このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
バスという交通モードの高度化を考える〜その8
神戸の近郊高速バスを見る
三宮に到着したウッディエクスプレス |
※写真は2008年8月、9月、10月、12月および2009年12月撮影
第8回目は神戸における近郊高速バスの状況を取り上げます。
六甲山が大阪湾に迫る細長い地形の神戸市街。そこにJR、阪急、阪神など鉄道が路線を持つこの街は道路事情も必ずしもよくなく、バスの利便性は高くないように見えます。
しかし、開発余地が少ない表六甲に対し、六甲山の反対側、いわゆる裏六甲の開発を進めることで神戸市は更なる発展をしてきました。
こうした裏六甲の住宅街の足は西神、北須磨地区が市営地下鉄である以外は、新開地を起点に六甲山系を越え、鈴蘭台から東西へ伸びる神戸電鉄が担ってきましたが、近年バスの伸張が著しいです。
これは六甲山を貫くバイパス道路の開通に加え、新規の道路が通しにくい表六甲を諦めて、裏六甲に通過流動を担う道路が相次いで整備されたことで、都心から六甲山をぶち抜き、裏六甲の高速道路網に接続する道路網が成立したことが大きいです。
これにより、三宮から北摂、東播方面への「高速バス」が花開き、さらに通過流動がこれらの道路網にシフトしたことや、ETCの普及で本線料金所の渋滞が減少するなど従来の高速道路の負荷が下がったことから、垂水区では従来の高速道路経由の「高速バス」も発展したのです。
今回はこうした近郊高速バスについて、試乗記をベースにレポートします。
●三ノ宮ダイレクトアクセス
兵庫県の県都である神戸市、その中心街である三ノ宮からはもともと各地へ向かう長距離バスが出発していました。その大半を担うのは神姫バス。JR神戸線大阪寄りにある高架下の三ノ宮バスターミナルを拠点に、かつては柏原(氷上)、篠山など丹波方面も含めた長距離路線を運行していました。
旧氷上郡や加東郡などの諸市町村との都市間輸送の色彩が強かったこれらの路線は、90年代後半、JR宝塚線の輸送改善や舞鶴道(現舞鶴若狭道)の整備に伴うモータリゼーションの進行、またそれに伴う第二神明道路の渋滞激化により姿を消してきましたが、こうした路線の神戸寄りにあたる三田市や三木市エリアにおいて新しい流動が目立ってきました。
通勤圏の拡大や、北摂ニュータウンなどの住宅地の開発もあり、都市間輸送ではなく大都市圏におけるベッドタウン輸送という性格がそれであり、1999年に柏原急行線が廃止になったのと時を同じくして、現在の北摂ニュータウンを地盤とする三田特急の体制が姿を現しました。
郊外の住宅地をこまめに回り、整備された高規格な有料道路を使って三ノ宮へ一気に結ぶやり方は利用者の支持を集め、2001年には三木市志染町エリアの住宅街と三ノ宮を結ぶ恵比須快速が登場し、瞬く間に運行回数を増やしています。
この2路線に加え、往年の都市間路線の末裔とも言える西脇急行が三木市旧市街、小野市をターゲットとしていましたが、1999年にこれまでの第二神明玉津IC経由から三田特急と同様新神戸トンネルのルートの新設、移行により、近郊高速路線としての色彩を強めており(ただし現在の新神戸トンネル、御坂経由は新神戸トンネル以外は総て一般道路経由)、2003年の玉津経由便の廃止以降はこれら3路線を総称して「三ノ宮ダイレクトアクセス3路線」と言われるようになりました。
●近郊高速バスの伸長と並行鉄道の苦境
「三ノ宮ダイレクトアクセス」のカバー範囲は神戸電鉄の路線網とほぼ重なるわけで、特に粟生線は木幡から緑が丘と恵比須が恵比須快速、恵比須から小野までが西脇急行と念の入った併走となっています。
その影響は大きく、2003年、神戸電鉄は山陽電鉄、神戸高速との3社で地元自治体との間で「活性化協議会」を持ったのに加え、特に状況の厳しい粟生線に関しては2008年より独自の活性化協議会を持つなど、「準大手」私鉄の基幹路線の一つでありながら厳しい状況に追い込まれています。
一方で2004年7月に開業した山陽電鉄の三宮ー垂水高速線も神姫バス同様の近郊高速路線と捉えられがちですが、京成バスの「マイタウンダイレクト」と同様、バスと鉄道の乗り換えに対して直行便を提供するというコンセプトに基づいています。
バスのターミナルから都心までの鉄道輸送も山陽電鉄が担っているが、JRに完敗というところも京成のそれと似ていますが、山陽電鉄の近郊高速バスは鉄道路線を食うというより、補完的立場という位置付けになっているところが神姫バスとの違いといえます。
その意味で山陽電鉄の「活性化協議会」入りは、JR、特に新快速との競争によるものが大きく、この点も神戸電鉄との違いです。
なお、神戸電鉄の苦境という意味では、ライバルは神姫バスの近郊高速バスだけではありません。
今回のレポートの範囲外ですが、新神戸トンネル経由のバスとしては老舗である、有名な三宮−神戸北町の神戸市バス急行64系統が山の街から箕谷にかけてのエリアの西側をカバーしてます。
そのほか神戸市バスは旧西神戸有料道路経由で神戸駅とひよどり台、しあわせの村、西鈴蘭台駅を結んでおり(ひよどり台まで毎時4〜6本見当、西鈴蘭台は毎時2本見当)、これが鵯越、西鈴蘭台をカバーしていますし、特にひよどり台(鵯越の少し先)は市内均一区間です。
急行64系統。通常より長尺の「流星号」を使用 |
有馬温泉方面も新神戸トンネル、有馬街道経由の一般路線バス(阪急、神姫)が敬老優待乗車証利用者を中心に人気を集めており、また、観光客には阪神高速経由の西日本JRバスもあります。
この方面は特に北神急行経由の割高感が競争力を削ぐ結果となっており、粟生線方面も含めて藤原台(岡場)周辺以外は総て有力な並行バス路線を抱える結果となっています。
●三田特急を見る
さて、今となっては「昔語り」のきらいは否めませんが、神戸在住の最末期である2008年8月下旬に、これらの近郊高速バスを平日朝ラッシュ時に試乗してみました。
日中のお出かけ需要、夜のライナー的需要については定時性よりもシームレス、着席確保といった快適性が前面に出ますが、こうした時間帯については何回か試乗もしていますし、神戸時代、また離れてからも折に触れて三宮で実態を見る機会があります。
そうした中でやはり一番興味あるのが時間的制約が課せられている朝ラッシュです。
これらの近郊高速バスが主役に躍り出るには、どうしても朝ラッシュ時の支持を得る必要があるわけですが、それが実現していると見られる状況の実態はどうなのかを見てきました。
なお、夏休み期間で学生の利用が無いことと、逆にお出かけ需要が若干多くなっているなど通常の平日とは異なる様相を見せている可能性はありますが、試乗した実見としては特殊性はあまり感じられなかったです。
また、その後も神戸を訪れる機会が多く、好むと好まないとにかかわらず朝の三宮でこれら近郊高速バスの到着を見ていますが、実態に大きな変化があるようには見えないので、2年経った今でも通用する内容かと思います。
三宮に続々到着 |
では試乗記に入りますが、そのトップバッターとなったのは三田特急です。
三田側では特急38系統として系統番号を持っていますが、バス停や路線図の小さな表示に留まっており、一般路線バスと違う特急便に対して系統番号を意識している人がどれだけいるのでしょうか。
試乗区間は神鉄公園都市線ウッディタウン駅最寄りのセンチュリープラザから三ノ宮まで。
三田特急の運行はフラワータウンまでは共通で、そこから三田駅に向かう系統と、南ウッディタウンにある、えるむプラザを経てカルチャータウン、ゆりのき台やつつじが丘に向かう系統に分かれるのですが、朝ラッシュ時は、えるむプラザ−新神戸駅間無停車のウッディエクスプレスが走ることもあり、えるむプラザ以遠からの様子を見ることにしました。
ウッディエクスプレス |
当時の最寄りの摂津本山からJR神戸線の始発に乗り、尼崎でJR宝塚線に乗り換えて三田へ。
公園都市線に乗り換えてウッディタウンに向かうのですが、後続の新開地行きの急行など神鉄は空いています。すれ違う新開地からの三田行きは混み合っており、三田口では谷上、新開地方面が完全に「逆ラッシュ」という状況に神鉄のポジションが垣間見えます。ちなみに当時の実見では、田尾寺が「分水嶺」となっている印象を受けており、神戸を向いているのが藤原台だけということに厳しさを感じています。
いわんや北摂三田ニュータウンとなると三田経由一択に近く、三田線から公園都市線が分かれる横山でウッディタウンからの三田行きと交換しましたが、混み合う三田行きから急行新開地行きへ乗り継ぐべく降りた客は10人前後というのが現実です。
この行列は全員新三田行きに... |
ウッディタウン中央で下車し、少し歩いてマイカルのところにあるセンチュリープラザ前6時44分発の三ノ宮行きに乗車。
このあと7時台に入るとウッディエクスプレスになり、その時間帯がピークなんですが、これだとバスが遅れたりすると会社に遅刻する危険性があり、ピーク前の試乗で妥協しています。
バス停には7人ほどが行列しており、やはり高速バス志向は強い、と得心しかけたんですが全員新三田行きに乗車。三ノ宮行きに乗ったのは私だけで、ゆりのき台方面からの乗客も3人と寂しいスタートでした。
しかし次の住宅展示場前で4人、えるむプラザで6人、フラワータウンセンター(駅前)で11人、住宅街の狭間が丘、弥生が丘でそれぞれ7人ずつと都合39人となって六甲北有料道路に入ったのです。
三ノ宮行きが到着 |
この当時で6〜7時台は10分ヘッド、ピーク時には3本のウッディエクスプレスが追加になるなかで、続行便がなくても本便だけで約40人が乗っているわけです。
ということはピーク1時間で約350人が三ノ宮に向かう計算で、実は異動後は逆に神戸に宿泊出張をする機会が多く、朝三ノ宮で近郊高速バスの到着を見る機会に恵まれているのですが、8時前後にウッディエクスプレスと三田駅方面始発の通常便がどちらもほぼ満席で到着するのを見ていることからもこの数字に近い実績が推定できます。
※最新ダイヤでは三宮到着ベースで7時12分から9時13分までの2時間10分に一般特急が10分ヘッド13本、ウッディエクスプレスが10〜30分ヘッド(ピーク時は10分ヘッド)で6本の設定。ピーク1時間の本数は上記と同じ。
一方でピーク1時間に4本しかない公園都市線からの神鉄利用を想定すると、横山での乗り換え状況が上記の通りですから神鉄の厳しさが募ります。試乗時も三田特急の乗客の大半がニコパ(ICカード)ですから、その常連振りが窺えますし。
道路は特に渋滞も無かったですが、新神戸駅での取り回しに時間を食うのがネックでしょうか。
2人の降車に5分はかかった勘定。新神戸通過の恵比須快速は便によっては新神戸TNの南端の三ノ宮に近い出口を使うだけに時間差が目立ちます。
7時45分頃に三ノ宮着。ちょうど恵比須快速と淡河・吉川線が後に続いての到着。恵比須快速もほぼ満席。驚いたのは淡河・吉川線が30人は乗っており、非常に中途半端な3往復の設定(通勤対応の復路が事実上無い)で、県の補助が出るような路線でのこの利用、実態が知りたいですが、もう時間がありません。
(この折り返しとなる8時30分発を見ることが多いですが、概ね10人前後の乗車があり、これも不思議です)
三宮に到着。隣の急行車は吉川からの便 |
●恵比須快速を見る
二番バッターは恵比須快速です。
三田特急試乗の翌朝、恵比須への道は阪神に乗って新開地から神鉄、というと簡単そうですが、直特が無く、高速神戸まで普通に乗り通し、そこから阪急車で新開地へ。実は阪急車が出る寸前、梅田方面行きホームにいた山陽車が新開地まで回送され、大開以西への客は新開地でこの電車に乗り換えになります。
高速神戸の東側に引上線が無いため、同一ホーム乗り換えを確保するために山陽車は高速神戸−新開地を回送するケースが多いのですが(東行き高速神戸止め→回送して新開地始発西行き、東行き新開地止め→回送して高速神戸始発西行き)、階段乗り換えの代わりに乗り換え回数が増えるというのも微妙です。高速神戸では阪急車が待っておらずホームで少し待たされましたし。
ようやく乗り継いだ神鉄も三田行きなので鈴蘭台で粟生行きに乗り換え。
時折居眠りしながら恵比須に向かいますが、この時間、対向の電車は志染を出てもまだ空席がけっこうあるようです。
恵比須からは恵比須快速。6時50分発の三ノ宮行き。乗客はあと1人だけ、と思いきや、乗り間違えのようで慌てて降りていきましたが、ロータリーの乗り場から出るのは三木鉄道代行バスとコミバス程度のはずで、どこに行くんでしょうか。
恵比須で出発を待つ三ノ宮行き |
私1人と寂しいスタートですが、まあ恵比須から三ノ宮は県道のバス停から西脇急行のほうが速いので日頃から少ないのです。折り返し場所確保のための回送のような格好ですが、一時期三木市役所経由で三木営業所まで延長していたのに定着せず廃止されたのは、三木中心街の需要はやはり西脇急行なのでしょう。
恵比須快速の需要の本命は三木市志染町の住宅街。自由が丘の住宅地に入ると乗ってきます。自由が丘地区で19人、緑が丘地区で7人、その後神鉄とガチンコ勝負となる緑が丘〜木幡の各駅前で18人(ただし緑が丘駅で2人、押部谷駅で1人下車)と、私以外に41人が三ノ宮に向かいました。
こちらも10分ヘッドでの数字ですが、三田特急と違うのは神鉄も存在感があることでしょうか。
緑が丘を出たのは7時10分頃ですが、7時13分緑が丘発の神鉄を待つ乗客がホームに50人くらい。こちらはこの時間帯約10分ヘッドと本数も互角ですから、鈴蘭台や神戸駅近辺などへの需要を含むと見ても、まだまだ恵比須快速は及ばない感じです。
ちなみにこの電車に追い抜かれましたが、緑が丘−押部谷で5連の座席定員ちょうどくらい(立客が全部で10人くらい)の乗客でした。
非冷房車が行く... |
余談ですが、5連の先頭2両は非冷房車。2009年3月に運用離脱するまで大手、準大手でも稀有、というか、大都市通勤路線では最後の非冷房車といえる存在でした。
この電車を緑が丘のホームの真横で到着するのが見えたんですが、押部谷手前まで抜けません。しかも停車中に(こっちも客扱いしたのに)抜き返すと、神鉄はなかなか追いつかず、結局栄駅前で7人乗せている間にようやく突き放されました。
緑が丘−木幡間の県道はグタグタで、今朝もノロノロだったのに、それをなかなか抜けない神鉄のレベルというのもひどいもんです。
木幡からは道路のレベルが良くなり、藍那から阪高、箕谷から新神戸TNへ。道路は順調です。
昨日見た恵比須快速(おそらく1本前)はTN最南端の出口を使っていたのに、本便は手前の神若出口を利用。三ノ宮到着は定刻7時55分の少し前でした。
到着時、前に2台三田特急らしき車両が。両方とも満席かそれに近い状況です。
まさか続行便?と思ったんですが、前が前日試乗の1本後の神戸空港行き、後ろがさらに10分後のウッディエクスプレスで、どちらも定刻。昨日私を除いて13人しか乗らなかったえるむプラザまでの各停留所から、20分後の直行便だと約40人は乗ったことになります。
●垂水高速を見る
神姫バスの取り組みを見た後、最後は神戸山陽バスの三宮垂水線です。
2004年、垂水区の住宅街から第二神明、阪神高速経由で三宮を結ぶ路線が開設されました。
当初は今の舞子高校系統に近い名谷IC経由のコースと、清水が丘車庫から高丸IC経由のコースの2路線で、特に後者は車庫から最寄のICへ直行という、徳島系統の出庫回送を客扱いした感がありありとしていましたが、名谷IC経由に統合され、さらに高丸IC経由の多聞団地系統が設定され、住宅街から三宮都心へのダイレクトアクセスへの特化が鮮明になっています。
こちらは鉄道と真っ向勝負となっている神姫バスと違い、鉄道利用だと乗り換えになる都心直行サービスを打ち出しており、いわば手段の多様化といえます。鉄道とバスが同一事業者であり、競合よりも補完といえます。
設定当初は「黄色い山陽バス」の一般車のうち明石海峡シャトルなどにも使われるシートベルト付き車両も充当されており、バス停に「高速系統は黄色いバスであっても立席不可」という表示がありましたが、神戸山陽バスに移管されて、高速車専用になったため、「黄色い高速バス」は昔語りになっています。
実は当時試乗した際、まさにその「黄色い高速バス」がやってきており、一般車から見る高速道路の車窓という得がたい体験をしています。
さてその試乗ですが、神姫バスより短距離の路線なので、やや遅く摂津本山6時少し前の加古川行きでスタートして垂水へ。7時前というのに早くも満員のバスから連綿と通勤客が歩いてくる垂水東口から学園都市駅行きの山陽バスに乗車しました。
垂水東口にて |
垂水口では一見逆方向に見えて、地下鉄沿線、西神方面への通勤通学需要も大きいようで、垂水東口始発での乗車もありましたが、驚いたことに最初の停留所から乗り込みがどんどんあります。垂水JCTのあたりまで来ると垂水、舞子、学園都市、名谷と各方向への黄色いバスや共通運行の神戸市バスが入り乱れ、両方向ともよく乗っており、まさに金城湯池、山陽バスの効率のよさが見えます。
学園都市から真っ直ぐ下がってきたところにある学が丘(まなびがおか)で下車。舞子高校からのバスを待ちます。
一般路線にも5人10人とどんどん乗る中、7時16分発の三宮行きは6人の乗客で到着。学が丘は私以外に4人乗車です。
学が丘に到着した三宮行き |
結果から言うと、垂水JCTそばの中山西口までの5箇所での乗車が私を除いて27人。谷を挟んでつつじ
が丘に入り、最初のつつじが丘で大量14人。2丁目、3丁目を合わせたつつじが丘地区合計では26人。既に補助席を使っています。
そして桃山台に入っての桃山台3丁目の6人で補助席まで入れての60人。満席になりました。
運転手は無線で満席になった旨を営業所に通告。桃山台3丁目はちょうど過不足無く乗り切りましたが、このあと桃山台、桃山台南口で4人ずつ8人は満員お断り。7分後(さらにその3分後にもある)に乗るように案内してましたが、補助席まで埋まり、さらに満員お断りとは驚きました。
この便は前から26分空いてるから、という事情もあるのでしょうが、ちょうど学が丘までの道中ですれ違ったその26分前の便は、さらのその前から5分後の便ですが、この便と比べて有意に空いてるようでもなかったです。
ダイヤを見ると、30〜40分ヘッドのところに、平日のみ1〜3本続行もしくは先行便を入れて対応しているようです。
それでも通勤にぴったりの三宮に7時〜8時半までに到着する便は5便しかなく、一般バスの怒涛の輸送量に比べたらわずかというのが、このエリアの事情であり、神姫バスに対峙する神鉄との違いです。
(直近ではつつじが丘始発便が設定されるなど、7時〜8時半までの三宮到着便が8本に増発されています)
余談ですが山陽バスというと満員お断りがかつては日常茶飯事で、道路事情が悪くツーマン専用路線だった商大筋の路線、特に上高丸団地からの路線はその常連。車掌の手配が出来ず増発が困難だった事情もありますが、垂水駅に近い(といっても歩けば15分以上かかる)エリアでは「朝のバスは乗れないもの」という認識が定着していたと聞いています。
バスは桃山台をあとにすると名谷ICから第二神明へ。7時35分の通過。柳原→生田川4km渋滞の表示がありましたが、結局柳原からの状況は「混雑」レベル。須磨TBも順調で、京橋通過が7時51分、三宮到着は7分早い7時59分でした。
三宮に到着した垂水高速 |
学が丘から垂水まで「定刻で」20分200円ということを考えると、三宮までこの時間で400円は割安です。開業当初は確か480円であり、値下げも利用促進に奏功しています。
道理事情に関しては、第二神明、阪神高速の渋滞は心配ですが、垂水へ向かう商大筋はこれも渋滞が日常茶飯事です。山陽にとっては、鉄道連絡とはいえってもどうせ垂水や舞子から乗るのはJRなら、自社に400円落ちる高速バスのほうがいいということなんでしょう。
道路事情も今日がたまたま、かもしれませんが、これならある程度渋滞しても許容範囲です。しかし時には事故などが絡んでの大渋滞で、桃山台での集客後、多井畑から白川を通って山麓バイパスに大迂回するようなこともあり、これは実際に体験したこともあるだけに油断はなりませんが。
積み残しが出ている需要、さらには一般路線からの転移を考えると増発しても十分採算は取れそうですが、三宮がBTに入れず路上停留所なので待機できないため、闇雲に増やせないようです。
実は最近も夜の舞子高校行きに試乗しましたが、桃山台地区の降車も多く、朝はどうせ乗れないからと断念している層も少なくないでしょう。
また、つつじが丘地区では補助席使用を避けたのか次便待ちの客も10人ほどいましたし、まだまだ掘り起こしきれていない需要はありそうです。
夜の舞子高校行き |
●定着と展開
どうしても片輸送になりがちなこの手の近郊高速バスですが、神戸山陽バスは都市間高速バスとの共通運用や回送代わりということで効率性を確保しています。(当初は回送の有効活用だったので、それに比べると近郊高速が本務になっていますが)
そして神姫バスの「三宮ダイレクトアクセス」も、恵比須快速の場合は木津の手前にある神戸複合産業団地へのアクセスとすることで、少しでも反対方向の輸送を取り込もうとしています。(どのくらい利用されているかは未見ですが)
その中でも三田特急の取り組みは著しく、休日の場合、六甲北有料道路沿いにある神戸フラワーフルーツパークへ立ち寄る便を設定したり、イオンモールや神戸三田プレミアムアウトレット立ち寄り便を設定するなど、逆方向需要の掘り起こしがありますが、まあこちらはそれが為に周辺渋滞に巻き込まれるといった副作用も目に付いたため、イオンモールおよびアウトレット行きは専用系統に分離しています。(見方を変えれば、三田系統と分離できるほど需要を掘り起こしたという証左です)
しかしそうした中で特徴的なのは、北摂ニュータウン(カルチャータウン)にある関西学院大学神戸三田キャンパスへの通学輸送でしょう。
ゆりのき台系統の終点近くにあるこのキャンパスへの輸送を担うことで、非常に効率的な両方向輸送が成立しています。
関学エクスプレス (撮影日は休講なのか乗客はわずかでした) |
神戸三田キャンパスの開校は1995年ですが、三田特急による通学輸送が本格化したのはカルチャータウンへの三田特急が設定された2000年です。
その後ノンストップ便の「関学エクスプレス」が設定され、関学生専用のICカード「関学Nicopa」を用いると半額の400円で乗車可能といったサポートもあります。
朝の「関学エクスプレス」は2台口で運転される便が3組あるなど(特に8時前の便は新神戸駅経由が2台口、直通が2台口の実質4台口)、その他明らかに関学輸送を本務とするカルチャータウン学園7丁目行きの下り「ウッディエクスプレス」の設定があり(上りの「ウッディエクスプレス」は学園7丁目発とガーデンタウンつつじが丘発に分かれている)、その多くが学生を満載して運行しているのを見ると、神鉄の輸送量はおろか、輸送力すら凌駕しかねない規模になっています。
輸送力の増加に対しては、都市高速、一般有料とはいえ実質的に高速道路を経由するということもあり、立席を認めないことから、神姫バスではかつては座席定員が30数人の前後扉の急行車を専らにしていたり、神戸山陽バスも初期の山陽電鉄直営時代には先述の通り一般路線車(ただしシートベルト付)を充当していましたが、座席定員が多いトップドアの高速車に替わっていますし、便によっては続行便の設定もあるようです。
三田-美奈木台線用のバスも応援に就く |
そうした取り組みの中で、唯一うまく行っていないのは神戸空港リムジンとしての利用。
上記の恵比須快速試乗時に三ノ宮で見かけた神戸空港行きで空港へ向かったのはわずか1人。その後も朝の空港直行便は無人もしくは多くて3人程度であり、西脇急行の空港乗り入れは2009年9月をもって休止しています。
消えた西脇急行の神戸空港行き |
また神戸山陽バスも大規模に空港に乗り入れ、こちらは神姫バスよりも利用が付いたように見えたんですが、2009年11月の改正で一気に1往復(早朝の空港行き、夜半の空港発のみ)に減便されてしまっています。
このあたり、空港6時半着の神戸山陽バスの残った1便はともかく、神姫バスの場合、三田特急が8時15分に神戸空港に着いても9時過ぎの羽田行きくらいで、羽田、新千歳(旭川)、那覇、茨城の朝便が出た後なのです。恵比須快速にいたっては昼前後の到着しかないわけで、どうせなら三田特急や恵比須快速の初便(始発便の三宮到着は三田特急6時43分、恵比須快速6時53分)を延長すればかなり違います。
逆に空港発は神姫バス、神戸山陽バスとも各方面からの最終便を受ける格好で21時台後半から22時過ぎにかけての設定があるのですが。
朝の空港行き三田特急は中途半端 |
●競争か共存か
金城湯池を地で行く独占エリアを抱え、鉄道と十分に共存出来る神戸山陽バスに対し、神姫バスの攻勢に晒される神鉄は特に粟生線に関してその存続が取り沙汰される事態になっています。
神姫バスが根こそぎ神鉄の需要を奪っていくやり方には、良いとこ取りだという批判も根強いわけですが、では神鉄が神姫バスの攻勢を受けるまでの間、どういう改善を行ってきたのか。特に投資が必要なハード面のみならず、2010年まで非冷房車が残っていたことに代表されるようにソフト面での取り組みでも目立ったものがないだけに、沿線の交通手段のレベルアップに貢献した神姫バスを批判することは、利用者の立場を考えていないといえます。
特にレベルアップとしての取り組みとしてはこれら「三ノ宮ダイレクトアクセス」だけでなく、上限定期運賃制度(全線フリー定期券の金額に達したら自動的に全線フリー定期になる)というように、バスはどうしても高くて、という印象を払拭する施策を打ち出しています。
(関東圏と違い、バスも6ヶ月定期の設定があることもサービスの比較という意味では重要)
こうした施策の結果、粟生線沿線においては、恵比須快速や西脇急行のみならず、西神中央行きの路線バスの人気も高く、その分担率を考えたら、神姫バスの輸送量は神鉄に拮抗、あるいは凌駕しているともいえるわけで、未改良の並行道路の改良や地下鉄駅への道路の整備をセットにして、神姫バスを公共交通の主力として据えてしまうという選択肢も十分可能なことなのです。
もちろん神鉄がなければ北区内の移動などを中心に影響は大きいので、神姫バスに総てを任せるという選択肢はないのですが、少なくとも現状では神鉄を守るために神姫バスのサービスを見直す(悪化させる)という選択肢は利用者の理解を全く得ることはないでしょう。
そう考えたとき、鉄道をメインの交通機関として、福祉的対応としてバス路線の最低限の確保を行政が支援する、というありがちな構図の真逆として、バスをメインとして、鉄道を行政が支援するという発想の逆転もあるわけです。
そういう意味では、神戸の近郊高速バスはいろいろな面で、鉄道とバスに抱くイメージ、また「序列」に対する固定概念を打ち破る存在となり得ますし、交通モードの選択に関して白紙で考える機会を与えてくれる存在かもしれません。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |