このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
浪江森林鉄道 特別編
第五号隧道 2
隧道内部は昼(午後2時)だと言うのにかなり暗い。
向こう側(浪江側)が見えているのが救いだが、隧道内という特殊環境にいる事で安心は出来ない。
もしカーブしている隧道であったならば一生入ることは無かっただろう。心理とはそういうものだ。
暗さのせいで全長を把握する事は出来ない。70m位であろうか?
タイヤ…どこの馬鹿野郎が捨てたのだろうか。
恐らくは坑口から勢い良く放り投げたのだろう。
捨てたいのなら何処へなりとでも捨てるがいい。その代わりモラルと人格も一緒に捨てている事を忘れるな。
タイヤの傍らには比較的新しいビニール袋。裏に見えた店の名は「マイプラザ」(
…っとに馬鹿が。捨てた奴
ビニール袋の脇には金網。
しかしこれは不法に廃棄された物ではない。
恐らく
落石か…それとも人為的に切断されたのか真相はわからないが、用済みとなった金網はご覧のような有様で隧道内に打ち棄てられている。
ゴミの先には隧道の側壁が崩れて堆積していた。
坑口側(画像左)と内部側(画像右)で明らかに岩石の色が違うのがお分かりいただけよう。
岩石同士がせめぎ合い、長い月日を経てこの様な状態になったのだろう。
砂のように崩れているわけではなく、ある一定以上の大きさの岩石が崩落している。
もしこの岩石が一つでも私の頭上に降ったならば…いかにヘルメット装着といえどもひとたまりもあるまい。
崩壊部分から先、隧道は平静を取り戻す。
目に見える崩壊は認められない。
隧道の側壁は意外に乾いている。風通しのある事、側壁から水が湧き出していない事などが
原因と思われる。
硬い岩石で出来ているのかと思い、側壁を触ってみたが意外にも脆く、細かい塊となって剥がれ落ちる。
よくぞ今まで隧道が現状を保っているものだ。
坑口付近で堆積していた落ち葉は隧道中央付近で見えなくなった。
地面が露出している。恐らく森林鉄道当時の道床だろう。枕木やレール、あるいはその痕跡を地面に探してみたのだが、如何せんこの暗さでは判別が出来ない。
隧道の上部からは水が滴り落ちる。そういう水滴に限って首筋に落ちてくる。あまりの冷たさに悲鳴を上げる。
水滴の音はこんなにも反響するものか。ピチャン…ではなく金属音のような「ピチャアアァンン」
と言う音が隧道内に響き渡る。隧道内には私の靴と水滴のみが音を発する。
隧道のちょうど中間地点。進行方向左側。この光景を見て一瞬気絶しかけた。
隧道内に入ったという特殊な精神高揚状況で「横坑」のある事をすっかり失念していたのだ。はじめて「街道Web」のTUKA氏のレポートで見たときはたいそう驚いたものだ。改めて自分の目で見て驚きを新たにする。
画像では確認し辛いが、横坑は奥行き15m程、横1m、高さ1.5mほどであろう。
待避坑にしては奥行きがありすぎる。更に恐ろしい事には横坑は「コンクリート」でその終点が塞がれている事だ。もっと先が有ったと言うのか…何の為に…こんなもの…
「誰かお住まいですか?」街道WebのTUKA氏がこの隧道内でこの光景を見たときに思った事だ。誰が好きこのんでこんな隧道のほぼ中間まで来て袋詰めのゴミを捨てて行くのだ?
ゴミの置き方が「何か」を隠匿する意図が感じられるのが怖い。
石を一個横坑に放り投げ、カメラのフラッシュを何発か浴びせた。
誠に幸いな事に何らかの生物の反応は感じられなかった。
しかし、そう遠くない昔にある人物が住んでいた可能性は否定できない。このゴミの向こうに…人の…まさか…いやいやいや…駄目だ。とても向こうを見る気にはなれない。
横坑を過ぎた後の隧道は水滴の落ちてくる量が増え、道床には水溜りが出来ている。
こんな事もあろうかと履いてきた安全靴が役に立った。
厚底なので多少の水溜りなど平気で進める。
快調に歩を進め、やっと浪江側の坑口が手に届く所まで来た。
ここまで来たからには引き返すという選択肢は無い。
何たる非日常的光景。
漆黒の闇から緑の空間が手招きをしている。あそこまで行けばこの圧迫感や不安感から逃れられる。
森林鉄道が現役であった当時、一日一往復 浪江駅から
ご乗車になった事のある方はいらっしゃるだろうか?是非お話を伺いたいものだ。
ビールと紅茶とコーヒーの空き缶。
……人が勇気を振り絞って入った隧道にこの缶の持ち主はビールを飲みつつ面白半分で入り、あまつさえその缶を捨てていったのか…
そんな図太い神経をしているから平気で公共の場所にゴミを捨てていけるんだ。
恥を知れ、莫迦野郎。
金網の向こうに県道253号線が見える。
なかなか有り得ないシチュエーションだ。他人が県道側から私を見たら何と思うだろうか。
森林鉄道は隧道を抜け、
こちら側の金網が切れているのはわかっている。そこから出ればこの探索はおしまい。
…と思ったのだが…
やっぱり隧道を戻ろう。
往復してこそ この第五号隧道の探索と言えるのではあるまいか。
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