このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください






列車種別をどう案内するか

都心部で通過運転する「普通列車」と「快速電車」の関係




JR東日本の近郊、通勤電車に自動放送が導入されて久しいですが、地元の総武線も遅ればせながら先日導入されました。日々それを聞くことになったわけですが、どうも気になる表現に気が付きました。
気になったことで改めて注意深く見聞きすると、その「気になる表現」へのシフトをどうも同社では進めているようです。

写真は2008年9月、2009年4月、5月、6月撮影


●違和感の始まり
日頃利用している総武線の快速電車。地元ユーザーは特に線名を言うこともなく「快速」「快速電車」で通用しているのですが、駅や車内の案内も「快速」が前面に出ていた、はずでした。

ところがどうも最近それが変わっているようです。そもそもの変化として、近郊区間路線図での表記が「総武線快速・横須賀線」だったのが、「横須賀・総武(快速)線」に早い時期に変わっていたのですが、ここに来て「総武快速線」と独立した線名をイメージする表記や表現にシフトしてきています。

そもそも「総武線」の「快速電車」なのに、「総武快速線」として独立路線のようになるのも変な話ですが、錦糸町から秋葉原、新宿方面に向かう緩行線とは別ルートで東京から横須賀線方面に向かうということもあり、確かに独立した存在と言うことも出来ます。

そして、よく批判される線路別複々線ということも、快速線を別線と看做しやすい環境にあるわけで、会社側が内部で「快速線」「緩行線」と言うのと同様に、趣味の世界でも路線の特定など何かと便利なのでこの「総武快速線」「総武緩行線」と慣用するケースが専らになっていますし、拙サイトでもこの表記をするケースが多いです。

単に「快速」で通用していた証左(新小岩)


●気が付くとここまで
その程度なら目くじらを立てる話でもないのですが、先日品川駅で聞いた放送に決定的な違和感を感じたのです。

「今度の電車は総武快速線内各駅に停まります」

これは激しく違和感を覚えました。「総武線」の「快速電車」なのに「各駅に停まります」はありえないだろう、と感じたのです。
電車に詳しくない人がこれを聞いたら、「各駅に停車します」に引っ張られて、平井や幕張本郷に停車すると勘違いする可能性もあります。

そういえば自動放送でも「総武快速線」と言う表現が「定着」していることに気が付き、このままでは「快速電車」が「各駅停車」になってしまうと拙サイトの掲示板でぼやいたところ、いや、「快速線」の各停車駅に停車するのだから間違いではないのでは、と言うご指摘を頂きました。

確かに横須賀線や東海道線、また高崎線や宇都宮線は、京浜東北線との並行区間において「通過運転」をしますが、これをもって「快速」とは言いませんし、「普通電車」と言い習わしています。また確かに「各駅に停車します」とも言っています。

種別ではないので余談ですが、ちなみに緩行線は中央線に直通しますが、もともと中央線に属する水道橋や千駄ヶ谷、大久保あたりまで含めて「黄色い電車は総武線」と言う人が多かったのですが、「中央・総武線」と敢えて正しく?表記されるようになったばかりか、自動放送では「中央総武線」とこれも「新しい路線名」が登場しているのです。
※このあたり英語放送のほうは「Sobu Line Rapid(Local) Servise」のように「正しい」表現になっているのがまだ救いです。

そうなると「京浜東北線」に対する「東海道線」のように、「中央総武線」に対する「総武快速線」という「別線」が存在し、そこに総武快速線の「普通電車」が走っている、という位置付けも可能になるわけで、ひょっとしたらそういう変化を狙っているのかも、と邪推したくもなります。

「快速線」ではなく「快速電車」だった(新小岩)


●歴史的経緯の産物
この問題、歴史的経緯があるだけにややこしいことは確かです。

中央線、総武線、そして常磐線は「快速」であり、東海道線、横須賀線、高崎線、宇都宮線は「普通」ですが、どちらも路線によっては戦前からの伝統があるだけに、ある日突然「普通」が「快速」、「快速」が「普通」になっても混乱するでしょう。

ただこの歴史的経緯ですが、実は単純なわけで、「電車」の通過運転は「快速」、「列車」の通過運転は「普通」ということです。
そもそも現在「快速」となっている各線も、電車区間外から乗り入れる「列車」が別に存在し、「普通」として走っていたわけで、そういう意味では実は統一されたルールがあったともいえます。

ちなみに中央線は高尾から八王子、立川停車で新宿まで乗り入れていましたし(末期は西八王子、三鷹にも停車)、常磐線は2004年に停車駅が揃ったことで「快速」になりましたが、それ以前は停車駅が異なり、初期は取手から我孫子、松戸、日暮里停車で上野まで乗り入れていました。

「普通」だったころの名残の表記(松戸)

総武線も1969年ごろまで房総各線からの直通列車が朝夕のほんの一部ですが千葉から無停車で両国まで来ていたわけで(この時点で中野-木更津の国電快速はすでに運転していた)、そういう歴史的経緯を踏まえると、現在「快速」がある路線は「普通」「(国電)快速」「(国電)普通」の三階層だった名残と言えるのです。

ただ、埼京線、湘南新宿ラインと山手線の関係のように、歴史的経緯の無いところで通過運転をする「普通」が新たに発生したケースもありますが、東海道線などと同様路線名を完全に分けることで対応していると言えますし、通過運転をする側に「普通」だけでなく「快速」「通勤快速」「特別快速」と重層的な種別体系になっていることも理由にあるかもしれません。

埼京線や湘南新宿ラインは別路線として並立(新宿)


●例外はやはり「普通」
とはいえ例外はやはり「普通」です。
国電区間で通過運転をする「列車」というと、首都圏を除けばあとは京阪神地区のJR神戸線、京都線だけなんですが、こちらは全国版の時刻表では「普通」ですが、現地では通過運転を行う京都・高槻−明石間では「快速」として案内されています。(列車の種別表示もここで切り替わる)

全国版時刻表では「普通」だが(芦屋)

「普通」が通過運転と言うのは分かりづらく、そのシンボル的な存在でもあった常磐線の「普通」は「快速」と停車駅が揃ったのを機に、JR神戸線、京都線のように「上野−取手間快速」になったのもまさにその問題の解消が目的でした。

しかし一方で東海道線や高崎線の通過運転がさしたる混乱も無く受け入れられているのは、結局線路別複々線ということもあるのでしょう。同じく線路別複々線の常磐線の場合は、同じ快速線の上を「普通」「快速」が走っていたという事情もあるからです。

「路線」というか「線路」が違えば同じ「普通」でも停車駅に差があってもいい、ということでしょうか。このあたりは南海が、同じ最下位種別であっても、別路線が並行するなんば−天下茶屋間で今宮戎、萩之茶屋に停車する高野線を「各駅停車」、そもそもホームが無いので通過する南海線を「普通」として、「天下茶屋までの各駅と、新今宮、なんばに停車」と案内する原理主義的ともいえるスタンスが対極に存在すると言えるわけで、まあ利用者が迷わないレベルであればいいという程度問題なのかもしれません。

「普通」の停車駅案内(和歌山市)


●「各駅に停車します」とは
そもそもの混乱は「各駅に停車します」の内容にも起因します。

「各駅停車」=「普通」というのが世間一般的な認識ですから、通過駅があると話がややこしくなるわけです。
この辺りは使い方に統一性があるかというとそうでもないようで、この7月から総武快速線でも自動放送が使用開始となったのですが、その停車駅案内によると、上り横須賀線直通方面は「...新小岩、錦糸町、馬喰町、新日本橋、東京と、東京からの各駅です」となるのですが、下り成田線方面は、「...津田沼、千葉、都賀と、都賀からの各駅です」(通勤快速は「佐倉からの各駅」)となるのです。

一方で内房線方面は、蘇我から袖ヶ浦まで7駅連続停車なのですが、その先の巌根を通過するためか、君津まで総ての停車駅を列挙するわけで、どんなに停車駅が連続しても通過駅があれば列挙するし、終点まで連続したら「各駅」になるけど、錦糸町から東京までは「各駅」とは言わないと、基準があいまいです。

このあたり、中間駅の連続停車については他社も手探りなのか、阪神はこれまで直通特急(黄色)の停車駅を連続停車となる三宮−高速長田間も含めて列挙していたのを、連続停車が須磨まで伸びたのを機に「三宮から須磨までの各駅」としましたが、阪神なんば線に関しては平日日中の尼崎−西九条間の連続停車も含めて鶴橋までの連続停車区間を列挙しているように、いろいろ思惑もあってか同じ会社でも統一性が無いようです。

かつては「西元町・大開にも停車します」だった


●ファジーな対応策がベスト
歴史的経緯もありますし、沿線利用者の「馴染み」や思い入れもあるわけですから、あまり原理主義的になることもなく、是々非々でいい話なんですが、そうなると足下の「表記の流れ」は微妙です。

「快速線」の各駅停車と言う矛盾的表現はさすがに願い下げですが、もし「快速線」が「JR千葉線」というような別の路線名になったとしたら、現在の快速は「普通」になっているのかもしれません。
もちろん路線名の変更(追加)と言うような事態になるとそれは大事ですから、そこまで進むことは無いと思いたいですが、

ただ、快速電車は乗り換え、ではなく快速線は乗り換え、といいたくなるのも分かります。
快速線を走る電車は「快速」だけでなく「特別快速」や「特急」もあるわけで、快速電車は乗り換え、といいながら、次は特快、特急というのも座りが悪いという面もあるからです。

そういう意味では、「快速線」という「路線名称」は円滑な案内に資するものとして積極的に受け入れてもいいと考えますが、並行する「緩行線」が存在する場合は「快速線」の電車には「快速」以上の種別を付けると言う現状踏襲であるべきでしょう。

東海道線、横須賀線、高崎線、宇都宮線の4線は歴史的経緯による定着を理由に現状の「普通」のまま。
湘南新宿ラインと埼京線が悩ましいですが、こちらは「山手快速線」ではなく「湘南新宿ライン」「埼京線」と言う別線扱いを徹底しているということでこれも現状通り。ちょっとご都合主義ですが、「定着」を考えると杓子定規に峻別する必要もないでしょう。

停車駅に関しても「各駅停車」の区間が微妙ですが、列車種別が案内上変更になるケースを除いては、列挙するほうが統一性がありますし、余さず述べるという意味でも親切です。
逆に末端区間で連続停車が延々と続くというケースでは、潔く「XXから各駅停車」というような種別の切り替えをしたいところですが、そうなると「種別が化ける」ことによる弊害もあるだけに悩ましいです。

結局ここもご都合主義ですが、地域や路線の実態に応じて停車駅案内を「各駅に停車します」とするしかないですが、知名度のある運転上の拠点駅を境に「XXから各駅停車」とするのが解りやすいと考えます。
そういう意味で「総武快速線」の場合は、上り錦糸町からの「各駅停車」は東京まで列挙するのは正しいですが、下り都賀から各駅と案内するのは少し杓子定規かなと思います。








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