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バスという交通モードの高度化を考える〜その4
中国道の老舗バスストップを見る


北条バスストップに入る特急大阪行き


※写真は2006年2月および4月撮影
※2006年11月5日 滝野社ICに関し、写真追加などによる補筆


第4回目は兵庫県内の中国自動車道沿線にある高速バスストップです。

1979年の中国道福崎までの開通、そして1975年の福崎−美作間の開通で大阪から津山を経て落合まで高速道路がつながったのを機に、同年10月に国鉄、神姫による高速バス路線「中国高速線」が開通しました。
先発の東名高速線、名神高速線と違い、山陽線から離れた内陸部を、これも岡山県北の一地方都市に過ぎない津山まで走る路線が国鉄第三の高速バス路線(当時は「高速バス」と言わず、「ハイウェイバス」と言っていた)というのには違和感を覚えますが、実態は先発2路線を上回る営業成績を上げるドル箱路線として定着しました。

このヒット、鉄道だとどうしても乗り換えになるか、直通があるにしても速くない気動車急行という沿線に、冷房付きの高速バスで大阪まで乗り換えなしと言う段違いのサービスを提供したことが大きく、ローカルとはいえ関西圏の外縁で中規模の町村が点在する沿線の需要を上手に掘り起こしたとえいます。
そのため、事の真贋は定かではありませんが、国鉄の自動車局が加古川線、播但線、姫新線などの鉄道を食ってしまったことを「反省」したのか、国鉄による高速バス路線の開設はこれが事実上最後になり、幹線路線の高速道路乗せ換え(盛岡−十和田湖、広島−浜田など)を除けば、盛岡−弘前の「ヨーデル号」が唯一と言えますが、これすら「十和田南線」としてハイウェイバス色を極力隠していました。

今回ご紹介するのは、この老舗路線である「中国高速線」の兵庫県内の滝野社インター、北条、山崎インターの3停留所です。これらの停留所が持つ知られざる実力こそが、中国高速線の好調の源泉とも言えるのです。

中国道から見た滝野社インター


●滝野社インター
兵庫県加東市、といっても4月に成立したばかりで馴染みがない地名ですが、滝野町、社町、東条町の3町が合併して成立しています。
このうち社と滝野の中間に位置するのが滝野社インターで、東西に走る中国道と、明石から三木、小野を経て西脇、丹波(氷上)、福知山を結ぶR175が交差する地点にあります。

バイパスと旧道の交差点。
対向右折車は大阪からの西脇行き

1974年の中国道開通当時、R175はインターのすぐ南でR175と斜めに交差する県道でしたが、1979年に一部開通して、のちに全通するバイパスがR175となっています。
余談ですがバイパス開通当初、インター出口と平面交差になっていたため事故が多く、1987年にバイパスと立体交差して旧道に至る第二インターが完成して現在に至っています。

高速バスは、いったん料金所を出て、バイパス明石方面に下りるランプの脇からバイパスをまたぐ跨道橋の下をくぐるバス専用の通路を通り、高架下にあるバス停に停車してまた料金所に戻ります。
ここはバイパスの明石方面の側道に接しており、バイパス側にも停留所があるため、あたかも島式ホームのようになっているのが特徴です。

左が側道、右がインター側の道路
側道後方ではタクシーが待機中

ここでは一般道側との接続が考慮されていますが、実際には一般道側を使うのは、西脇発着の高速バスと、三ノ宮と西脇を結ぶ神姫バスの西脇急行であり、西脇急行は日中毎時1本があるとはいえ、高速バスの本数(毎時2〜3本)を考えると、接続便として機能していると言いがたい状況で、実際に見てみると乗り継ぎ客はごくわずかです。

三ノ宮行きの西脇急行

ただ、運行形態は滝野社インターバス停へのアクセスを強く意識しており、夜間の一部便が通過するほかは、旧道を三木、社から西脇に向かう途中、バイパスに入り、インター北側の交差点でUターンしてバス停に入り、再び旧道に入る(三ノ宮行きはその逆)行程になっています。
また滝野社インターで高速を出るため高速側のバス停に入れない大阪−西脇系統も、旧道側の出口を出てからバイパスに向かい、北側のUターン路を使って一般道側に到着します。
そのためインター北側の交差点には、バスのUターン用に、いったん左折して交差道路側の青信号で右折してバイパス南行きに入る小ロータリーがあるのが特徴です。

バイパスから小ロータリーへの分岐小ロータリーを回る西脇発大阪行き

滝野社インターバス停は滝野、社のみならずその北の西脇市にとっても「玄関口」として機能しており、エリアの各施設、事業所、ゴルフ場のアクセス案内は押しなべて「高速バスで滝野社インター下車」となっています。
鉄道がなく、路線バスも少ないインターでこのような案内が成立する種明かしですが、送迎車の利用もありますが、このバス停には客待ちのタクシーが常駐しており、バスを降りて途方に暮れるということがないのです。

バス停の後方では一般車やタクシーが待機

このバス停部分の構造がまた面白く、側道部分への本線からの進入路を2箇所設けており、前側からバスが入り、後ろ側はタクシーや送迎用の車両が利用して、バスの時刻まで待機できるようになっているのです。
意外なことに、滝野社インターでは、最近の高速バスに不可欠なパークアンドライドは事実上ありません。タクシーと事業所や個人の送迎車でのアクセスがほとんどなのであり、それがこれだけの利用につながっているのです。

滝野バス停を行く大阪行き
後方は三ノ宮行きの西脇急行

また、実は旧滝野町の市街地まで徒歩10〜15分程度と言うロケーションであり、その気になればこのあたり、名勝闘竜灘となっている加古川を橋で渡れば難なくアクセスできますが、滝野市街などは西脇〜大阪系統がカバーしており、徒歩でICへのアクセスはあまり見られないようです。

乗降で賑わうバス停
(左は西脇からの大阪行き、右は大阪からの北条行き)

バスの利用も順調で、津山系統のほか北条系統が生まれ、神姫バスが運行していた新大阪−西脇線も中国高速線に組み込まれており、成長が続いています。
このエリアの鉄道は加古川線がありますが、加古川とのローカル流動を除けば、公共交通による移動は中国高速線と西脇急行の独壇場です。もっとも、所要時間的には新快速の威力で、対大阪では10分程度しか差はないですが、西脇市街に入るバスに分があります。

電化されたものの厳しい加古川線(粟生)


●北条バスストップ
加古川をはさんで西側に位置する加西市。この中心が北条です。ここは加古川線粟生から伸びる第三セクター北条鉄道の終点ですが、公共交通の担い手はもっぱらバスです。
広域的には姫路の影響が強く、姫路からの神姫バスの一般路線が毎時1〜2本あるのに加え、中国道経由で大阪を結ぶ高速バスが毎時3本確保されています。

神姫バス北条営業所に停車中の姫路行き

もともと中国道の本線バスストップであった北条バスストップに停車する便だけでしたが、加西市にあるフラワーセンターのアクセス便としてスタートした、加西インターで降りて北条町駅前を経て神姫バス北条営業所を結ぶ系統が成長し、毎時1本となり、中国道の特急、急行各1本と合わせて3本体制になっています。

神姫バスの営業所は市街地のやや北寄りですが、北条町駅前の中心街を経由しますし、営業所とは別のバスターミナル(アスティアかさい)があります。そういう意味では鉄道も一等地に駅を構えているのですが、姫路も大阪も2回の乗り換えとあって半ば蚊帳の外です。

北条鉄道のレールバス(北条町)北条町の駅前。アスティアかさいバス停も

一方で北条バスストップは市街地の北外れにあり、ロケーション的には良くありません。
しかし、ここもパークアンドライドはあるにはあっても小規模で、かわりに駐輪場とトイレがあるのが特徴です。にもかかわらず津山系統の特急の最終停留所であるからには利用が多いわけです。

バス停前に駐輪場北条バスストップ

このあたりは送迎車もさることながら、外れとはいえ北条市街からは十分徒歩圏というのが大きいと思われます。
また、そうした需要が大きいことから、加西インターで降りて北条をターゲットにした系統が毎時1本確保されたともいえますが、大阪(千里NT)までノンストップの特急便狙いで北条バスストップを利用する人も多いようで、上手に使い分けられています。

北条バスストップに到着する特急大阪行き
(トップの写真のバスが満員通過による続行便)


●山崎インター
兵庫県宍粟市(しそうし)、これも平成の大合併で山崎、一宮、波賀、千種の4町が合併して誕生した市です。
この中心となるのが山崎。姫路と鳥取を結ぶR29と中国道が交差し、さらに播磨新宮を経て網干に向かう県道との交差点でもある交通の要衝です。

インター近くにある古の道標

佐用インターからR373志度坂道路経由で智頭を経て鳥取に向かうルートに押され気味ですが、伝統の因幡街道、戸倉峠越えのルートの玄関として長距離バスの姿も見えますが、山崎に停車するのは中国高速線のみです。

山崎インターを出て一路鳥取へ向かう高速バス

ここは中国道に多い形態の、料金所の出口、入口の間隔を広く空けて、8の字型の折り返し道路を置き、高速道側からの折り返し、一般道側からの折り返しに加え、料金所を通過してからそれぞれの停留所に入れるようになっている構造です。

インター外側のロータリー
内側には相似形でもう一周分ある
インター内側のロータリー
大阪からの高速バスが到着

一般道側には姫路から山崎を結ぶ一般路線バスが入りますが、高速バス利用のほとんどは一般道側のバス停部分を借用した送迎(本当はいけないのだが...)と、徒歩でそのまま山崎市街に出る流動です。そしてここもパークアンドライドの設備は無いようです。
また、ほど近い市街地中心には神姫バスの山崎営業所がありますが、北条と違い山崎行きの設定はありません。(一時期神姫の独自路線として、山崎やその奥の一宮、波賀方面への路線があったと聞いている)

アクセスに路線バスを使う人は少ない高速バスの時刻が近付くとご覧の通り

ここも北条と同じく、というか、北条よりも市街地の続きに位置する場所にインターがあり、また、市街地の規模もまとまっているので、バスを降りてすぐ街に出ると言う感覚です。
姫路鳥取線の整備が進まず、鳥取へのルートはR373とともに一般道が担っていることから、山崎の街はR29のロードサイドと地元の商業集積が重なる形となっており、なかなかの街と言えます。

インターの傍には市街地が広がる

なお、津山から来たバスがここでまとまった乗車を見ることも多いことから、この先北条、滝野社での満員お断りを避けるために、インターを出たところにある神姫バスの車庫から急遽山崎始発の続行便を仕立てるケースもあるようです。それでも間に合わず、本来違法の立席乗車を黙認してしまい、問題になったことは記憶に新しいです。

インター脇には神姫バスの車庫がある


●バスが当たり前に使われている街
これら3つの停留所に共通するのは、特に目新しい策を取っているでもなく、ハコものを作っているでもないのに、しっかり使われていると言うことです。
特にパークアンドライドが無いことは注目すべき点ですが、一方でバス停と市街地の近さや、バスのフリークェンシー、自由乗降制という気軽さに負う面も大きいです。

さらにバスが街の顔として機能しています。メインのアクセスとして定着している滝野社、さらに鉄道と言うものがこれまで存在しなかったにもかかわらず拠点性のある街として機能してきた山崎の存在は、バスと言う交通機関では頼りない、バスがメインの交通機関では街が寂れると言った感情論に対する回答になるでしょう。

山崎市街地のR29




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