このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





高速道路のガスステーションに思う
「閉鎖的空間」での給油箇所の確保



高速道路のガスステーション(給油所)は沖縄道を除いて全国共通の上限価格制度を敷いて、事実上その上限に張りついた均一価格になっています。これは「高速道路は閉鎖的空間であることから、東/中/西日本高速道路の3会社ではお客さまに不利益となることがないよう、給油所の石油製品販売価格の上限価格(ガソリンなどの販売額の上限)を毎月定めています。上限価格には、経済産業省が毎週公表している「給油所石油製品市況週動向調査」の全国平均価格を採用しています。」(「どらナビ」より)という理由であり、高速道路を利用するクルマにとってSA、PAの給油所は、他に選べないだけに命綱という面もあります。

その給油所は一般的にはSAに設置されており、概ね50〜60kmに1ヶ所給油所がある計算になります。
しかし、高速道路網が発達すると、高速道路だけの経路でも様々なパターンが発生します。
そうした流動が微妙にSAをすり抜けてしまうと給油チャンスがなくなるケースが出て来るわけですが、そうしたケースを極力なくすように配置されているようです。

さて、SA(PA)の給油所ですが、原則は24時間営業ですが、地方によっては夜間の営業をしないことがあります。現地では深夜帯でも、大都市との間で走る場合、大都市の発着時間を固定するとその地方の通過は深夜になるケースが多々あるわけです。端的な例を言えば、東名の静岡〜愛知県内は深夜に首都圏と関西を結ぶトラックの通過がピークを迎えるのです。
そうした少なからぬ流動を考えると、夜間の営業停止による給油所間隔の拡大は問題であり、現状で見ると、東北道上り線は盛岡の手前、岩手山SAまで143kmの間24時間営業のSAがなく、磐越道経由の場合、新潟の黒埼PAから磐梯山SAまで116km開きますし、日本海東北道側から来ると最初の24時間給油所が磐梯山SAですし、また、東京から遠くない常磐道でも、下りは友部SAが24時間給油所の最終です。
まあ九州は九州道が宮原SAを出ると鹿児島、宮崎両方向とも24時間給油所が無いですし、北海道に至っては北広島IC−恵庭IC間の輪厚PAしか24時間給油所がありません。

先に触れた「すり抜け」のケースも考えられなくは無いですが、夜間になると増えるのが気になるところです。高松道豊浜SAから神戸淡路鳴門道経由だと24時間給油所は中国道西宮名塩SAまで174km無いですし、舞鶴若狭道に抜けると終点の小浜西ICまで284kmにおよんでありません。
豊浜SAから瀬戸中央道経由で中国地方を横断すると、米子道蒜山高原SAか中国道勝央SA、大佐SAまで170km程度ないですし、反対方向だと中国道七塚原SAから豊浜SAまで219kmありません。

夜間の利用が少ないと言うのは分かりますが、では止む無く遠距離逓減や「深夜割引」を捨ててでもICを降りて給油所を探したらどうか、というと、それこそそのような地方で一般道の給油所が深夜にやってるとは限りません。
早めの給油をすれば問題は無いとは言え、それなりに距離が開いているだけに給油のタイミングも難しいですし、渋滞などで目算が狂う事も多々あります。

閉鎖を告げる告知(大佐SA)


こうした中で昨年9月末に中国地方を中心に給油所の営業時間短縮どころか閉鎖が行われました。
中国道帝釈峡PAと鹿野SAの給油所が閉鎖されたため、帝釈峡をはさむ大佐SAと七塚原SAの間が74km、鹿野をはさむ吉和SAと美東SAの間が107kmと開き、山岳区間ゆえ実距離以上に不安が増します。
また隣接する大佐SAの上り、吉和SAの下りが24時間でないので、間隔が相当開きました。先に述べた七塚原SAから岡山道、瀬戸中央道経由豊浜SAまで給油所が無いケースはともかく、中国道を単純に走るだけでも七塚原SAから勝央SAまで138km開くのです。
下りも安佐SAから美東SAまで146km開きますし、中国道の夜間走行は要注意です。
なお鹿野SAの給油所は夜間閉店でしたが、閉店までの短期間に限り緊急事態に限定して24時間対応をしていました。ですから他の夜間閉店の給油所でも何かしらの救済措置をとることを義務付けて欲しいものです。

これだけでも不便な話ですが、実はこの閉鎖のタイミングは利用者のことを全く考えていないシロモノでした。
昨年9月に発生した台風14号による土砂崩れは沿道の民家で死者を出す惨事になりましたが、この復旧工事のため、山陽道の岩国IC−玖珂ICが9月6日から12月1日まで長期通行止だったのです。
中国道と山陽道の並行は一見無駄ですが、迂回路として機能するラダー効果を充分に発揮した格好で、広域流動を途絶えさせなかったのですが、この通行止の最中にその閉鎖は行われたのです。

つまり、通常は岡山、大阪方面から山陽道を真っ直ぐ九州方面に向かっていた流動が、広島JCTから広島北JCTを経由して中国道に迂回していたのです。そして通過流動の中には吹田方面の最初から中国道を指向したクルマも多いでしょう。
その最中に中国道の給油所が消えたのです。特に問題なのが山陽道からの迂回で、特に下りは河内IC−西条IC間の小谷SAを出ると、吉和SAが夜間閉店ですから美東SAまで実に213km開きました。上りも中国道を直進すると上記の通り七塚原SAから勝央SAまで開きましたし。

通常ならこの間には宮島、下松、佐波川(下り)の3ヶ所に24時間給油所があり、全く問題が無いのですが、中国道には無いのです。
先にレアケースのように書いた岡山道経由の流動も迂回路としては有り得る話でした。
こういう異常時には山陽道の通行止が解除になるまでは夜間閉店を取り止めて24時間営業にするとか、閉鎖予定を繰り延べると言うような機転が必要ですが、全く考慮されなかったのです。
当時の公団、そして途中から復旧までは西日本高速ですが、事業者が盆暮れの売店を24時間にするような商売っ気はあっても、収益性は望めない対応はしなかったというのは、非常に問題です。

いみじくも事業者自身が「閉鎖的空間」という高速道路。ライバル不在の独占市場で商売熱心なのも良いですが、同時にドライバーの生殺与奪の権を握ってるわけです。
一義的には早めの給油と言うようなドライバーが取るべき対応とは言え、だからといって安全に関わる対応を薄くすることだけは止めて欲しいものです。





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