このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





外環道東京区間の事業主体
事業者本位の「名乗り」で決めるべきか


大泉IC出口。ここから南への事業主体は


※写真は2008年5月、2009年5月撮影


6月29日付の朝日夕刊(東京)は、外環道の大泉−世田谷間16kmの事業主体に、東日本、中日本、首都高の高速道路会社3社が名乗りを上げていると報じました。

もともと外環道を含みその外側がJH、外環道を含まずその内側を首都高という棲み分けになっており、外環に接続する高速道路、有料道路はJHの分割民営化により中央道、東名が中日本、それ以外は東日本と分かれました。旧JH3社の高速道路は分割されても通行料は通算されるためドライバーにとっては分割をあまり意識しませんが、外環道の外側で各高速道路を連絡する圏央道はあきる野IC〜釜利谷JCT(横横道路)までが中日本、それ以外が東日本と分かれていますが、圏央道を通しで走る場合、現在のところ会社境界でターミナルチャージが別途徴収されることはありません。

そもそも巨額の建設費で首が回らなくなった、という理由で民営化したのですが、なぜ巨額の建設費が見込まれる外環道に各社がいっせいに手を上げたのか。
事業主体は設計や発注だけでなく、完成後の維持管理も請け負うことになります。通行料収入は長期債務の返済に充てられるものの、維持管理業務で安定した収入が得られるという見立てですが、そうなるのも事業費の約1兆3000億円の7〜9割を税金でまかない、残りを高速道路会社が負担するいわゆる「薄皮高速」となるため、高速道路会社にとっては需要が確実な大都市圏の高速道路を「返せる範囲内」の負担だけで運用できるメリットがあるのです。

記事では、高速道路事業を巡り、複数社が競合するのは初めて。従来より効率的な道路建設や維持管理が期待される。とか、 高速道路会社が競えば税金の投入が減り、道路建設が効率的に進む利点もある。とメリットを謳いますが、肝心な利用者にとってのメリットはあるのでしょうか。

その疑念は総てが通行料部分に帰結するのですが、東日本と中日本の競合については現在のところ問題は無いでしょう。圏央道の他、長野道でも境界がありますが、料金は通算ですから、外環道を会社境界を越えて走行してもターミナルチャージの二度取りは無いと考えますし、放射側の高速道路との関係で考えると、総て打ち切り計算で外環は別途の均一区間となっており、これも変化は無いでしょう。

しかし、首都高となると話は別です。
高速道路と首都高の料金通算はありません。用賀で、高井戸で、川口で、と首都高から高速道路に連続走行しても料金は別計算です。
今回の区間が首都高になった場合、大泉が会社境界になりますが、そうなると世田谷から川口に出て東北道、という場合、外環を走るだけで首都高と東日本の2回分を払うことになるわけです。

首都高経由よりも安い設定で外環に誘導という政策的要請があるのに、これでは都心経由が志向されます。首都高会社にとってはありがたい話なのかもしれませんが、利用者としてはたまりません。
もしくは首都高の対距離制料金導入で従来よりもかなり高い料金同士での裁量が外環に働くという思惑も否定できないでしょう。

さらに朝日が謳うメリットについても疑義があるのです。
料金設定上は問題がなさそうに見える中日本が事業主体になった場合、外環道の料金は他エリアの例に倣い通算だと考えます。
しかし、中日本の返済原資はどうなるのか。東日本エリアへの連続走行の場合、収益は中日本と東日本で按分することが想定できますが、東日本はその収益で中日本管轄の外環道の返済をする謂れはありません。そうなると事業主体である中日本の返済のスピードが鈍くなります。

そうなると「返せる範囲内」の借金のベースとなっている「返せる範囲」は少なくなるため、薄皮饅頭の皮がさらに薄くなり、税金という名のあんこがさらに増えるということになります。
つまり、競争原理を持ち込んだように見えて、税金負担が増え、利用者(国民)の負担も増えるのです。

そして自分たちのリスクがなければとたんに積極的になる高速道路各社も、公共性や利用者の利便性を考えて手を上げているのか。必ずしもそうは思えないとしかいえないのです。

終点はここ。東名の外環道接続予定地点






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