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浪江森林鉄道 特別編
〜第5号隧道〜
○ 浪江森林鉄道 本線の隧道について
昭和2(1927)年に浪江駅〜
高瀬川とその源流である古道川、葛尾川に沿って敷設された鉄道には5つ(以上)の隧道が穿たれていたと言う。
浪江駅側から
第一号隧道:神鳴隧道
第二号隧道:一の宮隧道
第三号隧道:北沢隧道
第四号隧道
第五号隧道:??隧道
である。
5つの隧道のうち第一号、第二号隧道は鉄道廃止後、車道化改修され今でも現役として使用されている。
第三号隧道は1990年代後半に隧道周辺で起こった土砂崩れの際、復旧工事に会わせて開削され消滅した。ロックシェッドを備えていたと言う。
第四号隧道は車道化の際に開削されてしまったのだろうか、その痕跡を残していない。
今回紹介する第五号隧道は鉄道廃止後、車道化されることも無く、開削されることも無く
森林鉄道現役当時の姿そのままに
開通時期は諸説あるが、恐らくは森林鉄道が葛尾村まで延長された大正6(1917)年頃の開削と考えられる。
開通後92年(!)。隧道の中は現在どのようになっているのだろうか?
三程支線の分岐から10分ほど車を走らせただろうか。
森林鉄道は目指す終点
画像の地点で県道253号と森林鉄道跡は暫し分かれる。
県道は左にカーブを取るのに対し、森林鉄道跡はほぼ直進する。
!!
何の予備知識も無くこの光景を見た人は恐怖感すら覚えるのでは無いだろうか。
山に穴が開いていて、しかも向こうには半円形の空間が見える。
こちら側からでは内部の様子がうかがい知れないのも恐ろしい。
上の画像でも確認できるのだが、金網には何者かが切断した跡があり内部に入れる様になっている。
「
街道Web
」主宰のTUKA氏がレポートした頃のままのようだ。
こちら側に車を長時間止め続けるのは交通の妨げになるので、
県道のカーブの途中で
「葛尾」と書いて「かつらお」と読むのだが、浪江の人は「かずろお」と親しみを込めて言う。
町境の標識の先には真新しい看板が建ち「行司ヶ滝」への入り口を示す。
ここから30分ほど歩くと優美な滝の姿を拝む事ができる。
川沿いを歩くのでそれなりの装備は必要だ。
……。
何度見ても恐ろしい。こちら
おおよそトンネルとは思えない怪しげな雰囲気に満ちている。自然が穿った洞穴にも見えない。
この中に…入るのか。いざ来てはみたものの、さてどうしませうか。
と…取りあえず坑口の周辺を観察してみよう。隧道内に異常があったら入らなければ良い訳だし(笑)。
坑口の左側には高さ5、6m位までだろうか、緻密な石垣が設置されていた。
地上3mくらいの所で石垣が二分されており、ほんの僅かな平場が見受けられた。
恐らく石垣を設える際に2段構えの施工をしたのだろう。
石垣は坑口の手前で突然断ち切れている。
鉄道廃止後に崩壊したものと推測する。残った部分が現存しているのは施工当時の緻密な工法のお陰に他ならない。
坑口の右側はどうだろう。
こちらも見事な石垣が設えてある。
右側の石垣も坑口の手前で突然断ち切れている。
この第五号隧道の石垣の緻密さは森林鉄道沿線で見受けられる他の石垣とは一線を画した出来である事は興味深い。
(2007年3月撮影)
今でこそこの様な恐ろしげな状況を呈している坑口だが、現役当時はどのようなものだっただろうか。
廃止後、ゆっくりと崩れて現在のような形になったのだろう。
残念ながら現役当時の隧道の写真は手持ちの資料に存在しなかった。
隧道は今でも小規模ながら崩れつつあるのだろう。
坑口の上部はご覧のように大きく抉れたように崩壊している。
去年見た時より崩壊の度合いが大きくなっている…ような気がする。
足元は落ち葉が堆積している。
足を置く場所によっては、靴半分ほど埋まる位だ。
今までは坑口を見るだけであったのだが、今回は隧道内部に潜入調査を決行する。
しかし…物好きにも程があるぞ自分。画像ですらこのような雰囲気なのだ。向こうが見えている事が何の精神的な助けになっていない。あちらの坑口に行くまでに自身が無事であると言う保障はどこにも無い。
しかし、この隧道の内部に入るのはHP開設時からの自分自身に課した責務。今日それを果たさずして他にいつ決行しようか。
腹は括った。やはり今日潜入しよう。
とは言え、相手は開通後百年強を経た隧道。備えは万全にしなければなるまい。
ヘルメット良し。ヘッドランプ良し。カメラ作動確認。足元の安全靴装着良し。
「誰か」いませんように…動物やヘビや猿がいませんように…怪我をしませんように…
今日が隧道の終焉の日でありませんように…そして私の命日でありませんように…
ありったけの勇気を使い隧道にいざ突入。
あ…入っちゃったよ…この莫迦…何やってんだよ…出られなかったらどうするんだよ。
自分の行為は正にスイサイド(自殺)。もし何らかのアクシデントでこの場で死んでしまったら
事情を知らない人は奇特な自殺者と思うかも知れない。
しかし、入ってしまった以上はこのカメラを用いて隧道内部を撮影する以外にする事は無い。
足元と頭上に最大限の注意を払いつつ出発進行。
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