このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





台風が来ると航空機はどうなるか
欠航、振替、そして遅延の渦中から


「ご案内」に続々と


2009年10月8日に上陸した台風18号。異常気象ではと言われた2008年の「上陸ゼロ」のせいもあり、2年ぶりの上陸となったことや、上陸時に955hPaという中心気圧を維持していた非常に強い台風であったこともあり、上陸前から強く警戒されていました。
この台風は、未明に東海地方に上陸し、その後中部、甲信、東北地方を縦断して三陸沖に抜けましたが、一部で突風、竜巻被害は出たものの、事前の警戒水準の割には風水害自体は幸い少なかったと言っていいと思います。

反面、8日の午前中に台風が最接近した格好となった首都圏では、都心部のJR線が軒並み強風で長時間抑止になるなど交通機関への影響が大きく、台風自体の被害よりも交通機関の影響が印象に残った格好です。
そして当日は不幸にも私自身が出張のため羽田空港を利用しており、空路の混乱を体験したのです。



※写真は2009年10月撮影



●台風が来た
10月に入り、日本のはるか南海上に発生した台風17号と18号。フィリピン方面で停滞し大きな被害を出した17号は日本への影響はなかったのですが、18号は早くから沖縄近海で夏の台風のように西北から東北にカーブを切って日本をうかがう予報が出ていました。

中心気圧が910hPaと低く、瞬間最大風速が60mと猛烈な規模ということもあり、早くから警戒されていましたが、だとしても上陸までの警戒ぶりはメディア、気象庁ともにいつになく深刻であり、逆にちょっと大げさではとも思えるものでした。
まあ昨年2008年が台風の上陸ゼロと言うことや、上陸こそしなかったものの、8月に兵庫、岡山両県、特に兵庫県佐用町で大きな犠牲、被害を出した台風9号の記憶も新しいこともあっての慎重な対応と推測できます。

とはいえ上陸直前には2004年の台風23号の再来(由良川で観光バスが水没したりした台風)というのならまだしも、伊勢湾台風の再来とまで言われるといささか騒ぎ過ぎの印象さえ受けてしまいましたが、被害が比較的少なかったのはあくまで結果論であり、逆にその2004年の台風23号も泉佐野市に上陸した時点では、当時神戸市に住んでいた私の体感としてはそんなに強い台風と言う印象を受けなかったのに、結局は但馬地方や紀伊半島、飛騨地方を中心とするあの大被害となったわけで、何が起こるか分からないものです。

●そんな中での...
当日は不幸にも神戸出張が入っており、向こうはいわゆる「可航半円」であり、昼前には台風一過の天気になるという予報でした。
実は台風の進路予想は前日の段階では実際よりやや遅めで、紀伊半島に明け方に上陸する予報だったため、午前中に東海地方を通過するとなると新幹線はかえって不適であり、空路で早いうちに入る作戦を立てたのです。そうなると利用はいつものNH411便。仕事は午後からで午前中は移動時間であり、羽田6時35分→神戸7時45分はあまりにも早すぎますが、入れなければ話にならないので、滋賀県や東播から回り込む航路と合わせて、なんとかギリギリで逃げ込めるという算段です。

ところが7日の午後になると事態は急変です。
ANAが18時以降の伊丹、関空、神戸行きの欠航を早々と決めてしまいました。
その時点では翌朝の伊丹行きも何便か欠航していたものの、NH411便は運行予定でしたが、定時を回った段階でついに欠航となり、案内が来ました。

台風の進度も早まったようで、未明には近畿地方に最接近するようです。こうなると通過後を狙うように作戦を変更して便を見ると、午前中はほとんど欠航の中で、羽田7時25分の関空行きNH141便と10時の伊丹行きNH019便が空いています、というか運航予定です。
NH141便は運航すれば一番早く入れそうですが、関空ですから向こうでのリスクも無くもないわけで、NH019便にしましたが、後続の羽田11時のNH021便が欠航、12時のNH023便が満席と言う中で綱渡りのような感じです。

仕事の時間も読めなくなり、相手に「着き次第開始」とアメンドを入れました。出張自体を伸ばす選択肢もありますが、そうなると後日のスケジュールが厳しくなるので、出来たら流したくなかったのです。

NH411便の予約は特割だったのでウェブでの変更はできず、電話となるのが面倒です。前回NH416便で欠航を食らったのは神戸空港搭乗口でのことでしたから、そのまま空港カウンターでの手続きとなりましたが、今回はわざわざ羽田などに足を運ぶわけにもいかず、電話です。
しかし当然というか電話が混み合っているわけで、相当待たされました。自動応答では「お急ぎの方は」と別手段(Vナビ)の案内をしてましたが、Vナビの案内には欠航時の振り替えが対象になっているようには見えません。イレギュラー対応だから電話をしているわけで、このあたりは改善が望まれます。

ようやくつながった電話で振替完了。待たされましたが対応は親切で、欠航による振り替えを告げるとお詫びの言葉から入り、スムーズにNH019便へ振り替えました。荒天時の欠航の場合、差額は請求されないので3000円高い便ですがそのままです。
ただ、よくわからないのですが、元の航空券情報に追記した格好になるので、NH411便の予約情報を取り消ししないで下さいと言われました。確かにそのあと予約情報はNH411便とNH019便が併存しており変な感じでしたが、後述するようにNH411便の情報が必要なので仕方が無いようです。

このNH411便の情報は搭乗翌日になっても消えず、実は帰りのNH416便に乗る際神戸空港のカウンターで携帯の画面を見せて質したところ、振替扱いになっていることを確認してくれましたが、イレギュラー対応とはいえ払い戻しや振替の結果が正しく実行されているかが心配な場面ですから誤解を招く表示は困ります。

余談ですがその帰りのNH416便は3連休前の金曜日最終と言うこともありひさびさの満席便でした。空席待ちの案内もカウンターに出ており、このところ金曜日でも空席が目立っていただけに、JAL問題の余波で神戸空港の意義が再燃しているなか、盛況はありがたいです。

●羽田空港まで
さて今回の台風18号は風水害自体は幸い然程でもなかったわけですが、首都圏のJRが大混乱となり、「影響」と言う意味では非常に大きなものになったのが特徴です。

未明に知多半島付近に上陸したあと、中部甲信地方を東北に進んだ台風が関東地方に最接近したのは午前中です。台風の中心が西側を通過していることから南からの吹き込み、吹き返しがまともに来る位置関係となり、明け方から加速度的に風が強まりました。
前日の段階で子どもが通う小学校は休校が決定しています。

NH411便なら津田沼リムジン利用なので新京成の始発に乗るのですが、NH019は羽田10時発と遅めです。
とはいえ台風ですから何が起こるか分からず、羽田に8時過ぎに入ることにして、京成津田沼6時50分の通勤特急をチョイス。実は寝る前にANAのサイトを見たところ、NH019便は11時発に変更になっており、もう少し遅らせてもいいのですが、もし空路が全滅なら新幹線に転進ですからそのままにしました。
もっとも出がけのニュースでは新幹線は始発から下りの掛川−名古屋で運転見合わせとなっていました。

6時台の状況は風は時折激しく吹く程度。雨もやんでおり、時折薄日も射す状況に、これならNH411便は行けたのに、と思いますがこれは後知恵でしょうか。
押上から急行となり、都営線内を各駅停車で抜けた品川では東海道線運転見合わせの案内。まあこれは台風に近いエリアに行く電車だから仕方が無いなと思ってましたが、これが混乱のプレリュードでした。

国内線出発のピークとあって電車も混み合ってましたが、ダイヤ自体は正常。蒲田付近では小河川が増水しており不安ですが、風はやや強い程度。薄日も射す状況です。蒲田でひときわ混みましたが、実は空港線沿線の事業所通勤が多いようで、糀谷、大鳥居、穴守稲荷、天空橋とまとまって降りて行きました。

専用カウンターへの案内

欠航便の案内が目立つ第2ターミナルですが、案外平穏です。払い戻し、振替専用のカウンターも空いており、混乱状況を予想していただけに拍子抜けです。
スキップ扱いはできないと言われていたのでチェックイン機に並び、操作すると、まずNH411便を選択する仕組み。(翌日のNH416も予約しているため)
欠航便の予約を選択するのも変な話ですが、先に進むと欠航になった旨の表示が出て、振替か欠航を問う画面になり、振替を選択するとNH019便の情報が出てきました。

ストレートにNH019便が出てこないのでは混乱するだけであり、これは要改善でしょう。前回の欠航では伊丹のカウンターでやってもらったのでわかりませんでしたが、羽田は基本的にチェックイン機になるので、その操作性は分かりやすさが第一です。
今回は荷物もあったので荷物を預けて身軽になりました。

専用カウンターはこんな感じ


●出発までの長き時間
11時発に変更されたためまだ2時間半はあるわけで、取り敢えずターミナル内の様子を観察してみました。
マスコミの取材陣が来てましたが、全体的に平穏です。こんな日に、というわけではないですが修学旅行の集団が来ており、ロビーで集合をしているのが目立ちました。

早々にセキュリティを抜けて、蕎麦屋で朝食を取り、その後向かったのはラウンジです。
名ばかりと言うか端くれ上級会員は木戸御免というわけにはいかず、アップグレードポイントか1000マイル減算となるのですが、ちょうど年内に中途半端に消えるマイルがあることから、それが消えるくらいならと1000マイル減算で使ってみたのです。今回は長居が予想されますし、ちょうどいいでしょう。

受付で1000マイル減算での利用を告げると手続きを受け、減算の領収書を受け取ってようやくラウンジへ。
出発ロビーの上階にある構造で、伊丹同様明るい感じ。ひときわ明るいのは窓側のカウンターですが、ここはPC対応席となっており、ビジネスマンなどが陣取っているので近寄りがたい雰囲気です。

テレビのある席で台風情報を見ると、首都圏のJRは山手線、京浜東北線以下全滅状態です。新幹線は動いているようですが、かなりの遅れを出しているようで、これでは多少遅れても飛行機のほうがよさそうです。
基本的なサービスメニューは伊丹と同じ。というわけで、神戸のラウンジ(ただし航空会社ではなくターミナル経営のカードラウンジ)はサービスレベルが格段に落ちるわけでもないという結論に。ただし細かい点で見劣りがかなりあることは確かですが。

窓に近い席に移動して寛いでいると、しきりに搭乗口変更や遅延、欠航の案内が流れます。
滑走路混雑のため搭乗後時間がかかるという案内に続き、ゆえにお手洗いは搭乗前に、と勧めていましたが、少しでも搭載量を軽くして省エネ、燃料費節減を図るべく搭乗前のお手洗い推奨が記事になっていただけに思わず苦笑です。

見ていると雲が相当早く流れており、海も白く波立っています。
着陸は横風用のB滑走路を使っており、到着便もかなり混乱しているのでしょう。
時間はあるのでゆっくり滞在し、10時半頃に搭乗口にむかったのです。

機材繰りによる搭乗口変更への注意喚起


●ようやく離陸したが
実はこの間搭乗口がまさに二転三転していて、チェックイン、ラウンジ入場、退場で搭乗口が違ってました。
搭乗口前のベンチはいっぱいの人。しかし飛行機はまだ来ていません。

やがて11時発ですが遅れると言う案内がながれ、さらに到着機材の遅れもあるとのことで、こうなると半端じゃ無く遅れそうです。
ところがベンチ前にあるテレビではJRの見合わせに加え、京急まで止まったという情報が。実はこれ、振替客が殺到して安全確保ができなくなったからだったようですが、モノレールは動いているみたいとはいえ、おそらく振替客が殺到している地下鉄を乗り継がないといけないわけで、新幹線への転身も事実上無理になった状態に追い込まれたのです。

11時半頃にようやく773の機材が到着。どうも折り返しではないようで(別の搭乗口で下したのかもしれないが)、そのままクルーが乗って準備にかかったようです。11時50分の出発時刻が表示されましたが、搭乗を開始したのはその時刻の頃でした。

結局2時間近い遅れですが、気になって関空行きのNH141便を見ると、11時半に変更になっています。何のことはなく、7時台の便ですが繰り下げての運航だったようです。さらにあとで見たら結局関空着はNH019便より遅く、こっちにしていたら大変でした。
セキュリティ通過前にロビーの発着情報を見たら、JALは9時の神戸行きから関西エリアへ運航しているようですが、あちらはどうなっているんでしょうね。

この日最初の伊丹行きですが、満席というわけでもなく7、8割程度。やはりというか時間がかかってプッシュバックして誘導路に出ましたが、ここで止まりました。
B滑走路には続々到着しており、離陸はAかCですから着陸機による支障はないはずです。と、案内が入り、強風による離陸見合わせとのこと。1時間くらいで飛べるようになるという話でしたが、これは参りました。

烈風に時折機体が揺れる中で待つことしばし、ようやく離陸再開となって飛んだのは13時過ぎ。
強い向かい風ですからすぐ浮き上がるかと思ったんですが、意外と滑走距離が長かったです。

11時発改め11時50分発に(時刻表上は10時発)


●ようやく到着
あとは順調で穏やかな台風一過の青空が広がる伊丹に着いたのは14時過ぎ。荷物を受け取りにターンテーブルのところに行くと、東京発の表示が2台。12時のNH023便が結局団子状態で飛んだようで、早くもNH023便の乗客も降りてきていました。
そもそも11時発のNH021便が早々に欠航で、10時発のNH019便を11時に繰り下げて、という対応ですが、だったらNH019便を欠航にしてNH021便を活かせばいいのに、なぜこんなややこしいことをするんでしょうね。機材繰りの都合なんでしょうが、まさかNH019便のほうが特割が2000円高いから、というのは下衆の勘ぐりであればいいんですが。

ようやく荷物を受け取って神戸三宮行きのリムジンに乗り、客先に入ったのは16時前。2時間程度しか仕事になりませんでしたが、まあ辿りつけただけマシでしょう。
ちなみに別件でJALを利用して関西方面に向かっていた同僚に後日話を聞きましたが、やはり予約していた早い時間帯の伊丹行きが欠航になり、その時点で最も早い9時の神戸行きを選択したまでは良かったのですが、搭乗待ち、離陸待ちで出発はなんと12時を大きく回ったそうで、しかも搭乗後離陸までの待ち時間がかなりあったそうです。

それにしても散々でしたが、だったら新幹線がよかったかと言うと微妙です。
結局午前遅くまで断続的に運転見合わせがあり、ダイヤも混乱していたわけで、昼過ぎには収束に向かっていたとはいえ、羽田から転進してまで乗るべきではなかったようです。

新幹線のダイヤが収束に向かった頃にはJRが動いておらず、抑止前に東京駅に行けばその時点では新幹線が見合わせや大幅遅れと言う厳しい状況でした。これも空港のテレビでの情報ですが、地下鉄東西線も地上区間が運休しており、京成は時折江戸川橋梁で抑止がかかっていたものの運転していたとはいえ、振替客の集中が予想される状況であり、早めに羽田に入っていたのは不幸中の幸いでした。
11時発とタカをくくって家を遅く出ていたら、羽田に辿りつけないという悲惨な事態になっていた可能性が高かったのです。

空路の混乱はひとえに強風です。
そういう意味では台風が関東の西側を通過する予報を見て、通過後の吹き返しは容易に予想がつくのですが吹き返しが来るまでには若干のタイムラグがあります。ですから通過後しばらくしてからの吹き返しの前に飛んでしまう予定だっただけに、運も味方しなかった格好です。

雨は台風本体の北側になるので、今回のように早い時間帯に上陸してしまった状態だと、あまり雨の被害は出ないようで、その意味でも今回は新幹線のほうが収束が早かった原因でしょう。

「欠航」が並ぶ出発案内


●嵐が去って
今回の台風被害での最大の特徴ともいえるものは、首都圏JRの運転見合わせです。
強風による運転見合わせと言うと京葉線あたりだと日常茶飯事ですが、今回は広範囲、特に都心部に集中したことが特徴です。
象徴的なシーンとして、羽田の搭乗口で見ていたテレビに出てましたが、総武快速線が江戸川橋梁の規制で抑止となり、小岩付近の高架線で止まっていた下り快速が2時間以上抑止された結果、保守用通路を使って地上に降りているシーンが映っていました。

これは長大橋梁が多い総武線ということと、強風と言うことで収束するかどうかが読みづらいこと、さらには強風の程度によっては車外に出したほうが危険という悪い条件が重なりすぎており、今回は長時間の缶詰が必ずしも間違いとは言い切れず、やむを得ないといえますが、それでも大変だったことは確かです。

とはいえ天気自体は回復傾向にある中で、通勤客が続々と乗り込むような誰もが運休を確信するような暴風雨とも言い難い状況での大規模抑止は「未曾有」のものであり、私鉄各社が比較的順調に運転していただけに、JRの状況は一種異様にも捉えられたようで、数日たってから各紙に、2005年暮れの羽越線突風事故の教訓を受け、風速計を大幅に増やし、かつ運休基準を私鉄に比べて5m厳しい状態に設定しているため、今回JR「だけ」がストップしたという解説記事が出ていました。

要は安全目を見たということですが、羽越線のように冬場の強風が名物の地方で、しかも風を横腹に受ける吹きさらしの築堤での運行での事故対策と、都心部での電車における対策を一律にかなえる必要があるのかという問題もあるわけです。
確かにビル風や風の通り道になるような小さな谷をわたる区間もありますが、山手線が強風で転ぶようなリスクがある個所がどの程度あるのか。速度も状況も全く違うのです。

要は運休することによる影響の大きさ、路線の重要性も勘案して、基準をきめ細かく設定するべきでしょう。風速計の設置にしても、風向も勘案して基準を設けるとか、気象データを入手してその強風がどの程度続くのかというような情報も加味すべきでしょう。
実際、羽田での離陸待ちの際は、気象台データを入手したのか、強風の収束見込みを案内していたわけで、よしんば電車が抑止のやむなきに至るとしても、運転再開の見通しを案内するうえでもこうした情報の入手活用が望まれます。

安全はすべてに優先するのわかりますが、100%の安全は電車を止める以外にありません。そうはいっても安直に止めればいいというものではないわけで、電車を運行するという前提で考えたら、その対応が過剰な対応なのか必要不可欠なのか。止めるかどうかの見極めをどれだけ合理的に行うかということが求められますが、日ごろから何かあったら復旧の手間を優先させて広範囲に抑止をかける傾向のある事業者だけに、過剰対応の印象は免れません。

鉄道は大都市の基本インフラとして機能することが期待されている存在であり、安全と運行の両立を極限まで両立できる体制の確保を要求されているなかで、今回の対応はどうだったのか。そして「次」にどう生かすのかが今後の課題と言えます。

そして今回またもや欠航などを体験した空路ですが、こちらはある程度織り込み済みとはいえ、やはりひとたび混乱した時の弱さは鉄道の比ではありません。
もちろん区間の中間で支障があったときは鉄道に比べて遥かにリスクが低いのですが、今回のように拠点空港をやられるとその影響は全国に及ぶわけです。

需要に応じて機材をこまめに使い分け、効率を追求して広域運用を行っているがゆえに、フレキシブルな対応ができないですし、機材の余裕も少ないことから急遽羽田仕立てで臨時便を出して影響を最小限にするといった芸当も困難です。
このあたりはやはりテレビに出てましたが、山陽新幹線が東海道区間で遅れた下り「のぞみ」に対し、新大阪仕立ての臨時便を出して対応していたように、鉄道の対応は冗長性に優れています。

とはいえ航空が総てこんな感じかと言うとさにあらずで、今回の対応を見るとJALはギリギリまで対応し、ANAやその他SFJ、SKY、SNAなどは安全目と言うか余裕を見た感じです。
実際、上でも述べたとおり、ANAは7日の18時以降の関西方面行きをすべて欠航にしましたが、JALは伊丹行きの全便、関空行きも最終前の1便(ただし時刻を変更して最終便の時間で運航)まで運航しており(神戸行きは欠航)、影響度と言う意味では大きく差が出ています。

今回の台風は、図らずも鉄道や航空の異常時対応のさまざまな得失の事例を示したわけですが、利用者としてはその得失を勘案して上手に対応していくしかないだけに、願わくばこういった事態に当たらないことを祈るしか他ありません。



交通論の部屋に戻る


Straphangers' Eyeに戻る


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください