このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

「成田新高速」、公津の杜接続案は有利だったのか

2010年の開通を目指す 成田高速鉄道アクセス (成田新高速)は、2月4日に成田市内で着工式が開催され、いよいよ工事が始まりました。
この成田新高速、印旛日本医大から印旛沼を渡り、成田ニュータウン北を経て土屋で成田からのJRルートに合流します。

成田空港へ真っ直ぐ向かい、かつ新規建設区間を短くした決定に対しては、成田駅を経由せずに空港輸送線用の路線にすることへの危惧から、京成本線の公津の杜駅付近に接着させて、京成成田駅から京成ルートでの空港入りを推す声がありました。
確かに地域の拠点である成田を事実上素通りしてとなると、営業面での懸念があることは否めません。京成のスカイライナーもノンストップだったものが年を経るごとに成り立て停車便が増えてきた経緯もあるからです。

しかし、そうした懸念をよそに、現行ルートで確定し、着工に至ったわけですが、ここで、公津の杜ルートは本当に有利だったのか、その実現可能性をメインに現地を探ってみました。

京成成田駅。左側の柵の向こうは崖(2002年11月撮影)

※特記なき写真は2005年5月および12月撮影


●京成線までの間には...
公津の杜接続案を仮定すると、印旛日本医大を出て、 別稿 にもある北総自動車学校付近まではルートに大差は無いコースになることでしょう。そして印旛捷水路を渡るのは佐倉へ向かう県道の鉄橋からやや北にそれた形になると考えられます。
その後は西に向かい、公津の杜を目指すことになりますが、このあたり、印旛沼の干拓地が広がり、取り敢えず用地的には全く問題ないように見えます。

公津の杜駅

ところが京成線に取り付く部分が問題です。
公津の杜駅を分岐点にすると仮定すると、駅の西側で分岐することになります。そこから印旛日本医大方面へと向かうと、まず行く手にあるのは宗吾霊堂です。義民として名高い佐倉惣五郎を祀った霊堂で、R464もこの南側を取り巻くように迂回しています。
そうなるとしばらく京成線に寄り添って、宗吾参道駅の手前、京成線が小トンネルをくぐるあたりが分岐でしょうか。ここらへんも印旛沼の干拓地に抜ける際の部分の用地利用が気になるところですし、ここまで下がると、印旛日本医大から佐倉へ抜ける県道から分岐して、平賀学園台(順天堂のキャンパスがある)を経て京成酒々井に向かう地方道にほぼ並行する形になります。
そうなると、成田空港からはW字を描くような線形になり、肝心な空港輸送で現在のルートに対するアドバンテージがかなり失われると考えます。

宗吾霊堂前

それでは公津の杜駅の東側に信号所を設けて分岐してみてはどうでしょうか。
実はこのあたりではR464が掘割の中を行く線路に並行していますが、地上は成田ニュータウンの南端と地続きとあって意外と開発されています。設置するとしたら日赤病院のあたりでしょうが、このあたりに信号所を設けて分岐させようにも用地確保が難しそうです。
また、宗吾霊堂を北側に交わそうとしても、その北側には麻賀多神社と言う、延喜式の格式と関東一とされる杉の巨木で有名な趣のある境内で知られる神社があり、環境を維持しての通過は困難が伴います。

麻賀多神社付近

また、公津の杜駅の西側、さらには成田ニュータウン全域は公津ヶ原遺跡群と呼ばれる遺跡の集中地域です。実は現在のルートも成田ニュータウン北側(成田交通湯川車庫付近)ではこの遺跡群をかすめるため同じ問題があるのですが、どちらかというと公津の杜接続案のほうが、発掘調査が進んでいないエリアになるため、予期せぬ出土と言うような問題も予想されます。

公津の杜西側。遺跡が出土したエリアを見る


●成田は経由するが...
この公津の杜接続案のメリットは地域の拠点である成田を通ることです。
しかし、まず公津の杜と成田の間の線形が良くありません。公津の杜開業時にだいぶ手を入れましたが、細かいカーブが連続して思うようにスピードが乗りません。

さらに成田駅自体にも問題があります。現在3面3線(一般的な2面3線の真ん中に特急専用ホームを設置)というレイアウトで、空港線直通列車と羽田方面からの快速の折り返し、また芝山千代田からの列車の折り返しを捌いていますが、ここに成田空港輸送の主役となった新高速経由の列車を挿入できるかどうか。
芝山鉄道や東成田駅を活用して基本的に通り抜けにするという対応であればこなせそうですが、かなりギリギリの対応を迫られそうです。

折り返しの芝山千代田行き(2002年11月撮影)

では成田駅を拡張すれば、と言いたくなりますが、実は地形が厳しく、馬の背のような台地を京成線の線路は通っており、その台地が途切れる空港側ではかなり高い位置に高架橋を建てて空港に向かっています。
京成線の北側にはその馬の背のような土地に商店が並んでおり、南側は崖になっているため、商店街を潰すか、崖側に人工地盤を立てるかと言う難しい選択を迫られます。

崖に張り付いた格好の京成駅高架で空港に向かう(左手が成田駅)

そうして見ると、公津の杜接続案はランニングのメリットは確かにありますが、イニシャルのデメリットが大きく、かつ空港輸送として速達性に疑義が生じるなど、成田空港アクセスの本義から考えると、主目的におけるデメリットに目を瞑ってまでその他のメリットを拾いに行くべきか、ということになります。
もちろん現在のルートでも、運用方法や設備構造に疑義無しとは言えませんが、ベターなルートであることは確かでしょう。

京成成田駅






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