このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

小石川植物園——寺田寅彦『どんぐり』の舞台

明治38年4月、『ホトトギス』に発表された寺田寅彦の『どんぐり』(『団栗』)は、原稿用紙12、3枚の小品だが、当時、不治の病とされた結核に突然見舞われた若い夫婦の動揺・不安、一時の平穏、そして、亡妻への愛惜、娘への思いなど、複雑微妙な心理のあやを見事に描いた作品だ。
 初産を控えた若い妻が突然喀血した日のことから、『どんぐり』は書き出されている。一進一退の妻の病状がやや安定した二月の半ば、風もなく暖かい日に医者の許可を得て、「余」は妻を植物園に連れ出す………〔 あらすじ 〕。 その時期にあわせて小石川植物園を訪れた。
 


冬の小石川植物園内のコナラの木。落ち葉を掻き分けるとどんぐりが顔を出した▲

園内風景▲
小石川植物園は正式名称は東京大学大学院理学系研究科附属植物園で、貞享元年(1684)開設の「小石川御薬園」に始まると言う世界でも有数の歴史をもち、5万坪近い広大な敷地にはさまざまな植生が配置され、中には希少植物も多い。これは「ニュートンのリンゴ」の木。
根回り2メートルもあるクスノキの大木
甘藷試作地跡の碑

青木昆陽が、享保20年(1735)にこの地で甘藷試作に成功したのを記念して、大正10年に設立、と案内板にある。
旧養生所の井戸

八代将軍吉宗が、大岡越前守に命じて薬園内に設けた養生所(山本周五郎『赤ひげ診療譚』の舞台)の井戸が残る。この井戸は関東大震災でも、避難者の飲用水として大きな役割を果たしたという。
旧養生所の井戸と満開のカンザクラ


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください