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木戸川森林鉄道の欠片 4
〜遺された隧道〜
(福島県双葉郡楢葉町)
県道250号線は、新芝坂トンネルから木戸ダムまでの間に5つの駐車場が整備されている。
画像の駐車場は「第二駐車場」。
トンネルとダムの中間付近にあり、遊歩道を利用した渓流観光や、画像奥に見える鳥居の先にある「大瀧神社」の参拝客の利便を図る為に作られた。
ダム建設が行なわれていた頃、この場所にはゲートが設けられダム工事用車両以外の通行が禁止されていた。
第二駐車場の手前には「大滝橋」(おおたきばし)がある。
橋の名前は「大瀧神社」から付けられたものだろう。
大滝橋にも旧道が存在する。
これより先の橋には旧道は存在しないようだ。
道の脇のレールがひしゃげた台形のように強引に成形されていた。
こちらも九竜橋の旧道のようにレールが白く塗られている。
このようなレールを何個か並べ路肩の保護を図っていたのだろう。
正に「ガードレール」だ。
大滝橋の旧道は、最初に見た親不知橋の旧道と同じ様に道床が石積みによって作られていた。
沢を流れる水の量によって橋の種類が異なるのは非常に興味深い。
旧道と交わる小さな沢に、四角い木材が二本打ち捨てられていた。
自然の木材にしては四角すぎる。
沢を跨ぐ木橋があったのだろうか。
それとも森林鉄道の忘れ形見か。
沢の脇には大小の石が苔生した状態で転がっていた。
崩落したにしては不自然な感じがする。
石の断面が人為的なものに見えたのだ。
瓦礫の向こうには石垣…
石垣?
石垣は旧道から数m程外れた場所にある。
何故こんな所に?
ふと右側を見る…
!!!
何だこれは。
瓦礫の向こうに見えた半円形の空間。
空間の上部はコンクリートによって固められている。
これはもしや…
隧道だ!
隧道の上部が露出していたのだ。瓦礫は隧道の坑口を埋め戻す為に用意されていたのだ。
漏れた光で隧道の内部が照らされている。
内部がもう少し見えないものか…
スパイダーマンのように腹這いになり、カメラを隧道内部に突っ込みフラッシュを浴びせた。
幅は2m強といったところか。高さは3m強くらいだろう。全長は15m位か。
道床(と思われる部分)は水浸しだ。
耐水装備とロープ(降下、脱出用)を用意していなかったので進入は断念した。
森林鉄道の隧道と言えば、浪江森林鉄道の
第5号隧道(大笹隧道)
のように素掘りであるものとばかり思っていたのだが、この隧道は違うようだ。
隧道は道床から数段の石垣を設え、内壁を万全強固なものとしている。
隧道の上部は画像からでは伺い知れないのだが、恐らくはコンクリートの型枠施工によって半円形に成形されているものと思われる。
昭和初期にはコンクリートは一般的に使わるようになっていたので、この隧道は公営の「木戸川森林鉄道」(昭和8年より後)となってから整備がされたのではないだろうか。
隧道の先に僅かに光が漏れている。反対側の坑口を探してみる。
…なんじゃこりゃ。
反対側の坑口は確かに存在した。しかし全体の10分の1程度が露出しているに過ぎない。
県道から目を凝らしてやっと見つけられるレベルだ。
隧道上部に打たれたコンクリートの厚みと、その上を住処とした木の根の生命力に驚かされた。
坑口の先には石垣が残されていた。
大半は落ち葉などに隠されているが、高さは数m程あるだろうか。
これもまた森林鉄道の忘れ形見だ。
この画像の左側に隧道が隠されているなどと誰が思うだろうか。
駐車場の向かい側、県道から僅か数mの場所に隧道は遺されていた。
隧道が山裾に穿たれたので、森林鉄道廃止後も隧道は破壊を免れたのかも知れない。
今私が見ている車道は、隧道のすぐ脇の土地を均してつくられたのだろう。
隧道のすぐ脇まで地山は削り取られたのだろう。
隧道の側面が露出しているように見える。
恐らくこの壁の向こうは隧道の内部と思われる。
大滝橋から先、森林鉄道跡(赤い線)はご覧のように木戸川に向かい、現在のダム湖のある場所にまっすぐ進んでいく。
あるサイトで「余りにもアスレチカル」と評された木戸川森林鉄道。
その核心部は永久に湖底に没してしまったのだ。
木戸ダムの放水口を見る。
木戸川森林鉄道はどこを通っていたのだろうか。
満々と水を蓄える木戸ダム湖(木戸川湖)
木橋を架け、隧道を穿ち、現代人の誰もが驚愕すべきルートで軌道を敷設した木戸川森林鉄道は記憶の彼方に沈んでしまった。
県道250号 下川内竜田停車場線はダムの提体上を通り、対岸に渡り川内村へと進む。
川内村の秘境と称される乙次郎地区を抜け、国道399号へと繋がるのだ。
この項終わり
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