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ファイルナンバー006:波立海岸
(福島県いわき市久之浜町舟門)
国道6号線随一の景観を誇る「波立海岸」(はったちかいがん)。
弓形の美しい海岸に沿うように進む国道6号線。
国道は急峻な岬を2つのトンネルで抜けている。
今回は波立海岸周りの気になるモノをレポートする。
波立海岸の景観に彩を添えるのが、海に突き出た荒涼とした岩肌と、海中に屹立する奇勝「鰐ガ淵」(わにがふち)である。
海岸と鰐ガ淵を結ぶ赤い欄干の橋がまたとないアクセントだ。
丁度引き潮の時間に来たので、海底の岩肌が良く見える。
同じ風景のはずだが、訪れる時期、時間、季節によって違った印象を受ける。波立海岸の魅力の一つだ。
赤い本堂が辺りを圧するのは「波立薬師」(はったちやくし)として親しまれる「波立寺」(はりゅうじ)。
波立寺は806年(延暦25年)に建立されたと伝えられる由緒ある寺院である。
寺の前では骨董市などの、門前市が定期的に開かれ、季節を問わず訪れる人は多い。
地形的な制約から、急カーブの途中と言う難儀な場所に口を開ける「波立トンネル」(126m)。
日曜日の正午にしてこの交通量。平日の交通量は推して知るべし。
さぞかし事故も多いのではないかと思うのだが、そうでは無いようだ。
場所が場所だけに慎重極まる運転を強いられる事が事故の少なさの一因であろう。
今回は画像に見える歩道橋を渡ってみる。
歩道橋にはご覧のような警告が。
…了解。
歩道橋の上からはご覧のような絶景が得られる。
潮の香りと波の音。乾いた風。
浜通りの人に生まれて本当に良かった。思い立ったらすぐに海を見ることができる。
海の近くに住む人が味わえる特権だ。
歩道橋が行く先で2つに分かれている。
この先はどうなっているのだろうか?
真っ直ぐ進むと、先程見えた赤い橋に行けるようだ。
ここから見える鰐ガ淵の眺めもなかなか良い。
もう一方の道はと言うと…
…何か恐ろしい物を見てしまったようだ。モルタルに塗り固められた岩肌に隧道が開けられている。
歩道橋の終点はそのまま人道トンネルの入口であった。
実際問題として、波立トンネルと隣接する江之網トンネルは断面が狭く、線形も急である為、歩行者の通行には危険が伴う。
観光等で波立海岸周辺にお出かけの際は、迷わずこちらのトンネルを使用して欲しいと思う。
赤い橋の名は「弁天橋」(べんてんばし)と言う。
橋の名前の由来は鰐ガ淵の別称「弁天島」から名付けられたそうだ。
初代の弁天橋は昭和8年に作られた。
何回かの代替わりを得て現在のような姿になっている。
鰐ガ淵(弁天島)は実際に近づいてみると印象が変わる。
荒涼として、ここだけを見ると別の惑星の景色のようだ。
太平洋の怒涛に長年洗われた鰐ガ淵はその姿を少しずつ変えていく。
左の画像は昭和30年頃の鰐ガ淵の様子である。
弁天橋の形状が異なっている事や鳥居の有無にも注目したいが、鰐ガ淵本体の形状も今現在より角張っているような気がする。
当時は有名な観光名所だったのだろう。今現在では考えられないほどの人出でごったがえしている様子が伺える。
左の画像も昭和30年頃の鰐ガ淵の様子である。
弁天橋の出口にも鳥居が存在していた事が分かる。
満ち潮の時に撮影されたので鰐ガ淵周辺のダイナミックな様子が良く分かる。
鰐ガ淵(弁天島)には龍神様を祀る神社がある。
昔から漁民の信仰の対象として崇められていた鰐ガ淵であるが、現在のように神社としての形態を取るようになったのは弁天橋が作られた後の事だろう。
龍神様に一礼して鰐ガ淵を後にした。
再び歩道橋に上り、人道トンネルの内部に入る。
特徴的な円形断面のまままっすぐ進んでいく様はシュールである。
内部の明かりは常時点灯しているものの、少々頼りない。
足音が反響するトンネルを進む。
トンネルを通り抜けると、すぐに次のトンネルが姿を現す。
これが広野町の夕筋トンネルから続く国道6号線の8本のトンネルの締めを飾る「江之網トンネル」(えのあみトンネル)(108m)である。
車両用トンネルの傍らには、波立トンネルと同じ様な人道トンネルが設けられている。
断面が同じなので受ける印象はほとんど同じである。
こちらのトンネルは何故か出入口両端の照明が切れており、内部は心なしか暗いような気がした。
夜中の通行はちょっと躊躇われるような雰囲気だ。
江之網トンネルを抜けるとご覧のような光景が見える。
6号線はしばらくの間海岸沿いを走り、四ツ倉漁港手前まで2車線道路を維持する。
海岸沿いに建つのは「太平洋健康センターいわき蟹洗温泉」である。
こちらも休日、平日問わず多くのお客で賑わういわき市の定番スポットだ。
6号線を少し歩き、田之網歩道橋より江之網トンネルを撮影する。
国道6号線の置かれている状況がお分かり頂けるだろうか。
現在、久ノ浜市街地と波立海岸付近を山側に避ける国道バイパス工事が建築中である。
開通は未定であるが、バイパス完成の暁には静かな海沿いの道になるのだろう。
左の画像は昭和30年頃の常磐交通(現 新常磐交通)の広告に使われていた江之網トンネルが撮影された写真である。
2台のボンネットバスの後ろにはっきりと江之網トンネルが写っている。
この写真を見る限り、トンネル開通当時から坑口はそのまま使われているようだ。
道路も当時から結構な広さが確保されていたようだ。
現在では歩道の設置などで幾分改良されているが、線形はほぼ当時のままのようだ。
いわき市久之浜といわき市四ツ倉を結ぶ要として、2つのトンネルはバイパス開通のその日まで課せられた役割をこれからも黙々と遂行していくだろう。
この項終わり
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