立山・黒部旅行記 2
2010年8月22日()  <立山黒部アルペンルート>


<立山黒部アルペンルートを行く>

 4時半起床。2日目は北アルプス堪能旅行の目的その2にしてメインイベントである、立山黒部アルペンルート横断に出かけます。立山黒部アルペンルートは、様々な乗り物を乗り継いで立山連峰と後立山連峰を横断するルート。途中には室堂や黒部ダムなど多くの見所があり、じっくり散策しようとすると一日がかりになるようです。いろいろな乗り物を乗り継ぐので、乗り物マニアにもぴったり。問題は値段が高いことで、富山から長野県の大町に抜けるだけで1万円かかります。多分自然保護か何かの観点から値段を高くしているのだと思うけど、1万円は高いよなあ・・・。1万円という値段がネックだったため、今までずっと躊躇していましたが、僕ももういいオトナ。今回満を持して出かけました。


<立山黒部アルペンルート 全行程>

 そそくさと支度をして5時過ぎにホテルをチェックアウトし、電鉄富山駅へ。夏休み期間中の土日は相当混むそうなので、なるべく混雑を避けるために朝一番の電車に乗ろうと気合十分で向かいました。ただ、同じようなことを考えている人が多いようで、電鉄富山駅は早朝から結構混雑しています。


<朝5時の富山駅前>

<電鉄富山駅>

<5時44分の電車に乗る>

<今から行きます>

 富山から立山までは約50分。地方私鉄の宿命か、運賃は高めです。電車はほぼ全ての座席が埋まるくらいの乗車率で電鉄富山駅を出発。


<運賃は結構高い>

<立山行きと宇奈月温泉行き>

 地鉄の終点でありアルペンルートの出発点である立山駅に近付くにつれて、山深い景色になってきました。写真は逆光になってしまってあまり良くありませんが、実際は朝日に照らされて非常に風情のある景色でした。やっぱり人間の目はカメラよりも高性能で繊細です。これがコンパクトデジカメではなく、一眼レフだったらまた違ったのだろうけれど。そう考えると一眼レフが欲しいなあ。

 6時32分、終点の立山駅に到着。電車のドアが開くと同時に早足で改札を抜け、そそくさとケーブルカー乗り場を目指しました。接続のよい6時40分のケーブルカーに乗るためです。電車さっさと出た僕は、一番乗りでケーブルカー乗り場へ。ふふふ、一番乗り・・・と思ったら、何とケーブルカー乗り場は既に大行列でした。あああ、僕の目論見が・・・。当たり前のことだけど、アルペンルートに来る人の多くが車で来るわけで、その辺を甘く見ていた僕が迂闊でした。でも朝っぱらからこんなに人が多いとは。

 というわけで、時刻表とにらめっこしながら念入りに立てた計画は早くもスタート地点で崩れてしまいました。これは先が思いやられます。とりあえずチケット売り場で長野県の扇沢駅までの片道切符を購入。8060円です。最初のケーブルカーだけはこのチケットを買うときに時間指定を受けるようで、さすがに6時40分・50分の便は満席でしたが、次の7時の便が空いているということで、無事予約。何とかなりそうです。


<富山側の拠点 立山駅>

<立山駅:標高475m>

<片道8060円>

<早朝から既に行列>

 50分の便が出る前から並んでいたので、7時の便でも比較的前の方になり、ケーブルカーでも進行方向後ろ向きではあるものの座ることができました。基本的にぎりぎりの人数まで乗せるのようなので、車内はぎゅうぎゅうです。早めに並んでおいてよかった・・・。やがて7時になり、ケーブルカーは立山駅を出発。標高475mの立山駅から997mの美女平駅まで、7分間で一気に約500mを上っていきます。車中では観光放送が流れていましたが、混んでいて外があまり見えなかったので良く分かりませんでした。。


<立山駅ケーブルカー乗り場で待つ>

<7分かけて美女平駅に到着>

 7分で美女平に到着。このまま7時10分の室堂行き臨時バスに接続するので、ほとんどの人がそちらのバスを待つために行列を成しました。僕はその行列に並ばずにバスを一本遅らせることにして、美女平駅の屋上にある展望台へ。ここから立山の麓や富山平野、さらに遠く富山湾を眺めることができます。壮観で良い風景です。


<室堂行き直行バスを待つ人々>

<美女平駅からの眺め>

 どうやら今日は臨時バスがかなり出ているようで、7時20分の臨時バスがあるとのこと。美女平の展望台から駅に戻ると、さっきまで列をなしていた人達はほとんど誰もいなくなっていました。静かに先頭付近でバスを待っていると、次のケーブルカーでやってきた人達が列をなし、結局さっきと同じ状態に。ただし先頭付近だったので、前が見える良い席を確保することができました。ということで、7時20分の室堂行きバスに乗って次の目的地の弥陀ヶ原へ。バスは山道をうねうねと上り、標高を上げていきます。標高が上がるにつれて、高山植物が見られるようになってきます。


<室堂行きバスで標高を上げていく>

<高山植物帯になってきた>

 7時50分、弥陀ヶ原駅に到着。弥陀ヶ原の標高は1930m。随分高いところまでやってきました。


<弥陀ヶ原に到着>

<標高1930mにある弥陀ヶ原ホテル>

 弥陀ヶ原は東西9km、南北3kmに渡って広がる高原地帯で、いくつかのハイキングコースがあります。今回はその中でお手軽な「弥陀ヶ原遊歩道コース」と「立山カルデラ展望コース」の二コースを歩くことにして、まず「弥陀ヶ原遊歩道コース」へ。僕は生物が苦手で高原植物の名前なんて全く知らない素人ですが、それでも背の低い高山植物帯に木道が続く風景をパノラマで見るとテンションが上がります。「The・自然」という感じ。40分かけてじっくりと散策しました。


<弥陀ヶ原遊歩道コースへ

<木道を歩いて行く>

<続く木道>

<「餓鬼の田」と呼ばれる池塘が多い>

 「弥陀ヶ原遊歩道コース」から戻ってきて、続いて「立山カルデラ展望コース」へ。こちらも往復約40分のコースです。展望台まで行くと、弥陀ヶ原の南側に広がる立山カルデラを眺めることができます。こっちも雄大な風景でした。こちらのコースはやや背の高い高山植物が生えていて、いくつか珍しい植物も目にしました。これは何だろうかと見ていると通りかかったおじいさんが「これは○○ですよ」と教えてくれて非常に有難かったですが、その名前をすっかり忘れてしまいました。右の上から二番目の写真の植物です。何と言う名前だったか・・・。


<展望台からの眺め 立山カルデラを一望>

 弥陀ヶ原での1時間半の散策を終え、9時半のバスに乗って室堂へ。バスは20分かけてアルペンルートの最高地点である室堂へと向かいます。


<再び室堂行きバスに乗る>

<そろそろアルペンルートの最高地点>

 9時50分、終点室堂に到着。室堂は標高2450mで、立山黒部アルペンルートの最高地点です。恐らく人生で一番標高の高い場所に来ています。目の前には立山の姿も。室堂はアルペンルートの観光拠点になっているので、朝と言えども人が多いです。

 室堂での散策の前に今日の朝食。今日は朝から何も食べてなかった状態で弥陀ヶ原を散策したので、かなり腹が減りました。室堂には手軽なうどんやそばもありますが、せっかくここまで来たのだから高くても名物を食べたいと思い、ホテル立山にある「ティーラウンジりんどう」へ。日本一高い場所にあるホテルだけあって、店内は煌びやかです。ここで名物のアルプスカレーと水だしコーヒーを注文。アルプスカレーは単品で1400円、水出しコーヒーはセット料金で600円(単品だと850円)とかなりの値段がします。さすがに日本最高地点にある山岳ホテル。しかしここまで来たからには引き下がれないので、朝食から2000円と奮発しました。

 カレーはまろやかで本当においしい。洋風カレーで、僕好みの味でした。ただ、もし東京の街中でこのカレーが1400円で売られているとすると高すぎて食べません。800円なら食べるかな、というところです。でも日本一高い場所にある伝統的山岳ホテルで、立山の雄大な景色を眺めながら食べるという点を考慮に入れれば、1400円でも十分かと思います。要は場所代。対して立山の湧水を使った水出しコーヒーは本当にまろやかで、今まで飲んだ水出しコーヒーの中でも1,2を争うものでした。カレーとのセット料金とはいえ、これで600円だったら都内の喫茶店でも十分出せます。コーヒーはやっぱり水が命。


<立山(右)が見える室堂に到着>

<ホテル立山のティーラウンジ「りんどう」>

<アルプスカレー(1400円)>

<水出しコーヒー(850円⇒600円)>

 腹ごしらえを終えて、いよいよ室堂近辺の散策へ。時間のことも考えて、一番手頃な「みくりが池周回コース」を歩くことにしました。ゆっくり歩いて約1時間程度のコースで、散策ルートは石畳で整備されているので楽に歩けます。スタート地点の室堂ターミナルには人がわんさかいましたが、少し歩くと人も少なくなり、立山をバックに雄大な風景を見ることができます。これはすごい。「高い金払ってアルペンルートまで来てよかった!」と思う風景で、久しぶりに自然の風景で感動しました。


<室堂ターミナルから出発>

<散策を始める>

<立山と室堂の景色>

 僕の文章では上手く感動が伝えられそうにないので、以下写真を何枚か。


<みくりが池と立山>

<別角度からみくりが池>

 みくりが池遊歩道の途中に地獄谷に向かう分岐があります。地獄谷は立山が火山だった頃の名残を残している場所で、今でも猛毒の硫黄ガスが盛んに噴出している場所とのこと。注意書きには「喘息のおそれがある人は行かないように」と書かれていましたが、今日は調子が良さそうなので大丈夫だろうと思い、意を決して長い階段を下っていきました。地獄谷に到着して今来た道を見上げると、帰りが嫌になりそうです。

 緑に囲まれて高原の雰囲気満載の室堂の中で、地獄谷は異質な光景です。もうもうと吹き出るガスと、どこまでも続く灰色の地表。昔の人が「地獄」と名付けたのも頷けます。ここのガスは本当に強烈のようで、歩道以外への立ち入りは絶対的に禁止とのこと。臭いも強烈です。あまり長く居ると気分が悪くなりそうだったので、長居せずにサクッと見て引き返しました。そして帰りの階段が辛かったのは言うまでもありません。


<地獄谷へ向かう長い階段>

<地獄谷から室堂を見上げる>

<地獄谷に到着>

<硫黄ガスが噴き出す>

 ひーひー言いながら地獄谷からの階段を上り切り、再び散策路へ。どこを歩いても僕が昔想像していたような「アルプス」の風景が広がっていて、日本にもこんなに雄大な景色があるのかと興奮しっぱなしでした。本州の端の海の街で育ち、上京後も東京を中心に過ごしてきた僕にとって、日本にこんな素晴らしい山岳風景があるとは知りませんでした。もちろん写真やテレビの映像で知っていたけれど、実際にこの目で見ると全然違った迫力があります。正直日本の自然の風景でこれだけ感動するとは思いもしませんでした。立山黒部アルペンルートは観光地としては結構高額な料金が必要ですが、それだけの価値がある場所だと思わされます。もっと早く来ておくべきだった。

 1時間の散策を終えて、再び室堂ターミナルへ。室堂での時間を1時間しか取っていなかったことが悔やまれます。それほど良い場所だった。次回来るときは、ホテル立山に泊まって立山に登るなどして、もっと室堂と立山を満喫したいものです。ホテル立山は1泊3万円とかするので、その点は要検討ですが。

 室堂からはトロリーバスに乗って大観峰へ。アルペンルートの良いところは、ケーブルカー、バス、トロリーバス、ロープウェイと様々な乗り物を乗り継げるところで、乗り物マニアだったらかなり楽しめます。トロリーバスは立山の下をくり抜いたトンネルを通るもので、よくそんな場所にトンネルを掘ろうと思ったものです。


<室堂のトロリーバス改札>

<11時半のトロリーバスに乗る>

<トロリーバス>

<大観峰に到着>

 トロリーバスは10分で大観峰に到着。大観峰は立山の絶壁にせり出すようにして建設された場所で、そこから眺める黒部湖と後立山連峰の眺めは素晴らしいです。黒部湖はかなり巨大なはずですが、大観峰から見ると手に取れるくらい小さく見えます。この景色をぼんやりと20分くらい眺めた後、12時10分のロープウェイに乗って黒部平へ。大観峰の標高が2316m、黒部平の標高が1828mなので、ロープウェイは7分かけて一気に500m下ります。さっきまで小さく見えていた黒部湖が段々と巨大になっていく様は迫力がありました。このロープウェイは途中に支柱がないワンスパン方式なので、景色を楽しめる代わりにちょっとした恐怖感もあります。 


<大観峰展望台から黒部湖と後立山連峰を眺める>

<ローブウェイで黒部平へ>

<ロープウェイで降下>

 黒部平は黒部湖へのケーブルカーの乗り換え地点という感じですが、展望所があるので行ってみました。さっきこちらを見下ろしていたあちらを、今度はこちらから見上げる格好になります。大観峰のロープウェイ出発地点が米粒のようです。そして立山に雲がかかってきました。山の天気は変わりやすいと言いますが、もしかすると室堂も曇っているのかもしれません。だとすれば午前中に室堂に行っておいてよかった。


<黒部平に到着>

<雲に覆われてしまった立山>

 続いて黒部平からケーブルカーに乗って黒部湖へ。黒部湖駅に到着し、トンネルを抜けると目の前には黒部湖と黒部ダムが広がっています。


<黒部平から黒部湖へ>

<黒部湖に到着>

<トンネルを抜けると・・・>

<黒部湖と黒部ダム>

 ついに黒部ダムにやってきました。黒部ダムと言えば「プロジェクトX」での紹介に代表されるように、男達の血と汗と涙の結晶というイメージです。実際に黒部ダムに来ると、急峻な山々に囲まれた場所に人工的な巨大建造物があるのが異様に思えます。よくこんな場所にこんな巨大なダムを作ろうと思ったものです。


<黒部ダムにやってきた>

<黒部ダムの標高は1454m>

<黒部ダムから黒部湖を眺める>

<ダムから水が噴き出す>

 黒部ダムと言えば放水が有名で、ダムの中央から放水を見下ろしました。きれいな虹が出ています。

 ダムの近くには男達の血と汗と涙の結晶の像も。総工費は当時の関西電力の資本金の5倍に当たる513億円(ウィキペディアより)。延べ作業員1000万人、殉職者は171名と、昭和30年代にしてはまさに世紀のプロジェクトだったことが伺えます。


<今日の水深は165m>

<男達の血と汗と涙の結晶(殉職者慰霊碑)>

 少し高い場所にある展望台から黒部ダムと黒部湖の全容を眺めることができるとのことでそちらへ。よく観光パンフレットなんかで使われる風景はここから見たもののようです。僕もこの風景を写真で何度も見たことがあります。実際にこの目で見るとやっぱり迫力が違う。建築工学のことは分からないので、これだけ薄いのに相当な水圧に耐えらることができるダムの構造が不思議に思えます。放水は下の土に影響を与えないように、霧状になっているとのこと。


<展望台からの眺め>

<迫力ある放水>

 ということで黒部ダムを堪能し、後は帰るだけになりました。黒部ダムからトロリーバスに乗って長野側のアルペンルートの起点である扇沢へ。1時35分の便に乗ろうと思って1時25分くらいに乗り場に行くと、めちゃくちゃな行列が出来ていて、果たして乗れるのかどうか心配になりました。しかしその辺は考えられているようで、やってきたトロリーバスは1台ではなく5台以上。これだけバスが来れば大人数でも案外乗れてしまい、心配は杞憂に終わりました。とにかく予定が狂わないでよかった。


<バスに乗るのに大行列>

<扇沢に到着したトロリーバス>

 1時52分に扇沢に到着し、立山黒部アルペンルートの走破は無事終了。あとはここから路線バスに乗って、大糸線の信濃大町駅まで。1330円かかります。


<お疲れ様でした>

<路線バスに乗って信濃大町へ>

 2時30分に信濃大町駅に到着。初日の朝に通った大糸線の駅に戻ってきました。信濃大町駅は立山黒部アルペンルートの東の玄関口であることを象徴しているのか、山小屋ロッジ風の駅舎になっています。

 今回は行きも帰りも18きっぷを使って帰ろうと思っていたので、当初は3時半に信濃大町を出る普通列車に乗り、途中の松本、大月と乗り継いでトコトコと帰る予定でした。これなら自宅に着くのは9時半になりますが、追加的な出費はなしで帰れます。しかし昨日・今日と移動が多くて疲れてしまったので、もうお金を出してもいいから早く帰って寝たいと思うようになりました。時刻表を見ると、30分後という何とも良いタイミングに1日1本の新宿行きあずさがあり、これでかなり心が揺れました。これに乗れば追加的に7000円くらい出費しなければいけないけど、6時には家に着きます。疲れていて頭が働かなかったので、もう帰ってしまおうと、7000円出して特急に乗って帰ることに。


<大糸線信濃大町駅>

<ロッジ風駅舎>

<普通電車に乗ろうかと思ったけれど・・・>

<特急あずさを待つ>

 特急で帰ることにして気分が楽になったところで、駅前のおやき屋で「黒部おやき(野沢菜)」を買って簡単な昼食に。1個170円だけどボリュームがありおいしかった。腹持ちも良いです。


<駅前で黒部おやきを買う>

<黒部おやき>

 3時4分の特急あずさ26号に乗って、一路東京へ。車窓にはさっきまでいた立山連峰が見えます。

 松本で結構な人が乗ってきたのを見届けたところで眠りに入り、気が付くと立川に着く手前。立川で降り、中央線を乗り継いで6時過ぎに帰宅。

 今回は念願だった黒部峡谷鉄道と立山黒部アルペンルートを訪れることができ、1泊2日にしてはかなり充実した小旅行になりました。旅行は好きですが、これまでは都市や海を中心に訪れて山を敬遠していた節がありました。しかし今回の旅行で山の魅力に気付かされたように思います。天気が良かったのもよかった。次回は山岳リゾートを満喫したいので、そのための貯金をしておきたいと思います。


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