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都市高速「大幅値上げ案」の公表
算定根拠への疑問と懸念される影響



エル・アルコン  2007年9月26日



※この作品は「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。



首都高速、阪神高速の両高速道路会社は、2007年9月20日、21日に相次いで2008年度から実施予定の距離別料金の新料金案を公表しました。
基本的に2005年に公表した距離別料金案、つまり保有機構との合意及び事業許可の内容通り、首都高が210円+31円/km、阪神高速が290円+31円/kmの賃率による24捨25入の50円刻みですが、長距離の値上げ幅に配慮して上限料金(首都高東京区間、阪高東線で1200円、神奈川区間1100円、阪高西区間1000円、阪高南区間600円、埼玉区間550円)を設定すると同時に、短距離の割引も400円(首都高埼玉区間は300円)の下限を設けたことで渋くなっています。

今回の新料金案は、結局現在ある料金ゾーン(首都高=東京、神奈川、埼玉。阪高=阪神東、西、南)は温存し、それぞれのゾーンでターミナルチャージ+距離料金の体系を取ることになっています。
一方で利用距離の中央値をベースに現行料金を単純な距離比例ではない形で配置することで、平均的な利用であれば現状維持になるようになっており、都心部から放射路線間の料金は概ね現状維持となっているようです。特に阪神高速は単純な当てはめでは都心から放射各路線の主要地点までが値上げになっていたのが解消された格好です。

とはいえ通り抜けの場合の値上げ効果は「絶大」であり、東関道から東名の通り抜けや湾岸浮島は1200円と500円の値上げ、千鳥町から湾岸浮島も1100円と400円の値上げです。その先狩場までは950円と350円の値上げですから、東京区間、神奈川区間の通し利用だと850円の値上げになります。
阪高のほうも同様で、大阪空港から松原JCTまでで1150円と450円の値上げ。伊川谷JCTから西宮山口JCTや西宮まで1000円と500円の値上げ。名神から第二神明の通り抜けも850円と350円の値上げですし、通し利用だとりんくうJCTから住吉浜まで2200円と500円の値上げ、りんくうJCTから第二神明までだと2350円と650円の値上げです。

値下げのほうは400円となったことで、現行の特定区間よりも高く、特に200円の特定区間が多数ある阪高の場合、絶対値では200円とはいえ、100%の値上げとなることから、このまま特定区間の設定が無い場合、短距離の値上げという距離別料金導入の謳い文句を覆す意味不明の事態になります。

東大阪線水走


●料金設定などの問題
まず特定区間はどうなるのでしょうか。
首都高の永福−高井戸のように中央道の問題を考慮した特定区間もありますし、阪高の場合は料金境界に隣接する区間などに設定されています。

とはいえ特定区間に相当する距離で現在無割引の区間もあるわけで、そうした区間は400円、特定区間は200円ないし300円と言うような話も距離制料金と言う体系下では整合性が取れません。

エリア別の料金体制を温存し、ターミナルチャージを二度三度と取ることでの割高感は残りますし、そもそも阪高の場合はターミナルチャージが首都高より80円高い設定というのは、またがり利用におけるターミナルチャージの複数支払いを勘案した数字のはずで、それを二度三度と取るのは二重三重ではなく四重六重の徴収です。

あとは複数ルートが選択できる場合の計算方法です。
首都高は最短距離での計算を明記しましたが、阪高はわかりません。距離別の社会実験では一方通行の環状線の通過において、実際に通過できる最短ルートの平均値を採用することで、実際の走行と異なる、最短距離でない距離で計算することになっています。(神戸線・大阪港線→環状線は、阿波座→道頓堀→湊町→本町という1周コースを忠実にトレースする)
これも首都高は理に適っていますが、阪高は建設・設計上の都合による無駄な大回りに料金を払うと言う理不尽な結果になっています。

そしてこれは料金体系とは直接関係ありませんが、料金徴収の問題があります。
今回の距離別料金は入口での最大額徴収と出口ETCによる調整返戻の組み合わせになることが確実ですが、ETCの誤作動発生時などの救済はどうなるのでしょうか。
料金所の場合はその場で止まりブースに申告することが可能ですが、出口や、本線料金所に向かう途中の入口ETCの場合、本線上ですから止まれませんし、後から申告するにしても、どうやって間違いであることを立証するのでしょうか。

出口、入口ETCの場合、挿し忘れの場合もあるわけで、さすがにそれは救済する必要はない、と言うのかもしれませんが、特に入口ETCの場合はどこにあるか、どこが他の高速道路や一般道路との境界かを認識している人は少ないわけで(しばらく進んで集約料金所というケースも多い)、それへの対応も気になります。

環状線


●中央値決定の問題
さて、今回は利用中央値なる数字を出してきました。
利用者数のちょうど中央になる距離帯とのことで、そこを挟んだ料金帯を現行料金にすることで、公平感を演出しています。

阪高の資料には平成16年の起終点調査のグラフが添付されています。
この中から阪神西線を見て見ましょう。
グラフを見ると、3、4、8、12、18、22、25、32km台が有意に多く、2km台までと6、15、20、26km台が有意に少ないです。

一方、阪神西線区間の区間距離を見てみましょう。
有意に多い距離に該当する区間を見ると、神戸線を東線区間から連続走行した武庫川起点で京橋が18.9km、名神西宮から第二神明が25.1km、西宮から生田川で12.8km、第二神明が22.8km、京橋から第二神明が8.8km、北神戸線全線で32.3km、箕谷から伊川谷で18.2kmなどとなります。

こうして見ると有意に多い距離というのは通し利用や神戸の中心街が絡む利用が想定されるわけです。しかし、一方で名神から生田川が15.1km、京橋から神戸山手線経由伊川谷が20.4km、湾岸線で東線から連続走行した鳴尾浜から摩耶乗り継ぎ若宮が20.3km、武庫川から若宮の26.2kmなど、有意に低い距離にも神戸の中心街からのめぼしい区間が含まれるわけで、本当に正しいのかと言う疑念が拭い切れません。

まず起終点調査の時の区間距離の計算と、今回の距離別料金計算の区間距離があっているのかどうか。もし違っているとしたら、根拠と実行の数字が違うわけです。もし調査時の数字<今回だとしたら、中央値算出には短かめの距離で計算(短い距離となる)して、実際の計算では長めの距離で計算(距離比例の割り増しが増える)していることになるわけで、距離別料金導入と計算の根拠そのものを疑う事態になります。

実際、以前入手した阪神高速道路地図帳に記載されている区間距離は今回の数字と異なっており、そのあたりの平仄があっているのかを明確にすべきです。

また、中央値計算におけるもう一つの問題として、湾岸線経由の問題があります。
現在、環境対策などで湾岸線迂回が推奨されていますが、南港や堺方面に向かわない環状線経由の流動の場合、どちらでも行けます。
つまり、大阪(以遠)と神戸(以遠)の流動と言う意味では両者に差は無いのですが、乗り継ぎとなる京橋もしくは摩耶から住吉浜の間を一般道やハーバーハイウェイでつなぐことから、阪高の利用距離はその分だけ短くなります。

実際、西線区間で見た場合、摩耶−住吉浜乗り継ぎの場合で東線との境界になる武庫川までと鳴尾浜まででは前者のほうが5.9km短くなっています。(京橋−住吉浜乗り継ぎだと9.4km)
つまり、本来同程度の距離になる流動のはずが、5.9kmもしくは9.4kmの差が生じるわけです。
中央値が14kmと言っているなかで、本来は5.9kmもしくは9.4km長い区間を利用していると見做すべき流動が相当数入っているわけで、これは統計をかなり歪めていると考えます。
(この流動はもし湾岸線がつながっていたら自動的に全区間を利用するはずの流動)

それを補正すれば、中央値は数km大きくなるわけで、現行料金で乗れる距離帯はもっと長くなっていた可能性が高いです。

湾岸線・東神戸大橋


●値上げ忌避の一般道流出は必至
特に通り抜け流動の対象で一般道路が並行している区間。首都高では湾岸線や新宿線、渋谷線。阪高では湾岸線や神戸線において顕著に現れると見ます。

一般道はさすがに遅いから、と流出は限定的と考える人もいますが、例えば首都高湾岸線で千鳥町で降りて、東関道並行のR357で湾岸習志野ICの先に向かうクルマは少なくありませんし、川口線で新井宿で降りて東北道並行のR122で浦和や岩槻に向かうクルマも多いです。

阪高でも大阪から来て武庫川で降りてR43へ、また、神戸から来て西宮で降りてR43へ、と言うクルマは少なくないわけで、こちらは武庫川から芦屋、尼崎西までの特定区間(200円)があってのうえでの話です。

このように、料金がここから上がると言うところで流出することは現在でも見られる話です。
今回の制度変更では、大幅値上げ云々とは別に、例え値下げになる区間であっても料金表を見ながら一般道に流出するクルマが増える懸念が出てきます。

当然、端から利用しないと言う選択をするクルマも増えることは想像に難くなく、並行道路のほか、首都高関連だと環八や環七という放射方向の道路を通り均一制の外環を目指すクルマが増えそうです。

こうした一般道志向の増加で一般道の容量がパンクした場合、拡幅や立体化などの対応が取られることになりますが、税金でのこうした対応が、「営利企業」である高速道路会社の都合で行わ「される」というのも、問題とすべき点かもしれません。

湾岸線・住吉浜連絡線


●妥協点を探る、と言いたいが
首都高、阪高とも同じような料金帯という「横並び」の距離別料金の提案です。どうも両社の特性というものも見えないこの提案には、利用者の様子を見ると言う姿勢が透けて見えます。

現行料金から値下げは最大300円、値上げは最大500円と言うバランスの悪さも気になります。
このあたり、ある程度の値上げについては理解を示している層も少なくないだけに、最初から「最大1000円」と言うような落とし所を見据えた「吹っかけ」にも見えるわけで、妥協点と思っていたら実は想定内の話だったと言う相手の思惑通りに踊らされる懸念もありますし、それが事実上の決着のような気がします。

そういう意味では阪高の場合は二区間、三区間通し割引の導入とか(湾岸線三線通し割引が未だに現金だけというのもひどい)、首都高の場合は同様に通し割引とか、マイレージへの参入もしくは最低限でもマイレージ還元金での利用可能化というように、値上げはするが、という見返りの部分を目に見える形で提案してもらいたいです。

●問われる姿勢
そして、あるべき姿、公平感と美辞麗句を連ねても、結局は大幅値上げです。値下げになる人も、と言っても、値上げになる人が少なからず出ることは確かであり、現在の案のままだと値上げになる人のほうが値上げ幅が大きいのです。

にもかかわらず、両高速道路会社とも「値上げ」と言う言葉を使っていません。
「お客様の半数以上が現行料金水準以下になるように調整」ということは、半数近くは現行料金水準を超える」はずですが、値上げとは言いません。

民営化委員の猪瀬委員(現東京都副知事)は、通行料金を1割下げると大見得を切って民営化の成果を誇示していましたが、蓋を開けてみれば最大で71%の値上げです。
公約違反どころか、これほど国民、利用者を馬鹿にした話はないわけで、値上げの是非論に入る前に、その姿勢を糾すこともしないといけません。

景気回復が実感できないなか、実体経済の過熱ではない物価上昇が目立ちます。これが昂じるとスタグフレーションという最悪の結果もみえてくるのですが、そうした中での大幅値上げは、実体経済への影響もさることながら、経済、消費へのアナウンス効果もまた心配されます。

近年のガソリン高騰にしても、すでにクルマを所有している人にとっては、固定費部分の負担については変わりが無いわけで、変動費負担の増加は確かに急激かつ膨大であっても、固定費部分を負担したままであれば他の移動手段に逃避しても損するだけなのに、クルマの利用を手控えるだけでなく、公共交通利用にシフトしてしまうケース(経済的理由であればメリットのない行動)が出てきているのも、ガソリン急騰の結果、クルマ利用がとてつもない損のように見える一種のアナウンス効果です。

都市高速は過去の値上げの時、100円単位での値上げですらどのような効果、印象を利用者に与えたかを思い出すべきでしょう。
ましてや今回はその比ではない値上げです。奇しくもガソリンがここ2、3年で急騰してきたのと同じ程度の上げ幅になるわけです。

2008年秋の実施予定まであと1年程度。もう一度考え直すべきです。





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