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8日間だけごめんなさい

阪神高速神戸線、8昼夜連続通行止を見る


通行止を告げる横断幕(深江神大前)

阪神高速神戸線というと、大阪と神戸、いや、神戸を経て播州や淡路島、四国を結ぶ幹線交通網の一部を構成する重要幹線です。

この関西の大動脈ともいえる道路が、この2008年、5月下旬から6月上旬にかけての連続8昼夜にわたり、リフレッシュ工事のため一部区間が全面通行止になりました。
「8日間だけごめんなさい」というキャッチコピーで実施されたこの通行止の様子を見てきました。


※特記なき写真は2008年5月、6月撮影


●「12年ぶり」
2008年5月29日午前4時から6月6日午前6時までの連続8昼夜、厳密にいえば8日と2時間にわたり、阪神高速3号神戸線の芦屋−摩耶間において、全面通行止による「フレッシュアップ工事」を実行しています。

阪神高速神戸線が長期間全面通行止になるのは、実に阪神大震災で高架橋が倒壊するなどして1年8ヶ月余りを復旧に費やして以来12年ぶりのこと。まさにこの復旧時に整備した箇所の抜本的改修となる工事なのです。

高架橋を撤去して続く震災復旧工事
(中突堤筋・1996年1月撮影)


●懸念と対応
今回の対象となった芦屋−摩耶間は六甲山系が大阪湾に迫る地形が特徴です。
阪神高速のサイトやポスターに出ている風景は深江浜−魚崎浜間の海側から六甲山系を望むものですが、手前の湾岸線は港湾を長大橋(東神戸大橋)で跨ぎ、横に広がる市街地の北の外れはすでに六甲山の中腹です。

閉鎖された魚崎入口

こうした条件で阪高神戸線が通行止になった場合の代替路の確保が問題になります。
震災の時も阪高神戸線が倒壊し(湾岸線も落橋により不通)、下を走るR43も通行止(緊急車両専用)になったことで、大阪から神戸市内まで走る道路がR2だけになったことは当地の道路交通の問題を浮き彫りにしました。

今回は湾岸線が使え、一般道もR43、R2が使えるとはいえ、湾岸線は住吉浜から西側で一般道路もしくはハーバーハイウェイ(港湾幹線)経由で連続しておらず、R2は立体交差が一ヶ所もない半ば生活道路、さらにはR43はもともと公害問題で交通量の削減が焦眉の急となっている現状ですから、神戸線の流動をどうさばくかが問題です。

深江入口も閉鎖中


結局、通常の乗り継ぎルート(湾岸線住吉浜−神戸線摩耶、京橋)と、神戸線芦屋からの乗り継ぎルートを設定し、かつ通常時には認めていない北神戸線箕谷、神戸山手線神戸長田へのダイレクトの乗り継ぎ(通常時は神戸線生田川−箕谷、神戸線柳原−神戸長田を指定)を設定することで対応しましたが、こうして見ると原則自然体で、当該期間中の利用の自粛や北神戸線や山陽道などへの広域迂回に期待するだけという感じです。

迂回経路を示す横断幕(芦屋)


●芦屋を見る
今回の通行止は芦屋−摩耶です。この間の深江、魚崎ランプの閉鎖とともに、芦屋に近接し、神戸方面のみのハーフランプである西宮ランプも閉鎖されました。
そこでまずは大阪、名神方面からの「終点」となる芦屋の様子を見てみましょう。

芦屋入口

土曜日の午前中に現地を見ると、湾岸線への迂回や名神からだと西宮でR43に降りたのでしょうか、芦屋に至る交通量は非常に少なかったです。

ガラガラの神戸線西行き(名神西宮IC付近)

乗り継ぎ箇所のうち、芦屋はランプのすぐ先に本線料金所があり、かつ特定料金を採用していることから出口料金所があり、そこで扱うことになっています。

芦屋出口

ただしブースは2レーンのみ、1レーンはETC専用で、一般は1レーンのみです。このあたりは入口や本線TBで料金収受と乗り継ぎ券発行を扱う東行きと違い、狭い出口に集中する芦屋は心配されるところであり、実際、交通量はごく少ないのに、出口付近で1車線に収束させるあたりではそれなりに渋滞が発生していました。

車線規制の手前はさすがに渋滞

乗り継ぎに際しては「う回利用券」が料金所で渡されますが、普段の乗り継ぎ券とは異なり、チラシの一部を切り取る体裁で、残りの部分には乗り継ぎルートの案内が出ています。
芦屋のそれは「差額う回利用券」となっており、特定料金200円との差額300円を乗り継ぎ先の料金所で払うように案内しています。

差額う回利用券

なおETC無線通行の場合は200円が課金されますが、所定の乗り継ぎ箇所で4時間以内に再入場すれば後でデータを取り消すという案内が出ています。
ETCでの乗り継ぎの場合は最初の料金所で500円なり700円の徴収があり、乗り継ぎ先での料金所での記録は残らないのですが、今回そのやり方を取ると、芦屋で本来ありえない500円の課金データを作成するか、乗り継ぎ先で300円というこれも普段はあり得ない課金データ作成になるので、乗り継ぎ先で通常通りの課金を受けたら芦屋のデータを取り消すことで、料金設定をいじらなくしています。

ETCはそのままどうぞ

合流するR43はここから西側で混雑。しかし時間帯のせいかそこそこ流れています。湾岸線南芦屋浜に抜けてハーバーハイウェイなどで三宮方面に抜けるルートも設定されており、降りてすぐは係員が案内の看板とともにいるのが確認されました。

R43への合流


●摩耶へ向かう
平日や土曜の昼までの段階では、混み合うのはもっぱら湾岸線住吉浜から摩耶への乗り継ぎルート。ハーバーハイウェイの無料区間を高羽で降り、製鉄所や発電所の前を通るルートか、東明交差点に出てR43を行くルートで、特に前者は土曜の午前でも渋滞しており、平日は高羽から摩耶までの全区間両方向が渋滞している感じです。

混み合う一般道区間(灘浜東町)

逆にR2や山手幹線などの生活道路に目立った影響は出ていなかったのですが、土日の夕方は東行きの車両が増加し、R43のみならずR2も摩耶から住吉付近まで渋滞など、生活道路の交通量も増えるなど、かなり影響が出ていました。

住吉浜方面への右折車の車列(R43東明)

R43を行くと、通常は阪高の入り口を示す看板に「カバー」がかけられ、通行止と摩耶、芦屋を示すようになっていました。
閉鎖されているランプは単純に閉鎖するのではなく、工事用車両が出入りするので、警備員が立ち、工事用車両(これがけっこう多い)が来るたびにカラーコーンをどかして招き入れていました。

住吉浜、芦屋へ誘導(岩屋交差点)

今回の工事は古くなった舗装をはがし、再舗装するのがメインのようですが、R43をまたぐ歩道橋を歩くと、すぐ頭上の阪高から削岩機のような音が降ってきます。
見上げると防音壁越しに工事用車両が動き回る様子も見えました。

見上げると作業中(R43東明)

住吉浜は構造上混む(ハーバーハイウェイとの連絡路が1車線)ため、ところどころに魚崎浜、六甲アイランド北、さらには芦屋への迂回を勧める看板も出ていましたが、大半のクルマが最短を目指していたようです。

住吉浜−港湾幹線は1車線(2005年6月撮影)


●摩耶にて
通行止区間の西の「終点」は摩耶。こちらもハーバーハイウェイ経由は京橋が便利、また生田川も乗り継ぎ対応になっているので1箇所に集中せずに分散しています。
とはいえ土日の夕方は柳原の先、神戸駅付近から渋滞していましたが、これも京橋、生田川での出口渋滞であり、右側車線は流れており、「本当の渋滞」は生田川の入口付近からでした。

京橋出口の渋滞を尻目に進む

ただ、摩耶の出口の先は完全な平面交差で、R2とR43が分岐する岩屋交差点と近接していることもあり、流動が輻輳してかなり厳しい状態です。

住吉浜へ向かう一般道に続く車列(摩耶)

さらに問題なのは、摩耶出口は最終的に左折(R2、R43方面)1車線、右折(高羽経由住吉浜方面)2車線となり、本線から分岐して降りるランプ路も2車線となっているのに、本線上でいったん1車線に絞ること。

1車線に絞って摩耶の出口車線へ

ここは2車線のまま最終の摩耶出口につなげばいいのに、無用な混乱、渋滞を招いています。
特に渋滞は摩耶出口から右折して住吉浜方面に向かうクルマなので、左折してR2やR43に向かうクルマはいらぬとばっちりです。

摩耶出口ランプは2車線。左折側は空いてました


●問題点
現地では空いている道路を求めて生活道路にまでクルマがあふれることを想定したのか、R2とR43を結ぶような南北方向の主要道路には「路上駐車はご遠慮ください」という看板が出ていました。

路駐ご遠慮ください

ところが実際はR2ですら土日の夕方を除けば流れており、R43や摩耶−高羽の道路など、最短距離で不通区間をつなごうという意思を強く感じました。このあたりは不慣れな通過流動を中心に、下道区間は最短にと、指示された経路を愚直に走ったということでしょうか。

各所に立つ誘導看板

この歪が噴出しているのが摩耶付近ですが、そもそもこの8日間だけでもハーバーハイウェイを無料にしてサポートするということにならなかったのはなぜでしょう。住吉浜から来たクルマが高羽で降りてしまうのも、200円別払いということに強い拒否反応を示しているわけです。
まあ、あまり増えると今度はハーバーハイウェイ新港ランプでの出口渋滞などが懸念されるわけで、難しいですが。

港湾幹線料金所(2005年6月撮影)

あとは摩耶の構造。R43、高羽方面それぞれ、摩耶ランプとの間に2回の信号があります。ここはおおむね連携されており、通常ならストレスをあまり感じないで出入りできますが、今回のようにそれでも輻輳するとお手上げです。

住吉浜へ向かう車列(灘浜東町)

全般的には大きな混乱もなく、交通量そのものが減少した印象を受けており、それが最大の「勝因」でしょう。リフレッシュ自体は必要なものであり、やらないという選択肢は取りにくいのですが、今回芦屋−摩耶のリフレッシュが完成下神戸線の場合、今後は残る芦屋以東、摩耶以西の工事はどうなるのか。
特に代替路があまりない摩耶以西が気がかりです。










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