誕生月の九州旅行記 4
2015年6月1日(月)  <宮崎→都城→吉松→嘉例川→人吉→熊本→福岡→東京>


<宮崎→都城→吉松>

 誕生日パス最終日の3日目。既に6月に入り、誕生月でも何でもなくなったけど、誕生日パスは使用開始日が誕生月なら次の月に入っても使えるので問題ない。そして世間の多くの社会人は働く月曜だけど、今年度上半期は制度上月曜に仕事が入ってないので自由に動いても問題ない。ただ、今回の旅行のメインは昨日で、今日は以前巡ったことがある場所が結構あるため、どちらかといえばおまけのようなものだった。6月だし月曜だし、気分はエクストラステージ。

 今日も始発の電車に乗るので、朝5時に起床。支度をしてチェックアウトし、宮崎駅まで歩いていく。一昨日が5時58分発、昨日が5時58分発、そして今日が5時53分発なので、今日が一番早い。まあ5分くらいですが。


<フェニックスが南国っぽい宮崎市の橘通り>

<フェニックスが南国っぽい朝の宮崎駅>

 月曜だけど朝の宮崎駅にはそんなに人はいなかった。人が少なかったので、みどりの窓口で今日最後に乗る新幹線のグリーン席を予約しておく。これで誕生日パスの最後のグリーン枠を使い果たしたので、ほっと一安心。

 その後ホームへ。今日の一発目は特急きりしま1号で宮崎の南西にある都城まで行く。昨日通った道を途中まで戻るので、宮崎には本当に夕食を食べて泊まるだけになってしまった。昨日と同じ特急きりしまなので、車体も当然同じくハイパーサルーン号の異名を持つ783系。この旅3回目の783系グリーン車になった。


<5時53分発特急きりしま1号に乗る>

<朝の宮崎駅ホームと特急きりしま1号>

<ホームから見える朝日>

<本当はこの海幸山幸にも乗りたかった>

 7時53分、特急きりしま1号が出発。昨日と同じく、グリーン車室の乗客は僕一人だった。途中トイレに行くときに指定席や自由席を通ったけど、こちらもあまり乗ってなかった。やっぱり宮崎と鹿児島の都市間移動はあまり需要がないのかな。今日は朝早いので昨日の夜に比べればグリーン車室も明るいが、一人なのでやっぱり寂しい。

 昨日は夜で車窓が見えなかったので、一体どんなところを通ったんだろうかと車窓を眺めていた。宮崎を出てしばらくは田んぼや畑といった田舎の風景が続いてたので、まあそんなもんかと思っていたら、途中から人里離れた山の中に入っていった。右を見ても森と山、左を見ても森と山。家も電線も、水田すらも見つからない。そうか、だから昨日は車窓がずっと真っ暗で、スマホの電波も入らなかったのか。鹿児島と宮崎という南九州の2大都市を結ぶ日豊本線が、こんなところを通るとは思わなかった。北海道の石北本線辺りを思い出すな。


<宮崎南駅で海幸山幸の車両が見えた>

<しばらくは田んぼや畑の風景が続く>

<曇りがちになってしまった>

<途中からこんな感じの人里離れた場所になる>

 宮崎から52分、6時45分に都城駅に到着。次の列車まで45分くらいあるので、駅とその周辺をあてもなくぶらぶらとする。都城市は人口16万人の宮崎県第2の都市で、どげんかせんといかん知事が生まれたところ。朝なので出勤や通学の人が多く、宮崎方面に向かう普通列車の方は結構混雑していた。出発前に宮崎駅で朝食を調達できなかったので、都城駅で駅弁を買おうと思ったら、朝早すぎてまだ売っていないらしい。駅前を歩いてみたけど、名物のようなものを売っている雰囲気は皆無だったので、仕方なく駅に戻った。都城市役所があるような市中心部には隣の西都城駅の方が近いということなので、都城駅周辺はそんなに栄えてないのかもしれないけど、人口16万人の代表駅前としてはちょっと寂しかったかな。


<都城駅に到着>

<都城駅>

<都城駅その2>

<駅前にはやっぱりフェニックス>

 あまりに何もなかったので、早めに駅に戻って次の列車が出発するホームに行くことにした。次に乗るのは都城と鹿児島県の吉松駅を結ぶ吉都線の普通で、吉都線専用ホームに行く。都城駅は乗客数の割には駅構内がかなり広い。昔は貨物なんかで賑わっていたんだろう。しかし今はその広大な敷地が不要になったようで、その一部が太陽光発電所になっていた。ちょうど吉都線ホームの隣で、一面に太陽光パネルが設置されている。遠くから見ると太陽光発電所に白い動物が3匹ほどいたので、近づいて見てみたらヤギだった。ヤギにパネル設置場所の草を食べさせて草取りの手間を省く一石二鳥を狙っているんだろうな。


<7時30分発の吉松行きに乗る>

<都城駅構内はかなり広い>

<4番線の吉都線ホームに停まっている吉松行き>

<太陽光発電施設が広がる>

 ホームで太陽光発電所とそこにいる3匹のヤギを眺めながら待っていると、吉松行きの扉が開いたので早速乗り込む。7時30分発という通勤・通学のまさにラッシュ時間に発車する列車なので、相当混むことを覚悟していた。ところが乗ったのは拍子抜けするほど少なかった。僕の他には中華系女性の2人組、おばちゃん一人、後は途中で寝過ごして都城まで来てしまったので、来た道を戻るらしい女子高生。これほど少ないとは。途中に大きめの企業や高校がないんだろうか。吉都線はJR九州の路線の中で輸送密度が最下位だということは聞いていたけれど、ここまでとは思わなかった。

 ただ旅行者の僕にとっては、乗客が少ないとローカル線独特の鄙びた感じを味わうことができるからありがたい。鹿児島宮崎間のような特急が走る幹線で乗客が少ないとただ単に寂しい。でも1両編成のディーゼル車しか走っていないようなローカル線では人が少なければ少ないほど雰囲気が感じられるような気がする。単なる旅行者のわがままですが。ここにそれなりの駅弁があったらなお良かったけど、残念ながら駅弁は手に入らなかったので、昨日熊本で買っておいたいきなり団子ノーマルバージョンとカレーバージョンの2個で朝食にした。半日以上経ってしまったので皮が冷えて固い。やっぱり出来立てを食べるべきだな。

 7時30分に都城駅を出発。のどかな風景をとことこと行く。さすがに連日の睡眠不足のためにうつらうつらしていると、1時間ほどで沿線最大の小林駅に着いた。小林駅で少し停車するということだったので、気分転換も兼ねてホームに出てみる。少なかった乗客もこの小林でほとんどが降りて、さらにがらんとする車内。小林は大学時代の友人あおかつ君の故郷で、僕も彼の実家を訪ねて2回ほど小林に遊びに来たことがある。もう10年ほど前のことになるので、小林はちょっと懐かしい。前来た時は2回とも鉄道ではなくて福岡から高速バスを使ったので、小林駅は外から見ただけだったけど、鉄道で来るとまた違う感じがした。何となく、より田舎感が増す、というか。。


<通勤通学ラッシュの時間なのに乗客がほとんどいない>

<昨日買っておいたいきなり団子で朝食にする>

<いわゆるのどかな風景>

<沿線最大の街、小林駅に到着>

 小林駅を出ると、左手にえびの高原と霧島連山が広がるはずだった。今日の天気は朝から晴れということだったので楽しみにしていたのに、宮崎県南部は雲が多いのか霞んでいるのかほとんど見えなかった。霧島連山は全く見えず、えびの高原かな?と思われるなだらかな緑がかすかに見えるくらい。楽しみにしていたので残念。


<えびの高原はかすかにしか見えない>

<やっぱりかすかにしか見えない>

<肥薩線を行く>

 9時3分、吉都線終点の鹿児島県吉松駅に到着。乗ってきた列車は吉松で20分ほど停車してそのまま肥薩線の隼人行になるので、大きな荷物を席に置いたまま駅の外に出た。吉松駅はかつて鹿児島本線(今の肥薩線)と日豊本線(今の吉都線)の分岐点だったこともあり、かなり賑わった駅だったらしいのだけど、今は兵どもが夢の跡という感じで山間部の静かでのどかな駅になっている。ただ、最近は観光列車が運行されるようになり、その乗り換え駅としてほんの少しだけ賑わいを取り戻しているらしい。一度廃止されたホーム上での駅弁売りが観光列車の運転開始によって復活したのも、その一つかもしれない。

 実は今回、吉松駅でこの復活した駅弁を食べることを一つの目的にしていた。今日はまともな朝食を食べられなかったのでなおさらである。でも事前に調べたら駅弁屋の営業時間とか休業日とかが良く分からなかった。月曜だと休みということも多いので、かなり心配していたことも事実。ということもあって、吉松駅に着いてすぐにホーム上にある駅弁屋の売店が開いているかを確認したのだけど、案の定というか悪い予想通りというかシャッターが下りている。営業時間は8時半からと書かれているのに開いていないということは、やっぱり今日は休みということなんだろうか。もし駅弁が買えなかったら、1時過ぎに着く人吉まで昼食を我慢しないといけない。吉松にはまた後で戻ってくるので、そのときに開いていることを願うしかない。


<交通の要所、吉松駅に到着>

<吉松駅>

<今はのどかな駅です>

<恒例の顔看板>

<吉松駅>

<駅の待合室が畳>

 20分ほど吉松駅でのんびりとして、再び列車に乗り込んで肥薩線の隼人方面へ。ここからは2008年夏の九州旅行の中でも一番よかった「肥薩線の旅」を7年ぶりになぞってみることにした。まずは今回の「肥薩線の旅」の出発点である嘉例川駅へ。9時59分に嘉例川駅に到着。降りたのは僕だけで、ホームで都城から乗ってきた列車を見送った。


<嘉例川駅に到着>

<嘉例川駅から遠ざかる隼人行き列車>

 嘉例川駅の駅舎は1903年の営業開始当時から使われていて、二駅隣の大隅横川駅と並ぶ九州最古の木造駅舎として登録有形文化財にも登録されている。7年前に来たときは観光特急「はやとの風」の5分停車を利用して慌ただしく見学しただけだったので、いずれゆっくりと見たいと思っていた。今回は吉松に戻る列車が来るまでの約30分間、ゆっくりと見ることができる。

 さすがに有名になった駅なので、車で訪れる観光客もちらほらいた。ただ車で来る観光客も5分くらい見たらさっさと次の場所へ行ってしまうので、基本的には近所のおばあさんたちが草木の手入れをする中で、一人ゆっくりとぶらぶらすることができた。やっぱりこういう味のある駅は誰もいない中でゆっくりと見物するに限るなあ。7年前は慌ただしくて見られなかった場所も、じっくりと見ることができて満足だ。唯一心残りだったのは、この駅の駅弁である「百年の旅物語かれい川」が月曜定休のために買えなかったことだった。また来る口実ができたからいいと言えばいいのかもしれないけど。


<嘉例川駅全景>

<駅舎内>

<駅舎ホーム側>

<一直線に伸びる線路>

<昔の道具たち>

<剥げて見えにくいけど、近くにラムネ温泉があるらしい>

 嘉例川で気ままに過ごしていると、吉松に戻る列車がやってきた。嘉例川から乗るのは、7年前にも乗った特急はやとの風。はやとの風は以前と同じく嘉例川駅で5分程停車するとのことだったので、乗客がぞろぞろと出てきた。僕はもう一人で静かな時間を過ごしたので、一足先にはやとの風に乗ってゆっくりとすることにした。


<吉松行き特急はやとの風2号がやってきた>

<はやとの風と嘉例川駅>

<はやとの風車内>

<こういうスペースもある>

 10時27分、はやとの風が嘉例川駅を出発。指定席は結構込んでいたようだけど、8席程度の自由席には誰もおらず、結構快適。吉松に戻るまでに、途中の霧島温泉駅と大隅横川駅で各5分ずつ停車した。前乗ったときは霧島温泉駅には5分も停まらなかったと思うけど、記憶が定かじゃないのでどうだったか。ホームで地元の人たちが特産品を売っていたので、そういう地元の人の要望なんかもあるのかもしれない。

 大隅横川の駅舎は嘉例川と並んで九州最古の木造建築駅舎。駅前に小さな商店街が広がっていて、利用人数もそこそこいるようなので、秘境感がある嘉例川駅と比べると全体としての雰囲気はやや劣るけれど、雰囲気の良い駅には間違いない。


<霧島温泉駅にも5分停車>

<温泉にも入ってみたいけれど>

<大隅横川駅>

<風鈴かと思ったら空き缶の細工だった>

<大隅横川駅の駅舎内>

<駅前は嘉例川駅よりも賑やか>

 11時8分、終点吉松駅に到着。吉松駅に戻ってきた。早速駅弁屋の売店は開いているかなとあまり期待を込めずに見てみると、シャッターが開いていた。駅弁も3個売られている。やった!と思うと同時に早く買わないと売り切れてしまうと思い、多くの乗客がはやとの風の写真を撮っている中で、一目散に売店に向かって目的の駅弁を買った。1個650円。売り切れる前に買えてよかった・・・と思ったら、見えるところにある駅弁が3個だけで、実際にはもっと多くの駅弁が別の場所にあるらしかった。慌てて買う必要もなかったわけね。

 でも念願の吉松駅の駅弁を買うことができたので、次の列車までの時間を利用して少し早目の昼食にする。どこか食べるのにいい場所はないかと探していたら、ホームの端の方に誰も使わないようなベンチがあったので、そこで風に吹かれて景色を見ながら弁当を食べることにした。吉松駅たまりの駅弁は一見すると何の変哲もない幕の内弁当のスタイル。でもおかずが手作り感満載で、いちいちおいしい。ご飯もほんのり温かい。街の仕出し屋のお弁当という感じがして、よく都会で売られている大量生産型の駅弁とは見た目も味もいい意味で一線を画すものだった。そして何といっても650円という安さ。多くの駅弁が1000円を超えるか超えないかというところまで来ているなかで、650円というのは破格に思える。事前の想像を超えてきたな。雰囲気も合わせて考えれば、今回の旅で食べたもののベストがたまりの駅弁だったのは間違いない。


<吉松駅に戻ってきた>

<駅弁屋の売店が開いてた!>

<長いホームの端にあるベンチで弁当を食べる>

<こういう景色を眺めながらの弁当>

<たまりの御弁当(650円)>

<弁当は幕ノ内スタイル>

 駅弁で満足していると、次に乗るしんべい2号が入線してきた。ここからは7年前と同じく、観光列車のしんぺい・いさぶろう号に乗って、肥薩線の風光明媚な場所を巡ることにした。しんぺい2号の指定席は全てボックス席なので、相席になったらちょっと嫌だなと思っていたけど、さすがに月曜の午前発ということもあって、幸いにもボックス席には僕一人だった。風景が良く見える進行方向右側のボックス席を予約しておいたので、事前準備は抜かりない。


<しんぺい2号>

<しんぺい2号の車内>

<トイレの前にはソファーもある>

<見どころが書かれた地図も配られていた>

 しんぺい2号の出発までまだ少し時間があったので、席に大きな荷物だけ置いて再びホームに出た。するとさっき売店で駅弁を売っていたおじさんが、今度は昔懐かしの立ち売りスタイルで駅弁を売っていた。様子を見ていると駅弁は結構売れている様子で、なぜかちょっとほっとする。以前は吉松での乗り継ぎの良さの方に重点が置かれていて、はやとの風が到着したらものの1、2分でしんぺい・いさぶろうが発車するという感じだったので、吉松で弁当を買う暇もなかった。でも今は何が理由で変わったのか分からないけど、はやとの風としんぺい・いさぶろう号の乗り継ぎにかなりのゆとりが取られている。今回も乗り継ぎ時間が50分近くあったので、僕もゆっくりと駅弁を堪能することができた。こういうのも売り上げには結構影響するのだろう。

 おじさんが立ち売りしていたので、おじさんからペットボトルのお茶を買うついでに、さっき買った弁当おいしかったです、この駅弁を食べたいと思っていたのでよかったですと、僕なりの感謝の気持ちを伝えておいた。おじさんに「どこから?」と聞かれたので「東京からです」と答えると、「東京!?まあそれは遠い所からありがとうございます」と少し恐縮された。末永く、駅弁を販売してほしいなあ。

 11時49分、しんぺい2号は吉松駅を出発。列車は高度を上げていき、12時7分に真幸駅に到着。真幸駅にはホームに鳴らすと幸せになると言われる幸せの鐘があるけど、7年前と同じく一人では恥ずかしいので結局鳴らさず終いだった。このままだと幸せは永遠に訪れないな。


<真幸駅に停車中のしんぺい号>

<真幸駅>

<真幸駅舎>

<幸福の鐘とスイッチバックのホーム>

 真幸駅は二段階スイッチバックの途中駅になっていて、ここからさらにどんどん高度を上げていく。


<高度を上げるためにスイッチバック>

<スイッチバックした線路から真幸駅を見下ろす>

 真幸駅から次の矢岳駅までの途中に、日本三大車窓の一つとされている「矢岳越え」がある。トンネルを出ると急に右手に開けた景色が広がる。ここで列車がしばらく止まり、窓を開けて風景を眺めることができる。7年前の時は空気が澄んでいて、遠くの桜島がうっすら見えるほどよかったのだけど、今回は晴れているのに霞んでいてほとんど見えない。えびの高原がかすかに見える程度だった。非常に残念過ぎる。今回は車窓の景色を楽しむという意味では、A列車で行こうで見た有明海の風景以外はほとんど駄目だったな。こればっかりはどれだけ準備しても天候という運に左右されてしまうので仕方がない。


<日本三大車窓の一つ、「矢岳越え」>

<三大車窓をややアップで>

 ここから熊本県に入り、12時32分に矢岳駅に到着した。ここで7分ほど停車。矢岳駅は肥薩線で最も標高が高く、その高さは536.9m。吉松駅の標高が224.4mなので、40分近くかけて300m以上を登ってきた。矢岳駅にはSLが保存されていて、停車中に見学することができるのだけど、僕は7年前に見たので、今回は駅の外に出てみた。駅前は思ったより普通の「のどかな田舎」という感じで人家もぽつぽつとあって、ちょっとびっくり。こういう秘境みたいな駅だから、駅の周りに何もないと思っていた。前来たときはそういうことに気付かなかったのかなあ。


<矢岳駅>

<矢岳駅構内>

<矢岳駅駅舎>

<今も残る木の改札>

<駅舎内>

<駅前には意外と家もあった>

 矢岳駅を出て、今度はどんどん標高を下げていく。一気に標高を下げるためにループ線にし、さらにその途中にスイッチバックを設けるという念の入れようになっている。ループ線になっているので、高い場所からはそのループ線の下の線がかすかに見えるため、今回は良く見える場所で列車が停まってくれた。一応窓を開けて写真を撮ったけど、ちょっと分かり辛い(右下の写真)。でも7年前は手前の木が邪魔してあまり見えなかったので、見えるようにするために木を切ったのかな。


<こんなところに人が住んでいるとは>

<遠くに次の大畑駅が見える>

 ループ線+スイッチバックの途中にある大畑駅に到着。ここでも5分停車する。大畑駅は蒸気機関車の給水所として作られたので、近辺に人家はなく、最寄りの人家までは歩いて1時間ほどかかるらしい。多分今回の九州旅行の中で一番の秘境駅だろう。今は蒸気機関車ではなくディーゼルカーになったので給水もいらなくなり、その重要な機能は必要なくなったけど、今も駅として存在している。7年前にはあったはずの洗顔所跡が解体されてしまっていたのがちょっと残念。


<大畑と書いておこばと読む>

<大畑駅駅舎>

<相変わらず名刺がびっしり>

<さっき通ってきたであろう部分を見上げる>

 大畑駅を出てからは段々と標高を下げていき、人吉の市街地に入っていく。そして13時5分、終点人吉駅に到着した。7年前にしんぺい号に乗ったときは初めてということもあってものすごくよかった記憶があるのだけど、今回は2回目のうえに空気が霞んでいたこともあって、正直いって7年前ほどの感動はなかった。でもこの肥薩線山越えルートは本当に魅力のある路線なので、しんぺい・いさぶろう号ともにこれからも長く運転してほしいと思う。

<人吉周辺をぶらぶらする>

 人吉も7年振り。あの時は人吉から高速バスで熊本に抜けたけど、今回は誕生日パスがあるので最後まで肥薩線におつきあいして熊本まで出ることにしていた。ただ、予約していたのは夕方5時前に出る特急だったので、人吉での時間はたっぷりと4時間近くもある。もしかしたら今回の旅行では宿泊地以外で一番時間があるかもしれない。それだけ今回は多彩な列車に乗ることを重視した旅程になってしまったことの裏返しでもあるけど。前回人吉に来たときにあまりゆっくりしていられなかったこともあったので、まずは駅の周辺をぶらぶらすることにした。


<人吉駅の駅名標>

<人吉駅ホーム>

<しんぺい号と九州横断特急が並ぶ>

<7年前と比べて改装された人吉駅>

 駅の観光案内所の前にあったおでかけまちなかマップをもらい、大きな荷物をコインロッカーに預けてから人吉の街中へ。まずは駅からまっすぐ歩いて人吉橋まで行き、球磨川を眺めた。鮎を釣っている人が何人もいて、暑い今日は涼しくて気持ちよさそうだ。


<混浴のあとのクエスチョンマークが気になる>

<球磨川と言えば鮎>

<球磨川上流方面>

<球磨川下流方面>

 その後、幽霊の掛軸があり、西南の役の時に西郷隆盛が本営を置いて1か月ほど滞在したという永国寺にお参りしたり、球磨川のほとりから人吉城址を眺めたりしたけど、いかんせん暑かった。睡眠不足で眠い上に暑いので、汗が噴出して途中から意識が飛びそうになる始末。やっぱり睡眠は十分に取ってないと。あと、痩せないと。。


<永国寺>

<永国寺本殿>

<西南の役の際に西郷隆盛が本営を置いた>

<人吉城址を眺める>

 駅に戻るついでに、7年前も訪れた青井阿蘇神社に行ってみた。ここは7年前当時、いくつかの建造物が熊本県初の国宝指定を受けたということで、垂れ幕や案内板で猛烈な国宝指定アピールをしていてちょっと辟易した場所でもある。あれから7年経ってどうなったかな、少しは落ち着いたかな・・・と思って行ってみたら、落ち着くどころかもっと強烈になっていたという。。どこを見ても「国宝」という文字が躍っていて、正式名称が「国宝青井阿蘇神社」かと思ってしまうほど。ここまで突き抜けるとある意味で潔く感じてしまうから不思議。

 肝心の国宝に指定された建造物は、拝殿や楼門、本殿などの計五棟。茅葺屋根であるところが珍しい。建物自体は十分特徴的なんだから、そんなにアピールしなくてもいいのになあ。


<青井阿蘇神社の楼門>

<拝殿>

 あまりに暑いので、人吉街中観光は1時間程度で切り上げて、残りの時間は第三セクターのくま川鉄道湯前線に乗ることにした。湯前線は人吉温泉駅から湯前駅を結ぶ24.8kmの路線。JRが「人吉駅」という駅名を冠しているのに対し、湯前線は三セク化に当たって人吉駅を「人吉温泉駅」という名前に変えたらしい。単純に往復すると運賃が1380円かかるので、1200円の一日乗車券を買ってからホームへ行く。地方のローカル線なので鄙びた列車が来ると思ったら、来たのは予想外のオシャレな列車だった。

 青い車体に♪マークが施されている外観に、車内は木がふんだんに使われている。どうもこれは今まで乗ってきたJR九州の観光列車たちに似ているなと思ってスマホで調べたら、案の定の水戸岡デザインだった。水戸岡さんはくま川鉄道の列車のデザインまで行っているのか。


<くま川鉄道に乗る>

<JRは人吉駅だけど、くま川鉄道は人吉温泉駅>

<列車がかなり凝っていた>

<安定の水戸岡デザイン>

 数人の乗客を乗せて、14時29分に人吉温泉駅を出発。球磨川を越え、東へ進んでいく。車窓が思いのほかよかった。


<球磨川を超える>

<おかめど幸福駅>

<窓枠で車窓を切り取ると絵になる>

<車窓>

 約45分かけて終点の湯前駅へ。15時13分、湯前駅に到着。今回は時間がなくて寄れなかったけど、駅のそばには町立のまんが美術館があった。折り返しまで15分あったので、駅隣の物産館を見て時間を潰した。


<オシャレ列車が湯前駅に到着>

<湯前駅>

<のどかな駅前>

<駅舎から見たオシャレ列車>

 あと、湯前駅に隣接した駐輪場の屋根にも太陽光パネルが敷き詰められていて、なぜか見学できるような小展望所があったので折角だから上ってパネルを見学する。まあ、何てことないけど。南九州は日照時間が長いから、他地域に比べて比較的太陽光発電の設置が進むのだろう。


<湯前駅にも太陽光発電パネル>

<駅舎内につばめの巣もあった>

 折り返し15時28分発の列車に乗り、人吉温泉には16時13分着。帰りは学校帰りの中高生が多かった。ちょっと変な乗客がいて陰で女子高生の非難を浴びていたけど、詳しいことは彼の名誉のために伏せておこう。

 人吉に到着して、コンロッカーに預けていた荷物を取り出してからJRのホームへ。ここから再び誕生日パスを使って特急で1日振りの熊本に戻る。16時48分発の九州横断特急8号別府行に乗る予定だったので、湯前線からの乗り換え時間は30分以上あったけど、今回は自由席に乗るということもあったので、一応早めにホームに出て並んでおいた。結果、そこまで人が多くなかったから杞憂だったかな。


<16時48分発の九州横断特急で熊本まで>

<九州横断特急8号別府行>

 16時48分、人吉発。人吉を出てしばらくすると、右手に球磨川が並走し始める。球磨川は富士川、最上川と並ぶ日本三大急流の一つということだったけど、思ったよりなだらかな川のような感じがした。でもここで獲れる鮎はおいしんだろうな。今回は人吉の温泉にも入れなかったし、名物も食べられなかったので、いずれゆっくりと人吉に泊まりたいなあ・・・と考えているうちに、疲れで眠りに落ちていた。

 18時15分、熊本駅に到着。九州横断特急はここから進行方向を変えて別府に向かう。ここで客室乗務員も入れ替わるようで、ぱっと見ると一昨日ゆふいんの森で僕の席までワインと鶏ももの燻製を持ってきてくれたお姉さんがここから乗車するようだった。当たり前だけど、いろいろな列車に乗って九州内を縦横無尽に動き回っているんだな。

 最後に乗る新幹線まで45分ほどあったので、駅にある飲食店で軽く夕食を済ますことにする。いろいろな店がある中で、さっと食べられそうな桂花ラーメンにした。桂花は東京にもあるからわざわざ熊本で食べる必要もないかもしれないけど、発祥の地であることに敬意を表して食べることにする。今回はノーマルな桂花ラーメンと半チャーハンのセットを注文。うん、よく知っている桂花ラーメンだな。チャーハンが思いの他多くて、腹一杯になった。


<熊本駅構内の桂花で夕食>

<桂花ラーメンと半チャーハンのセット>

 夕食を終えて新幹線ホームへ。ついに誕生日パスを使った最後の列車になった。ラストランナーは19時ちょうど発のさくら570号新大阪行で博多まで。博多―新八代間の九州新幹線は2011年3月に開業した部分で、今回初めて乗る。九州新幹線が全線開通したおかげで、夜7時に熊本にいて、さらにもう一本新幹線に乗ってからその日のうちに東京に戻ることも可能になった。さくら570号に乗れば乗り換えなしの1時間5分で故郷の新下関に着くので、熊本も近くなったもんだなあと思う。夕暮れの迫るホームで新幹線を待ち、グリーン車に乗車。


<熊本から新幹線で博多に戻る>

<19時発のさくら570号新大阪行で博多まで>

<夕暮れの熊本駅新幹線ホーム>

<最後のグリーン車>

 さくら570号は途中久留米と新鳥栖に停まるものの、博多まではたった37分しかかからない。改めて感じる新幹線の速さ。せっかくグリーンに乗ったのに、ゆっくりする暇もなかった。座席のコンセントを使ってスマホの充電をしたのに、37分だと充電満タンにならない。そのくらい速い。

 19時37分、博多駅に到着。博多でJR九州とJR西日本の乗務員が交代し、さくら570号は新大阪に向けて再び動き出した。とりあえず、3日間に渡る誕生日パスでの旅はここで終わり。一昨日の早朝出発した博多駅に戻ってきた。


<博多駅に戻ってきた>

<お疲れ様でした>

 博多駅のお土産売り場で博多ぶらぶらとにわかせんぺいを買い、地下鉄に乗って福岡空港へ。予約していたのは21時発のJAL332便。搭乗まで少し時間があったけど、疲れ切っていたので出発ロビーの椅子に座ってだらだらと過ごす。何だかんだでさすがに疲れた。

 羽田行最終便のJAL332便はかなり空いていて、搭乗率は10〜20%程度。僕の隣もいなかったので、足を伸ばしてゆっくりすることができた。離陸した頃から寝ていたようで、ドリンクサービスが通り過ぎるときにパッと目が覚めたので、冷たいお茶をもらう。するとお茶を入れてくれたフライトアテンダントのお姉さんから、「お疲れ様です。いつもご利用いただいてありがとうございます。今回は福岡からどこに行かれたんですか?」と聞かれた。寝ぼけていた僕は咄嗟に「く、熊本に行ってきました」と言ったけど、後から考えたらなぜフライトアテンダントのお姉さんは僕が福岡を起点に動いたと分かっていたのだろうか。JALの上級会員でもないし、クラスJに乗っているわけでもないのに、「いつもご利用ありがとうございます」と言われたのか。乗客が少なかったから客と話す余裕があったのかもしれないけど、それにしても謎だ。乗客情報って事前に把握されてるのかしら。


<21時発のJAL最終便に乗る>

<22時35分に無事羽田到着>

 22時35分、羽田空港に到着。吉祥寺行きの高速バスは1時間ほど待たないといけなかったので、仕方なく電車で帰る。自宅に着いたのは日付が変わる頃だった。

 ということで今回の九州旅行、正直なところ体調があまり思わしくなかったものの、結構楽しめた。一般的な観光はあまりできなかったけど、誕生日パスでグリーン車に乗ったりJR九州が誇る観光列車に乗ったりできたのは本当によかった。ちなみにもし今回乗った列車の運賃やグリーン料金を全て普通に支払ったとしたら56350円になっていたので、誕生日パスを使うことで約33000円ほどお得になったことになる。6割引きの切符ということになるので、これまで使ったいろいろなフリーきっぷの中でも使い勝手や割引率はかなり高い。今回乗れなかった観光列車もあるし、またいずれ九州を旅したいと思う。


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