このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





バスという交通モードの高度化を考える〜その2
広島県北西部のバスの駅などを見る


千代田IC(舞ロードIC千代田)にて


※特記なき写真は2005年4月および9月撮影


第2回目は広島県北西部。中国道や浜田道に関連するバスの駅やIC、高速本線のバスストップを見てみます。
もともと中長距離のバスが定着していた土地柄だけに、高速道に乗せ替えても都市間輸送だけでなく地場の利用も盛んです。
最近では県内大手のバス路線が合理化で廃止され、地元のバス会社や自治体に移管されるケースが相次いでいますが、高速バスなどの幹線バスとの連携を図る拠点としても、「バスの駅」が整備されているようです。

●交通結節点改善事業のモデル事業だが・「大朝駅」
広島県北広島町、合併前の旧大朝町の中心に2003年4月に完成したのが大朝駅です。
いわゆる「バスの駅」と言うスタイルとはちょっと違うイメージで、町役場、現在の北広島町大朝支所と物産館が隣接していますが、基本的にはアイランドタイプのバス乗り場としての整備になっています。
もともと旧国鉄時代からの広浜線と川本本線の分岐点であり、幹線系統とローカル系統の拠点でしたが、JRバスは役場などから少し離れた旧市街にあるJRバスの車庫がある大朝駅を拠点としていました。
2003年3月末で広浜線の大朝以遠が廃止になるまでも支線系統の廃止が進んできた状態で、代替バスとJRバスの連絡に難がありましたが、「大朝駅」を作ることでJRバスや大朝交通(ホープバス)、北広島町営バス、島根県邑南町営バスの結節点として機能させることになりました。(これまでのJRバス大朝駅は大朝車庫と改称)

「大朝駅」JRバス大朝車庫(まだ「大朝駅」の表示が残る)

千代田から浜田へ向かう県道からわずかに入ったところにある大朝駅ですが、尖った塔がアクセントの「駅舎」があり、主要道側には出入口はありますがバス停はありません。
反対側のバス乗り場に総てのバスが発着しますが、駅舎内の案内を見ると、町内各地のバス路線に加え、広島や島根県方面との路線もあり、地域の要衝になっています。
駅車内には売店をかねた出札と待合室、そしてトイレと、コンパクトですが必要なものは揃っている感じであり、大々的な「バスの駅」を整備するまでもないような幹線とローカルの乗り継ぎポイントの標準になる施設です。

2005年6月限りで廃止された江津行きが到着大朝駅の窓口

ただ、せっかく完成した大朝駅ですが、大朝地区の幹線交通の拠点は実はここではなく、少し南に向かった浜田道大朝ICなのです。広島−浜田の高速バスをはじめ、大阪や新宿への高速バスも発着するポイントで、ローカル路線も大朝ICに乗り入れています。

大朝ICバスストップ全景バスストップの裏に広がる駐車場

実際、ICのバス停を降りたところに無料の駐車場が作られ、そこにローカルバスが乗り入れている現実を見ると、P&R拠点ではない今の「大朝駅」を整備するのではなく、そこに「大朝駅」を作ったほうが良かったのではないでしょうか。
さらに悪いことに、2005年6月いっぱいで、広島と江津、大田市を結ぶ高速系統が廃止になってしまい、大朝駅の位置づけは非常に中途半端になっています。

●IC併設型の第1号・「舞ロードIC千代田」
さて浜田道が出来るまではこの地域の高速交通の玄関口は中国道の千代田ICでした。
陰陽連絡の高速バス、さらに三次や庄原、東城への県内高速バスの停車も早くから見られており、2004年4月にバスの駅適用事業として整備された道の駅が「舞ロードIC千代田」です。

舞ロードIC千代田一般道側のバスターミナルを臨む

中国道に多く見られる料金所の出口、入口の間隔を広く取り、そこにUターン路のように高速バスのバス停を置くスタイルであるのが千代田ICのバスストップです。高速バスの対面に一般道側からUターン路のように一般道のバス停を置くスタイルは旧来からありますが、これを改め、ICの横に広い駐車場を持つバスの駅として整備したのが舞ロードです。

実は旧来のスタイルのほうが平面移動だけで事足りるバリアフリーなんですが、P&R対応を重視し、エレベーターを設置してでも敢えて一般道側のバス乗り場を再構築しています。そのため、駐車場と一般バスが発着する側にあるターミナルは大朝よりも本格的な売店を併設したしっかりしたものですが、高速バスの乗り場と完全に分離しています。

高速バス乗り場へは階段かエレベーターでバスの駅内部

なお大朝駅の結節がローカル然としていたのに比べると、ここの結節は、広島−三次などの高速バスに、大朝、八千代、豊平へのローカルとはいえ町の中心を結ぶ幹線的性格を持つ路線が主になっています。
余談ですがJRバスが江津、大田市への高速路線を廃止した際、千代田IC−大朝の便を増発していますが、同区間の区間運転はこれまで大朝交通(ホープバス)の担当だっただけに気になります。

備北交通の高速バスに乗り込む乗客

千代田での高速バスの利用は多く、早い時期からバス停が設けられていたこともあって高速バスの利用が定着しています。かつては通っていた広浜線も、浜田道が千代田の手前で分岐してしまうのでここを通らなくなったのが玉に瑕ですが、浜田道に千代田西バスストップが設けられており、うまく使い分けられているようです。
高速バス乗り場をのぞいて見て驚いたのは、陰陽連絡の長距離系統だけでなく、三次方面の系統も半分近くが高速4号線経由になっていること。西風新都から一気にトンネルで中心街近くまで短絡するこの高速の効果をうかがわせます。

●地域のバス再編で拠点性アップ・「北の関宿」
ここから中国道を三次の方に進んでみましょう。
三次市との間、美土里、高宮、吉田といった自治体がならんでいましたが、これらが合併したのが安芸高田市です。市の中心は吉田。もともと芸備線沿いよりも毛利元就の昔からR54沿いのほうが開けており、地域の拠点でしたが、中国道の開通以降は中国道に近い美土里のポジションも向上しています。

この高田ICを出たところに作られた道の駅併設のバスの駅が「北の関宿 安芸高田」です。
こちらも2004年1月の完成で、道の駅用とバスの駅用の駐車場を分離しており、本格的なバスターミナルを指向しています。また道の駅側の施設が充実していることも特徴で、レトロ調の施設に物販、飲食店とコンビニを備えています。

北の関宿 安芸高田

ところが実はこのバスの駅、当初は旧美土里町の循環バス(円バス)が乗り入れるだけという拠点とは言い難いものでした。中国道の高速バスはもともと高田ICのすこし広島寄り、吉田と美土里を結ぶ県道のそばに設けられた美土里バスストップと、その先三次側に進んだ高宮バスストップに停車しており、P&Rによる利用も順調でした。
この状態でICをいったん出てバスの駅に立ち寄る必要が薄く、かつ時間ロスも大きいため(行楽シーズンには高田ICは広島ニュージーランド村や神楽門前湯治村などのレジャー客で出口渋滞が発生する)、肝心な高速バスが立ち寄らなかったのです。

高田ICの出口渋滞

その後2005年8月に大阪−浜田の高速バスが停車するようになり、11月には三次方面のバスが10往復(うち2往復は神楽門前湯治村行き)立ち寄るようになり、ようやく結節点らしくなってきました。
実はこの変化、高宮や美土里の慢性的なP&R駐車場不足への対応と言うほか、安芸高田市のバス再編が絡んでいます。2005年11月に、中国道の高速バスとR54経由の幹線バスを軸に、吉田と美土里、甲田、高宮の各支所と向原駅を結ぶ市内幹線、これらと周辺地区を結ぶ地区間連絡バスに再編し、それにもれた線区は廃止し、いわゆる交通弱者を対象とした予約制乗合タクシーでカバーすると言う白紙に近い再編です。

これにより吉田と美土里を結ぶ市内幹線バスが高田バスセンター(バスの駅)を経由することになり、旧美土里町時代からの円バスは役目を終えて廃止されましたが、高田のバスの駅が市の中心である吉田と中国道を結ぶ拠点になったわけです。そして高速バスの乗り入れで、ようやくバスの駅らしくなっています。


●旧可部線沿線を見る・「加計バスストップ」「戸河内ICバスセンター」
さて旧可部線廃止区間では、もともと対広島の幹線流動は中国道経由の高速バスがメインでした。
広島から戸河内、益田を結ぶ高速バスが加計バスストップを経て戸河内ICに至っており、戸河内行きは旧戸河内町(現安芸太田町)の中心まで入っていました。

加計BSに着いた石見交通の広益線高速バス加計市街地への乗り継ぎバスの案内

加計バスストップは津浪にあり、R191から徒歩で上る構造で、加計交通のバスが何本かは接続しているものの、基本的にはP&Rもなく、送迎で対応している感じですが、利用は多いです。
一方の戸河内ICバスセンターは「道の駅来夢とごうち」の隣とはいえ、ロータリーと待合室、駐車場だけの簡素な構造ですが、P&Rのほか、旧芸北町(現北広島町)や旧吉和村(現廿日市市)へのローカル路線との接続があり、R191経由の広電バス(広島センター−三段峡)も含めて広島方面との高速バスを乗り継ぐ際には割引制度があるなど、拠点となっています。

戸河内ICバスセンター全景
(2003年8月撮影)
ロータリーと小さな待合室だけのシンプルな造り
(2003年8月撮影)

地形的に苦しい加計BSに対し、戸河内ICバスセンターは余裕があり、かつインターチェンジもあることから、加計や戸河内などからなる安芸太田町の玄関口が戸河内にシフトした格好です。歴史的には加計のほうが要衝であり、かつ広島に近いのに戸河内に取って代わられつつある危機感もあってか、加計BSでのスマートIC社会実験は好調です。


●おまけ・リムジンバスと高速バスの結節点・「高坂パーキングエリア」
広島県北西部から少し離れますが、バスの駅、バスの結節拠点と言う意味では外せないのが高坂パーキングエリア(高坂PA)です。

広島空港が旧本郷町(現三原市)に移転した際にリムジンバスが整備されましたが、需要の太宗を占める広島市内行きに加え、県東部最大の都市である福山行きはそこそこの本数を確保しましたが、その他の県内諸都市向けについては三原・尾道と呉くらいでした。
広島や中筋駅で乗り換えられる県西部や北部はともかく、県中部、東部の対応が難しく、広島まで出たら手戻りにも程がありますし、福山も東に偏りすぎると言うことで対応が難しいエリアでしたが、これを解消したのが、福山行きリムジンに山陽道の高坂PAまで乗せて、広島から来る高速バスに乗り換えるという方策です。

高坂PAのバス乗り場(上り線)(2003年4月撮影)

他の高速バス停と違い、福山リムジンとの乗り換え専用と言う位置づけなので、外部との連絡が全く無い(徒歩でも出られない)と言うのが最大の特徴です。
乗り継ぎが可能なのは尾道・因島、府中・神辺、甲山・甲奴、しまなみ海道経由今治に加え、岡山、鳥取の各系統になっています。
尾道は直行するリムジンがありましたが、三原経由でR2を行くこともあり定時性に難があるため、乗り継ぎ対応になっているようです。

尾道・因島行きの「フラワーライナー」(2003年4月撮影)

パーキングエリア内に待合室付きのバス停があり、バスが接近すると黄色い回転灯がつく簡便的なバスロケがあるのが特徴です。
ただ、鳥取線を除いて自由席制なので満席お断りのリスクがあるわけで、待合室にはタクシーの呼び出し番号が書かれていますが、本郷から呼んで、というのは時間もコストも相当かかりそうです。

以上駆け足ですが広島県北西部のバスの駅を中心に見て回りましたが、もともと「バスどころ」の土地柄に加え、このような施設面でのサポートもあるため、バスが地域の基幹交通として充分に機能しているようです。実際、地域の中心がバスセンターと言うケースも多々見られますし、鉄道沿線よりも発展しているケースもあるのです。





交通論の部屋に戻る


Straphangers' Eyeに戻る


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください