しいと感じる時が多い。

敬一と美鈴は、沖田総司を尊敬して慕いながらも、幕府側の身内と分からないように静かに暮らしている。


ここは、京都。


ここは、幼い敬一と母親の美鈴の住む家。


食卓の在る部屋。


縁の傍。


日差しが明るく照らしている。


敬一は笑顔で居る。

美鈴は微笑んで居る。


美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。小正月が近付いてきたわね。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「あずきがゆ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一は小正月に小豆粥を食べるのを覚えているのね。偉いわね。」

敬一は美鈴を嬉しく見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「小正月の朝は小豆粥をたくさん作るわね。一緒に食べましょうね。」

敬一は美鈴に嬉しく話し出す。

「あずきがゆ。おかあさん。いっしょ。たべる。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴を笑顔で見た。


幾日か後の事。


小正月の当日になった。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


台所。


美鈴は小豆粥を微笑んで作っている。


小豆粥を作る鍋からは、白い湯気が立っている。


美鈴は小豆粥を作る鍋の様子を微笑んで見た。


美鈴の後ろから、敬一の明るい声が聞こえた。

「てつだう。」


美鈴は後ろを心配して見た。


敬一は笑顔で居る。


敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一に心配して話し出す。

「敬一。お母さんが台所で料理している時は、熱いお湯や火があって、とても危ないの。敬一に万が一の出来事が起きたら困るわ。お母さんは物凄く悲しくなるの。離れて待つように以前に説明したわよね。」

敬一は美鈴に寂しく話し出す。

「てつだう。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「今の敬一の体は小さいから、台所での手伝いは危ないの。敬一が大きくなってから、台所での手伝いをお願いするわね。敬一には後で別なお願いを頼むわ。」

敬一は美鈴に微笑んで頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「小豆粥は少し経ったら出来るの。食卓の有る部屋で待っていてね。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「まつ。」

美鈴は敬一を微笑んで見た。


敬一は食卓の有る部屋へ笑顔で歩き出した。


美鈴は敬一の様子を微笑んで見た。


敬一は食卓の有る部屋に笑顔で入った。


美鈴は小豆粥の様子を微笑んで確認した。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は笑顔で座っている。

美鈴は微笑んで座っている。

美鈴の居る側の食卓に、小豆粥の入る鍋が置いてある。


美鈴は鍋のふたを微笑んで開けた。


鍋から湯気が立ち上った。


敬一は湯気を笑顔で見た。

美鈴は敬一の様子を確認しながら、小豆粥を器に微笑んで装った。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「おとうさん。あずきがゆ。いっしょ。たべる。」

美鈴は鍋のふたを閉じると、敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんに先に食べてもらいましょう。」

敬一は美鈴に笑顔で頷いた。


美鈴は器を持ち、部屋から微笑んで出て行った。

敬一は部屋から笑顔で出て行った。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は部屋の中に笑顔で入ってきた。

美鈴は部屋の中に微笑んで入ってきた。


敬一は食卓の前に笑顔で座った。

美鈴は食卓の前に微笑んで座った。


美鈴は鍋から小豆粥を器に微笑んで装った。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は敬一の前に器を置くと、敬一に微笑んで話し出す。

「熱いわ。気を付けてね。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「きをつける。」

美鈴は鍋から小豆粥を器に微笑んで装った。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「あずきがゆ。きれい。」

美鈴は美鈴の前に器を置くと、敬一に微笑んで頷いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「いただきます。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

敬一は小豆粥を笑顔で美味しく食べた。

美鈴は敬一を見ながら、小豆粥を微笑んで食べた。


少し後の事。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


食卓の有る部屋。


敬一は小豆粥を笑顔で美味しく食べている。

美鈴は敬一を見ながら、小豆粥を微笑んで食べている。


敬一は小豆粥を笑顔で食べ終わった。

美鈴は小豆粥を食べながら、敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴の前に空の器を置くと、美鈴に笑顔で話し出す。

「おかわり。」

美鈴は小豆粥を食べるのを止めると、器を微笑んで持った。

敬一は美鈴を笑顔で見た。

美鈴は鍋から小豆粥を器に微笑んで装った。

敬一は美鈴を笑顔で見ている。

美鈴は敬一の前に器を微笑んで置いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「いただきます。」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。

敬一は小豆粥を笑顔で美味しく食べ始めた。

美鈴は敬一を見ながら、小豆粥を微笑んで食べた。


暫く後の事。


ここは、京都。


陽が沈んだので、空は暗さに覆われている。


ここは、敬一と美鈴の住む家。


敬一と美鈴の部屋。


美鈴は微笑んで床の準備をしている。

敬一は眠い様子になっている。


美鈴は微笑んで床の準備を終えた。

敬一は美鈴を眠い様子で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。早く寝なさい。」

敬一は美鈴に眠い様子で話し出す。

「こしょうがつのほうもんしゃ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「小正月の訪問者の話を覚えていたのね。」

敬一は美鈴に眠い様子で頷いた。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「小正月の訪問者が訪ねてきたら、敬一に教えるわ。無理をしないで早く寝なさい。」

敬一は美鈴に眠い様子で話し出す。

「おとうさん。こしょうがつのほうもんしゃ。いっしょ。くる。」

美鈴は敬一を寂しい微笑みで見た。

敬一は美鈴を眠い様子だが不思議な様子で見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんと小正月の訪問者が訪ねてきた時に、敬一が途中で眠っていたら寂しいわよね。敬一の気持ち。分かるわ。」

敬一は美鈴を眠い様子だが微笑んで見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんが小正月の訪問者と一緒に訪ねてきたら、敬一に必ず教えるわ。早く寝なさい。」

敬一は美鈴に眠い様子だが微笑んで話し出す。

「ねる。おやすみ。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お休みなさい。」

敬一は床の中に眠い様子で横になった。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は床の中で直ぐに眠りに就いた。


幾つかの季節が過ぎた。


敬一と美鈴は、東京で過ごすようになった。

敬一は、藤田五郎と名前を変えた斉藤一に逢った。

敬一は、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉と幾度も逢うようになった。

敬一にとって楽しい日々が続いている。


敬一と藤田五郎が逢ってから初めて迎える小正月が近付く頃。


ここは、東京。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎、時尾、勉が、居る。

敬一は元気良く訪れている。


時尾と勉の部屋。


勉は笑顔で居る。

敬一は微笑んで居る。


敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君。小正月の朝に小豆粥を食べるよね。」

勉と敬一に笑顔で話し出す。

「こしょうがつ。あずきがゆ。たべる。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「小正月に小豆粥を食べると、明るい気持ちになるよね。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「あかるい。なる。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「小豆粥は、“桜粥”という別な呼び名があるんだ。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「さくらがゆ。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「僕は桜粥の呼び名の方が好きだな。勉君はどちらの呼び名が好き?」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「さくらがゆ。おいにちゃん。いっしょ。」

敬一は勉に微笑んで話し出す。

「勉君も一緒なんだ。嬉しいな。」

勉は敬一に笑顔で話し出す。

「うれしい。」

敬一は勉を微笑んで見た。


時尾が部屋の中に微笑んで入ってきた。


敬一は時尾を微笑んで見た。

勉は時尾を笑顔で見た。

時尾は敬一に微笑んで話し出す。

「勉が、お正月の間に、敬一君と一緒に小豆粥を食べたいと話していたの。今日は、藤田が居るから、みんなで小豆粥を食べたいと思って用意したの。一緒に食べましょう。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。お言葉に甘えてご馳走になります。」

時尾は敬一を微笑んで見た。

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「さくらがゆ。みんな。いっしょ。たべる。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「僕が勉君に小豆粥の別名の桜粥を話しました。」

時尾は勉に微笑んで話し出す。

「勉。良い言葉を教えてもらったわね。」

勉は時尾に微笑んで頷いた。

時尾は勉と敬一に微笑んで話し出す。

「桜粥を一緒に食べましょう。」

敬一は時尾に微笑んで話し出す。

「はい。」

勉は時尾に笑顔で話し出す。

「はい。」

時尾は勉と敬一を微笑んで見た。


敬一は部屋を微笑んで出て行った。

勉は部屋を笑顔で出て行った。

時尾は部屋を微笑んで出て行った。


少し後の事。


ここは、藤田五郎、時尾、勉の住む家。


藤田五郎の部屋。


藤田五郎は普通に居る。

敬一は微笑んで居る。


敬一は藤田五郎に恥ずかしく話し出す。

「斉藤さんと時尾さんの言葉に甘えて、小豆粥をたくさん食べてしまいました。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「勉も敬一のように美味しくたくさん食べていた。時尾は喜んでいた。恥ずかい気持ちになるな。」

敬一は藤田五郎に恥ずかしく話し出す。

「はい。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「小正月の日は、小正月の訪問者が訪ねてきますよね。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お父さんが小正月の訪問者だったら、お母さんがとても喜ぶと幾度も思います。小正月の訪問者がお父さんだと良いなと幾度も思っています。」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。今の話は忘れてください。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一の話すとおり、美鈴さんはとても喜ぶ。今の話を忘れる必要は無い。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お父さんが小正月の訪問者として仮装して訪れたら、お母さんは驚きますよね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんは驚かずに、総司を笑顔で喜んで迎える。」

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。


小正月が穏やかに近付いている。

小正月には、小豆粥を食べる訪問者の訪問者が訪れるなどの行事が待っている。

藤田五郎にとって、時尾にとって、勉にとって、敬一にとって、美鈴にとって、穏やかで和やかな小正月になる予感がする。




*      *      *      *      *      *




「小正月(こしょうがつ)」についてです。

「陰暦の一月十五日、又は、陰暦の一月十五日を前後数日ほど含んだ日」をいいます。

ちなみに、「一月一日から七日まで」を「大正月(おおしょうがつ)」といいます。

現在の「小正月」は、現在の暦で「一月十五日」を「小正月」とする場合が多いです。

現在の「松の内」は、一月一日から一月七日とする場合が多いです。

本来は、元日から「小正月」までを松の内とするそうです。

現在でも「小正月」までを松の内とする地域があるそうです。

「小正月」には「二番正月」の別名があります。

「松の内」に忙しく働いた主婦をねぎらう意味で「女正月」と呼ぶ地方もあるそうです。

「小正月」の朝に「小豆粥(あずきがゆ)」を食べる習慣があります。

「上元(じょうげん)」の日に「小豆粥」を食べると、一年中の疫病が避けられるといわれているそうです。

「小豆粥」についてです。

「小豆を入れて煮たお粥」です。

「桜粥(さくらがゆ)」という別な呼び方もあるそうです。

「小正月」に食べる「小豆粥」は、「お餅」も入れて食べる事が多いそうです。

この「お餅」を「粥柱(かゆばしら)」と言うそうです。

「小正月の訪問者(こしょうがつのほうもんしゃ)」についてです。

「小正月の夜に家々を訪れて祝言を述べて回る年神に扮装した人」をいいます。

「小正月の訪問者」の中には「なまはげ」がいます。

この物語の登場人物達は、誰も扮装はしていません。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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