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車線拡幅として扱うべき登坂車線
せっかくの対策が生かされていないケースを見て



エル・アルコン  2007年8月16日


※この作品は「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。


この夏も帰省や行楽で高速道路は混みあいました。
こうした渋滞に関して、年に何回かの話ともいえず、週末ごとに混むような区間もあるわけで、そうした区間では改良が進められています。

盆暮れに神戸と東京の間を行き来していますが、今夏は基本に立ち返り東名を往復しました。さすがに豊田JCT以西では距離の関係もあり伊勢湾岸道、名阪国道経由ですが、老舗の東名も「新東名」による抜本的改良まで待つこともなく、改良が続いています。

さて、Uターンの際に、豊川ICから音羽蒲郡ICをはさみ、岡崎ICまでの区間で渋滞に引っかかりました。この区間は三河湾寄りを行くJRと違い、名鉄やR1に並行するように丘陵地帯を行くことから、サグによる渋滞発生が恒常化しており、またかと言う感じです。

ところでこの区間、渋滞に差し掛かるあたりで登坂車線が現れます。勾配があるのでさほど不思議は無い話ですが、すぐに終わると予想しているのか、誰も登坂車線に入らず、走行車線と追越車線に並んでいます。

ところがこの登坂車線は、上り勾配が終わり、音羽蒲郡ICに向けて下り勾配になってもまだ続くのです。きれいに並んだ渋滞の車列がウソのようにガラガラの登坂車線は延々と続き、結局合流地点は渋滞の先頭近く。まもなく平野部に出ると渋滞は解消です。
その渋滞の先頭も、登坂車線の絞込みによる交通集中とも言えないわけで、最後の上り勾配における速度低下が後方の渋滞になっているなかで、延々と続く登坂車線は知る人ぞ知るの世界になっています。

さてこういう時、登坂車線を利用して急ぐと言うのはルール違反、マナー違反と言う批判が強いです。今回の区間も、登坂車線という以上、そこを走るのはいかがなものかと言う声が出ることは想像に難くありません。
しかし、この下り坂区間も含み延々と続く登坂車線は、その由来を知ると、走らない、使わないほうがおかしいのです。

この全長7kmにも及ぶ登坂車線が完成したのは2004年11月のこと。豊川側の完成で岡崎側と合わせて延々7kmの登坂車線が出現したのです。
そもそもが渋滞の名所だった同区間の改築事業(登坂車線設置工事)であり、下り線の交通集中による渋滞多発の緩和を目的、ということは、この区間を使わないことこそが「無駄」であり、不必要な渋滞を発生させていることになるのです。

前後が2車線であっても車線を増加する効果については、勾配区間や長大トンネル区間のように速度低下が著しい区間においては有効であり、中央道上りの大月→上野原や、東名の日本坂トンネル、名神の天王山トンネルなど(前後が3車線、TN区間は2+2の4車線)、効果を挙げています。
この音羽蒲郡の区間も、建設趣旨から言うとこうした勾配区間の付加車線扱いにして、ドライバーに道が広くて走りやすい、追い越しがしやすい、と言う印象を与えることが肝心なんですが、登坂車線の表記を残したことで、Uターンピーク時に誰も使わない1車線が延々と続く奇景を演出してしまっています。

このように、ピンポイント的なものでなくある程度の距離を確保している登坂車線については、それが本来の目的どおり勾配区間であっても正規の車線扱いにすべきでしょう。
登坂車線というと大型トラック専用のようなイメージで、走行をためらうため、結果的に低速車が走行車線や果ては追越車線にまで居座り、交通集中による混雑や渋滞の原因になるからです。
逆に走行車線として扱うことで、低速車がより左側の第一走行車線に移動しやすくなり、結果として流れるようになります。

こうした効果が期待できるのは、今回走行した実見としては、音羽蒲郡IC付近の下り線のほか、裾野ICから駒門PAにかけての上り線があります。この区間は上りの登坂車線がそのまま駒門PA付近から第一走行車線になって御殿場IC、そして東京へと向かっており、駒門PA前後の状況はあまり変わりがないのに、3車線にバラける具合は明らかに差があるようです。

また、来春新名神(亀山JCT−草津田上IC)が開通することで、伊勢湾岸道と合わせた東西の幹線ルートの一部となる東名阪道も、下りの御在所SA手前にある登坂車線がSAを過ぎると全長2kmの「合流車線」として継続しています。
ここはSAの出入りに伴う織り込みの解消が目的となっていますが、前後が片側3車線の伊勢湾岸道と新名神の間の片側2車線区間ですから、走行車線として扱ったほうがボトルネック解消と言う意味では効果的かと思います。

本来のピンポイント的な用途の登坂車線を一般車両が使うのは、本当に必要とする車両が使いづらくなることもあり問題ですが、このように本線部の拡幅効果を期待されている類の登坂車線については、走行車線として扱うことで、ボトルネック部分となっている箇所の容量を上げるべきでしょう。
少なくとも今回の音羽蒲郡のように、渋滞の車列の脇に使わない登坂車線というのは問題であり、積極的な利用を促すような措置が取られてもいいかと思います。






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