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三回目の知床調査 5
2010年10月16日()  <弟子屈(豚丼、摩周湖、硫黄山)>


<フリーの一日 霧の摩周湖と川湯温泉へ>

 7時起床。知床5日目にしてようやく青空が広がりました。初日以来ずっと見えなかった斜里岳も、今日は綺麗に見えます。睡眠も十分取れて、久々に清々しい朝です。今日は気分を変えて、パン主体の朝食にしてみました。


<今日は気持ちよく晴れた>

<いい天気です>

<斜里岳も綺麗に見える>

<気分を変えてパン食>

 今日は土曜日。土曜日は官公庁が休みなので、基本的にヒアリングができません。ヒアリングが出来ないので、予定では図書館で資料収集ということにしていましたが、昨日閉館ぎりぎりまでやって資料収集も何とか終わったので、思いがけずフリーの一日に。そしてこんなにいい天気。これはもう出かけるしかない。知床はもう何度も見ているので、今日は列車に乗って摩周湖まで行くことにしました。世界遺産かつ国立公園の知床と、阿寒国立公園に属する摩周湖という観点から、国立公園制度の比較になるので、今回の調査研究としても重要なのではないかと自己弁護しておきます(かなり強引ですが。)


<ホテルも晴れ>

<雲のない青空が広がる斜里駅前>

 10時30分、知床斜里駅でD1Y君と待ち合わせ、10時46分発の快速しれとこ釧路行きに乗車。目指す摩周駅までは65km、約1時間10分の旅です。釧網本線は列車の本数が少なく、これを乗り過ごしてしまうと次に摩周まで行く列車は夕方5時半になってしまいます。その間、約7時間。まさに北海道のスケールです。1両編成の快速しれとこ号は7割程度の乗車率で知床斜里を出発しました。


<摩周駅までは1230円>

<知床斜里駅で列車を待つ>

<快速しれとこ到着>

<斜里駅の売店のおじさんが車内販売を行う>

 D1Y君は昨日までのヒアリングテープ起こしを、僕は今回の調査研究に関係ある新書を読みながら、列車は一路南へ。本を読みながらふと顔を上げて車窓に目をやると、これぞ北海道といわんばかりの景色が目に飛び込んで来ます。広大な畑とその後ろに雄大な斜里岳。斜里岳と進行方向に若干雲が多いことが気になりはしたものの、うららかな土曜日のお昼といった風情です。


<じゃがいも畑と斜里岳>

<1230円は結構高い>

 しかし嫌な予感は当たるもので、途中から段々と曇ってきてしまい、摩周駅に到着する頃には完全に曇り空になってしまいました。11時54分、摩周駅に到着。摩周駅は弟子屈(てしかが)町の中心駅として、みどりの窓口もあるそこそこ大きな駅です。以前は弟子屈駅という名前だったそうですが、摩周湖への最寄り駅であることを出すために摩周駅に変えたらしい。北海道の地名は読みにくいものが多く、この弟子屈も一見すると読めません。Y君はずっと「でしくつ」と言っていたしなあ。まあ彼の場合、標津(しべつ)のことも「ひょうつ」と読んでいたので、読み方が素直すぎるだけなのかもしれませんが。


<摩周駅に到着>

<摩周駅>

 ちょうど昼だったので、何はともあれ昼食。摩周駅の駅弁として、ここ最近有名になってきているのが「摩周の豚丼」。京王の駅弁祭りで第2位の売り上げになったこともあるそうです。その駅弁が駅前の店でも食べられるということで、製造元の 「ぽっぽ亭」 へ。閑散とした摩周駅前と違い、店内は結構な人で賑わっています。それぞれ豚丼(1050円)を注文。炭火で焼かれた豚に甘く濃厚なたれが絡んで、ご飯が進みます。豚肉の量も多いし満足。タレが濃い目なので、これだったら冷めた駅弁でもおいしいだろうと思います。今まで豚丼といえば帯広というイメージだったので、そのイメージが覆ることになりました。


<豚丼で有名なぽっぽ亭>

<豚丼を食べる>

 食後、駅の中にある観光案内所で摩周湖までの行き方を聞いてみました。事前に調べたところ、摩周湖に向かうバスは、今期は1週間前に営業が終わっており、公共交通機関で行くことができないようでした。いやでもしかし、現地に行けばもっとローカルなバスがあるかもしれない、と思って聞いてみても、やっぱりもうバスはないので、タクシーで行くしかないとのこと。摩周湖め、観光地だからとお高く止まりおって・・・。

 いろいろ悩みましたが、せっかくここまで来たのだからタクシーを使ってでも摩周湖には行っておきたい。ためしにタクシーの値段を聞いたところ、摩周駅→摩周湖→川湯温泉駅で8000円程度だったので、どう思うかD1Y君に聞くと、「行きましょう」の明快な返事。観光にタクシーを使うことに何となく一歩踏み出せない感じでしたが、Y君の一言で踏ん切りが付きました。タクシーを使って行ってしまおう。

 5分後、観光案内所が呼んでくれたタクシーが駅前に到着。運転手のおじさん(というか歳からするとおじいさん)は、無言でとっつきにくい感じです。こういうの嫌だなあ・・・と思いながら、タクシーは一路摩周湖第一展望台へ。摩周駅から摩周湖まで、最初はまっすぐな道が続き、やがてうねうねと山道になります。標高が上がるにつれて雲というか霧の量が多くなってきました。そして摩周湖第一展望台に到着。


<まっすぐな道が続く>

<摩周湖第一展望台に到着>

 この曇り空だったら摩周湖は見ることができないかもしれないと思いながら展望台へ。しかしそこには、幸か不幸か摩周湖の湖面が広がっていました。周囲を覆う山は霧で覆われて見えないので、ぎりぎりといった感じです。ああでも、これが「霧の摩周湖」かと、ちょっと感動してしまいました。

 摩周湖第一展望台は標高683m。摩周湖の湖面が海抜351mなので、330m上から見下ろす形になります。注ぎ込む川も流れ出る川もないのに、常に同じ水位を保ち続けている不思議なカルデラ湖。周りを山々の絶壁に囲まれ、人や生物の侵入を阻んでいるかのようです。湖面は本当に静か。この霧がかかった風景がより一層幻想的に見せているような気がしないでもありません。その霧も刻々と変化するので、さっきまで対岸の山が見えていたかと思うと、次の瞬間には全く見えなくなったりします。そういった変化も面白い。しばしぼんやりと摩周湖を眺めました。

 レストハウスを覗いてみると、「摩周ブルーソフト」なるものが売られています。どうせ何かの着色料で色を付けただけのバニラソフトだろうと思って遠巻きに眺めていましたが、こういうのはどうしても買いたくなり・・・結果買ってしまいました。僕は基本的に意思が弱い。摩周ブルーソフトはブルーキュラソーで色付けされているようで、味もラムネ味のバニラというかカキ氷のブルーハワイのソフトクリーム版といった感じで、意外と悪くありません。寒いけどおいしかった。


<別の場所から摩周湖の全体像を>

<摩周湖ブルーソフト>

 15分程度でタクシーに戻り、ここで運転手さんと少し会話。運転手さんによれば、今日くらい湖面が見えていれば上出来で、僕達は運がよいのだそうです。「初めて摩周湖を見たときに全部見えたら晩婚だ、という噂もありますよねえ」とD1Y君が聞くと、「ああ、あれはどっかの観光会社のガイドが適当に言い出したんだよ、ふっ・・・」と返ってくる辺り、なかなかニヒルな感じの人でした。

 第一展望台から車で2分程行った辺りが第三展望台。せっかくだから見てくるといいよ、という運転手さんの薦めで下りてみました。第三展望台の標高は701mと、第一展望台より約20m高い位置にあります。しかしそのたった20mの差で、今度は全然見えなくなりました。これはすごい。今回は湖面を見ることも、霧の状態を見ることもできたので、実はラッキーだったのかもしれません。


<第三展望台>

<今度は全く見えない>

<遊歩道もあまり見えない>

<道路にも霧がかかる>

 第三展望台からは再び山道をくねくねと降りていきます。少し標高が下がるとすぐに霧は晴れ、青空が広がりました。そして遠くには巨大な屈斜路湖。シャッターチャンスを逃してしまったのが残念です。山道の紅葉は綺麗に色付いています。


<山を下る>

<クマが引っかいた跡が残る白樺>

 1時40分、摩周駅から知床斜里側に二駅戻った川湯温泉駅に到着。「見学中の料金は止めておいたから」ということで、料金は6600円(一人3300円)でした。きっと僕らの様子から、貧乏な若者と思ってまけてくれたのでしょう。ありがとうございます。結果として、摩周湖を見るために3300円払ったことになりますが、個人的にはその価値があったのではないかと思います。湖面と霧の状態の両方を見ることができたし、そもそもいつ来ることができるか分からないのだから、3300円なら十分かな。

 到着した川湯温泉駅は無人駅です。ここから川湯温泉までは5km。バスはさっき出たばかりのようで、次は1時間半後。これを待っていたら帰れなくなります。ということで川湯温泉に行くことは諦めて、駅の近くを散策することにしました。まずは駅構内を散策。川湯温泉駅はログハウス風で味があります。構内には有名なオーチャード・グラスというカフェも。ここは帰りに寄る事にして、静かな駅構内をうろうろしました。


<川湯温泉駅>

<無人駅だが駅舎内には有名な喫茶店が入る>

<構内にある無料の足湯>

<改札口>

 無人駅なのでホームにも出られます。この辺りは列車の本数も少なく、のどかな光景が広がっています。午前中は曇っていてどうしようかと思ったけれど、午後になって晴れてよかった。


<川湯温泉駅ホーム>

<太陽がまぶしい>

 駅前の観光案内地図を見てみると、近くに「青葉トンネル」という雰囲気の良さそうな小路があるので、そこへ行くことにしました。後で調べてみると、この青葉トンネルは硫黄山で採掘された硫黄を運ぶための簡易鉄道が敷かれていた跡なのだそうです。白樺の木が連なってトンネルになっています。硫黄山まで900mの、ちょうどよい散歩道です。途中から少し鬱蒼としてくるので、クマが出てくるんじゃないかと心配にはなりましたが、まあ多分この辺りだったらクマは大丈夫じゃないかと思います。


<青葉トンネルというものに向かってみる>

<トンネル入り口辺り>

<ここから青葉トンネル>

<トンネルに入りました>

 鬱蒼とした青葉トンネルを抜けると、そこは硫黄山の麓。荒涼とした景色が広がっています。僕は植物に疎いので良く分かりませんが、ススキ以外は高山植物っぽい感じです。

 逆方向を見ると、もくもくと煙を上げている硫黄山。どこかで見たことがある風景だと思ったら、夏に行った立山の地獄谷の雰囲気に似ていました。喘息の人間には辛そうな硫黄がもくもくと噴出していて、遠くにいても臭ってきます。でも景色は雄大。体調的に今日は一応大丈夫だろうと、もくもく煙を上げている方へ進んでいきました。


<もうもうと煙を吐き出す硫黄山>

<大きな石がゴロゴロと>

<ぎりぎりまで近づける>

<煙の量がすごい>

 煙を上げている場所まで行くと、大量の煙でほとんど何も見えません。というかここまで立ち入りさせて大丈夫なんだろうか。足元にはそこら中に100度近い温泉が湧き、誤って手や足を入れようものなら確実に火傷します。第一この煙の量。北海道らしいアバウトさではあるけれど。これだけぎりぎりまで近づけるとは思いませんでした。


<硫黄の煙で何も見えない>

<ぐつぐつと湧いています>

 硫黄山にはいくつかの遊歩道が整備されていて、川湯温泉に向かう道である「つつじヶ原」を少しだけ散策しました。また言いますが僕は植物関係に疎いので植物の名前とか植生とか全く分かりません。でも背の低い植物が並んでいることから、恐らく高山植物なのだろうということは分かります。調べてみるとやっぱりそうで、これらはハイマツやエゾツツジなのだそうです。ハイマツは本州だと2500m以上の高山帯でないと見られないそうで、標高150m程度にもかかわらずこれだけの高山植物が見られるのは硫黄山の活発な火山活動のせい(お陰?)なのだそうです。低地にいながら不思議な感覚を味わわせてもらいました。硫黄山周辺の特異な光景は、もしかすると摩周湖よりインパクトが強かったかもしれません。来てよかった。


<つつじヶ原>

<つつじヶ原>

 再び青葉トンネルを通って川湯温泉駅へと戻り、帰りの列車までの時間を利用して、駅舎内の 「オーチャード・グラス」 へ。北海道には無人駅を利用したカフェやレストランがいくつかあるようで、ここもそのうちの一つ。ネットで調べるとかなり人気の高い店です。本当ならここのオススメのビーフシチューを食べたいところですが、列車までの時間があまりないのと、あまり腹が減っていないこともあって、ぐっと我慢。カフェオレを注文しました。レトロでお洒落な雰囲気の中で飲むカフェオレはおいしかっただけに、ビーフシチューを食べられたらなあという後悔が早速出てきました。次こそは是非。


<良い雰囲気のオーチャード・グラス>

<カフェオレを飲む>

 帰りは3時40分発の「足湯めぐり号」に乗って知床斜里まで。夕日が綺麗でした。


<足湯めぐり号>

<清里の畑に夕日が沈む>

 4時28分、知床斜里に到着。道東は日の入りが早く、4時半の時点で太陽は沈んでしまっています。代わりに目立ち始めるのは半月。結局今日はトータルとして良い天気に恵まれて、絶好の日帰り旅行日和になりました。


<駅から斜里岳を望む>

<夕暮れの道の駅斜里>

 図書館で昨日お願いしていた資料のコピーを受け取った後、斜里での最後の夕食。最終日なので少し贅沢に、初日に行った「すし善」へ。カニの内子やほっけの開きなど、初日にも注文したものから、鮭のハラス焼き、ほたてバターなど、今回初めて注文するものまで、いろいろと注文しました。〆はもちろん握り寿司。しかし今回は値段を抑えるために、D1Y君は並を、僕は上を注文。並は特上の半額以下なので、お腹を一杯にするだけなら賢い選択です。この5日間で新鮮な海の幸は結構食べて来たし。これだけ食べて飲んでも一人3000円程度。北海道は新鮮でおいしいものを安く食べられることができるのでありがたい。


<ほっけ開き>

<鮭ハラス焼き>

<ほたてバター>

<握り並・上1人前ずつ>

 7時半にホテルへ。次の日は移動でそこそこ朝が早いので、打ち合わせは無しにして、それぞれ自分の部屋で体を休めることにしました。NHKでやっていた「仕事の流儀」の松本人志スペシャルを見ながら、パソコンを開いて仕事をしつつ・・・。


<ホテルの部屋からの夜景>

 深夜1時就寝。


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