このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
バスという交通モードの高度化を考える〜その5
神戸三宮・宿願のバスターミナルの幻滅
発車を待つ岡山行き |
※写真は2006年10月および11月撮影
2007年9月3日 補筆
※補筆の写真は2007年9月撮影
第5回目は11月26日に開業したばかりの神戸の三宮バスターミナルです。
150万都市神戸の中心である三宮は、鉄道各線が集中し、バス路線も集中する交通の拠点でもありますが、これまで統一したバスターミナルがありませんでした。
市や事業者にも何とかしようと言う意思はあったようで、各社局を横断した協議会を設けて検討していましたが、今回神戸初の本格バスターミナルと言うふれこみで三宮バスターミナルが完成しました。
阪神淡路大震災により駅前の一等地にあった商業施設の全壊後、長らく平面駐車場として利用されていた事実上の未利用地の開発がこの時期までかかったことでバスターミナル計画を織り込めたと言う特殊事情はありますが、既に多くの先達が供用されているなかで、後発である三宮への期待があったことは事実です。
しかし、開業からまだ数日ではありますが、既にお手本となるべきバスターミナルがいくつもある中で、この程度では、というのが率直な感想です。今回は「高度化を考える」と言うテーマですが、どちらかと言うと反面教師として取り上げます。
かつてのJR系乗り場の喧騒(ミント開業後) ※高松行きは神姫バスもJR系乗り場から出発 |
神戸の中心である三宮には市内、近郊、長距離と多くのバス路線が集まって来ますが、しかしJR、阪急、阪神、地下鉄各駅の集まるその中心には、従来バスターミナルが事実上ありませんでした。
唯一JRの大阪寄りの高架下に、神姫バスのターミナルがありましたが、戦前製の古い高架下ゆえ、柱の間の空間にバスが2台ずつ8列入る様はとてもいまどきのターミナルとはいえません。
また駅の南側にある小ロータリーにJRバスの乗り場がありましたが、これも屋根こそありますが路上停留所に毛が生えたようなものでした。
神姫バス三ノ宮バスターミナル |
それでも専用の乗り場があるだけマシで、市バスの大半、またJRとも神姫とも組んでいない長距離バス、市内観光のシティ・ループ、ホテル送迎バスにリムジンバスと、三宮のあちこちの路上停留所を「拠点」にしており、中には少し離れた観光バスステーションで発着していた系統もあるほどでした。
今回新設された三宮バスターミナルは、三宮の新しい顔、ミント神戸の1階にあります。
震災で全壊し、解体を余儀なくされた神戸新聞会館が実に11年ぶりに復活したのがミント神戸ですが、駅前の一等地にこれまでなかった「本格バスターミナル設置」という報道に、ようやくとの思いと期待が湧きました。
ミント神戸は10月4日にオープンしており、バスターミナルの開業が2月近く遅れたのはいささか不細工でした。オープン時にはターミナルのブース等は見えており、思ったよりも小ぶりな施設と、結局神姫バスターミナルとの併用、さらに路上停留所利用系統も少なからず残るということで、期待がかなりしぼんだのも事実です。
その後、ミント側のブースを暫定使用したりして、開業を迎えたのです。
ミント開業後しばらくはこんな感じ |
●バスターミナルを見る
JR駅側から向かってみましょう。
ポートライナーへの上り口の裏にあったチケットセンターは、バスターミナルへの移転とともに閉鎖されています。新しいバスターミナルへの案内と同時に、今回神姫バスターミナルへの案内も併記されるようになっています。
直進は神姫、三宮バスターミナルは右斜めへ | 閉鎖されたJRバスチケットセンター |
斜めに進み、ミント2Fへのエスカレーターを交わすとバスターミナル。ビルを斜めに欠き取るような感じでバス乗り場がしつらえてあります。乗り場は屋外になってますが、入口に向かうと「ミント」をイメージしたのか薄緑色のビルが間近で見るとちょっと殺風景な感じになっています。
また、カウンターなどの配置の関係と、手前のミント地下への入口や吹き抜けの存在が間口が狭く見せているのも損をしています。
ターミナル入口 |
中に入ると右手にカウンター。コーナーにあるカウンターはL字型の2面をJR系と日本交通系に分かれて使っています。
ターミナル横付けの乗り場は4〜8の5面で、4番が市内(季節運行の森林植物園)、シティ・ループ、有馬温泉行き、5番が淡路島、6番が四国、7番が山陽、山陰や名古屋など長距離と夜行、8番がホテル送迎バスとなっています。
チケットカウンター。左がJR 、右が日交 |
ホテル送迎バスが1ブース占用しているのは厚遇のように見えますが、4ホテルで3系統のホテルバスの発着は最大で毎時11本にのぼっており、これは止むを得ないところです。
待合室は中央幹線(駅前を東西に走る大通り)寄り。ガラス越しに通りが見えますが、通り正面のミントへの出入口との間に扉はなくガラスの壁。東西の脇経由になるのは分かりにくいです。
発車を待つ名古屋行き |
●バスターミナルの問題点
上記のカウンター回りで、行先や料金などカウンターにおなじみの表示が一切無く、とってつけたような張り紙で案内しているのは不親切です。カウンターも事実上1口ずつで、購入者が多くなると滞りがちです。JR系には自由席制のバス用に券売機もありますが、これも目立ちません。
カウンターの識別は張り紙だけ |
また、これまでのJR駅、神姫バスターミナルのどちらにもあった時刻表やパンフレットの類もなく、これから乗る、購入するバスの情報が発車時刻以外全くわかりません。
その発車時刻ですら、神姫バスターミナルのように乗り場と行先、時刻をしるした電光掲示があるわけでもなく、乗り場単位にまとめてある時刻表が1箇所あるだけというのも分かりづらく、待合室からは時刻表も時計も見えないというのも問題でしょう。
神姫バスターミナル。正面に発車案内 |
あと問題なのは運行会社の表記で、神戸側事業者のみの表記。神戸側事業者が参入していない相手方の単独運行の場合は記載してありますが、共同運行の場合、例えば淡路、四国方面は西日本JRバスとしか書いておらず、本四海峡バスやJR四国バスは出てきません。
これでは神戸から「帰る」乗客には非常に不親切でしょう。彼らは西日本JRバスで来たのではなく、馴染みの地元側のバスで来たつもりですから。
そのくせ、有馬温泉系統についてはターミナル内の時刻表は神姫バスのみの表示なのに、停留所の表示はシールで阪急バスを併記するように修正されています。「有力企業」である阪急からのクレームでしょうが、ここに対応するよりも、淡路島や四国など高速バス系統へ対応するほうが先です。
時刻表コーナー |
また、細かい話ですが、四国行き乗り場の行先を見ると「高松」と「高松フェリー乗り場」の二つあります。
これは似ているようで全然違うわけで、「高松」は本物の四国高松ですが、「高松フェリー乗り場」は、高松港行きのフェリーが出る神戸港新港第三突堤までの連絡バスなのです。
これは本来4番乗り場から出すべきバスであり、6番から出したら非常に紛らわしいです。もちろんバスの車種は全然違うでしょうし、近接する時間帯に出るケースはわずかですが、素人にはその違いで識別できるとは限りません。バス停の時刻表が「高松」「高松フェリー乗り場」を一表にまとめてあるのは誤乗を狙う気か、と言いたくなる話ですし、間が悪いことに、「高松」行きのフットバスは、神戸フェリーバスが共同運行しており、神戸フェリーバスは「高松フェリー乗り場」行きの事業者でもあります。事業者が重なっていることからも分かるとおり、実はフェリーとバスの共通乗車券があるのですが、よりによって両系統を同じブースから出すのは問題です。
高松行きの内訳を見ると... |
●「本格」と言うには上げ底のターミナル
メディアでの報道では11ブースを持つとあり、それだけ聞くとかなりの規模を想像します。
しかし実際には建物内部のブースは半分以下の5つ。バス待機場もありません。残る6つはと言うと、ミント開業前から存在する市バス急行64系統や29系統などの2面、ポーアイ二期への交通振興バスの1面の計3面(1〜3)で乗車を扱い、これも以前からあるミント北側の降車ブース2面(10,11)、そして今回整備されたミント東側の降車ブース1面(9)です。
しかも9〜11の降車ブースはミント系統と言うより、神姫バスターミナル到着便が使うブースです。
バスターミナル全体像 |
集約したと言うよりも、既存バス停も取り込んで「ここまでがターミナル」と線を引いた結果の11面と言うのはちと寂しく、路上の長距離便とホテルバスを取り込むのがやっとで、垂水、舞子方面行きの山陽電鉄の高速バスや六甲アイランド行きは引き続き路上ですし、リムジンバスもバスターミナルとはフラワーロードをはさんで正反対の西側の路上のままです。
リムジンバスは路上停留所から |
市バスの一部(7系統など)や阪神バスのように、三宮が途中停留所の系統も路上ですが、これはいったんターミナルに入るロスを考えたら仕方が無いでしょう。
元からある待機場は市バス専用 |
また神姫バスターミナルも引き続き存続し、三田特急、西脇急行、恵比須快速や、淡路、四国方面を中心とする非JR系の系統はこちらがメインです。ただし高松線だけはJRも含めての共同運行のため、三宮バスターミナルから出ます。
神姫三ノ宮名物?の出発シーン 三田特急と恵比須快速が通勤客を満載して発車 |
●今後の課題
インフォメーション関係を中心に、抜本的に見直すべき箇所が多いです。
また、路上発着で残った山陽の垂水、舞子高速を取り込むべきです。
路上発着で残った垂水、舞子高速 |
本来は傾斜地形を生かして2階層のターミナルにすべきであり、1階層だけで待機場もない構造は、何とも中途半端なものを作ったものです。もう少し余裕があれば、神姫のうち淡路、四国系統を持ってきて、高速舞子のようにJR系と垣根なく方面別の案内が出来たのに、と言う悔いが残りますし、リムジンバスもこちらに取り込めました。
構造に関してはミントに間借りしている以上改造の使用がないのですが、今後予想される問題としては、ポートライナー下の通りを通って中央幹線に出る道が混みがちで、かつJRガードの前で西から三宮バスターミナル始発、東から神姫バスターミナル始発が合流するだけに、短いこの区間でバスが滞留してなかなか出られないと言う状況もありえそうです。出発側は2車線あるのですが、大半の系統が左折するので、左側車線に集中しますから。
そしてこれまではJR系はその西側の駅ロータリー出入口から出発していただけに、交通集中が懸念されます。
中央幹線から入る道はこんな感じ (右手のポートライナーの橋脚の反対側は2車線) |
ハード面での手直しが難しい以上、ソフト面でどれだけ挽回できるか。
また、神姫、リムジンとの連携、特に案内面での連携も、必要です。
現状ではハード、ソフト共に非常に辛い点をつけるしかないですが、開業間もない状態ですから、今後こうした問題を早く確実に改善することで、リカバリーショットは可能なのです。
高松からの神姫バスが到着 |
【2007年9月3日 補筆】
開業から9ヶ月あまりが過ぎ、いろいろな評価はありますが、三宮バスターミナルはまずは定着しました。
前回指摘した問題点ですが、かなりの部分が改まった反面、未だに改善されていない部分もあるわけで、まだまだ改善の余地は大きいといわざるを得ません。
まず目立つ改善点としては、カウンター周りで、JR系2口、日本交通系1口の3つの窓口があることが吊り下げられた看板が新設されたことでわかるようになりました。発券端末の都合もあるのでしょうが、方面別ではなく会社別というのは不便なままですが、看板でフォローした格好です。
なお、JR系淡路島方面用の券売機ですがこの日も調子が悪いようで、どうも使われている形跡がありません。
カウンターに看板が出来ました | 文字は小さいですが、行先を網羅した看板(日交系) |
バス乗り場その他の事業者の表示が神戸側事業者だけだった点ですが、これは改善されました。相手方事業者も掲載されるようになっており、共同運行事業者のバスが来ても戸惑うことはなくなりました。
時刻表コーナーの下には時刻表や観光パンフレットのラックが設けられており、利用者が情報を入手できるようになりました。
時刻表コーナーも変わりました |
変わっていないのは四国行きと高松行きフェリー連絡バスが同じ乗り場から出ること。
また、待合室に時刻表関係の情報が一切無いこと。
ターミナル内に方面別もしくは乗り場別の先発バスの情報が無いことを指摘していましたが、これは未だにありません。
ターミナル内に出発便のバスが着くたびに「×番乗り場に、△△行きのバスが到着します」と独特の節回しで、しかし聞きやすいアナウンスが流れていますが、やはりここは表示が一番です。
改善はされましたが、それで都心部のバスターミナルとしては最小限の設備ということは認識すべきでしょう。
未だしの感がある案内関係や、売店や観光案内など、特に淡路島、四国関係のメイン交通機関のターミナルとしては寂しい限りといわざるを得ない部分もあるわけで、神戸の玄関口として更なる改善が望まれます。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |